ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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下船が伸びてむしゃくしゃしながら更新です。


第四十話

カズキは夕食を終え部屋に戻りくつろいでいた。

クロエは鈴と相川に連れられ消えていったし、楯無も仕事が終わっていないのか未だに帰ってこない。

そのため久しぶりに静かでゆったりとした時間を過ごしていた。

しかしそれは僅かな時間で終わってしまう。

 

茶を淹れ本を読んでいると不意にノックが響く。

わざわざ楯無がノックしてくることはイタズラ目的以外ではあり得ないし、ひょっとしてクロエだろうか。

そう思いつつ扉を開けるとそこにいたのは片側の頬を少し赤くさせた一夏だった。

 

「一夏か、珍しいな。どうした?」

 

「ちょっと俺の部屋まで来てくれないか?」

 

「ん?構わんが....。」

 

深刻そうな顔でそう言う一夏に厄介事の気配を感じつつも一夏について行く。

途中でヤンにも声をかけて向かった先は一夏の部屋だった。

確か一夏の同室は箒からシャルルに変わっていたはず。

 

(本当に厄ネタの香りしかしませんありがとうございます。)

 

そんなバカなことを考えつつも先導する一夏が扉を開き部屋に入る。

オレとヤンが入ったのを確認したら素早く部屋の鍵を閉めた。

だが、そんなことよりも目の前の光景の方が重要だった。

 

そこにいたのは少し気恥ずかしそうに頬を染めながらダボっとしたジャージに身を包んだシャルル・デュノア♀である。

 

「............やっぱり厄ネタじゃねえか。」

 

オレはそう呟くと脱力して肩をガックリと落とした。

 

 

「つまりなんだ。身分、というか性別を偽って学園に入学して、男性操縦者のISのデータを取ってこいとデュノア社に命じられてる。」

 

「それでシャワーを浴びているところに一夏が入ってきてバレた。ついでにビンタをかましたというわけかい?」

 

オレとヤンが聞いた話をまとめて確認を取るとシャワーの下りで色々と思い出しだのか、一夏とシャルル改めシャルロットが顔を赤くしていた。

普段ならゲラゲラ笑ってやるところだがこっちからすると全く笑えない。

曲がりなりにもG7主要国であるフランス、そこの代表候補生であり、第二世代ISの傑作機であるラファールを開発した販売してるデュノア社のご令嬢が産業スパイであったのだから、笑ってられるはずがない。

しかも今話した内容が全て嘘で同情を誘うハニートラップである可能性もある。

 

「んで、その事をオレらに話すのはいいがオレらが何者か忘れてないか?」

 

「え?」

 

オレがそう言うと一夏は心底不思議そうな顔をするので思わずため息を溢す。

 

「あのね一夏。僕たちは学生として学園に所属してはいるけど、あくまでも学園の外敵を排除する国連軍の軍人なんだよ。彼女は産業スパイ、つまりは捕縛すべき相手なわけなんだ。」

 

「なっ⁉︎ 」

 

「オレたちはそれを仕事に金もらってんだからな。おい、デュノア。」

 

オレがそう言ってシャルロットの方へ手を伸ばすと一夏がそれを阻む。

 

「おい...。」

 

オレがドスを効かせた声を出しつつ一夏を睨みつける。

一夏はそんなオレを真っ直ぐに見返す。

 

「そいつはスパイで敵だ。そんでもって今までの話だって同情を誘う嘘の可能性だってあるわけだ。....それでもソイツを庇うのか?」

 

「....当たり前だ。」

 

一夏のあまりにも真っ直ぐな言葉に少し眩しく思えてくるが、グッと堪える。

 

「なぜ庇う?」

 

オレが短くそう問いかけると、相変わらずの真っ直ぐな目で答えた。

 

「シャルがなんであれ俺の友達で、何より"助けて"って言われたんだ。」

 

「そんなの...。」

 

「わかってる。嘘かもしれないしただの偽善なのかもしれない。....それでも助けを求める友達を俺はほっとけない!」

 

「一夏...。」

 

本当に眩しいな。

ここまで無鉄砲に人を助ける事を優先するなんてな。

散々に救うと言って救えなかった自分の過去と少し重ねてしまう。

あの真っ直ぐで純粋だった頃を思い出してしまう。

 

(はっ...今更そんなこと思い出してなんになる。)

 

そんな事を思い出して目の前の一夏に重ね合わせる自分をつい自嘲してしまう。

 

だが、どうしてだろう。

コイツに賭けてみたい、そう思っている自分がいる。

 

「はぁ、カズキ。僕たちの負けだよ。」

 

「ヤン⁉︎ 」

 

ヤンの突然の言葉に驚く。

だがヤンは笑みを浮かべながら目の前の2人を見据える。

 

「どのみち下手な事すれば厄介な問題が噴き出すんだから、本気で捕まえる気はなかったんだろう?」

 

「それは...。」

 

その通りだ。

コイツを下手に拘束したところで性別を詐称しIS学園に送り込んだフランスは追及の的にされ、G7内での亀裂が大変なことになる。

挙句、世界的シェアを誇るデュノア社も追求は免れずフランス国内での混乱は先鋭化を招く恐れがあるのだ。

そんな事を我々は望んでいないし、どう考えても1人の拘束に対して釣り合っていないのだ。

 

オレは観念して両手を上げる。

 

「ったく、ここまで一夏がのめり込むとはな。もう少し内情を探ってからのはずだったのによ。」

 

「え?」

 

「デュノアの拘束はしない。取り敢えず見逃してやる。」

 

「ホントかっ⁉︎ 」

 

オレの言葉に前のめりになる一夏。

 

「ああ、わざわざこんな嘘はつかんさ。」

 

オレがそう言うと喜びからか嬉しそうに笑うとデュノアに抱きついた。

抱きつかれたデュノアは顔を真っ赤にしながら目を回していた。

そんな様子を見てふと湧いた疑問を投げかける。

 

「....ところでお前らさ。」

 

「なんだよカズキ?」

 

「何だか仲がやけに良いが....ヤったのか?」

 

そう、かなりの疑問だった。

デュノアはなかなかの胸を持っているし見たところプロポーションはかなり良い。

顔も良い上、そんな女性に泣きながら頼られてみようものなら情に流されヤることヤってる可能性が高いのだ。

何より一夏が1人の女にここまで必死になるのはナニかあったのではとつい勘繰ってしまうのだ。

 

しかし問われた2人は何を効かれたのか分かっていないようで首を傾げていた。

 

「ヤるって何をだよ?」

 

「そりゃナニに決まってるだろ?」

 

「?」

 

わざわざ言ってやるもやはり理解できていないらしく首を傾げた。

後ろでヤンはため息吐いていたが気にしない。

 

「ハァ、本当にお前は男かよ?男女が2人きりの密室でやって仲が深まるっつたらセックスだろ、セックス。」

 

「ふえっ⁉︎ 」

「はぁ⁉︎ 」

 

オレが言いたいことがようやく伝わったらしくデュノアは顔を赤くしながら可愛らしい声で、一夏は顔を赤くしながらそれぞれ驚きの声をあげた。

 

「そ、そんなわけないだろっ⁉︎ 」

 

「じゃあ、デュノアの裸はどうだった?」

 

「そりゃキレイだっ....って何を言わせようとしてるんだよっ⁉︎ 」

 

「一夏ァ!」

 

つい正直に感想を喋った一夏に対して顔を真っ赤にしながら涙目で睨みつけるデュノア。

こんなのがハニトラ要員なわけないか...。

少なくとも本人は白かね。

 

「な、何でそんなこと聞くんだよ⁉︎ 」

 

「そらお前、服の上から見てもどう誤魔化してたのかわからんぐらいのメロンがあるんだから聞いてみたいだろ。」

 

「そっちじゃなくて!」

 

「何だ、セックスのことか。」

 

「わざわざ言わなくても良いよっ!」

 

何だコイツら面白いな。

顔を真っ赤にしながら叫ぶ2人を見ながらそんな事を思う。

 

「ああ。ま、ハニトラなら手を出して情が湧いちまうとアウトだからな。それの確認だよ。」

 

「それなら最初からそう言えよ。」

 

なんだか疲れたようにそう話す一夏。

先ほどから不思議な視線が突き刺さっているがなんだろうか。

 

「ヤン、なんか言いたいことでもあんのか?」

 

「別に、初日にハニトラに引っかかりかけた人が言うことは違うなと思っただけだよ。」

 

「「えっ⁉︎ 」」

 

突き刺さっていた視線の元であるヤンに問うと、楯無の件が飛んできた。

 

「バタバタしてて色々と溜まってたんだから仕方ないだろ?それに引っかかってないんだし。」

 

「ヤる直前まで行ったくせによく言うよ。」

 

「「直前っ⁉︎ 」」

 

くっ、否定できない。

 

「どちらにせよ処女のくせにハニトラかけるアイツがおかしいし、ヤってはいないんだからよ。」

 

オレが苦しげに反論する。

ヤンに鼻で笑われたが...。

しかしながら背後の会話が面白くてたまらないんだが。

 

「ねぇ一夏。処女って何?」

 

「え?.....あー、その.....。」

 

「まだ知らない日本語も多いからわからないんだ。教えてよ一夏。」

 

「......ジン。」

 

「え?」

 

「ヴァージンのことだよ....。」

 

「..........ごめん。」

 

「........気にしないでくれ。」

 

クッソ、こっちに混ざりたい!

だがヤンを無視するのはまずい。

 

「大体カズキはね!」

 

「「........」」

 

ヤンからオレは説教を受け、後ろでは顔を赤くしながら互いに顔を逸らしている男女。

訳の分からない状況のまま夜は更けていく。

 

 

取り敢えずヤンの説教が終わったところでデュノアの方へ体を向ける。

 

「デュノア、お前が白である事をオレ達が確証するために詳しく身辺調査を行う。」

 

「う、うん。」

 

先ほどの空間からいきなり真面目になったから少し困惑しているようだが、話を続ける。

 

「調べる過程でお前の正体だけではなく、お前のスリーサイズから男の趣味、交際歴といったプライバシーもクソも無い情報まで集められてオレが見ることになるかもしれん。......その覚悟はあるか?」

 

「.....え?」

 

ポカンと呆然と口を半開きにして固まるシャルル改めシャルロット。

まぁ、仕方ないだろう。

潜入してきたとはいえ年頃の女性があって間もない人間やあった事ない人間に自分のプライバシーを全開にしなければならないのだ。

 

「シャル....。」

 

心配そうにシャルロットを見つめる一夏。

呆然としていたシャルロットだがそんな一夏を見て、何やら覚悟が決まったのか軽く息を吐くと毅然とした表情でこちらを見る。

 

「.....大丈夫。一夏がここまで道を示してくれてカズキ達も協力してくれるって言ってるのにボクだけ逃げるなんてできないよ...。」

 

「そうか。それとあと一つお前には覚悟してもらわねければならないことがある。」

 

シャルロットの覚悟を見た上でもう一つの覚悟をしてもらうべく口を開いた。

 

「この一件、下手を打てばお前は祖国に帰れず家に帰ることもできなくなるかもしれん。」

 

「なっ⁉︎ 」

 

一夏は驚いているがシャルはなんとなく察していたようで表情に影が差した。

 

「仕方ないだろう。下手を打たずとも主要国たるフランスとIS産業における大企業の一大スキャンダルだ。シャルロットを切り捨てるぐらい可能性としては十分にありえる。」

 

「そうなればあり得るのは、無関係を装い外部からの諜報員の仕業にしつつ尻尾を切る。それか社長のアルベール・デュノアにはそもそも息子も娘もいないってすればおしまいだ。」

 

当然だろう。

国ってのはそれぐらいやってのける。

表じゃどんなキレイ事言ってようが所詮は国益を優先するものだ。

たかだか数人の犠牲で国益が守られるのなら容易く切り捨てる。

切り捨てられる側はたまったものではないが。

 

そして今、シャルロットに切り捨てられる側になる覚悟を強いている。

正直、弱冠15歳の女子にさせる覚悟ではないし即答できるものでもない。

 

だが彼女の状況はそれを許さない。

 

「...........元々、一夏が励ましてくれなきゃ一生刑務所暮らしを覚悟してたんだ。それぐらい覚悟しないといけないよね。」

 

驚いたことにコイツはすぐに覚悟を決めた。

 

「....後から嫌だなんて言わせんぞ。」

 

「もちろんだよ。ボクはキミたちに助けてもらってる側なんだよ。そんな事を言う気はないよ。」

 

「.....そうか。少々惨いことを言ったことは謝るが、そこまで覚悟を決めてるならもう何も言うまい。」

 

オレがそう言うとヤンも同意するように笑みを溢しながら頷いた。

 

「僕たちもキミの覚悟を無駄にしないように努力するよ。」

 

「ああ。取り敢えずは今まで通り過ごしてくれ。その間にオレ達が色々と調べるからよ。」

 

「ああ。今日はありがとう、助かったよ。」

 

「うん。ボロを出さないように頑張るよ。色々とありがとうね。」

 

オレ達の言葉に一夏とシャルロットは感謝の言葉をよこしてくる。

今日はお暇しようとドアに手をかけたところで、ふと立ち止まり振り返る。

 

「あ、そうそう。」

 

「「?」」

 

オレが立ち止まったことを不思議そうに見つめる2人に対してニヤリと笑みを浮かべる。

隣いるヤンはそんなオレを見て少し呆れた表情を浮かべる。

 

「ちゃんと避妊しろよ。」

 

「「っ⁉︎ 」」

 

オレの言葉に顔を真っ赤にする2人。

シャルロットは顔を俯かせながら恥ずかしそうにモジモジしている。

そんな様子を見て満足したオレはドアを開き今度こそ一夏たちの部屋を後にした。

 

 

「「............. 」」

 

気まずい。

カズキが最後に残していったいらない一言のせいでもの凄い気まずい。

ここは勇気を振り絞ってこの状況を打開しなければ。

 

「.......シャル。」

 

「ふぁいっ⁉︎ 」

 

顔を俯かせながら恥ずかしそうにモジモジしているシャルに若干ドキッとしながらもなんとか声をかける。

シャルはビクッと体を震わせながらうわずった声で返事をする。

相変わらず顔は真っ赤だ。

 

「ひとまずはなんとかなりそうでよかったな。」

 

そう言ってシャルに微笑みかける。

シャルは今までの赤く緊張した顔から笑顔に変わっていった。

 

「うん!一夏、ありがとう。」

 

そのキレイな笑顔に思わず俺も笑みが浮かぶ。

 

そしてそんな中でもやはりカズキやヤンに頼らなければならない自分の不甲斐なさが浮かび上がってしまう。

前の戦いの時もそうだ。

結局、頼り切ってしまうことしかできない自分が嫌になる。

 

「....一夏どうかしたの?」

 

表情に出てしまっていたのかシャルが心配そうに顔を覗き込んできていた。

 

「いや、なんでもなっ....⁉︎ 」

 

どこかに飛んでいっていた意識を戻して目をやると、そこにはジャージの隙間から覗くジャルの豊満な谷間があった。

それを目にした俺は思わず言葉を詰まらせる。

 

「大丈夫、一夏?」

 

言葉に詰まったことに更に心配になったのか更に不安そうになるシャル。

だが、まさか「キミの胸元に目がいって」なんて言い出せるはずもなく少し震える声で今度こそ「大丈夫。」と絞り出すしか出来なかった。

 

「ホント?」と不安そうながらも少し離れてくれたため一息つけた。

 

だがここである重要な問題に気がつく。

 

今までシャルルとして接していたし、何より緊急事態だったためそこまで意識していなかったが、シャルは隠れ巨乳であったらしくスタイルがかなりいい。

そして何より可愛いのだ。

かつ一夏は見てないと言っているものの、シャルロットの美しい肢体をバッチリと見ており、思春期の男子にはあまりにも刺激的なそれをはっきりと脳は記憶してしまっているのだ。

そんな同世代の異性と同じ部屋でしばらく共に過ごさなければならないのだ。

 

やばい、理性持つかな....。

 

 

 

 

一夏が必死にこの先のことを考え悶えている頃、シャルロットも悶えていた。

 

(う〜!絶対いま一夏の視線がおっぱいにいってたよ!)

 

そう一夏が隠し通せてる思っている視線はバッチリバレていたのだ。

そして自分の無防備な格好を思い出し先ほどの行動が急に恥ずかしくなったのだ。

 

(というか、よく考えれば男の子としばらく2人きりで過ごさなきゃいけないんだよね⁉︎ )

 

こちらもまた今までの事態ですっかりその事に考えがいってなかったのだ。

そして改めて意識すると顔が真っ赤になり、思考が茹で上がってしまう。

 

 

 

 

そして2人は同時にある言葉を思い出した。

 

「ちゃんと避妊しろよ。」

 

カズキの余計な一言である。

 

((カズキのバカぁ〜⁉︎ ))

 

2人は顔を真っ赤にしながら互いに顔を逸らしながら茹で上がった思考でこれからの生活のことを考え続ける。

こうして、2人は悶々としながらぎこちなく過ごしていくことになるのであった。




互いに意識しながら悶々して顔を赤くしてる様はイイですよね(愉悦)

愉悦ついでにワンポイントアドバイス。
女性は視線に敏感だからすぐにバレるから巨乳だからといってガン見するのはやめようね!
それをしないだけで女性からの好感度が上がるぞ!
ちなみにこんなこと言ってるけど交際歴はないぞっ‼︎
クソッタレ!
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