休暇を満喫して期間がだいぶ空いてしまったので初投稿です。
相談を終えたカズキはすぐさま束に情報収集の依頼を飛ばした。
報酬は一度だけ何しても怒らないこと、というなんだか不穏なものであったが不安を押し殺しつつ渋々承諾した。
そして今は、
「はい、ありがとうございました。」
放課後を利用して薫子からの取材をクロエと一緒に受けていた。
無論、例の要らん噂の火消しの為の記事である。
「わざわざすまんな、薫子。」
「いえいえ、元はといえば新聞部が悪いんですからこれくらいは大丈夫ですよ。」
オレの礼に対して申し訳なさそうに話す薫子。
そんなに恐縮する必要はないだろうに。
「これで記事が出れば取り敢えず一安心だな。」
「そうですね。......私がしっかりしていればこんな手間をかけることはなかったんですけど....。」
そう言ってシュンとするクロエの頭に手を置く。
「気にすんなって言ってんだろ。次から気をつけりゃいいんだよ。」
「.....はい。」
クロエの元気のない返事に心配になるがこればかりは時間に任せたり実際に解決するまではどうしようもないだろう。
「さてと、ちょいとアリーナの方見てくるわ。」
「お願いね。」
オレはそう言って立ち上がると楯無の返事が飛んでくる。
しかしクロエは首を傾げた。
「アリーナで何かあるのですか?」
「ああ。そろそろタッグトーナメントの時期だからな、2年以上がメインでトーナメントに向けた練習に励むんだ。だから揉め事も多くなる時期だから生徒会で見回りをして仲裁に入ったりもするんだ。」
「今まではメインの戦闘員が私と先輩しかいなくて今年は私1人になるのかと戦々恐々してたんだけど、カズキくんが入ってきてホントに助かったわ〜。」
オレがクロエの質問に答えると、楯無が戦々恐々と書かれた扇子を持ちながら付け加えるように世知辛い事情を漏らした。
「クロエはどうする?」
「私は清香さんに髪の上手な梳き方を教わる約束があるので先に帰ります。」
クロエは相川と姉妹のように仲良くなっていており、相川に髪を梳いてもらっている微笑ましい情景を思い出してつい笑みが溢れてしまう。
「そっか。オレの部屋のコーヒー豆しまってる棚にこの前貰ったクッキーが入ってるから持っていって相川と一緒に食べるといい。」
「いいんですか⁉︎ 」
オレが部屋にあるクッキーを持ってくように言うと、クロエは喜びながらも本当に良いのかオレと同室の楯無の表情を窺った。
オレが「いいよな?」と楯無に確認取るともちろんとクロエに微笑みかけた。
その様子に笑顔を浮かべたクロエの表情を横から薫子がカメラを向けシャッターを切った。
♢
生徒会室を出て嬉しそうに駆けていくクロエを見送ったオレはアリーナへと向かう。
アリーナでは学生たちがスペースが限られているため近接限定で模擬戦をやったり互いにアドバイスをしたりと切磋琢磨している様子が見られた。
そしてその一角では一夏を中心としたいつものメンバーがおり、何だかぎこちない感じでシャルが銃に関してレクチャーしているようだ。
おそらく昨晩のことを引きずっているんだなと初々しい様子についニヤけてしまう。
遠目からとはいえシャルの指導を見ていると頭おかしいぐらい細かい指示を出したり擬音でしか説明できない奴らに比べれば、ただ普通に教えてるだけでも素晴らしい指導に思えてくる。
ともかく周りを見てみるも大した問題は起きてないようで、一夏たちに声をかけてから戻るかと思い一歩踏み出したその時アリーナに一際大きな銃声が響いた。
それも銃声が聞こえたのは一夏たちがいる射撃スペースではなくアリーナの入口の方だった。
そちらに目を向けると専用機である"シュヴァルツェ・レーゲン"を装備し右肩に装備されている大型のレールカノンから薄く煙をあげるボーデヴィッヒがいた。
ISによる射撃練習は流れ弾や誤射を防ぐため、アリーナに設置された射撃レーンか丸々アリーナを借りなければ原則禁止されている。
にも関わらず行われた暴挙に周りは静まり返り自然とボーデヴィッヒへと視線が集まる。
「私と戦え、織斑一夏。」
そんな中ボーデヴィッヒは気にすることなく吐いた言葉はやけに響いた。
「嫌だよ。オレはキミと戦う理由がない。」
ボーデヴィッヒの言葉に対し一夏は冷静に返す。
その返しが気に食わなかったのか顔を歪めたボーデヴィッヒはレールカノンを再照準する。
「バカ野郎っ!」
思わず声をあげISを展開させ瞬時加速で間に入る。
ボーデヴィッヒは割って入ったオレに対して忌々しげな視線を向けながら舌打ちをした。
「何のようだ?」
「決まってんだろ。バカの仲裁に来たんだよ。」
おどけつつ肩をすくめるが帰ってくるのは嘲笑だった。
「はっ、無人機如きに遅れを取る貴様が私とやるのか?」
その言葉に周りはざわつく。
一年やオレに近しい奴らならいざ知らず上級生からの視線と嘲笑が刺さる。
まったく....悪い風聞ってのは嫌だねぇ。
無人機にする遅れをとったオレがドイツの第三世代機に勝てるわけないってか?
しかしそんな事を無視してボーデヴィッヒを嘲笑ってやる。
「実戦の経験のない処女がイキんなよ。第一、安全のためのルールすら守れない能無しに笑われる謂れはないね。」
「キサマっ.....!」
さらに眉間に皺がよりコチラを一層睨みつけてくるが、ニッコリ笑ってやる。
「それとも優しく教えてあげなきゃ理解できんか?....ここで射撃はいけないんですよぉ、ってか?」
オレの背後から「うわぁ...」とドン引きしてるような声が聞こえるが無視する。
「ま、少なくとも今は出直しな。タイミング悪いしちふ....織斑先生のお手を煩わせることになるぞ。」
オレの言葉に舌打ちをすると踵を返し出口へと向かっていく。
途中で止まるとコチラを睨みながら一言こぼした。
「.....今回は退くが次は潰す。」
すっげえ三下とか油断して後からやられる敵役みたいなセリフだな、と思いつつも目線はしっかりと合わせておく。
ふん、と鼻を鳴らすと再び前を向き今度こそ出て行った。
「はぁ.....絶対千冬に苦情入れてやる....。」
ボーデヴィッヒを見送ったオレはため息を溢しそう愚痴る。
すると背後から声をかけられた。
「すまんカズキ、助かった。」
「いいってことよ。これも仕事のうちだから。」
一夏の感謝を素直に受け取ると首元をかき軽く愚痴る。
「にしたって、アイツのアレはなんだよ。ドイツ軍人ってのは規律がいいんじゃねえのかよ。アレじゃただのじゃじゃ馬だ。」
「.......。」
オレの言葉に何か思い当たる節でもあるのか表情に影が差し口籠る一夏。
「どうかしたか?」
「.....いや、なんでもない。」
「.....そうか。」
険しい表情を浮かべる一夏にどうかしたのか確かめるも、僅かな間の後誤魔化された。
何かあるだろうとは思いつつもあえて流す。
全く面倒なことばかり増えていって嫌になる。
♢
「何っ⁉︎ 隊長がそんなことを⁉︎ 」
放課後、基地に向かいクラリッサにに今日起きたことを話した。
「ああ。アレが本当に優秀な軍人か?ヤクでもキメて頭イってるバカに見えるが。」
オレの言葉にクラリッサはムッとして軽く睨みつけつつも、起きたことが起きたことなだけに強く言えないようで小さく息を吐くと話し始めた。
「.....確かに隊長は織斑教官を人一倍尊敬していた。落ちこぼれていた所から拾い上げてもらって大きく成長させてもらった、まさに恩人だからな。それに、隊長は純粋な方でな。私の話す日本のことに少女のように目を輝かせるような方なんだ。後からだらしのない表情をしていることに気がついて誤魔化そうとする姿はとても可愛らしくてだな....。」
なんだか話がずれてきているように感じるが、クラリッサの話を聞く限りどちらかと言うと純粋なやつなように感じる。
だが今まで見たボーデヴィッヒからそんな風には思えない。
「.....その尊敬が執着に変わったとかは?」
「そんな感じはしなかったぞ。どちらかといえばただ憧れていたように感じていた。」
「お前が見落としてた可能性は?」
「それこそあり得んっ!」
クラリッサの話ではボーデヴィッヒの気が触れてたような感じはしなかったと言うが、あの様子はとても正気とは思えずクラリッサの目に疑いをかける。
が、食い気味に否定された。
「私を含めた黒兎隊の人間は隊長のファンだ。そんな我々の目をもってしてその兆候を見逃すわけがないだろっ!あの可愛らしい隊長の一挙手一投足を見逃すものかっ!」
「厄介なオタクかテメェは.....。」
食い気味な否定から飛び出してきたクラリッサの発言に思わず呆れ返る。
というかお前みたいなのがいっぱいって大丈夫か、ドイツ最精鋭....?
オレのオタク発言に"バカにするな"と突っかかってくるこのポンコツに軽い頭痛を覚える。
「.......何してるんですか?」
そんな中、生意気な目を向けながらチックが隊室に入ってきた。
いや、クソ生意気な表情なのは間違いないが目はすごい冷めている。
「何を考えてるかは知らんが、ポンコツの世話をしてるだけだ。」
「ハルフォーフ中尉がポンコツ.....?」
説明をするもチックはコチラを怪訝そうな目で見てくる。
なぜ、ポンコツで引っかかる?
そう疑問に思いつつ目の前のクラリッサに目を向けると、なにやらドヤ顔を決めていた。
.....コイツ、チックの前ではなんとかポンコツ性を誤魔化して隠してやがるな。
「そういえばクラリッサ。」
「なんだ?何か嵌めようたってそうはいかんぞ。」
オレが気を取り直して
イラッとしつつも話を続ける。
「この前、整備班のランドゥーク曹長との賭け麻雀の話を聞こうじゃないか?」
「へ?」
この後、めちゃくちゃ賭博について話してチックをドン引きさせた。
♢
「咲」だかなんだか忘れたが、漫画に影響されて麻雀にハマってしまい、整備班の麻雀やれる連中と楽しみまくってたことを一から十まで話し合ってチックの中のクラリッサ像に傷をつけて満足したオレは学校へ戻った。
持ち込んでいた水筒を忘れたことに気が付き取りに戻ったのだ。
そして無事に水筒を回収し、帰路に就くべく階段を降りて踊り場に出たところで聞き覚えのある話し声が聞こえてきた。
「教官!」
ボーデヴィッヒのようだ。
教官と呼んでるあたりおそらく相手は千冬だろう。
「何度聞かれても答えは変わらんぞ。」
「しかしっ!ここにいる奴らはISをファッションの類だと認識しているような奴らばかり!このようなところで教鞭をとっていてもっ....!」
やはり話し相手は千冬のようだ。
話してる内容はIS学園よりもいるべき場所があるはずだと直訴してるのか?
だがそんなこと言っても千冬はこの仕事を結構気に入ってるから乗るわけないだろうに。
「ほう。お前は私に意見できるほど育っているのか?第一、ここは私が自ら望んでいる場所だ。その場所を"こんなところ"とはな、随分偉くなったじゃないか。」
ボーデヴィッヒの発言が少し頭に来たようで低くなった千冬の声が聞こえてきた。
「いえ.....申し訳ありません。そんなつもりは....。」
ボーデヴィッヒのやつがガチで凹んでるじゃねぇか。
というかそこまでシュンと落ち込むとはクラリッサの言ってることはあながち間違いではないのかもしれんな。
そう思いつつも回れ右して遠回りになるが一旦戻って別ルートで帰ろうとする。
「おい、盗み聞きなんて趣味の悪いことしておいてさっさと帰るつもりか?」
「なっ⁉︎ 」
不意に千冬から声をかけられる。
アイツ気付いてて泳がせてやがったな。
クッソ、無視して逃げるのも手か?
「逃すわけないだろ?」
なんでサラッと心読むんだよっ!
怖えよ!
はぁ....諦めて出るか。
決心したオレは両手を上げながら降参といった感じで出て行った。
「盗み聞きなんてする気は無かったんだがね。こんな廊下のど真ん中で喋る方も悪くないですか?」
「だからこうして叱るなんて真似はしてないだろう?」
「キサマっ....⁉︎ 」
千冬がニヤッと口角を上げながらふざけたことを抜かす中、ボーデヴィッヒに睨みつけられる。
「先ほどのボーデヴィッヒの話をお前はどう思う?」
「どう....と言うと?」
「ISをファッションの類だと認識している奴らが集まる"こんなところ"と言う発言に関してだ。」
ああ、なんだ。
そんなの決まってる。
「その通りだろ。」
「なっ⁉︎ 」
まさか肯定されると思っていなかったのか驚きの声を上げるボーデヴィッヒ。
「ISをファッションの類だと認識してるは間違いないでしょ?兵器や危険なものと考えてる奴にとっては認識の甘い連中の集まった、文字通り"こんなところ"でしょう。」
そんな話わかるなみたいな目でこっち見んなボーデヴィッヒ。
「とはいえ、そのいわば平和ボケとも言える光景を肯定するか否定するかで話しは大きく変わりますがね。」
「キサマはどっちなんだ?」
今まで沈黙を貫いていた千冬が口を開く。
「無論肯定です。」
オレの答えに満足げに千冬は頷くがボーデヴィッヒは怪訝な表情でオレを見上げる。
「民間人がボケてられるほど平和なんすよ。そっちの方がいいに決まってる。軍人であるから戦いを考えてしまうのは仕方ないけども、軍人の本文は平和を守ること。それならオレは平和ボケを喜びますよ。」
「先日ここで襲撃を受けてISを兵器として使っただろ⁉︎ 」
案の定ボーデヴィッヒに突っ込まれる。
「確かにそうだ。けどそれはオレたち軍人の不手際だ。事前に潰す機会はあったがそれをみすみす見逃した。ISなんぞ使って戦うことなく納められたはずなんだ。」
「だがっ!それで割を食う軍人は...⁉︎ 」
「それも給料分の仕事さ。そもそも軍人なんていうクソみたいな職についた時点で覚悟してんのさ。所詮は人殺しを生業とする国家公務員だからな。」
コイツは軍人としてISを扱うことに誇りを持っているのだろう。
それが故にその誇りの象徴であり敬愛する千冬との繋がりであるISが汚されてるようにでも感じているのだろう。
なにより、前はオレに対して大概ボロカスに言っていたが奥底では心配していたのだろう。
そうでなきゃ割を食わさられる軍人という立場をここまで嘆き必死に否定することはないだろう。
「キサマも所詮はそちら側ということか....。」
「ん?なんか言ったか?」
「何も....。教官、今日はここで失礼します。しかし諦める気はありません。それでは。」
何かボソッと言われた気がするが、ボーデヴィッヒはさっさと会話を切り上げて立ち去っていった。
その背中は少し寂しそうではあったがアイツのことはまだわかっておらず、かける言葉なんて思いつくはずもなくただ見送った。
「すまんな、カズキ。」
ボーデヴィッヒを見送ったのち千冬から礼を言われた。
「礼を言うなら、あそこで声をかけるなよ。」
「うぐっ....。」
オレがそうツッコむと言葉を詰まらせた。
そんな空気を切るためか大袈裟に咳払いをすると話しかけてきた。
「カズキ。すまんがラウラのこと、少し気にしてやってくれないだろうか。」
「それは構わんが、なんか心配ごとでもあんのか?」
分かりきったことだが敢えて聞いておく。
「ああ。ドイツでラウラの面倒を見た時より成長はしているがなんだかおかしいんだ。」
「おかしい?アイツのイかれ具合は見ての通りだろ。」
「違うんだ。ラウラは責任感もあって真面目な奴だった。そんな奴がアリーナ内で発砲したり、初対面の人間にビンタするなんて考えられない。」
そう言われ、ボーデヴィッヒの登校初日にかました一夏へのビンタや今日のアリーナでの一件を思い出す。
確かに規則に厳しく、規律正しいドイツ軍人としては考えられない行動だ。
いつぞやの賭けポーカーやってた連中だってやっちゃいけない線は理解してた。
というかそんな危険人物を送り込んでくるとは到底考えられない。
「......。」
「今のラウラはどう見ても不安定だ。だが、私にはなぜそうなっているのか皆目見当もつかない。教師なんてやってる癖に情けない話だがな...。」
千冬は自嘲するように笑いながらそう語る。
その瞳の中には自分の情けなさに対する怒りが見てとれた。
昔よく見た目だ。
自分をかなり責めてるな。
「そう自分を責めるな。言ってしまえば所詮は他人なんだ。内心なんてわかるわけない。いつも通りお前は鬼みてえな面で人の頭引っ叩いとけばいいんだよ。」
教師とはいえ所詮は人間だ。
人の心など読めるはずはない。
まぁ、さっきは明らかに読まれてたけど...。
オレがそんなくだらないことを考えているとなんだか千冬が俯きながら軽く肩を震わせていた。
「どうした?腹でも痛いか?」
素直に心配して声をかける。
すると、千冬はボソッと何かつぶやいた。
「.........誰が鬼みたいだと?」
「え?」
飛び出してきた低い声に動揺していると、千冬は顔を上げ修羅の如き表情でコチラを見てきた。
「誰の、面が、鬼みたいだと?」
「え?いや、あの....普通この流れって慰めてくれて喜ぶとかそう言うアレじゃないんすか?慈悲とかくれないんすか?」
「そんなものはない。」
なんとか止めようとするもどうやら効果はないらしい。
ついでに慈悲もないらしい。
ハハッ(乾いた笑み)
「オレ何も悪いことしてないのに.....。」
オレの心からの言葉も意に返されることもなく、頭を鷲掴みにされ急激に襲いくる割れるような激痛を感じつつオレは意識を飛ばすのであった。
ってなわけで、かなり期間が空いてしまいました。
Wi-Fi使い放題のフカフカベッドには抗えんかったんよ.....許して.....。
それは置いといて今回はラウラの異常性に関して触れる回でした。
ラウラの扱いをどうするか少し悩んでおりますが、取り敢えずぼちぼち決めないと不味いですよね....。
どうしよっかな。
何かご意見があればコメントいただけると嬉しいです!(露骨なコメ稼ぎ)
あっ、それとそろそろ休暇が終わりそうなのでいつも通り不定期投稿になりますが失踪はしませんのでご安心を。
.....休暇中も投稿ペース変わらんだろ、というかむしろ遅くね?とか言わないでね。
「ソラを駆ける衛士」世界の歴史解説について
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そんなんは後でいいから続きはよ