ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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今回は早めに書けたぜい!
あっ、書くと確実にダレて長くなりそうだったので残念ながら鈴&セシリアVSラウラ戦は全カットです。
お許しください。



第四十三話

しとしとと雨が降り花壇では紫陽花が咲き本格的な梅雨が来たのだなと感じ始めた頃。

事件は起きた。

 

アリーナで鈴とセシリアの2人がボーデヴィッヒに敗れ、挙句負傷したのだ。

見かけほど大したことはないが大事をとってタッグトーナメントは出場停止となった。

ボーデヴィッヒには当然危険行為をおこなったとして処罰を受ける、はずだった。

ドイツ国内のマスコット部隊としても人気のある黒兎隊の隊長。

若く可愛らしくそれでいてクールな様は国内人気があり、重い処分はただでさえ乱れている国内世論にとってよろしくないと軽い処分で済ませるようにドイツ政府からの要請があった。

また、ドイツの国内情勢の悪化を望んでないイギリス、フランス、ポーランドなどのドイツ周辺国並びにEU各国からも同じような要請があった。

独立している機関といえど国連傘下の組織に過ぎないIS学園にとって常任理事国やG7などの影響力の強い国からの要請は無碍にできない。

結果としてボーデヴィッヒは軽い謹慎処分で済んだ。

 

 

「それで?どういった経緯でボーデヴィッヒとやり合うハメになったんだ?」

 

オレは怪我をした鈴を見舞いにかつて世話になった医務室へとやってきていた。

オレの他にヤンや一夏、シャル、箒といったいつものメンバーが来ていた。

鈴にボーデヴィッヒと戦うことになった経緯を尋ねるもムクれたまま「別に....。」と誤魔化すだけだった。

 

「ハァ...。じゃあセシリアは?」

 

埒があかないので今度はセシリアに尋ねるも、こちらもムクれていた。

 

「なんでもありませんわ。」

 

そう話すもやはりどこか不満げである。

隣にいる一夏はそんな様子の2人にどこか呆れたような表情を向けていた。

 

「なんでもないってことはないだろ。セシリアは確かに1週間も満たないうちに決闘持ちかけるようなこともあったけど、何も考えずにケンカは買わないだろ?」

 

「そのことを蒸し返すのはやめてくださいましっ!」

 

セシリアは流れるように黒歴史を掘り返され思わず両手で顔を覆い悶える。

 

「それに2人がそんな目に遭ってるのに何も知らないのは嫌だよ。」

 

心配げに続ける一夏に少々罪悪感が込み上げてくる2人だが、あくまでも強気で続ける。

 

「大した怪我じゃないし、そんな心配されるようなことじゃないわ。」

 

「そうですわ。私とて怪我はしていますが平気ですわ。」

 

そんな強がりを見せる2人に対し、カズキは鈴の腕を触り一夏はセシリアをつつく。

 

「みぎゃっ⁉︎ 」

「はうっ⁉︎ 」

 

2人して情けない悲鳴を上げ涙目でこちらを睨みつけてくる。

そんな様子を見て見舞いに訪れていた5人のうちシャルを除いた4人は呆れ顔を浮かべる。

シャルは何かを察したように少しニヤつく。

 

「カズキ、一夏、そうせっつくものじゃないよ。」

 

「けどよ...。」

 

シャルからの助け船に鈴とセシリアの2人は露骨にホッとしたような表情を浮かべる。

まさか、「一夏やカズキのことを侮辱されたから」なんて言えるわけない。

しかも本人に。

そんな2人の内心を知ってか知らずかシャルはニヤッと笑みを浮かべ横目で2人に視線を向ける。

そして純粋な心配から食い下がる一夏に告げる。

 

「2人とも気になる人には強がりたいからね。」

 

「「なっ⁉︎ 」」

 

救いの手を差し伸べた天使かと思ったら、まさかの手を振り払い一撃を繰り出してきたシャルに驚愕しつつも顔をトマトの如く真っ赤に染めて驚きの声をあげる2人。

そして瞬間、一夏とカズキの2人は互いに納得した。

 

((あぁ、カズキ(一夏)のことか...。))

 

考えていることを察したであろうヤンと箒の2人は思わず半目になってそんな2人を見つめる。

シャルはそんなこと気付かず相変わらずニヤついている。

 

((絶対お互いに自分のことだと思ってないな。))

 

鈴がカズキに惹かれていることは実は周りには既にバレており、気付いていないのはカズキ1人だけである。

そのためヤンと箒の2人は勘違いをすぐに察せたのだ。

 

閑話休題

 

ともかくも顔を真っ赤に染めて“余計なことを"とシャルを睨みつける2人とそれを見て勘違いを加速させる2人、そしてそれを半目で見る2人という中々に意味のわからない状態で膠着した。

しかし、その膠着は外部からの一撃で覆される。

 

「ん?」

 

最初にその異変に気がついたのは箒だった。

隣にいたヤンは箒の変化に真っ先に気が付き声をかける。

 

「どうかしたのかい?」

 

「いや、何か足音が....。」

 

「足音?」

 

箒の言葉に耳を傾けると、"トタトタ"といった可愛らしいものではなく、"ドドドドっ"というまるで馬でも走ってるかのような重い足音。

それも複数。

箒とヤンの会話にその場の周りも気が付きそちらに意識を向けた直後、ドアが吹き飛んだ。

 

「「「「「織斑くん(シャルルくん)(センドウくん)(ウォーカーくん)タッグマッチで私と組んでくれませんか⁉︎ 」」」」」

 

飛び込んできた女子学生たちの勢いに全員気圧され、さらにドアが吹き飛ぶという意味不明な状況に混乱に陥る一同。

ちなみに割合的には一夏>シャルル>>ヤン>>>>カズキである。

だが、そんな中でも飛び込んできた女子学生たちは

「私が早かった!」「いやいや、私が!」「ついでにデートにでも...。」「「「この不埒ものを叩き出せっ!」」」

などと揉めていた。

 

そんな有様で少し間が空いたことで混乱しつつも少し冷静さを取り戻した一夏が先手を打つ。

 

「ごめんみんな!俺はシャルと組むから、な!」

 

「う、うん。そうなんだ、実は前から約束してて....。」

 

一夏の先手にうまく乗っかるシャル。

ここで大半は肩を落として帰っていった。

そして残った者たちは期待を込めた視線をヤンとカズキの2人に向ける。

 

「すまんが、オレたちは警備任務があるからトーナメントには出場せんぞ。」

 

「ごめんね。」

 

そういうと残った全員が肩を落とす。

よく見ると相川や谷本、本音まで肩を落としていた。

 

いや....お前らもドア吹っ飛ばしたのかよ....。

 

 

ドア吹っ飛ばした連中が纏めて千冬に絞られるハメになったり、「「私(アタシ)も!」」とイキリたった2人が真耶によって無慈悲な出場停止を告げられしょげると言ったことがあったが、話すと長くなるのであえて話さないこととしよう。

 

そして今は調べがついたシャルル・デュノア改めシャルロット・デュノアの身辺調査の結果について束からの報告を聞いていた。

 

『結論から言うとね、そのシャルロット・デュノアちゃん、長いね。しーちゃんでいいや。しーちゃんの話してたことは事実みたいだよ。』

 

束の声を聞きながら送られてきたデータを端末で確認する。

 

シャルロット・デュノア(16)

父はアルベール・デュノア、実母はマリア・モラン、義母はロゼンタ・デュノア。

アルベールがパリの大学に在籍している時に酒場で歌手見習いとして歌っていたマリアに一目惚れしてアプローチ、そして交際に至る。

しかし、アルベールの父であるクロード・デュノアに政略結婚を仕組まれロゼンタと婚約をしてしまう。

元々、旧貴族でありデュノア社の社長一族であるアルベールに気後れしていたマリアは身を引き、失踪する。

しかし失踪後に妊娠が発覚。

身を引いたとはいえ愛していた男との愛の結晶であり、唯一残った繋がりを捨てることはできず出産。

その時に産まれたのがシャルロットというわけだ。

アルベールはマリアの失踪に心を痛め悲しみに暮れるも、ロゼンタが寄り添いアルベールの心を救った。

そうして2人は改めて恋に落ち、正式に結婚。

マリアのことを引きずっている事を納得はできずとも理解できるロゼンタはその事を深く責めることはなかった。

しかし、状況は一変した。

マリアが子育てで多忙を極め虚血性心疾患を発症し余命幾許もない重篤な状態となった。

病床の中、自分の死を察したマリアはシャルのことを実父であるアルベールに託すことを決意し手紙をしたためた。

アルベールとロゼンタはマリアからの突然の手紙とその内容に驚愕するも、捨て置く事ができずにシャルロットを引き取ることとなる。

だが不妊に悩んでいたロゼンタにとってシャルの存在は愛する男の子ではあるものの他人の子。

嫉妬心が出てこないはずがなかった。

そして社内情勢の不安定化のストレスもありシャルを罵ってしまったのだ。

その結果、家庭環境はお世辞にも良いとは言えないようだ。

 

「善意から引き取ったんだろうけどそうなっちゃう気持ちはわからなくもないかな。」

 

と、束は語る。

それはそうだろう。

自分には出来ない待望の子供は昔の女の子供。

嫉妬心が湧かないはずがない。

むしろ湧かなければそいつは余程、心が綺麗なのだろう。

 

閑話休題

 

そして最も重要な、なぜシャルは男装してまでIS学園に送られたのかという理由としてはデュノア社内部の動乱が起因していた。

デュノア社は現在、業績が悪化しており重役の一部が会社内部でのクーデターを画策しているらしい。

デュノア社はず設立以来デュノア一族が社長を務める会社で、デュノアの子がいない以上は他のものに任せるしかないはずだった。

しかしそこにデュノアの姓を持つポッと出の子供が現れたのだ。

次期社長と思われていた重役の男が腹を立てない訳がなかった。

そして業績悪化による社長への不審化なども重なりその男への支持は一定数あった。

そこで取られようとしていた対抗策がシャルロットの暗殺。

デュノアの姓を持つものが消えれば自ずと社長になれると考えたのだ。

しかし、あまりの強硬策にアルベールに密告する者が現れ計画を察知されることとなる。

アルベールは愛したいが愛せないジレンマに苦しんでいたロゼンタにこのことを話すと、ロゼンタはある決断を下した。

IS学園に逃そうと言うものだ。

しかし、ただ逃すだけではフランス政府の高官に鼻薬を嗅がせられれば最悪取り潰される危険性があった。

そこで策を練った。

男ということにしてフランス政府が守らざるを得ない状態にすることだ。

このロゼンタの考えを聞いたアルベールの行動は早かった。

すぐに大学時代の友人である内務省の高官へと連絡を取った。

彼もマリアとは親しい関係であり子供がいてその子が生きている事を喜んだ男だった。

男は戸籍と身分証の偽造を二つ返事で請け負うとすぐさま戸籍を改竄し、シャルにISの適性検査を受けさせた。

そしてIS適正ランクAの男性操縦者シャルル・デュノアが誕生したのだ。

 

「これはまた....。」

 

全部読んだオレは思わず嘆息した。

ある種、善意が産んだ悲劇であった。

アルベールもマリアもロゼンタも皆、善意の元に行動していたが全てが悪い方向へと進んでしまっていた。

 

『なんだか悲しい話だよね。ロゼンタさんはしーちゃんを守る為に行動したけど、罵っちゃったこともあっていらない勘違いをしーちゃんにさせちゃってる。それにこの人たちはしーちゃんに何かあった時、全部罪を被ってしーちゃんを守るつもりみたいだね。』

 

本当に良い家族に恵まれたものの様々な事情から勘違いを生み、シャルは愛されていることに気がつけなかった。

 

『それでどうするの?これ全部話すの?』

 

正直言って悩ましい。

全て話して仕舞えばこの家族の覚悟を無駄にしかねない。

ロゼンタさんに関してはこのまま嫌われてる方が良いとすら思ってるのかもしれない。

だが、個人的には気に入らない。

せっかく家族がいるのだ。

義理とはいえ愛を注ぎたいと思っている母親がいて父親にはこんなにも愛を注がれている。

それなのに知らないまま過ごし嫌われているのだと勘違いしたまま過ごすなんて。

家族は共にいるべきなのだ。

失ってから知るなんてそんな思いしない方がいいに決まっている。

 

「束。」

 

『なにさ?』

 

オレはある決意を持って束に話しかける。

 

「この暗殺計画、叩き潰せるか?」

 

『よゆーだよ。』

 

これはオレの我儘でしかない。

ただの独りよがりだ。

けど、せっかく生きているのだ。

愛してもらえているのだ。

何も悪いことはしていない。

それなのに、こんな目に遭うなんてあまりにも理不尽ではないか。

オレたちがかつて呪ったように、彼女にはそんな思いをしてほしくない。

ならば、

 

「......頼む。」

 

『待ってましたぁ!』

 

オレにできることはない。

あとは束に全てを託す。

帰ってきた元気の良い声に思わず笑みが溢れる。

コイツも同じ事を考えていたようだ。

 

『ちなみに報酬は?』

 

「何が欲しい?」

 

善意で行動を起こしたなら「シャルロットの笑顔が報酬」ぐらい言って見せろよと、画面に映るウサ耳つけたアホを見つめた。

 

 

あれからやけに大人しいボーデヴィッヒに嵐の前の静けさのような一抹の不安を感じつつも平和な日々が過ぎた。

 

「増員されたとは言え前回とやることは基本的に変わらん。」

 

オレはガルーダ隊の隊室でダッグマッチトーナメントの警備に関して最終確認を進めていた。

 

「私とチックの配置は基地になっているが基地の直掩ということでいいんだな。」

 

理解してるだろうが再確認してくるクラリッサに「そうだ」と短く肯定する。

 

「前回は基地の防衛すらままならず、時間稼ぎすらできずアリーナは奇襲を受けることとなった。そのため直掩を2機置いて学生の避難までの時間稼ぎを行なってもらう。」

 

オレの説明に望んでいた答えが返ってきたのだろう、クラリッサは満足げに頷く。

しかひ、チックは少々不満げだ。

 

「おい、チックどうした?不満があるなら言え。」

 

「それでは、まずチックという呼び方をやめt「却下」.....。」

 

呼び名の変更を求めてきたので食い気味に却下する。

するとチックの目はさらに細まりこちらを睨みつけてきた。

 

「.......では、もう一つ。」

 

「なんだ?言ってみろ。」

 

「なぜ時間稼ぎなんですか?私とハルフォーフ中尉で撃墜すれば良いじゃないですか。」

 

チックの言葉にため息をつく。

やっぱコイツはチックだわ。

 

「あのなぁ、前も言ったろ?オレたちの任務は警護であって敵の殲滅じゃない。敵の殲滅に躍起になって一機でも逃して学生に被害が出ればオレたちの負けだ。だからこそ避難が完了するまでの時間を稼げって言ってんだ。その上で戦力を集中して敵を叩けばいいんだよ。第一、敵を撃墜なんぞ新兵が吠えるな。」

 

コイツは経験の足りないバカだがアホではない。

言われたことにカチンとは来てるが相手の正しさを理解してぐっと怒りを堪えた。

 

「それが理解できるようになれば半人前だ。励めよチック。」

 

「.......了解。」

 

こっちを睨みつけながらそう答えるチック。

うん、どう考えても了解している奴の態度じゃないね。

まぁ、目付け役としてクラリッサがいるし大丈夫だろ。

 

「さて、改めて確認だ。ヤンは前と同じでオレと一緒にアリーナで警備、アリーナ内警備に関してはイージス隊と共同で行う。クラリッサとチックは基地の直掩、指揮はクラリッサが取れ。」

 

「「「了解。」」」

 

「当警備はかなり強化されてはいるが事が起きる可能性は十分にあり得る。各自、警戒を怠らず襲撃に備えろ。前のような失態は許されない。.......そして何より全員生きて帰れ。死ぬことは許さん。」

 

オレがそう締めると呆れながら苦笑いを浮かべるヤンがツッコミを入れる。

 

「前に死にかけたカズキが言う台詞かい?」

 

「前のは.....いわゆるコラテラルダメージというもので。」

 

「何も誤魔化せてないぞ。」

 

「冷静に返すなクラリッサ。」

 

なんとか言い繕おうとするもクラリッサに冷静にツッコまれる。

そんな状態に思わず笑い声を上げ3人で笑うがチックは笑わずにどこか冷めた目でこちらを見ていた。




はい、てなわけでシャルの背後事情が明かされました。
それとあれだけやらかしたラウラが罰せられないのはおかしいだろという事でコチラの背後事情も書きました。

それと活動報告でも書きましたが、現実世界とは違うこの世界の大まかな歴史をどっかで確実に説明しないといけなくなると思うのですが、年表形式で投稿しようと考えています。
年表形式ならそんなに手間かからないし、割と簡単にできると思うので。
皆さま的にはどうお考えか確認したいのでアンケートを取らせていただきます。


「ソラを駆ける衛士」世界の歴史解説について

  • 年表形式でよろしく
  • 本編で説明よろしく
  • そんなんは後でいいから続きはよ
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