ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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今回は早めに書けました。
40連勤に突入してくれば慣れもしますよね。

では、どうぞ。


第四十六話

「ここは.....?」

 

目が覚めるとそこは目に入ってきたのは白い天井だった。

見知らぬ天井に困惑していると、よく聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「目が覚めたか、ラウラ。」

 

「教官....?」

 

織斑千冬であった。

 

「私は....。」

 

「お、お目覚めか?」

 

教官に今までの行動を謝罪しようと口を開いたそのとき、男の声に遮られた。

 

「よっ。」

 

軽い口調で片手を上げて挨拶してくるのはセンドウだった。

 

「センドウ.....。」

 

「遅いぞカズキ。」

 

「んだよ。コーヒー買ってきてやったってのに、その態度は。....ほい。」

 

センドウと教官はいつも通りといった感じで話をしている。

なぜあれだけの事を引き起こした私は責められないのか、怒られないのか訳がわからなかった。

そんな内心を察したのかセンドウがコーヒー片手にこちらを向いて話を始めた。

 

「今回の一件に関してだがな、結論から言うとお前に責任はほとんどない。」

 

「なっ⁉︎ 」

 

どういうことなのか理解が追いつかない。

責任がない?

そんな訳があるものか!

訳の分からない一方的な嫉妬や怒りで巻き込まれただけの織斑一夏に当たり散らし、あろうことか鬱憤ばらしに他学生を傷つけた。

挙句の果てにシステムに乗っ取られて暴れるだけ暴れた。

そんな蛮行が許されるはずがない。

 

「信じられないよな。ま、これでも飲んで落ち着けよ。」

 

私の困惑が見てとれたのか水を手渡しつつ落ち着くように促してきた。

私は水に口をつけると続きを話すようにセンドウの顔を見て促す。

 

「そんじゃ、はなしていくぞ。今回の一件はな、国防軍の一派による仕込みがあったようだ。お前が暴走したり感情的になったのはコイツが原因だ。」

 

そう言って書類を渡してきた。

 

VT(ヴァルキュリー・トレース)システム、聞き覚えは?」

 

「あるに決まってるだろう。......まさかっ⁉︎ 」

 

VTシステム。

ISの世界大会である"モンド・グロッソ"の優勝者、ブリュンヒルデの戦闘データを記録し再現するシステム。

一見、ただ強いシステムのように聞こえるがとんでもない欠陥を持っていたものだった。

それは一般的な搭乗者では肉体を傷つけてしまうというものであった。

それはそうだろう自分の体、筋肉や関節といった物を自分の意思ではなく、機体の意思で動かすのだ。

それも世界最高峰の動きだ。

そんな動きをされては体がついていけるはずがなかった。

そのため実証実験段階で多くのテストパイロットを負傷させ再起不能にさせてしまった。

極め付けは死亡事故も複数起こしているという点であろう。

結果としてVTシステムの研究は凍結され、国際IS委員会によって禁止され、改訂されたアラスカ条約により国際的に禁じられることとなったのである。

 

このシステムに関して聞かれラウラは察した。

己の機体にVTシステムが搭載されていたのだと。

そしてその考えに至り唖然としてる私に目をやりながら肩をすくめセンドウは語る。

 

「そのまさかだよ。シュヴァルツェアレーゲンにはVTシステムが組み込まれてた。更にタチが悪いのはコイツになされてた改良だ。」

 

「改良?」

 

「改良....とは違うが、まぁいい。簡単に言えばお前の悪感情を増幅させ、それをキーとしてVTシステムが発動するように仕込まれてた。これを作った奴は"イイ"趣味してやがる。」

 

センドウは忌々しげに語る。

しかしドイツ軍の機体であるシュヴァルツェアレーゲンにそんなシステムが搭載されているということは、信じたくないがドイツ軍内部の犯行であることは間違いない。

そしてこの忌々しいシステムにラウラは顔を顰め、教官も忌々しげに顔を歪めた。

 

「それでだ。お前も察してると思うがこれはドイツ軍内部の犯行だ。中核となったのはリヒャルト・フォルグ中将、聞き覚えは?」

 

「....ある。」

 

リヒャルト・フォルグ中将。

ドイツ軍内部ではよく知られた空軍における反IS過激派筆頭の人物である。

しかしながらISの有用性には一定の理解を示しているし、国防の為には必要であるとも語っていた。

そんな人物がこんな短慮な行動に出るとは信じられなかった。

 

「それと、ゾフィア・クラーラ。コイツは?」

 

「私の主治医だ。」

 

「お前から多少の薬物が検出されたのはコイツが原因だ。」

 

「まさかっ!.......いや、だが。」

 

ゾフィア・クラーラは私の主治医であり、精神的に不安定だった私を支えてくれた女医だ。

信じたくはなかったが、薬物注射をされた可能性は否定できなかった。

精神安定剤は効きやすいようにと、何回か注射で処方されたことがあった。

特に精神的に不安定になっていた時期だったから気にしてなかったが、その話を聞くとその時しか考えられない。

 

「薬物以外にいくつか催眠暗示の形跡も見られた。.....わかったか?お前にほぼ責任がないことが。」

 

「..........ああ。」

 

責任がないとはいえ、信頼していた人物に裏切られ、信頼していた組織に裏切られた。

責任云々以前にそのことが私の心に重くのしかかった。

教官からの信頼を、織斑一夏に注がれる愛を欲した結果がこれかと自嘲する。

 

「ま、変に拗らせまくったお前もお前だがな。」

 

「おいカズキ!」

 

自嘲し落ち込んでいる私に対して空気など読まずにそう言い放つセンドウを教官が諌める。

 

「いいんです、教官。この男の言ってることは事実ですから。」

 

「ラウラ...。」

 

教官が心配そうに私を見る。

私にそんな価値などないのに。

 

「それで私の処分は?」

 

責任がほぼ無いとはいえ処分は降りるだろう。

あれだけの事をやったのだ。

できるだけ重い処分をと思っていると、センドウはいつもと変わらない声色で口を開いた。

 

「処分?ねぇぞ。」

 

「は?」

 

「だからお前に対する処分はねぇよ。」

 

愕然としているとセンドウは軽く笑いながら続けた。

 

「ただでさえ面倒な状態のドイツにこれ以上ダメージを負わせる気はないし、唯一全力で叩こうとしてきたフランスに関しては"ちょっとしたネタ"があったからそれで黙らせた。」

 

軽い口調でそう語るセンドウに対して思わず声を荒げる。

 

「バカなっ!何の咎めもなく元の生活に戻れとでも言うのか!....こんな事をしでかした私に戻れる場所などっ!」

 

そう叫んでいるとセンドウは黙って指を差した。

そちらを見ると花瓶に花が生けられていた。

 

「これ、は....?」

 

「そいつはな、鏡が持ってきたもんだ。ほら、ISの教導を専用機乗りがやった時あったろ。あの時にお前が対応した学生の鏡ナギだよ。」

 

鏡、正直あまり覚えていないがセンドウの口ぶりからクラスの女子だということがわかった。

 

「少なくともお前が何事もなく帰ってくる事を望んでる奴は5人いるぞ。」

 

「え?」

 

「オレにヤン、一夏にシャル、それに鏡。あ、あと....。」

 

センドウが指を折りながら名前を上げていく。

私が帰ってくる事を望んでいる?

しかもその中には戦った相手であり理不尽な憎しみを向けた相手である織斑一夏すらいた。

 

なぜ?

 

そう思っていると病室の扉が勢いよく開いた。

そこには肩で息をしながら普段は整えてあるが今はボサボサになっている短い黒髪の女性がいた。

 

「クラリッサ?」

 

私が名前を呼ぶと勢いよく顔をあげ瞳を潤ませ、駆け出してきた。

 

「ラウラ隊長っ!」

 

そして私の名前を呼ぶと勢いよく抱きついてきた。

 

「よかった......!心配したんですからね....!」

 

涙を流しながらそう言い私を抱きしめるクラリッサ。

そんなクラリッサを見ていると心が温かくなる。

そしてふと、頬に熱いものを感じた。

 

「あれ、わたし...。」

 

涙だった。

涙などいつぶりだろうか。

とめどなく溢れる涙を止めることなど叶わず、私は泣いた。

周りに教官とセンドウがいることなどすっかり忘れて声を上げて泣いた。

 

ああ、私を見て愛してくれる人は既にいたのだと、そう実感しながら。

 

 

ずびっ!

 

2人して鼻を啜るドイツ軍人を千冬と共に微笑ましげに眺めている。

 

結局のところラウラは愛に飢えた子供で、そして愛を受けたいと思った相手が千冬だったようだ。

試験管生まれで軍人になる事を最初から定められていたコイツは自分を律し大人になろうとした。

だが、子供として生きれなかったが故に愛に飢えた。

飢えすぎてしまった。

結果、コイツはあそこまで追い詰められ暴走した。

少しは責任があるように言ったが、はっきり言ってラウラ・ボーデヴィッヒという少女に罪はない。

悪いのはこんな状態にしてしまった周りの大人だ。

 

「ほら、これで鼻でもかめ。」

 

2人して鼻を啜るドイツ軍人が可笑しくてつい笑みが溢れてしまうがらとりあえず持っていたティッシュを渡す。

自分達の有様を見て笑われていると察したのか、顔を赤くしながらクラリッサはオレの手からティッシュを引ったくるように奪った。

オレから奪ったティッシュで鼻をかむと、流石に憧れの人の前で泣きじゃくったことが恥ずかしいのかボーデヴィッヒは顔を赤くしながら俯いた。

そんな姿はまさに年相応で微笑ましかった。

初めて会った時はまさしく真面目な軍人と言った感じで、警戒心丸出しの鋭いナイフのような雰囲気を醸し出していた。

それがこれだ。

微笑ましく感じてしまうのも仕方ないだろう。

 

「.......何をニヤニヤしている。」

 

顔に出ていたのかボーデヴィッヒは睨みつけてきた。

まぁ、相変わらず顔が赤いから威圧感なんて何もないんだが。

 

「悪いな。バカにしてる訳じゃないんだが、ついな。」

 

「.....バカにしてるだろう。」

 

オレの言葉に対して疑いの目を向けてくるラウラ。

だが事実なのだからこれ以上、言い訳のしようがない。

 

「ホントだって。....あのクソ真面目軍人のオーラを醸し出してた奴がこんな年相応の女の子みたいになってんだぞ。ニヤつくのも無理ないだろ。」

 

「きさっ.....。年相応の女の子、か.....。」

 

オレの言葉にやはりバカにされてると感じたのか噛みつこうとしてきたが、その言葉は途中で途切れた。

オレを含め周りの皆はどうしたのかとラウラを見つめる。

するとラウラはおもむろに口を開いた。

 

「......センドウ、国連軍の知り合いで"フー"という男を知ってるか?」

 

「フー?」

 

思いつく限りでは国連軍にそんな知り合いはいない。

 

「いきなりどうした?今回の一件の関係者か?」

 

「いや、違う。.....その、嘘だと思うだろうが聞いてくれ。」

 

そう言い話し出した内容は驚くものであった。

VTシステムに取り込まれていた時に、"フー"と名乗る男と出会った。

そしてその男に諭され外に出る決断を下した。

どうやらそいつはオレを知ってるらしく、恐らくはオレの知り合いだということだ。

 

「いや、フーなんて本当に知らんな。」

 

結局は何もわからないが取り敢えずボーデヴィッヒ救出の一助となったことは間違いないので心の中で礼を述べておいた。

 

「それでだな、そのフーに言われたんだ。"1人の女の子"として生きてみたらどうだ、と。」

 

「なるほど。」

 

"1人の女の子"ねぇ。

確かにコイツは今まで自分を軍人としてのみ見てきたのだろう。

そしてそうあれかしと生まれた存在でもある。

それが故に他者に対しても軍人としてでしか評価することができない。

そりゃ対人関係も狂う訳だ。

それに対する解決策として"1人の女の子"として生きるというのはアリだろう。

軍とは関係のない学園にいる今だからこそ。

 

「....私は"普通"の女の子というものを知らん。だから、だな.....。」

 

何かにつまり言い淀むラウラ。

取り合えす全部話すまで待とう。

千冬もクラリッサも言葉の続きを聞くべく姿勢を正した。

そしてラウラが息を吐くと口を開いた。

 

 

 

 

「私に"恋“というものを教えてくれないか?」

 

 

 

 

「.............ん?」

 

「「は?」」

 

しばしの硬直ののち、ようやく出た声はなんとも間抜けな声だった。

千冬もクラリッサも目をこれでもかと開いた状態で固まっていた。

 

「いや、待て待て。おかしい。」

 

「何がおかしいのだ?フーが言ってたぞ普通の女の子としての生き方の例で"恋をする"と。」

 

オレは混乱の極みに陥るも変な事を言った自覚のないであろうラウラは不思議そうに続ける。

先程心の中でフーに送った礼は取り消しておこう。

 

「ハァ、あのな。恋ってのするもんじゃないんだ。落ちるもんなんだよ。」

 

「落ちる?」

 

「そうだ。ふとした仕草とかそこにいる姿をついつい目で追ってしまったり、一緒にいるだけで心がポカポカする。あとは、その人のことをずっと考えてしまう。そんな相手が恋に落ちた相手だ。...だから、そういう相手がいないのに無理にするもんじゃない。」

 

「そうなのか......。」

 

我ながらメルヘンチックなことを言ってしまったなと少々気恥ずかしさを覚える。

ボーデヴィッヒは早速決心してやろうとしたことができないとわかったからか、目に見えて気落ちしている。

そんな姿に少し罪悪感が湧くが仕方ない。

悪いのはそのフーという奴だ。

 

「だから、まずは軍服もどきみたいなのをずっと着てるんじゃなくて女の子らしく可愛らしい服を着てみるとか、化粧してみるとか、できることからやっていけばいいんじゃないか?それならオレも付き合うさ。」

 

「いいのか?」

 

先ほどまでの気落ちした雰囲気とは打って変わって目を輝かせながらこちらを見てくる。

その姿をクロエに重ねてしまい甘やかしてしまいそうな自分をグッと抑える。

 

「いいとも。だから、これからよろしくな"ラウラ"。」

 

「!.....ああ。よろしく頼む"カズキ"。」

 

オレが手を差し伸べ名前を呼ぶとラウラは嬉しそうにはにかんで手を掴む。

これで、ひとまず安心か....。

 

 

 

 

 

「スケコマシめ...。」

「ラウラ隊長を毒牙にかけおって....。」

 

なおジト目向けながら変なことほざくこの2人は無視するものとする。

 

 

さて、ここからは裏の話をしよう。

ラウラに責任がなくとも他の方面には無論責任が発生する。

 

まず中核となったリヒャルト・フォルグ中将は"運悪く"ベルリンで交通事故に遭い死亡した。

かわいそうなことにトラックに轢き殺されたらしく即死だった。

VTシステムの搭載に関与したフォルグ中将の部下28名はバラバラに左遷されるか予備役へと編入、数名が移動中に"事故死"した。

 

続いてゾフィア・クラーラに関してだが、ギャンブル癖があり多数の借金をしていたようで、フォルグ中将が借金を肩代わりする代わりにラウラに対する薬物投与や催眠暗示を行ったらしい。

最終的に医師免許の剥奪、違法薬物の所持により逮捕、現在は拘禁されている。

 

また、これに付随する形で政治家や官僚の"大掃除"により見逃されていた国防軍内部の掃除"が行われた。

この大粛清により多くの軍人が予備役編入となるか、軍事機密の持ち出しや一部の金銭の不正使用等によって軍法会議送りとなった。

鞭だけですませば国防軍の離反を招く可能性あるため新型機の配備や部隊再編のための予算などはしっかりと付けられた。

こうしてドイツ国内はひとまず落ち着いた。

 

 

いやはや、"事故"は怖いねぇ....。




さて、どうだったでしょうか。

今回はラウラに関する後始末がどうなったかがメインの回でした。
ラウラのおかしな精神状態は本編に書いてる通りVTシステムによる精神汚染、薬物を利用した催眠暗示が原因です。
まぁ、普通の精神状態で軍人やってきた人間があんな暴挙でないよねって話です。
それとラウラは"愛"に飢えてる人物だと私は思っていて、そこを利用されたと考えています。
そしてそれを反映する形で今回の話を作りました。
まぁ、内容込みで色々不満があるかもしれませんが二次創作なので許してください。

それと個人的な話になりますが前書きにも書いた通り40連勤を突破しました。
楽しいね(白目)
そんなこんなで色々ありますが今後ともよろしくお願いします。

あ、それと今のところ6000字を目安に執筆してるのですが文量って増やしたほうがいいですかね?
ご要望があれば感想欄か、コメ稼ぎに付き合いとうないという方はTwitterのDM等で教えていただけると幸いです。

それでは!
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