やっと金銀コンビの話を終わらせられる...。
長かった....。
「一夏、シャル、ちょっといいか。」
ラウラが目を覚ましたという一報を聞いた翌日、俺とシャルはカズキとヤンに呼び止められた。
「どうしたの?」
シャルが何事かと尋ねると、軽い口調でヤンが答えた。
「"例の件"に関して色々と伝えることがあってね。」
"例の件"。
つまりはシャルに関する事が調べ終わったんだろう。
そう思いシャルの方に目線をやると、シャルもこちらを向いていた。
互いに頷いて改めてカズキ達の方を向く。
「そんじゃ、とりあえず部屋行こうか。」
♢
俺たちの部屋に着くと机用の椅子を引っ張り出してベットの前に並べ、そこにカズキ達は座った。
俺とシャルはそれに対面するようにベッドに腰掛け話を促した。
「そんじゃ、調査の結果だがな。シャルの言ってることは概ね合ってた。」
「概ね?」
カズキは結果から言ってきた。
が、その文言の中にあった"概ね"という単語に引っかかり聞き返す。
「ああ。確かにシャルの言った通り、アルベール・デュノアが主導して男性操縦者に偽装してスパイとしてIS学園に送り込んだようだ。」
やはりシャルの言っていたことは間違いなかったようだ。
だが、それならわざわざ"概ね"なんて言葉を入れる必要はないはず。
そんなことを思ってるとカズキが口を開く。
「この一連の行動はひとえにシャルを守るためだったようだ。だから"概ね"だ。」
「え?」
カズキの言葉にシャルはポカンと何を言われたのかわからないといった様子で口を開けていた。
「どうやら社内の一派でシャルの存在が自分の障害になると思った奴がいたらしくて、お前を消そうとしてたみたいだ。」
さらに驚くような情報が飛び出してきた。
消す?
つまりシャルは殺されそうになってたってことか?
「それも厄介なことにそいつは、フランス連合っていう政党と繋がりがあってな。その辺の工作でもあったみたいで、まぁ厄介。」
「なっ⁉︎ 」
そんな⁉︎
ならシャルは国の一派からも命を狙われてたってことかよ⁉︎
俺は内心、怒りで一杯だった。
シャルは普通の1人の女の子で巻き込まれたにすぎない。
それなのにそんな理不尽な理由で命を狙われてたなんて。
「じゃあ、僕は...。」
「まぁ待て。結論を急ぐな。」
沈んだ表情で何か言おうとしたシャルを止めカズキは話を続けた。
「政党って言ってもな、一枚岩じゃない。その中にも派閥があってな。知り合いに依頼してそこを突いてみたんだ。その連中、どうやらだいぶ黒いことを裏でやってたみたいでな今頃国家警察に身柄を拘束されてるよ。」
「え?」
さらに情報が出てきた。
良い情報なのだが、スケールがデカくて先ほどまでの怒りから少し冷静になった。
「加えてデュノア社の例の一派は可哀想なことに"事故"で中核の人間が死んだらしくて、もうそんな力は無くなったみたいだ。」
事故死とは可哀想だと思う反面、シャルの周りの環境が改善されたことに俺はホッとした。
「"事故"ってのは怖いね。」
そう笑いながらヤンは話すがなぜか少し寒気がした。
にこやかに笑っているように見えて目が全く笑っていなかったのだ。
俺はそんなヤンから目を逸らしカズキの方を向く。
「ってことはシャルは....。」
「もう大丈夫だ。近々正式に女子として通うように連絡が届くだろう。」
「よかった!やったなシャル!」
「うん!」
シャルが女の子として過ごすことができるということが俺にはとても嬉しく大きな声をあげて喜ぶ。
シャルも先ほどの沈んだ表情とは打って変わって嬉しそうに笑っていた。
「でも、お父さんが守ろうとしてっていうのはどういうことなの?」
ひとしきり喜んだ後にシャルはカズキに尋ねた。
確かにそこは俺も気になっていた。
カズキは小さく息を吐くと話し出した。
「正直、話すかは迷った。これを話すとデュノア夫妻の決意をふいにすると思ったからな。」
「決意...?」
「そう、決意だ。たとえ自分達がシャルに嫌われようとも、逮捕されることとなったとしてもお前を守るという決意だ。」
カズキはそこで話を一旦切るとお茶を一口飲んで全てを語り始めた。
それはシャルの父親であるアルベール・デュノアの恋の話でもあった。
シャルの実母であるマリアと恋に落ち、交際をするもアルベールの父によって政略結婚を組まされる。
その状況でマリアはアルベールを想い身を引くも、妊娠していた。
マリアは悩んだ末にシャルを産み女手一つで育てた。
しかしそんな中、病に倒れたマリアはシャルをアルベールに託すことに決めた。
義理とはいえ子供が出来ることに義母のロゼンタは喜ぶも、様々な状況で不安定になっていた時期であったこともありシャルを罵ってしまう。
以降、シャルは嫌われていると勘違いしてしまい仲を修復することはできなかった。
そんな気まずい生活が続く中、シャルを消そうとしてる企みを知ったロゼンタは率先してシャルを逃す策を考え、アルベールもそれに賛同し手伝った。
そして生まれたのが現在のシャルの状況であるとのことだった。
「そんな....それじゃあ....。」
その話を聞いたシャルは途中から涙を流していた。
愛されてないと思っていた自分は愛されていて、何より守られていたことを自覚したからだろう。
俺はそんなシャルの背中を静かにさすり慰める。
「ま、要はお前は愛されていたんだよ。」
カズキのその言葉が止めとなり、シャルの瞳からはとめど無く涙が溢れた。
「あぁ....うん。ボクは愛されてたんだ....。」
そんなシャルをカズキもヤンも優しい瞳で静かに見守った。
♢
「グスッ.....。ごめんみんな....。」
しばらく経って泣き止んだシャルは男3人に泣いてる姿を優しく見守られていたのが恥ずかしかったのか、若干赤くしながら謝った。
「気にすんなよ、シャル。取り敢えずこれで一安心だな。」
「うん。カズキもヤンも色々手を回してくれてありがとう。」
そんなシャルに俺は声をかける。
シャルは2人に礼をするが、ヤンは首を振った。
「よしてくれよ。僕は何もしてない、ほとんどカズキがやってくれたんだ。」
「おいおい、そんなこと言うならオレだって知り合いにぶん投げただけだぞ。」
互いに謙遜し合う2人が面白かったのか、思わずシャルが吹き出す。
「ふふっ...。でもボクを心配してくれてたのはホントでしょ?ありがとね。」
シャルがそう言って微笑むとヤンは少し照れてたように頰をかいた。
そこで俺はふと思い出したようにカズキに問いかける。
「そういえばカズキ。」
「ん?」
「シャルの性別に関してシャルに連絡がくるのはわかったけどさ。学校側にはなんで説明すんるんだ?」
「あっ。」
俺の疑問に対してシャルは確かにと言った感じで声を上げる。
カズキは、「あー....そのことはだな...。」と言い立ち上がると懐から見たことない機械を取り出し、繋がってるイヤホンを耳に入れて部屋をウロウロしだした。
不審に思ってるとカズキはふと、立ち止まるとコンセントに繋がってる延長コードをおもむろ分解しだした。
「ちょ、カズキ何を⁉︎ 」
その行動に驚いた俺は思わず声を上げるが、カズキはこっちを向いて口に人差し指を当てていた。
静かにしろってことか?
俺が疑問に思ってると、分解した延長コードを口元に近づけると大きく息を吸った。
そして次の瞬間。
「ゴラァっ!!!!」
大きな声で怒鳴りつけた。
その声に耳がキーンとなる。
隣りを見るとシャルもビックリしたらしく耳を押さえながら目を大きくして、ぱちくりと瞬きをしていた。
「さて、聞こえてんだろ楯無。5分以内に一夏の部屋に来ないとお前のあられも無い写真を蕪子に渡して密売させるぞ。.....そんじゃスタート。」
そう言うと延長コードから何か抜き出すとパキッと何かを捻り潰した。
そしてコチラに振り向くとすごい清々しい笑みを浮かべていた。
「茶でも飲むか。」
そう言うと電気ケトルのある方へと歩いてお湯を沸かし始めた。
「えっと....一応聞いとくけど今のはなんだったの?」
おもむろにシャルが尋ねると相変わらずニコニコしながら答えた。
「あぁ、楯無が来たらどうせ離す羽目になるから待ってな。」
そう言うと紙コップを5人分取り出してティーパックを用意してお湯を注いだ。
ヤンが立ち上がりコップを取って戻ってくる。
「ほら、2人とも暑いから注意してね。」
「あ、ありがとう。」
その様子に訳がわからず困惑しながら受け取ると部屋の扉が勢いよく開いた。
危うく零すところだったがなんとか耐えた。
「はぁ.....はぁ.....。」
そこには息を切らして肩で息をする水色の髪を乱れさせた更識会長の姿があった。
その顔は怒り半分、焦り半分といった感じだった。
「カズキ....くん.....どういう....つもり....かな?」
息も絶え絶えに問いかける更識会長にカズキはニコニコしながらコップを手に持って歩いてくる。
「お疲れさん。ほらお茶。」
そう言いコップを差し出すがそのコップからは湯気が上がっている。
絶対に疲れ果ててる人間に渡すものではない。
「息切らしてる人間に、そんな熱いもん渡すなぁ!」
その行動にやはり憤る更識会長であったがカズキは満面の笑みでこう返した。
「嫌がらせって最高だよね。」
「殺すっ!」
そう言って今にも飛び掛からんとする更識会長に白けた目を向けるヤンが、淹れたばかりのお茶に口をつけるとボソッと呟いた。
「人の部屋に盗聴器仕掛けてた人に怒る権利があるとでもお思いで?」
「............なんのことかしらねぇ。」
「今更誤魔化せる訳ないだろバカ。」
ヤンの発言に対し目を露骨に逸らし誤魔化す更識会長に先ほどまで満面の笑みだったカズキが一瞬で真顔になってツッコむ。
というか今"盗聴"って言ったよな....?
「あの.....更識先輩。」
「何かしら織村くん?後私のことは楯無で結構よ。」
俺が声をかけると助かったと言った表情でコチラを振り返る更識、もとい楯無先輩。
「あ、じゃあ楯無先輩。」
「何かしら?」
「盗聴ってどういうことですか?」
「...........。」
楯無先輩から「あっ、ヤッベ」っという心の声が聞こえてきそうなほど露骨な焦り顔になる。
隣に座るシャルも首を縦に振って俺の問いに同感してることを示しながら楯無先輩を見つめる。
「そ、それは...」
言い淀む楯無先輩に耐えきれなかったのかカズキが口を開く。
「要は最初からシャルのことを怪しんで目を付けてたんだよ。ついでに下手なことしないための監視。」
「ちょっと!そんな全部言うことないでしょ!もうちょっとオブラートとというかか...なんか言い方あったでしょ!」
「ねぇよ。アホか。」
「あ、アホ⁉︎ 」
「ポンコツ会長の方がいいか?能無し先輩。」
「やめてちょうだい!私のミステリアスな会長ムーブが....。」
「とっくに壊れとるわポンコツ会長。」
まるで漫才みたいなやり取りをしているが、サラッとととんでもない話が出てきていた。
つまり最初からシャルのことを全部把握してたってことか⁉︎
それなら情報収集を依頼した人ってまさか⁉︎ (勘違い)
「ま、そんな訳だ。正直何もする気なかった人間を監視してあまつさえプライバシーを侵害しまくってた権力者がここにいるんだ。...オレの言いたいことわかるよな?」
ムガーッと声を上げながら殴りかかる楯無先輩を抑えながら話すカズキ。
楯無先輩の可愛らしい外見も相まって一見微笑ましい光景だが、段々と頭を抑える手に力が入ってるのか楯無先輩がもがき始めていた。
そんな光景に顔を引き攣らせながらも楯無先輩を呼び出した目的を思い出した。
「そ、そうだ!楯無先輩お願いがあります!」
「お願いをする前に助けてっ!」
お願いをするべく楯無先輩に声をかけるが、本人は助けを求めているが敢えて無視する。
「シャルの性別に関する学園側への弁解を手伝ってもらえないですか⁉︎ 」
「その前に助けてちょうだい!」
「お願いします!」
「敢えて無視してるわよね!織斑くん実は結構怒ってる⁉︎ 」
楯無先輩の助けをガン無視しながらお願いする。
不憫に思ったのかシャルが声を上げた。
「さ、流石に先輩が可哀想だから助けてあげても....。」
「そ、そうよ!この状況を見てまずは救おうって思わないの⁉︎ あんなカッコよさげな事言ってたのに!」
なんだか図々しくてイラッとするが、頭を鷲掴みにされアイアンクローを極められてる様は流石に哀れに思えてきた。
「カズキ、その辺で....。」
「そうだな。」
そう言って力を緩めようとするカズキに一安心し、改めてお願いしようとした時。
「そういえば昨日の夜、盗聴のためにヘッドフォンつけてたんだろうが、顔を赤くしてたけどなんだったんだ?」
「え?あぁ、それはシャルロットちゃんがオナ.....。」
ふと思い出したように尋ねたカズキの疑問に楯無先輩は答えようとするも途中で止まった。
おな....?
何かと思ってシャルの方を見ると顔を真っ赤にしながら俯いていた。
?
恥ずかしがってるのか?
「え?シャル....お前....。」
「やってないよっ!」
「いやでも楯無会長がうっかりみたいなノリで口滑らせかけてたし...。」
カズキは心底驚いた様子で目を丸くしながらシャルに尋ねる。
そんなカズキに涙目になりながらシャルは否定するが、ヤンは引っ掛かっているようでツッコむ。
そんな中俺は思案していた。
なんの話をしているのか理解できなかったからだ。
おな....やる.....恥ずかしがる。
まさか....?
そこで俺は理解した。
理解してしまった。
「あ....。」
顔を赤くしながら否定しているシャルを横目で見る。
その瞬間、脳内にはいつぞやに見たシャルの裸が思い出される。
そしてなまじしっかりと覚えていたために浮かび上がってきた構図はあまりにも生々しく....。
「あれ?ちょっと!一夏⁉︎ 」
シャルの驚いたような声を最後に意識が飛んだ。
♢
楯無のアホが口を滑らせてシャルの秘め事を暴露する事件により哀れな犠牲者が2名(冤罪(真偽不明)により恥ずかしさのあまりベッドにて死んだシャル、思春期男子には威力が凄まじすぎたのか顔を真っ赤にしてひっくり返った一夏)が出てしまったが、楯無はシャルに関する学園側への対処に関して了承してくれたためなんとかその場は収まり解散した。
「ありがとな楯無。」
「何よ、いきなり。」
風にあたるために屋上に出てタバコを咥えたオレは楯無に礼を言う。
楯無は頭を締め上げられたことを根に持っているのか、若干拗ねたように唇を尖らせていた。
「いや、あんな茶番に付き合った上で手伝ってくれてよ。」
「....なんのことかしら。」
「最初からシャルのことを助けてやる気だったくせによく言うよ。」
オレはそう言って紫煙を吐き出す。
「シャルが入学してきた時点で全部調べ上げてたんだろ?」
オレがそう言うと楯無は大きくため息を吐く。
「全部お見通しって訳ね…。そうよ、最初から知ってたし助けるつもりだった。助けることに関してはカズキくんが全部やっちゃったからやることはなかったんだけどね。」
楯無は「まぁ、私たちでもあそこまで綺麗に片をつけれはなかったけど」とぼやきつつ肩をすくめる。
するとコチラに体を向け改まったように真剣な表女に切り替えた。
「だからね、私はカズキくんに感謝してるのよ。私が守るべきな大切な学園の生徒を助けてくれて、ありがとう。」
それは素直な感謝の声だった。
だがその感謝の言葉はむず痒く、何より自分に向けられるセリフではない。
最初は見なかったことにして見捨てるつもりでいたのが正直なところだ。
厄介事なんてごめん被るし、敵の可能性のある奴を助けるなんてやりたくなかった。
助けるために調べ上げるように道を変えたのは一夏だ。
アイツがいなければ間違いなくオレは彼女を見捨てていただろう。
「やめてくれ、感謝なら一夏に言え。」
なんともバツが悪く顔を顰めてしまう。
だがそんなオレを楯無の赤い瞳は逃さなかった。
まるで全て見通されてる、そんな気分になった。
「カズキくんのことだから最初は見捨てるつもりだったんだからとでも思ってるんでしょ?」
「....ああ。」
考えをズバリ言い当てられる。
やはり見透かされている。
そんなオレに楯無は優しげな微笑みを浮かべる。
「確かに最初はそう思ってたかもしれないけど織村くんの言葉で動いた。100%見捨てることしか考えてない人はいくら説得されても助けようなんて思わない。だからカズキくんの中には"助けたい"って気持ちがあったんじゃないの?」
そんな訳ない。
オレは見捨てるつもりだった。
一夏に感化されたのは間違いない。
一夏の眩しさに眩んだだけだ。
そう考えるも、それすらも見透かしているかのように楯無は続ける。
「それに、結局行動して助けたのは事実。その事すら否定する必要はないでしょう?」
それでも
「それでも、やっぱりオレは感謝はされるべきではないさ。」
そう言うと再びタバコを吸う。
楯無はそんなオレを悲しそうな顔で見つめてくる。
「カズキくん.、貴方は....いや何でもないわ。」
楯無は何か言いたそうに口を開くが出そうになった言葉を飲み込んだ。
それを見守る月は少し欠けていた。
シャルはオナ地さんだった?(突然のサノバ
シャルの一件が事実だったのか冤罪だったのかは皆さんのご想像にお任せします。
いかんな、こんなネタやるとまたお気に入り登録減りそう...,
P.S.仕事が佳境を迎え忙しくなっているのでまたまた更新が遅れる可能性(いつものこと)がありますか許してください....何でもしますから......。