今回は今までで最長の9000字です。
今話はカズキ回です。
数日などあっという間に過ぎ気付けば週末になっていた。
待ち合わせの場所に遅ればせながら到着すると聞いてた数より増えていた。
眼帯をつけたよく目立つ銀髪の兎がそこにはいた。
「遅いぞカズキ。」
「........いや、なんでいんの?」
相変わらずどことなく偉そうな口調で胸を張るのはラウラだ。
オレは何故かいるこいつの姿を視認すると同時に大きくため息をついた。
するとクロエと相川が申し訳なさそうな顔しながら近寄って来て、耳打ちをした。
「昨晩、私達がクロエちゃんに似合う服の話してたら、たまたま通りかかったラウラさんに声かけて話振ったんだけど...。」
「そういった私服をほとんど持ってないと仰っていたのでついでに買いに行こうって話になってしまって....。」
そう申し訳なさそうに話す。
なるほど、どうせ今着ている私服とやらもクラリッサのヤツが買った服なのだろう。
ラウラの服装は少しフリルの付いた黒のミニスカートに少しかっちりとしたカーキ色のシャツを腕まくりしてネクタイを付けている。
....間違いなくクラリッサのセンスだな。
「どうだ?」
そう思っているとオレの視線に気がついたのだろう若干胸を張りながら自慢げにそう言ってきた。
「似合ってるがそういうこと言うなら自分で服選べるようになってから抜かせ。」
「んなぁ⁉︎」
若干イラッとしたため少しキツめにそう言ってやると、驚いたような声を上げながら肩を落とした。
「お父様!そういうのは素直に褒めて差し上げれば良いのですよ!....ラウラさんお父様は素直じゃないだけですから、そう気を落とされなくても大丈夫ですよ。」
すかさずクロエがプンスカとでも擬音が付きそうな勢いで説教をして、その後ラウラへのフォローを始めた。
すると、鈴や相川たちが「ふふっ」と笑いながらコチラへ来た。
「言われてるわよカズキ。...ぐふっ!」
半笑いになりながら近寄ってきた鈴はそう抜かしながら最後は耐えきれずに吹き出していた。
鈴は丈が短めのエプロンワンピースでインナーに黄色いシャツを着ている。
快活な鈴にはお似合いだろう。
相川はデニム素材のホットパンツにオレンジのインナーに白いノースリーブを上から着ている。
爽やかな色合いは夏にピッタリだろう。
「鈴、笑わないの。センドウくんがクロエちゃんに敵わないのはいつものことじゃない。」
相川は鈴を止めに入るが、その口元が若干緩んでることは見逃していない。
完全に揶揄われてる状態に思わずため息を零す。
そんなこんなしていると車が一台やって来た。
「すみません大尉!遅れてしまいました!」
空いている窓からそう謝ってくるのは新見翔兵長。
実は車を借りようと准将に話に行ったときに、そんな大所帯で行くなら護衛を1人ぐらい連れてけと言われていたのだ。
そこでいつも通り稲田に頼もうとしたのだが、ちょうど用事があって行けないそうだ。
そこで稲田が自分の後輩に行けるか確認を取ってみると言い、紹介されたのがこの新見兵長だ。
近接格闘徽章を持ついわば近接格闘のエキスパートであり、デパートのような民間施設での護衛としては最適であった。
「いや、ベストタイミングだ。さ、お前たちは後ろに乗り込め。....ラウラお前もだ。」
新見に遅れていないことを伝え宥めると皆に乗り込むように伝える。
無論ラウラもだ。
ここまで来てしまったのならしょうがない。
元気な返事と共に乗り込んでいく彼女たちを見て自分も助手席へと乗り込んだ。
♢
車はレゾナンスへと向かう。
後ろでは谷本を筆頭に元気な声が車内に響いていた。
そんな中ふと思い出したように新見に声をかけられる。
「あ、そうだ大尉。」
「どうした?...それとシャバに出てんだからだから階級をつける必要はないぞ。」
「シャバって....。」
いつまでも階級で呼ぶ新見に名前で呼ぶように言うと、でてきた"シャバ"という単語に思わず苦笑いを溢していた。
すると軽く頭を振り「そうではなく」と前置きと共に話し出した。
「実はアメリカ本国よりお届け物が届いてまして、そこのダッシュボードの中に手紙と一緒に入っています。」
「届け物?」
全く身に覚えの無いものに疑問を覚えながらもダッシュボードを開く。
するとそこにはラッピングされた包みと手紙が入っていた。
手紙の差し出し人を見るとよく覚えのある人物だった。
「なんだ、ナターシャか....。」
かつてエレメントを組み共に戦った戦友であるTACネーム"ゴスペル"ことナターシャ・ファイルスであった。
一年も経って無いというのにやけに懐かしく感じつい微笑んでしまった。
「そんなに微笑むとは....本国の恋人さんですか?」
オレの態度が不思議だったのだろう。
新見がそう尋ねて来た。
しかしその質問が飛ぶと同時にピンっと空気が張り詰め、後部座席が途端に静かになった。
何か間違いを言ってしまったのかと戦々恐々しだした新見を放って置くのも面白いかと思ったが、巻き添いを食いそうなのでやめておく。
「ナターシャとはそんな関係じゃ無いさ。」
「そ、そうなんですね...。」
「ナターシャは元同僚で友人だ。....アイツめわざと何も言わずに送りつけて来やがったな。」
そう言いながら日除けに付いている鏡をチラリと見ると、後部座席の面々は若干怪訝そうな顔をしつつも一先ずこの答えに納得したようで会話を再開していた。
取り敢えず一息つき手紙を開く。
『カズキへ
久しぶりね。
IS学園でのアナタの話は聞いてるわ。
一度落とされた話を聞いた時は驚いたけどその後は無事に学生生活に戻ったそうで安心したわ。
私は前も話した通り"銀の福音"のテストパイロットとして充実した日々を送ってる。
アンタとの変な噂が流れてるせいで相変わらず恋人はできないけどね。
まぁ、そんなことは置いといて。
今回プレゼントを贈ったのは自分に無関心なアナタがすっかり忘れてるであろう誕生日を祝ってあげるためよ。
少し早いけど誕生日おめでとう。
喫煙者のアナタにピッタリのプレゼントを贈っておいたから大切に使いなさい。
アメリカにアナタが帰って来た時に会って話ができるのを楽しみにして置くわ。
その時にIS学園でどんな事件を起こして来たのかしっかり聞かせてもらうからね。
また会う時まで
親愛なる
ナターシャ・ファイルスより』
相変わらずオレが流した噂が原因で恋人ができてないらしいことに思わず吹き出しそうになった。
それにしても、そうか誕生日か。
ナターシャの言う通りすっかり忘れていた。
ラッピングされた包みを取るとそこには鈍く輝く銀色のZippoライターがあった。
「こりゃいいな。」
真ん中にデカデカと米軍時代のパーソナルマークである星の上で飛び立たんと羽を広げる鷲のイラストが刻まれてあり、裏側の下にはStarkと英語でTACネームが刻まれていた。
オーダーメイドなのだろう。
本当に良いものを貰ってしまった。
ちなみにstarkは「硬い」や「荒涼とした」と言った形容詞なのだが、星がパーソナルマークなのには理由がある。
元々はTACネームに関して悩んでいた時に大統領から「国や体制に立ち向かってまでも子供たちを救い非道を許さないという"硬い"意志が君にはある」と言って名付けてもらったのだ。
そしてアイテール隊に入った時にパーソナルマークを決めてなかったために悩んでいると、「私がデザインしてあげる」と言って来たナターシャに投げたのだ。
結果"star"が入ってるからというのと、アイツが空狂いとでも呼べるほどの空好きであったことでできた半ばこじ付けで完成したマークなのだ。
最初は呆れていたが使ってるうちに愛着が湧き今はすっかり気に入ってしまったのだ。
閑話休題
そんなこんなで良いものを貰い、すっかり気の良くなったオレは新見に声をかけた。
「テキトーなコンビニに寄ってくれ。」
♢
途中コンビニで早速オイルと予備の火打石を買った。
かなり訝しまれたがコンビニがミニストップであったことを良いことにアイスを奢り誤魔化した。
怪訝な視線を受けつつも取り敢えず目的地であるレゾナンスへと辿り着いた。
護衛として新見も着いてくるため計8人という大所帯である。
ゾロゾロと姦しく話をしながらレゾナンスへと入っていく。
すると先頭をズカズカと歩いていく谷本がこちらを振り返ると、全員を見渡しながら声を上げた。
「それじゃあ早速!目的の水着を買いに行こう!」
元気だなコイツ....。
カズキと同じく周りもどこか生暖かい視線を送っていた。
クロエとラウラは目をキラキラさせていたが。
こういう所を見ると同じ素体なだけあって姉妹みたいだなと思ってしまう。
というかラウラのキャラが変わりすぎて若干引いていた。
そしてもう1人違う反応をしている男がいた。
新見である。
彼は買い物の護衛としか聞いておらず、水着が目的など今知ったのだ。
新見はまだ20歳の若者だ。
3、4歳違うとはいえ、実るとこは実り出している美少女たちの水着の買い物に付き合わされるのだ。
冷静でいられるわけがなかった。
全くもって冷静でいられるカズキがおかしいのである。
ドギマギしてるヤツら数人が混じりつつも一行は水着売り場へと向かった。
「それじゃあ早速」と入っていく谷本と鷹月を見送りつつ、待っておくためのベンチを探し出すカズキだったが、鈴に声をかけられる。
「なんで休む場所探してんのよ。」
ジトっとした目線が突き刺さる。
カズキは「コイツ何言ってんだ?」と内心、というか顔に思いっきり出ていたが呆れた声を上げながら確認するように問い返した。
「あのなぁ、オレは男。ここは?」
「水着屋さんよ。」
「誰向け?」
「女性向けに決まってるじゃない。」
あっけらかんと答える鈴に嫌な予感がしていると相川が同じくジトっとした目線をぶつけながらカズキに近寄って来た。
「あのねぇカズキくん。こういうところにわざわざ連れて来たってことは、男性視点の意見が欲しかったり男性側に水着を選んで欲しい時なんだよ。」
若干呆れたような声色だった。
カズキは露骨に嫌そうな顔をしつつ断るための言い訳を考え始めた。
そんな中、新見は「頑張ってください!」と内心エールを送っていた。
とてもじゃないが女性向けの水着コーナーに入っていく蛮勇など持っていなかったからである。
すると戻ってきた鷹月が新見を指差しながらカズキに告げた。
「何も言わずに着いてきてくれる新見さんを見習いなよ。ねぇ、新見さん。」
突然のキラーパスに固まる新見。
思いっきり否定しようとするが谷本に阻まれる。
「しょうがないから新見さんに選んでもらおうよ!」
谷本はそう告げると新見の手を取り水着屋へと引っ張って行った、
新見の思考は止まった。
新見は高校は男子校に通い家の事情で中退し国連軍にきた男。
女性、それも集団とまともに触れ合ったのは中学以来である。
そう!
この男は女性慣れしていない!
なんなら交際経験もない!
生粋の童貞である!
なんとなくそのことを察したカズキは流石に同情が勝った。
決して新見が思考停止して、帰りの足が消えることを嫌がったわけではない。
加えて静かにコチラを見つめてくるクロエとラウラの姿が目に入ったのもある。
特にクロエは選んでもらう気満々だったのだろう、目に見えてしょぼくれていた。
カズキは相変わらず娘に強く出れないのだ。
「はぁ、しょうがねぇな。わかったわかった。谷本は取り敢えず新見を離してやれ。」
そう言うと"してやったり"とニヤリと笑みを浮かべる鈴や舌を出してイタズラっぽく笑う谷本がカズキの目に入った。
若干イラッとするも嬉しそうにしてる相川やクロエを見ていると毒気もすっかり抜けた。
そんな女衆に腕を引かれながら哀れな男2人は店に入ると、ビキニ中心の水着が並んでいた。
カズキの視界の隅にほぼ紐で構成されてるようなものもあり、若干の不安を覚えつつもどうするか悩む。
カズキは始めるとしっかりとタスクを終わらせたくなるタチの人間である為こういう時は割と真剣になるのだ。
「ふむ....。」
カズキは並ぶ水着を見ながらジッと考えに耽る。
鈴ならば胸は小さくともスラっとした細身で足もしなやかで美しい。
だからこそノーマルなタイプのビキニでも良いかもしれないが、スポーティなものも中々に捨てがたい。
相川だと一見そんなに胸がないように見えるかもしれないが、着痩せするタイプだ
ISスーツはボディラインが出るので胸の大きさはその時になんとなく把握した。
クロエとラウラは小柄で可愛らしいわけだからフリルのついたビキニが似合いそうだ。
「ねぇ....センドウくん。」
そう考えに耽っていると相川から声をかけられる。
振り向くと水着を片手に持つ相川がいた。
「その...試着するから見てもらえないかな...?」
少し恥ずかしそうにそう言う相川に少しドキッとしてしまうが、極めて冷静を装い返す。
「....別に構わんぞ。」
改めてIS学園の女子のレベルを思い知らされる。
普段は制服で接しているのもあり、おめかししてる状態で恥ずかしそうに言われるとグッとくるものがある。
束のように恥ずかしげもなくおっぴろげにしてるようなヤツや、ナターシャやイーリスのように悪友感覚の女しか周りにいなかったせいか、耐性が少し下がっている気がする。
「ちょっと待っててね。着替えるから。」
そう言いカーテンの向こうへと消えて行った相川を見送る。
店内のBGMが小さめだからか、服を脱ぐときの衣擦れの音がよく聞こえる。
見えないという状況はなんとも人の欲情というか、妄想を駆り立てる。
(オレはガキかっ⁉︎)
妙な鼓動を感じ慌てて頭を振り思考を吹き飛ばす。
すると、目の前のカーテンから相川が顔だけ出してきた。
「.....どうした?」
「.......笑わないでよ。」
そう言うと相川は試着室のカーテンを開けた。
そこにいたのは浅緑のフリルビキニに身を包み、恥ずかしそうにモジモジとしている相川の姿だった。
カズキはその姿に思わず固まる。
「どう....かな....?」
恥ずかしそうにそう問われるも反応が一瞬遅れてしまう。
「.......いいと思うぞ。」
「今の間はなにかなっ⁉︎」
「いや...今のは....。」
反応が遅れてしまい返事の前に空いてしまった間に対して相川は不信感を抱く。
相川からすれば水着を見てる時に谷本にニヤつきながら「試着して感想でも貰えば?」と今着ている薄緑のフリルのついたバンドゥビキニを手渡されてしまい、お膳立てを受けてしまったからこそ出た行動であり自発的な行動ではない。
加えて周りの女子(特に代表候補生)の高いレベルを普段から見せつけられており自分にあまり自信が持てていないのだ。
そのため少々疑心暗鬼になっているのだ。
そんな事とはつゆ知らず、一瞬見惚れてしまったカズキは反応が遅れてしまったのだ。
まるで言い訳をする様に口籠もってしまったカズキは、相川の不信感を振り払うべき腹を決めた。
「.....似合ってて少し見惚れちまったんだよ。」
「......へ?」
思ってもみない言葉に思わず硬直する相川。
カズキはその反応に割と小さな声だったので聞こえなかったのかと勘違いしてしまった。
「だーかーら!思わず見惚れちまったんだよ!」
「そ、そんなに大きな声で言わなくてもわかったよ!」
そう言うと相川は素早くカーテンを閉める。
すると隣の試着室のカーテンが勢いよく開いた。
「なにイチャついてんのよ!」
鈴である。
オレンジ色のスポーティなビキニで身を包んで堂々と立っていた。
ただ、鈴の勢いのある登場にカズキは一周回って冷静になれた。
「鈴か...。はぁ、イチャついてねぇよ。」
「初々しいカップルみたいなことしてたクセに!」
「ッ⁉︎ 」
カズキが「してねーよ」と短く返そうとすると、相川の入っている試着室からゴンっという鈍い音が聞こえた。
「清香?大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ!それよりセンドウくんは鈴の水着見てあげなよ!」
鈴が心配そうに声をかけると少し慌てたような感じの声が聞こえた。
「それもそうね....。で、カズキ。アタシの水着はどう?」
そう言われカズキは改めて鈴の姿を見る。
はスポーツタイプであるがボトムはその綺麗な脚をしっかりと出している。
最初に考えていたイメージにも合致しよく似合っている。
「ああ。かなり似合ってるな。普通のビキニも良いがお前の場合はこっちのスポーティな感じのがよく似合うな。」
「割としっかりと見るのね。」
「そりゃな。」
「それで大した反応ないのは若干イラッとするけど。」
「真面目に感想言ってそれは酷くね?」
「それとこれとは別なの!」
「.....さいですか。」
普通に論評したのに責められ釈然としないが、取り敢えず満足したらしくカーテンを閉めた。
中で着替え始めたのを音で察する。
「あの、お父様。」
クイっと裾を引かれるのと共に聞こえた声に後ろを向くとラウラとクロエが立っていた。
「どうした?」
「私たちも試着するのでぜひ感想をと....。」
「わ、私は別に...。」
「これも女の子らしくなる第一歩です!」
「そ、そうか。」
クロエは試着した時の感想を求めているようだ。
こういったものは初めてであろうラウラが少々気恥ずかしそうに口籠るが、クロエがラウラの手を掴み諭す。
若干気圧されながらラウラは了承した。
やはりこう見ると姉妹にしか見えない。
「出たよ〜。...あれ?2人とも試着するの?」
「はい!せっかくなのでラウラさんの試着した姿もお父様に見てもらおうと思いまして。」
「なるほどね。ほら空いたから使いなよ。」
着替え終わった相川が帰着室から出てきた。
相川に勧められクロエはラウラの手を引いて入っていく。
「....ん?2人で入るのか?」
「ラウラさんはこういうの着慣れてないでしょうからお手伝いが必要でしょうし。」
「私は1人でも...。」
「それで結局着られなくて後から頼む方が格好悪いですよ。」
2人で入るのに疑問を持ちカズキが尋ねると、ラウラの試着の手伝いをするためのようだ。
世話を焼かれるのが嫌なのか断ろうとするも、クロエに諭され諦めて一緒に入って行った。
すると入れ替わるように鈴が出てきた。
「おまたせ〜。って2人とも何してんの?」
2人並んでポカンと呆けていると鈴から不思議そうに声をかけられる。
「いや、クロエがな...。」
「相変わらずの親バカね。」
「うっせ。」
クロエが入って行ったことを伝えようとすると、最初の単語だけでなんとなく察したらしく呆れたように鈴に言われる。
「そういえば、癒子と静寐は?」
自然な流れでカズキを相川と挟むように立った鈴は、谷本と鷹月が見当たらない事を尋ねてきた。
カズキは「ほれ。」という一言と共に顎で差した。
そちらを見ると新見を弄ぶ....もとい新見に水着を選んでもらう谷本と鷹月の姿があった。
「完全に遊ばれてるわね....。」
「あはは....。」
哀れなものを見るように鈴がそう零すと、相川から乾いた笑いが出てきた。
2人の反応は尤もだろう。
どう見ても純情な男を弄ぶ悪戯娘2人にしか見えないのだ。
そんな有様に思わずため息を吐いていると、目前のカーテンがシャッと開いた。
「....どうでしょうか?」
若干の照れが入りつつも胸を張りながらクロエは自分の水着姿を見せる。
デザインはシンプルで縁が青い線、メインの色は白。
何より特徴的なのは胸の前で結ばれた青いリボンだ。
「可愛い〜っ!」
「可愛いじゃない。」
「ありがとうございます!」
相川と鈴が続々と感想を述べられ、嬉しそうに微笑みながら感謝を伝えるクロエ。
その視線はカズキへと向かう。
「よく似合ってるじゃないか。...そうだ、孤児院のみんなに送りたいから写真撮っても良いか?」
「う〜....恥ずかしいですが構いません!」
カズキは素直に褒めたのち、束に共有すれば喜びそうだと思いつくとスマホを取り出す。
クロエは少しの逡巡の後に覚悟を決めた。
パシャリと一枚写真を撮ったところでカズキはふと思い出した。
「あれ?ラウラはどこだ?」
「え?」
カズキの言葉にキョロキョロとクロエが辺りを見渡しやがて目線が上に向かった。
「あっ!ラウラさん何してるんですか⁉︎ 」
ラウラはわずかに死角になってる試着室の天井に張り付いて視界から消え去っていたのだ。
「ラウラさん降りてきてください!」
「は?上に張り付いてんの?」
「どんだけ水着姿見せたくないのよ...。」
クロエの言葉に困惑していると、ラウラが素早い身のこなしで降りクロエの背後に隠れる。
「なぁ、クロエ...。私はこの姿を見せなければならないのか...?」
「もちろんです!そうじゃないと試着した意味がないじゃないですか。...ほら!」
ラウラがうわずった情けない声を上げるも、クロエに一蹴されスルッと前に出されると背中をトンと押される。
「あう」という情けない声と共に出てきたラウラにカズキの両隣から息を呑む音が聞こえた。
「うぅ...そんなに見ないでくれ....。」
恥ずかしそうにモジモジとするラウラは、フリルが特徴的な黒いタイサイドビキニだった。
トップスは前でリボンが結んであり、ボトムにも可愛らしくフリルが付いていている。
全体的に可愛らしいデザインなのだが、何より顔を真っ赤にしながら照れている姿が普段とは違いすぎて、いわゆるギャップ萌えという状態に陥っているのだ。
「も、もういいだろう!」
「あ、ラウラさん!」
「私にこのような可愛らしいものはやはり似合わんのだ!」
思わず固まってしまった3人に勘違いしてしまったのだろう。
ラウラがカーテンを勢いよく閉めてしまう。
中では軽く揉めてるような声と共に、水着を脱いで着替えているのであろう衣擦れの音が聞こえる。
「......びっくりしたね。」
「.....信じられる?アレ、アタシとセシリアを嬉々としてボコボコにしてたのよ。」
普段とのギャップが激しすぎてカーテンが閉められてからようやく感想が出てきた。
特に鈴は勝負して負けた相手の可愛らしく恥じらう姿が信じられないようだ。
そんな中、カズキは何故かおもむろにクラリッサの顔が浮かんだ。
(そういえばアイツ、いつぞやにギャップ萌えは最高とか言って力説してたことあったな...。)
クラリッサがラウラに入れ込む理由をなんとなく理解したカズキであった。
結局この後、耳まで真っ赤にしながら涙目で出てきたラウラを宥め、全員試着した水着を購入した。
ちなみに新見は谷本、鷹月コンビの猛攻により持久走でもしたかの如く疲れ果て目が死んでいた。
男に囲まれた灰色の青春を送ってきた生粋の童貞には辛かったようだ。
哀れな....。
いかがだったでしょうか!
今回は服装や水着をどうするかで頭を悩まし、イメージが浮かんでも言語化するのに時間がかかり、かなりの時間を要しました。
挙句どこかで切ろうにもキリが悪く長くもなってしまいました。
カズキ回は前後編となる予定ですので次回もカズキの話です。
それでは次回またお会いしましょう。