本当に申し訳ない。(某博士並謝)
「だーれだ?」
大胆に抱きついているからであろう背中に感じる柔らかい感触。
そしてよく聞き覚えのある無邪気さを感じる声色。
目に貼りつけられた手を握り、視界を確保するとこちらを向き愕然とした表情で固まる千冬たち。
声の時点で察してはいたが質問に対する答えを言うべく口を開く。
「......頭のイかれた爆乳クソウサギ。」
「むっ...ほぼ悪口で構成されてるのは流石に嫌なんだけど。あとセクハラだよそれ。」
「なら悪く言われないように日頃の言動を考え直すことだな....束。」
心外とでも言いたげな声を聞くと後ろを振り向き答え合わせをする。
「やっはろ〜!わざわざ会いに来ちゃった!」
思った通りそこには特徴的なうさ耳をつけ、スタイルの良い体を惜しげもなく見せびらかすビキニに身を包む束がいた。
いつもの挨拶を満面の笑みで放つ。
「束っ⁉︎ 貴様なぜここに⁉︎ 」
事前連絡なしに機密の塊みたいなやつが陽気に現れたことに思わず顔をひくつかせていると、千冬が驚きの声を上げる。
箒や一夏といった顔見知りは驚愕の表情で硬直し、それ以外の生徒は半信半疑といった感じでざわついていた。
そんなことを意に解することもなく束は千冬に笑顔で手を振っていた。
「久しぶりだね、ちーちゃん。元気にしてたかな?」
「あ、ああ。....ではなく何故ここにいる⁉︎ 」
そんな呑気な束に一瞬毒気を抜かれそうになるが語気を強めた上で改めて疑問をぶつける。
そんな千冬に対し怖気付くこともなくいつも通りの声色で応える。
「んー、そこのすぐ無茶しちゃうお馬鹿さんの様子見かな。」
その言葉に周りの全員の視線がカズキに向く。
鷹月に至っては「やっぱり....。」と溢しながらジトっとした目を向けているため、少し勘付いていたようだ。
鈴と清香に至って呆然と硬直している。
しかしそんなことは一旦置いておいて眼前にいる馬鹿ウサギの頭を鷲掴みにする。
「ひょっとして怒って...る?」
「ああ。」
「馬鹿って言ったことは謝るから許してよ〜。」
「いいだろう。」
鷲掴みにしている右手の力をさらに込める。
「ねぇ、許してくれるっていう割にはなんか力が強くなってあだだだだだ⁉︎ 痛い痛い痛いぃぃいいいいい⁉︎ 」
悶絶する束に視線を合わせ質問を投げかける。
それはもう"イイ"笑顔で。
「おう束よ。オレを馬鹿って言ったことは許してやるがよ、なんの連絡もなしにここに来たのはどういう事だぁ?」
答えれる様に力を緩めると涙目になりながら説明しだした。
曰く、不知火用の新武装と追加パッケージのセッティングのためと箒用の"とある物"を持ってきたとのこと。
「なるほどね。」
「わかってくれたなら良かったよ!それならとりあえず私に対して行われた理不尽な暴力に対して謝って!」
理由にひとまず納得していると図々しいことこの上ないことを抜かしてきたので、ジロッと束を睨みつける。
「な、なにさ?」
「ここまで来た理由には納得したさ。.......何も事前に知らせることなくここにきた理由は全くわからなかったけどな。」
「あっ.......。」
そう、束の言った理由はここに"来た"理由であり"事前に何も言わなかった"理由ではないのだ。
束の口から漏れた情けない声を聞くと同時に再び頭を鷲掴みにせんと手が伸びる。
その動きに青ざめながらも束は叫んだ。
「こ、この前の約束!」
「約束ぅ?」
「ほ、ほらこの前情報を集めてかーくんに渡した時に約束したじゃん!"一度だけは何しても許す"って!」
半ば忘れていたが、確かに約束はした。
まさか、その時からこれを計画していたというのかと戦慄していると束がニヤつき始めた。
「ひょっとして忘れてたとかぁ~?約束を忘れられるなんて束さん傷ついちゃったな~」
煽られていることはは腹立たしいが忘れかけていたことには間違いないため何も言い返せず眉を引きつかせることしかできずにいた。
そんな中別の声が聞こえた。
「カズキさん落ち着いてください。」
声が聞こえたほうを見ると黒髪を後ろにまとめたビキニ姿の女性がいた。
「ファナまで来てんのかよ…。」
我が家の頼れるお母さん的存在(束は保護者なだけで家事はほぼできないため大半をファナがこなしている)であるファナまで来ていることに若干の頭痛を感じてしまう。
新たな見知らぬ人物の登場に周りはさらにざわめきだし、思わずため息を吐き出す。
「…なぁ、ひょっとしてディーダたちも来てんのか?」
ファナが現れたことに起因する嫌な予感を確かめるべくそう尋ねる。
ちなみにこの間、無視されたことに文句を垂れる束がうるさかったが完全に無視を決め込んでいる。
深いため息の後に飛んできた質問に対して、ファナは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべている。
それは何よりも明確な答えだった。
「…ほかに来てないだろうな?」
さすがにこれ以上は来てないだろうが、万が一来ていると面倒な奴らがいるため念のために確認する。
悪ふざけでしれっと来てそうなホーキンスの旦那は名前を一度は聞いたことがあるであろう有名人だし、イーリスとかが来てる場合には勢いでぽろっと余計なこと言いそうだと、特に来てほしくない人間を思い浮かべる。
まだ他にもいるがファナが口を開いたため思考をやめる。
「えっと…それが…」
「待たせたな同志ッ!」
気まずげに話し始めたファナの声を遮るように声が響く。
聞き覚えのある声とかすかに香るアルコールのにおいですべてを察し、若干の頭痛を通り越し思わず頭を抱える。
「どうした腹でも痛いか?ヴォトカはないがウイスキーならあるぞ。」
「腹痛めてる人間にアルコールを飲ませようとすんじゃねぇよ!そもそもオレが痛めてるのは腹じゃねぇ、頭だ!このアル中!!!!」
オレに真剣な表情でウイスキーを手渡してきたアル中はスヴェトラーナ・マヤコフスキー。
ロシア国内にあった研究施設襲撃を行った際に派遣されたFSBのA局に所属している対テロ部隊の一員でIS操縦者である。
美しい金髪を短髪に切りそろえ、胸は少しばかり束には劣るが整った顔とスレンダーで美しいスラヴ系美人なのだが、たいそうな蟒蛇で水のように酒を飲む。
酒を飲んでも酔っぱらってアホなことはしないが、もともと天然が入っており素面でもアホなことを抜かすため正直変わらない。
ただ飲みすぎて足元が覚束なくなることもしばしばある。
誰かが言った”黙れば美人、話せば変人、歩く姿は飲んだくれ”これが彼女を語るうえで最もわかりやすい文章だろう。
~閑話休題~
「…それで、なんでテメェがいるんだ?」
「なに、いつも通り束に会いに休暇を利用してアメリカに飛んだら旦那に会ってな。それで話を聞けば、束たちが日本に行って貴様を驚かせに行くというじゃないか。私としては…」
頭の痛みを抑えながらラーノチカにどういうわけか聞くと彼女は仰々しく説明を始めた。
ちなみに彼女の言う”旦那”とはホーキンス提督のことだ。
彼女の口ぶりから長くなりそうだし表面上の理由だけ言って終わらせるつもりだろう。
「それで本音は?」
「面白そうだからついてきた!」
話を遮り聞くと短くとても単純な答えが返ってきた。
大きくため息を吐いてしまうが、呆れが理由ではない。
こいつがおもしろそうだという理由のみの場合はたいてい面倒ことを持ってきた時だ。
それは私的なことから公的なこと、つまりはFSBの人間としての言伝や頼みがある場合など多岐にわたる面倒ごとを持ってくる。
正直厄介ごとが増えるのは面倒だが、公的であればこちらに直接的に被害を被る可能性があるときなので邪険にもできない。
「お前なぁ…。」
「まぁまぁ、ディーダたちは懐いていますし道中面倒も見てもらってたんですから、その辺にしておいてください。」
しかしながら厄介ごとを持ってきたであろうことは間違いないので文句の一つぐらい言ってやろうと口を開いたが、ファナがラーノチカを擁護する。
ファナの言葉に渋々ではあったがひとまず引き下がった。
「時間はあることだし、あとでゆっくり話そう。…無論、二人きりでな。」
ラーノチカはそういうと、ウイスキーの入ったスキットル片手に歩いて行った。
”二人きり”という言葉に色めき立つ女子学生に囲まれている現状を放置して、だが。
絶対わかっていてやりやがったな、あの野郎。
入れ替わりでやってきたディーダたちが「父ちゃん」と呼んでしまったことで再び場が騒然となるのだが、話が長くなるし、何よりカオスが過ぎるため割愛しよう。
♢
収拾がつかないほどに騒ぎが広がってる中、そこから外れた一角ではどんよりとした空気になっていた。
鈴と清香である。
さもありなん。
クロエからは聞いていたが自分たちよりもスタイルが良くて年も近く、親密そうな女性2人が現れたのだから。
しかもISに関わる人間なら誰でも知っているであろう"篠ノ之束"(しかもスタイル抜群)と、しれっと2人で会う約束を交わしていったラーノチカと呼ばれていた金髪の女性。
2人は自分の胸元に目をやる。
自分たちでは勝てない....。
どこか確信めいた考えが頭をよぎる。
鈴は頭を振りそんな考えを無理やり吹き飛ばす。
胸は関係ないと言っていたのはほかでもないカズキであったというのもあり、早めに回復ができた。
回復した鈴が隣を見るとガッツリしょぼくれている清香の姿があった。
「清香…大丈夫…?」
「だいじょばない…」
普段の清香からは考えられないほどしょぼくれており、場違いではあるがギャップ萌えを感じたが慌てて慰めにかかる。
「大丈夫だって、他ならぬカズキが胸の大きさは関係ないって言ってたし!」
「ほんと?」
「本当だってば!」
そこまで言ってもしょぼくれから回復しきれない清香に、仕方ないと禁じ手を切る。
「胸の大きさで決まるならアタシに勝ち目ゼロでしょうが!」
ほぼやけくそである。
改めて鈴は自分と清香の胸を見比べる。
自分のは限りなくAに近いBカップだ。(願望)
対する清香はDよりのCカップ(本人談)であり戦力差は明らかなのだ。
そんな鈴による実感と怨念のこもったセリフに自分の考えよりも、憐憫の感情が先行してしまっていた。
「その…なんかごめん…」
「謝んないでよ…もっと悲しくなるじゃない。」
最初とは違う方向性でどんよりとした空気が流れる。
沈黙を破ったのは自分たちよりも年下の女の子だった。
「あの…どうかしたんですか?」
振り向くと自分の首下ぐらいの身長のやや薄い褐色の少女が心配そうにこちらを見ていた。
「だ、大丈夫。何でもないわよ。」
そう言いながら鈴は少女と目線を合わせる。
強がりも混ざっていたため少しどもってしまったのはご愛敬だ。
「でも、心配してくれてありがとうね。」
そういうと少女の頭に手を置いて撫でる。
少し恥ずかしそうにはにかむ少女の構図に清香は微笑ましさを覚えたが疑問が生まれた。
「ところであなたの名前は?」
「私はシャクティといいます。父さんがお世話になっています。」
そう言うと少女はい住まいを正し一礼した。
”お父さん”という言葉に驚いて固まっているとシャクティは慌てたように補足する。
「父さんといっても私たちがそう呼んでるだけで、クロエ姉さんみたいに義理の関係ですらないんですけどね。」
その言葉に以前クロエから聞いた孤児院の話を思い出した。
さっきまで落ち込んでいたせいで気が付かなかったが、カズキの周りにはじゃれつく少年少女の姿がありこの子を含めその孤児院の子供たちなのだろう。
「ごめんね、そんなこと話させちゃって。」
「いいんですよ、気になっちゃうでしょうしなれてますから。」
そう微笑む彼女に申し訳なさがこみあげてくるが、当の本人がこう言ってるため感情が表に出ないようぐっと抑え話を変える。
「カズキに、お父さんに久しぶりに会ったんでしょ。あの子たちみたいに甘えてこなくていいの?」
「あの子たちの中では一番年長ですし、みんなで囲んだら困っちゃうでしょうからいいんです。」
そう言うってはいるが目線はカズキのほうに向かい、かつその瞳はさみしげであり強がっているのは明白だった。
大人びてはいるがやはり親や大人に甘えたい子供なのだろう。
長女であり妹と弟を持つ清香はそんなシャクティを撫でる。
突然頭を撫でられたことに驚いて清香を見上げると、慈愛に満ちた表情で見つめていた。
「偉いねシャクティちゃんは。」
「そう…ですか?」
「そうだよ。それでさ、退屈なら一緒に行かない?」
きょとんとしていると、鈴は相川が何を考えているのか悟ると返事も待たずシャクティを肩車した。
「わわっ⁉…わぁ!!!!」
急に高くなった目線に驚いたが、眼前に広がるきれいな海を見て子供らしい笑顔を咲かせる。
それを相川がニコニコしながら見ていることに気が付くと、恥ずかしそうに頬を染めた。
そんなシャクティを知ってか知らずか鈴が勢いよく声を上げた。
「それじゃあ行くわよ!」
鈴は結局チキって着ぐるみのような水着(ピ○チュウ)をビキニの上から着ている本音のもとへと駆け出した。
なお、本音がピ○チュウで身を包んでいる姿を見たシャクティは大喜びし、喜びのあまり飛び跳ねるほどだった。
そんなしっかり者の少女の姿はしれっとカズキを中心とした集団から抜け出していた束によってしっかりカメラに収められていたのだった。
いかがだったでしょうか。
なんというか相変わらず文章がとっ散らかっているような気がしないでもないですが勘弁してください。
あと話が進まない。
ま、まぁ次回か次々回には話が動き出します。それまで待っていただきたいです。
それと今回新たに登場人物が増えました。
スヴェトラーナ・マヤコフスキー
彼女は本来第一章で出す予定でしたが、その辺の話までやっていると話数がとんでもないことになるので未登場でした。
ロシアのチェルスキー研究所襲撃を長距離打撃群と共同で行い、その際にロシア側が出してきたFSB(連邦保安庁)A局(テロ対策部隊)の一員として出撃したのが彼女です。
ちなみに作中でラーノチカと呼ばれていますがスヴェトラーナの愛称であって誤字ではありませんのであしからず。
それではまた次回会いましょう。