凄まじくお待たせしました。
言い訳に関してはこちらの活動報告に記載してあるのでご覧ください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=316469&uid=223799
こんな長いもの読みたいと思わない方は後書きで簡単にご説明するのでそちらをお読みください。
「ナターシャだと...⁉︎ 」
ジッポライターの開閉音が響いた指令室に、カズキの若干震えた声が響いた。
「はい。申し上げにくいですが大尉のよく知っている方のはずです。」
ザハロフはそんなカズキに改めて事実を叩きつける。
「ナターシャって確か...。」
「ああ、先日の買い物の時にカズキが口にしていた友人の名だろう。」
先日の買い物に参加していた鈴とラウラには聞き覚えのある名前であり、あまりにも残酷な事実に表情が曇る。
周りの者たちもラウラの発言を聞き息を呑んだ。
そんな中カズキはふぅ、と息を吐くと口を開いた。
「アイツが友人だとかは関係ない。こちらに攻撃をしてくるなら叩き落とすだけだ。」
「カズキ⁉︎」
カズキは目に覚悟を宿しながらも表情が抜け落ちた顔で方針を示す。
「オレたちは別に合衆国側からの救助要請は受けてない。あくまでも護衛が任務だ。」
「それはそうだが...。キミはそれでもいいのか?」
「......構わん。アイツも、ナターシャも軍人だ。死ぬことだって覚悟の上だろう。」
「違う。僕が言いたいのはッ!」
カズキはひたすらに正論を話すがヤンは納得できなかった。
彼が友人をその手で殺す覚悟を決めていることが信じられなかったのだ。
"軍人なら死ぬことは覚悟できてるはず"それはそうだろう。
だが、友の手で殺されることを望んでいるわけでもなければ、友がそうなることを望んでいるとも思えない。
そして何よりカズキは無理やり感情を押し殺してそう言ってるようにしか見えなかったのだ。
だからこそヤンはカズキを止めなければと、そう心から思ったのだ。
しかし、ヤンの言葉はカズキに遮られる。
「オレが指揮官だ。命令に従えウォーカー中尉。」
「ッ!..................了解。」
カズキからの言葉は友としての発言でも相棒としての発言でもなく、ただ上官と部下として話していることを示した。
これによりヤンは何も言えなくなった。
上官の命令はたとえどんなに理不尽であっても従わなければならない。
それが軍隊という者だからだ。
「それでは迎撃の方針だが....。」
「ウォーカー中尉、意見具申!」
それならばとヤンは軍として正規のやり方でカズキに意見する。
「.....何か?」
「救出を初期プランとし、第二プランとして撃墜をするべきだと愚考いたします。」
「具体的には?」
「はっ!前回のボーデヴィッヒ学生救助と同じ方法の実施はいかがでしょうか。」
ぶっきらぼうに上官としてヤンに聞き返すカズキに冷静に意見をする。
しかし、その意見を聞いたカズキはため息を吐く。
「貴様は阿呆か?前回は暴走したシュヴァルツェ•レーゲンが近接戦に拘ったからこそ近接ブレードである雪片弍型を叩き込めた。だが銀の福音のコンセプトは遠距離戦闘による単独での対多数戦闘を想定している機体だ。そんなものの前に、いやそれ以前に護衛対象を出すわけがないだろう。....却下だ。」
有無も言わせぬように理路整然とヤンの提案は却下された。
無理があるとはヤンも理解していた。
ダメ元の提案だったがカズキが乗ってくることはなかった。
これではもう無理かと諦めた時、通信士が声を上げた。
「なんだこれ?」
「どうした?」
「いえ、その、よくわからないんです。」
「なんだと?」
どうやら通信が届いたらしく声をかけてきたようだった。
しかし誰かという質問に対しては歯切れが悪く、カズキはイラつきがはっきり分かるような声で聞き返す。
「は、はい。何者かがおかしなことを言っていまして...。」
「なんと言ってるんだ?読み上げろ。」
「はっ。」
イラつきをしっかりと感じ取っていた通信士は、尻すぼみになりながらもよくわからないと発言した理由を説明する。
そして彼のいうところの"おかしなこと"を読み上げる。
『桜花の戦友へ
話したいことがある。』
通信士は以上ですと締めくくり、困った表情を浮かべながら判断を仰ごうとすると、顔を真っ青にさせているカズキの姿があった。
「いったいどう意味なんでしょう.......。!大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ。」
「繋げ。」
「は?」
「繋げと言ったんだ!」
先ほどまでの声色とは違い、何かに焦っているように声を荒げ、みな顔を見合わせて目を白黒させる。
カズキの変わりように理解が追いつかなかったのだ。
そんな中、通信士は通信を命令通りに繋ぐ。
「繋がりました!...モニターに出ます!」
どうやらビデオ通信だったようで、みな設置されたモニターに目を向ける。
特になんの遅延もなく繋がると目元に傷跡のある鋭い目の黒髪の男が映った。
『おっ?繋がったみたいだな。』
ニヤリと笑みを浮かべながら、場に似合わない明るい声が指揮所に響いた。
♢
わざわざカズキがこんな男からの通信を繋げたのかわからないが、ここにいる皆を代表するように千冬姉が声を上げた。
「.....お前は何者だ?」
『ん?....おお、これはブリュンヒルデ殿じゃないですか。お話できて光栄です。』
「御託はいい!貴様は何者だっ!」
千冬姉の疑問に対してあくまでもふざけているような態度を崩さない男に声を荒げる。
そんな千冬姉を見ても表情は変わらず不敵な笑みを浮かべていた。
それどころか肩をすくめ「おー、こわ」などとこぼす余裕さえあった。
『俺が何者か、ね。そこの奴に聞けばわかると思うがな。........なぁ、一樹。』
その言葉に思わずカズキの方に視線を向かわせる。
そこには目を見開きその表情は驚きに固まり、口をパクパクと言葉を出せずにいた。
「.....なん、で?アンタが....隊長が.....。」
『生きてんのかって?俺も聞きたいぐらいさ。』
ようやく絞り出されたカズキの言葉に対し、飄々と肩をすくめる。
隊長という単語で関わりがあったことはわかったが、それがいつのことなのかは俺にはわからなかった。
そんな中、男は申し訳なさそうに顔を歪める。
『.....すまなかったな。』
静かにだが確かに聞こえた謝罪の言葉。
その謝罪の意味はほとんどの人間には理解できなかったがカズキは震える声で問い返した
「......死に損なったのはオレとアンタだけか?」
『ああ。オレが確認できる限りでは、な。』
「そうか。みんな先に逝ったか.....。」
先ほどまでの軽い口調とは打って変わってどこか悲しみと辛さを感じる声。
それに応えるカズキもまた悲しそうに目を伏せる。
俺には何を話してるのかやっぱり理解できなかった。
場違いかもしれないがよく考えるとカズキの昔の話を聞いたことはなかった。
友達だが、カズキのことをほとんど知らないのだとそう理解した。
『そこでお前に提案があるんだ。』
男の声にハッとする。
物思いに耽ってしまっていたようだ。
『お前、俺と一緒に来ないか?』
「....あんたの所に?」
『ああ。....今度こそお前を_』
「ふざけんな....ッ!」
今まで聞いたことのないほどのカズキの怒号。
怒号には驚いたが俺はホッとしていた。
提案を断って俺たちの所に残ることを決めたと思ったからだ。
だが、カズキを見ると手を固く握りしめ血が滴り体は震えていた。
「アンタの所で戦ったよ。戦ったさ!.....だが、それはアンタが死なせてくれると約束したからだ!遅すぎるんだよ!」
"死なせてくれる"
この言葉に固まってしまう。
だが、そんな周りにはお構いなしにカズキは続ける。
「束と出会う前に....いや、せめてコイツらと出会う前ならオレはっ!オレは迷わずアンタについて行ったのに....。すまんがオレは...もう死にたいとは思えないんだ...。」
『......嘘をつくな。お前が生きたいと思えてきたことは嘘じゃないんだろう。......だがな、俺にはわかる。お前の心の奥底では死にたいと思ってる。』
カズキは男の言葉に虚を突かれたように固まる。
言葉が出てこないのか、カズキら口を振るわせるだけだ。
それを見て男は大袈裟にため息を吐くと言葉を綴る。
『確かにお前に生きていたいって感情が生まれたのは間違いないんだろうさ。...けどな、たかだか数人と出会い過ごしただけで、生まれてからずっと続いてきたあの地獄を忘れられるわけがないんだよ。』
「それは...。」
『それにだ、お前の頭の中には残ってないのか?先に死んでいった連中の声が、死に様が。』
「黙れ....。」
カズキの静止の言葉を無視して男は続ける。
『....何よりお前にこべりついたその怨念が、お前を許してくれるのか?』
「黙れぇ!!!」
響き渡る怒号。
カズキから殺意が迸る。
あまりの空気の重さに呼吸を忘れてしまったような錯覚に陥る。
隣いる鈴や箒は肩をびくつかせ少し震えているのがわかった。
『黙らないさ!他ならぬお前が俺に縋った理由だろう!』
男の言葉に対してカズキは画面を睨みつける。
男も静かにカズキを見据える。
その時間は数時間かかっているのではないかと思えるほどに長く感じるが時計の針はほとんど進んではいない。
そんな時間は不意に終わりを告げる。
『....まぁ、いいさ。お前がそう言うなら、いずれぶつかることになる。ナターシャ•ファイルスはリハビリ兼肩慣らしにはちょうどいいだろう。』
「....そうだな。ナターシャの次はアンタだ。遺書でも用意しとくんだな。」
『生憎、遺書を残す相手なんていないんでね。舞台は今後起こる大戦争だ。用意は済ませておけよ。』
「そっちこそ首洗って待ってな。その首を叩き落としてやる。」
♢
カズキの言葉に男はフッと笑みをこぼすと通信を切った。
画面が暗くなると通信士の言葉を聞くことなく、踵を返す。
「シャムロック、チックたちと合流次第出撃だ。
「落ち着けスターク!奴の口車に乗るな!」
カズキのセリフに対してヤンは必死に止めようと言葉をかける。
「もうあの戦争は終わったんだ!キミの戦争は、もう終わったんだ!」
「......何だと?」
その言葉にカズキは今まで聞いたことのないほど低い声を出す。
底冷えするような声だった。
ヤンの言う"戦争"が何を意味するのか2人以外ら誰もわからなかった。
「.....奴とキミの関係は察しがつく。例の部隊の指揮官だろう。キミの言うところの"死神"なんだろ?」
「そうだ。あの人はオレ達の死神だ。」
「だったら、それはまさしく亡霊だ。あの戦争の亡霊だ。キミは亡霊の言葉に誘われて地獄に行くつもりか?」
その言葉が紡がれた瞬間、ヤンは胸ぐらを掴まれ壁に叩きつけられる。
叩きつけられた音と共に肺から無理やり追い出された声が呻き声となって響き渡る。
その音からほどなくガルーダ隊の2人が入ってきた。
「何の音ですか⁉︎....ッ!」
国連軍のジャケットに身を包んだ2人は部屋の光景を見て息を呑んだ。
それからすぐに止めようと駆け寄るが、抑える前にカズキの声が響いた。
「戦争が終わっただと!地獄に行くだと⁉︎」
カズキの叫び声が響く。
その叫び声に2人は固まる。
「オレたちは元から地獄にいるんだよ!わざわざ道を選ばなくとも生き地獄にいるんだよ....。それに、なんつった?戦争は終わっただ?....終わってるわけがねぇだろうが!!」
怒りの感情を隠そうともせずにカズキは叫ぶ。
「テメェとオレとは違うんだよ。テメェは記憶を持ってるだけで経験してねぇ。だから分かり合えるわけがなかったんだ....。テメェにはあんのかよ...アイツらの悲鳴が!断末魔が!運命を呪う声が耳に残ってんのか?発狂した仲間を殺す時の感覚がッ!残ってんのかよッ!....片腕だけになった家族を...抱えて飛んだことはあるのかよッ!」
カズキの声には激しい怒りと悲しみ様々な負の感情がごちゃ混ぜになっていた。
その表情は何かに苦しむように歯を食いしばっていた。
「ッ!...確かに僕は記憶しか持ってない。だがここはどこだ!あの世界じゃないんだ。BETAもハイブもない。あの地獄はここにはない。いつまでキミはカシュガルにその魂を置いているつもりだ!」
あの世界、BETA、ハイブ、カシュガル、何を意味する符号かも理解できない単語が並ぶ。
それだけではなくヤンとカズキがここまで怒鳴り合っているところを初めて見たこともあり混乱はさらに進んだ。
「オレの魂がカシュガルにあるだと....?何もわかってないな。オレの魂はカシュガルになんかねぇよ。オレの魂は京都にある。今もあそこに残ってる。あそこで何もかも失ったんだッ!故郷も、仲間も家族も.....愛した人間さえも....。お前とは違うんだよヤン!オレは死ねなかったんだ。.....お前のように死ねていればどれだけ良かったことか。」
カズキが最後に何か吐き捨てるように呟くと、ヤンは胸ぐらを掴む腕を引き剥がすと勢いよく殴り飛ばす。
「ぐっ!?」
「ウォーカー中尉⁉︎」
殴り飛ばされたカズキは油断していたのか勢いよく尻餅をつく。
そのカズキに馬乗りになりながら抑え込みヤンは叫んだ。
「死ねて良かっただと⁉︎ふざけるなッ!僕は....僕は生きなきゃならなかったんだ!」
「何を....?」
「おい、よせ!シャムロック!」
アリシアが2人の言葉に困惑しながら声を出す。
クラリッサだけは慌ててヤンを止めに入るがそんな事はお構いなしにヤンは叫び続けた。
「リーナは僕を庇って死んだ!そして彼女に生きろと言われたんだッ!....なのに僕は死んだ。リヨンハイヴで何も出来ずに!何も成せずに死んだんだッ!それが良かっただと?ふざけるなッ!」
「やめろヤン!落ち着け!」
"死んだ"その言葉に彼らはさらに混乱が加速する。
目の前で生きて憤ってる人間が己が死んだ事を話しているのだから当然だろう。
そんな中、今にも殴りかからんと振り上げられた腕をクラリッサが必死に止める。
だが、そんなクラリッサなど気にも止めてないのかカズキはクラリッサごとヤンを投げ飛ばす。
「いいに決まってんだろ!仲間に託された思いも、主君に託された願いも何もかも成せなかった人間が生きてていはずないだろうがッ!」
投げ飛ばされた2人が息をつく間も無くカズキは叫ぶ。
だが負けじとヤンも叫んだ。
「その託された願いや想いはどんなものだッ!キミに死ねという願いか?君の戦友は非情だったのか?そうじゃないだろうッ!君は戦友から託された事を忘れてしまっているんじゃないか⁉︎」
「ッ⁉︎ 黙れ!!」
ヤンの言葉に思うところがあったのか少したじろいだ後に苛立ちのこもった声を張る。
しかしお構いなしにヤンは言葉を綴る。
「奪われたものを取り戻す為に!守るべきものを守る為に戦ってたんだじゃないのか?....今まで失い続けてきたというなら、今度こそ守り抜けばいいだろ!救い出せばいいだろ!!その努力もせずに後ろを向き続けて何ができるっていうんだ⁉︎」
「黙れッ!!!」
カズキの今にも泣き出しそうな悲鳴とも取れる叫び声にヤンは口をつぐむ。
「.....テメェこそ、忘れてんじゃねぇのか?」
「....何をだ?」
「"世界はいつだって残酷で、クソッタレの運命を押し付けてくる"。今まで救えた命がいくつある?......守れたものがどれだけある?」
「それは....」
「ねぇんだよ。救えたものも守れたものも、何一つねぇんだよ。.....そんな奴が二兎追ったところで何も得られるわけが無いんだよ。」
"二兎を追う者は一兎をも得ず"
カズキからしたら今まで何度も経験してきたことだ。
ヤンは心当たりがあったからこそ何も言い返すことができず、拳を握り締め俯いた。
そんなヤンに静かに告げる。
「ウォーカー中尉、貴様とのエレメントは解消する。以降は待機しろ。」
「待てカズキ!感情だけで判断するな!第一欠員分のエレメントはどうするつもりだ?」
カズキの言葉に慌ててクラリッサが止める。
クラリッサからすればあれだけ信頼し合い戦ってきた2人が、急に仲違いしたようにしか見えなかった。
それは紛れもない事実なのだが、例えそうであったとしてもヤンがかけた場合小隊の定員を割る上、カズキのエレメントが欠けるのだ。
「ハルフォーフ中尉、これは決定事項だ。覆す気はない。....出撃は30分後、用意を済ませ、03、04両名は集合せよ。」
そう言い切ると返事も聞かずにカズキは部屋を後にした。
♢
「ヤン、大丈夫か?」
「......大丈夫さ。」
カズキが出て行ったのち、クラリッサはヤンに声をかける。
ヤンは俯いていた顔を上げると、無理して作ったような笑顔で一言返す。
ヤンの笑顔は誰から見ても大丈夫とは思えない引き攣った笑顔であり、ただただ痛々しかった。
そんなヤンの姿にクラリッサもアリシアも言葉を失う。
クラリッサは下手な慰めは傷つけるだけだと考え、ヤンの肩に手を置くと何も言わずにアリシアを連れて部屋を出て行った。
2人がいなくなった部屋で誰もが言葉を選ぶ中、簪はヤンの正面に近寄ると手で彼の顔を挟み込む。
「いきなり「ヤン。」....。なんだい?」
いきなり顔を挟み込まれたヤンは口を開くが、簪が名前を呼んでそれを遮る。
しっかりと彼の目を見つめながら。
ヤンはそんな彼女の視線に居心地が悪そうに目を逸らす。
「ねぇ、ヤン。私、前言ったよね。あなたの貼り付けたような笑顔が嫌いだって。」
「そう...だったね....。」
「ヤンが何を抱えているのか私にはわからないし、無理に聞き出すつもりもない。」
簪の言葉は静かになった部屋によく響いた。
「けど、苦しい時は苦しい事を口に出してもいいんだよ。悲しいことや辛いことも吐き出したっていいんだよ。...私とヤンは"友達"なんだから。」
そう言ってヤンに微笑みかかると、ヤンの表情は完全に崩れた。
そしてまるで何かに懺悔するように跪いた。
「僕は...僕はね。カズキの、過去を少し知ってる。その上で想像はついているはずだった...。」
気づけばヤンは涙を流していた。
「アイツは強い心を持っていて、いつまでも過去に囚われていた僕なんかとは違うんだと....そう思い込んでいた。」
「ヤン....。」
弱々しく啜り泣きながらポツポツと語る友達の姿に一夏は思わず彼の名をこぼす。
一夏にとってはカズキもヤンも強くて優しくて、千冬とは違う自分の憧れの存在でもあった。
そんな彼の、彼らの先ほどのぶつかり合いと、この弱々しい姿に大きな勘違いをしていたことに気がついた。
彼らをどこか遠い存在で何も恐ろしい事のない存在だと思い込んでしまっていたのだ。
それに気づいた一夏は、自分のことが無性に腹立たしくなり奥歯を噛み締めた。
「でも、カズキも僕と同じだった。あの世界に、あの戦争に囚われたまま生きていたんだ。どれだけ悔やんでも、嘆いても何も現実を受け止め切れずにいたんだ。.....10年以上かかってようやく受け止められた僕が、2年も経ってないカズキを責めることなんて出来ないはずなのに...。」
ヤンは自分を責めるように言葉を続ける。
そんな彼の言葉に一夏はヤンの側により、視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「ヤン。....教えてくれないか?お前とカズキが抱えてる""について。」
「一夏!」
2人の喧嘩に出てきた理解できない単語の数々。
一夏はそれがなんなのか聞き出そうとしていた。
そんな一夏に鈴が責めるように制止する。
今、眼前のヤンは弱りきってる。
会話の節々の感情からヤンにとっても苦しい記憶であると感じれるものをそんな状態のヤンから聞き出すつもりなのかと。
「わかってる!....けど、それがなんなのかわからなくちゃ....カズキを止められない。」
「それはっ....そうかもしれないけど。」
鈴は一夏の言葉に悔しげに言葉を詰まらせた。
鈴もカズキを止めたい。
だが、今まで一度だって見たことのない彼の姿に、なんと声をかければいいのかわからなかった。
カズキの過去をほとんど知らないからだ。
知っているのは精々、昔婚約していた大切な人間が"いた"ことぐらいだ。
そんな2人に「すまない。」と呟き、項垂れた。
ヤンはカズキのことを喋る気はないらしい。
一夏はさらに頼み込もうとするがヤンの悔しそうな表情を見て何も言えなくなった。
いかがだったでしょうか。
カズキとヤンの二人の認識のズレ、戦いの中から平穏な世界にきてしまった存在と、残酷な世界の記憶を持っている存在。
噛み合いそうで噛み合わない、致命的なズレ。
これは絶対に存在していると思いしっかりと書き上げたい場所でした。
上手く書けてるかは分かりませんが気に入っていただけると嬉しい限りです。
ここからはしばらく話は暗いまま続きます。
苦手な方はご注意ください。
本題の言い訳ですが、簡単に言ってしまえば仕事に忙殺されていました。
何十連勤もしており数分前のことが記憶から抜け落ちているほど疲労していたため、書く体力が全くありませんでした。
そのため反動により休暇中はストレス発散にひた走り書く時間を確保できていませんでした。
結果的に書かない期間が長くなりスランプに陥るという状態になっていました。
仕事の方は落ち着いてきたので、少しはマシな状態になるでしょう。
最後に、更新が大変遅くなってしまったことお詫び申し上げます。
大変申し訳ありませんでした。
それでは言い訳の活動報告ではなく、次話にてお会いしましょう。
p.s 感想をもらえるとモチベの向上に繋がると同時に作者が狂喜乱舞します