ソラを駆ける衛士   作:タリズマン

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新年あけましておめでとうございます。

12/31日 23:30から翌朝08:00まで仕事だったタリズマンです。
2024年中にもう一話投稿したかったのですが間に合いませんでした....。

新年のご挨拶は活動報告で行っておりますので、そちらもご覧ください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=321529&uid=223799


第六十一話

突撃を仕掛けつつチラリとレーダーを確認すると、ラーノチカ達は撤退を開始したようだ。

嫌にクリアな頭で考える。

 

時間稼ぎなら消極的にするべき。

普通ならそれが正しいが、そうは出来ない。

援護なしの現状では敵の得意な交戦距離でやり合うなんて自殺行為だ。

近接戦に持ち込んでも1対1に持ち込まれて他の2機で追撃されては時間稼ぎにならない。

 

乾いた唇を、ペロリと舐める。

 

それならこっちの得意な交戦距離に持ち込んで落とされる危機感を与え、自身を確実に仕留めなくてはならない"敵"とする。

 

「喰らえやァ!」

 

赤外線誘導に切り替えたミサイルを敵にばら撒く。

無論それを回避するため敵機は散会する。

当たるとは思ってなかったため、肩に積んだミサイルポッドを素早くパージすると勢いそのままラプターに斬りかかる。

 

ラプターはまともに受けようとせずにひらりと躱そうとするが、近接戦主体ではないこいつが回避することはわかっている。

そのまま勢いに任せ長刀を手放し放り捨てると、左腕の短刀を逆手に持ち叩き込む。

 

一撃は入ったが致命傷ではない。

 

それならもう1発。

 

そう考えたが、首筋がヒリつくのを感じ短刀を手放して少し距離を取る。

すると先ほどまでいた位置に弾丸が降り注いだ。

 

「チッ!」

 

出来ればもう少しダメージを与えたかったが、欲を出せば即座に狩られるだろう。

そのまま無傷のラプターは銃撃を加えてくる。

 

「ぐぅ!」

 

何発か被弾してしまい苦悶の声を上げる。

だが動きを止めるわけにはいかない。

追われているというのもあるが、銀の福音が弾幕攻撃の予備動作をしていたのだ。

回避のために勢いよく高度を下げる。

すると眩い輝きと共に銀の福音から白い光弾が放たれた。

 

「チクショウ!」

 

次々に降り注ぐ攻撃に思わず悪態を吐く。

しかしそんな悪態など関係なく、先程2人に大ダメージを与えた高威力の弾幕が降り注ぐ。

それも周りに展開していた複数機を狙うためではなく、今や1人になったカズキに対してのみ降り注ぐ。

 

それを認識したカズキは加速した機体にすぐさま逆噴射で制動をかけ反転する。

全身の骨がミシミシと軋み悲鳴を上げる。

 

「ぐうぅぅぅうううううう!!」

 

獣のような声を上げながら必死に耐える。

こちらを追いかけて同じように加速していたラプターとの距離は、一瞬とも言える時間で一気に詰まる。

すかさず長刀をコールすると両手でしっかりと握りしめる。

こちらの考えに気がついたのか、追いかけていたラプターは右に機体を傾け回避しようとする。

しかしラプターの判断は少し遅かった。

 

「おせぇよボゲがァ!!」

 

わずかに右に逸れたラプターに対し上段から右に振り下ろす。

勢いを殺せないまま接近してきたラプターの左腕に命中。

切った音というより打撃音と言った方が近いであろう鈍い音が響き渡る。

散った火花と共にラプターの左腕が弾き飛ばされた。

 

一撃を与えたことを喜ぶ間もなく眼前には銀の福音から放たれた無数の光弾が迫っている。

すぐさま瞬時加速で右に回避しそのまま海面へ降下。

チラリと後方を確認すると光弾がじわじわと距離を詰めてきていた。

視界いっぱいに広がる海面と高度計を確認する。

 

600...500...400...300...200...100...今ッ!

 

海面スレスレで降下をやめ水平飛行に移る。

当然の如く体にはとてつもない負荷がかかるが、狙い通りほとんどの光弾が海面に突入した。

だが、ふぅと息を吐いたその時、弾丸がカズキに降り注いだ。

 

「ぐぅ!?───クソがッ!」

 

回避を試みたが回避しきれずに数発被弾してしまう。

撃たれた方向を見ると、そこには短刀を突き刺したラプターがいた。

短刀を引き抜いたラプターはそのステルス性を活かし、カズキが他2機に注力していた隙に一旦距離を取り忍び寄っており、センサーで探知ができていなかったのだ。

しかもそれだけではなかった。

後方からカズキとすれ違ったもう1機のラプターが迫っていたのだ。

上方と後方を取られ、それだけではなく海に叩きつけられなかった光弾も迫っている。

 

───詰み

 

はっきりとこの2文字がカズキの脳裏をよぎった。

だが、まだその闘志は消えていない。

 

「時間稼ぎにはもうちょい暴れなきゃな...。」

 

そう呟くと真っ直ぐ上方へと高度を上げる。

カズキから見た正面には発砲してくるラプターがいるが、それは不知火の機動性を活かし機体を滑らせたりロールさせたりしながら必死に回避する。

無論、補助腕が装備している突撃砲は牽制射を行う。

とはいえ全てを回避できるわけもなく被弾する。

肩や足、腹。

ありとあらゆるところに回避しきれなかった弾丸が突き刺さる。

絶対防御のおかげで物理的に突き刺さらないとは言え、痛いものは痛いし衝撃もある。

ダメージも蓄積される。

 

そんな無限にも感じられる時間の中、背後に迫る光弾がある程度の距離まで近づいたことを確認したカズキは突撃砲の80mm砲弾を後方へ発射。

それと同時に補助腕の突撃砲を後方へ放棄した。

 

放棄した突撃砲には多数の榴弾が装備されており、光弾が命中すると大爆発を起こす。

後方で大爆発が起きるとその爆風に乗り加速。

さらに瞬時加速で一気に距離を詰める。

今まで確実に安全な位置にいたはずのラプターの目前にカズキの青い不知火が迫った。

とは言え長刀のリーチはそう長くない。

懐に入り込まれさえしなければ相手に勝機はない。

そのことを理解していたラプターは冷静に距離を取ろうとした。

 

だが、そんなラプターに対しカズキは手に持った長刀を、勢いよく放った。

 

そう"斬りかかる"のではなく"放った"のである。

そして、その一撃は距離さえとれば安全だと認識していたラプターに深々と突き刺さる。

長刀が突き刺さり動きの止まったラプターに勢いそのままに突貫。

右腕の短刀を取り出すと、そのままラプターの首筋に突き立て手放す。

 

「これで、1機ぃぃぃいいいい!!」

 

刺さったままの長刀を引き抜くと動かなくなった敵機を海に向かって蹴り落とす。

 

これで敵はラプター1機と銀の福音のみ。

 

だがもはやラプターなどカズキの眼中にはなかった。

 

狙うはただ1機。

 

銀の福音のみ。

 

機体はあちらこちらが損傷している。

2機を相手取る余裕なんてない。

 

戦術を立てて戦う余力ははっきりいって存在しない。

 

それならやれる事は単純明快。

 

「"命捨てがまるは今"....か。」

 

どっかの突撃バカがかつて言っていた言葉を思い出し、笑みをこぼす。

相変わらず疲労とダメージから肩で息をしているが、長刀をしっかりと握りしめる。

目を瞑り息を深く吐く。

 

目を開き前方に佇む銀の福音へと飛び出す。

 

ラプターなぞ知らん。

銀の福音さえ落とせば、後は他の奴らで囲んで落とせるはず。

戦い慣れていない学生連中でもやれるはず。

銀の福音と違い一対多数を念頭に置いた機体ではないのだから。

 

そして何より、銀の福音にはゴスペルが、ナターシャがいるのだ。

ためらいがない訳ではない。

助けたいという気持ちもある。

殺したくないという気持ちもある。

失いたくないと、心が悲鳴をあげている。

だがそれ以上に、相棒が引き返せないところに行き着く前に仕留めてやる。

それが唯一、自分にしてやれる最後のこと。

 

銀の福音との距離が近付く。

ラプターは遥か後方。

 

このまま接近して撃墜できるまで斬って斬って斬りまくる。

 

「ナターシャァァァアアアアアアア!!」

 

雄叫びを上げる。

眼前の銀の福音は何故か反撃も回避もしようとしない。

それどころか競技用として搭載が義務付けられている装備がとある警告を出した。

 

"前方の機体 絶対防御の反応無し"

 

思わず目を見開き、手に力がこもる。

だが、止まるわけにはいかない。

ここで銀の福音を、ナターシャを殺す。

 

 

カズキは長刀を振り下ろした。

 

 

だが、それは銀の福音に当たる事はなかった。

高速で飛来したナニカに弾かれ長刀が逸れたのだ。

 

「なッ!?」

 

その衝撃の正体を見るべく、飛来した方向に目を向けると視界には白い特徴的な機体と見覚えのある顔。

 

そして拳が飛んできた。

 

「少し頭冷やしやがれッ!」

 

 

 

 

時を少し遡る。

 

『あれ?ひょっとして聞こえちゃってる?』

 

そんな素っ頓狂な声が響き渡り、部屋は静寂に包まれた。

そんな中、最初に声を上げたのはラウラだった。

 

「お前...フー、なのか?」

 

『ん?ああ、お前にはそうなのってたっけ?』

 

「先ほどの口ぶりからして、今カズキたちが戦ってる機体が何か知ってるんだな?」

 

『....まぁ、知ってるな。ったく、本来は関わる気なんてなかったんだけどな。』

 

ラウラの言葉に、フーは面倒臭そうに答える。

そんな口ぶりに苛立ちを覚えたが、ヤンは問いかける。

 

「ラプターについて、僕は詳しくない。教えてくれ。」

 

『....まぁ、それぐらいならいいか。』

 

そう言い、わざとらしく咳払いすると彼は話し始めた。

 

『F-22ラプター。アメリカのロックウィード・マーティンが開発した第3世代戦術機で、対BETA戦には必要ないパッシブ・アクティブステルス機能を有した対人戦にも対応した機体だ。というか、こっちがメインとも言えるかもな。隠密性と機動性においては他の追随を許さないほどの高スペック。....そんで、ついたあだ名が"マンハンター"ってとこだな。』

 

「そんな機体なのか!?」

 

『ああ、使えるやつが使えば撃墜は困難だと言えるが...見る限りアレに乗ってるのは大したやつじゃあねぇな。』

 

「あんな高級品に素人なんて勿体ねぇ〜。」とボヤくように締める。

だが、話を聞いている一夏達にはなにを言ってるのかわからなかった。

 

「戦術機だのBETAだの、一体何の話をしてんだよ!?」

 

「それは...。」

 

「フー、お前はカズキの友人なんじゃないのか!?それなのに他人事のようにッ....。」

 

一夏の疑問に対しヤンは答えに窮する。

それだけではなく、ラウラにはフーの態度が気に食わなかった。

友人だと聞いていたし、助けてもらった義理はある。

だからこそ、その友人が大変な目にあってる中他人事のように話す態度が気に入らなかったのだ。

だが、当人はどこ吹く風と言わんばかりに態度を崩さない。

 

『実際、他人事だしな。俺は死者でアイツは生者。あのバカが生きようがくたばろうが俺には関係ないし、どうこう言える立場にはねぇよ。あの時といい、今回といい。俺にとっては本来は関わる気なんてなかったことに巻き込まれてるみたいな感じなんだよ。』

 

「死者だと...?」

 

『ああ。俺はとっくのとうにくたばってる人間さ。あのバカを残して先に逝った。というかあのバカだけが生き残った。...いや、隊長も生きてるか。』

 

「お前...。」

 

フーの言葉にラウラが口を開こうとした瞬間、通信兵の悲鳴のような声が上がった。

 

「銀の福音再起動!全機ブレイク!」

 

「03、04被弾ッ!」

 

「状況報告!」

 

突然の言葉にザハロフは慌てて対応に入る。

だが、聞こえてくるのは最悪の報告ばかりだ。

 

「03、04バイタル不安定。機体の損傷も大!」

 

「04、機体損耗率70%!03も追加パッケージが破損し高速戦闘は不可能です。」

 

「中尉!どうしますか!?」

 

ザハロフは思わず歯噛みする。

状況は最悪だ。

銀の福音の再起動により戦況は一気にひっくり返った。

撤退か。

それとも、被害を度外視して続行か。

 

『あ〜あ。こりゃ、あのバカが1人で残る気だな。』

 

背後で聞こえる呑気な声に苛立ちながら必死に考える。

全員を帰還させる方法を。

だが、現実は背後の男の言う通りになってしまった。

 

「01、敵に対し突貫しています!」

 

<<全機、速やかに撤退!作戦中止ッ!>>

 

1人の兵士の報告と同時にカズキの声が響いた。

やはり1人で残るようだ。

その状況を見ていても立ってもいられなくなった一夏が声を上げる。

 

「ザハロフさん!俺たちがッ!」

 

「駄目だッ!」

 

ザハロフはそんな一夏を怒鳴りつける。

一夏はヤンを見るが、ヤンは拳を握りしめながら目を逸らした。

だが、そんな中でフーが再び口を開いた。

 

『ヤダヤダ、自分の気持ちに素直になれないのは嫌だねぇ...。』

 

「部外者が口を挟むなッ!」

 

『そうさ俺は部外者さ。』

 

「だったらッ!」

 

フーの言葉に苛立ちを募らせたザハロフが怒鳴る。

 

『だがヨォ...それならお前らはあのバカを死なせるって事でいいんだな?』

 

だが、今までのおちゃらけた態度とは打って変わって低い声で問いかけられる。

その言葉と言葉にできない迫力に思わず言葉が詰まる。

そんなザハロフから今度はヤンへと言葉の行き先を変える。

 

『そこのお前、ヤンって言ったか?』

 

「....ああ。」

 

『揃いも揃ってなっさけねぇな。』

 

俯きがちに返事をするヤン達に吐き捨てるように言葉を叩きつける。

 

『このガキども腹括ってるぜ。それに対してお前ら軍人どもは右往左往して方針一つ決められずにいる。それどころか、半ば諦めてる。』

 

「だったらッ....どうすればいいんだ!」

 

言葉を叩きつけられた軍人達を代表するようにヤンが叫ぶ。

 

「一夏達は軍人じゃない!軍事訓練も受けてない!ましてや軍法における制約も受けちゃいない!訓練未了の人間を戦場に出したらどうなるかアンタだって知ってるだろう!」

 

『ああ、知ってる。だが、腹も括ってねぇアホの100倍役に立つ。それと一つ断言してやるよ。このままじゃカズキは十中八九死ぬ。あのクソバカは死にたがりばかりのウチの隊でも生え抜きの死にたがりだ。それに命の使い所も使い方も使い捨て方もよく知ってる。』

 

ヤンの叫びに冷静に返したフーはそこで一旦区切り続ける。

 

『つまり、お前らは指咥えてあのクソバカが勝手にくたばる所を見てる事になる。』

 

それでいいのか?

口にはされなかったが、そう言っているのだろう。

 

『それと一ついい事教えてやるよ。お前らとコイツらの大きな違いだよ。』

 

『"何をすべきか?"軍人には重要な要素だよな。だが、このガキどもはそれだけが行動理念じゃねぇ。コイツらは"どうしたいのか?"それも考えて行動しようとしている。』

 

『ヤン・ウォーカー、お前はどうしたい?』

 

ここに彼の体はないはずなのに冷徹な視線が自分を貫いているように感じた。

ヤンは震える声を喉から漏らした。

 

「───僕は....アイツを....カズキを助けたい.....。」

 

それは懇願のような、はたまた懺悔のような声だった。

 

『言えたじゃねぇか。....さて、後ろのアンタらはどうすんだ?』

 

ヤンの言葉に満足そうな声を上げると、その様子を半ば呆然といった様子でザハロフは聞いていた。

そんな中、無線から声が聞こえた。

 

<<こちら05、至急増援を!...頼む、01を、カズキを助けてくれ...ッ!>>

 

その声がトドメになったのかザハロフは苛立ったように頭を掻きむしった。

 

「....ああ!クソっ!乗ってやるよその口車に!」

 

「中尉!?」

 

他のCPにいる下士官達が驚きの声を上げるが、その声はどこか嬉しそうであった。

 

「センドウ大尉は現在指揮を取れる状況になく、臨時的に私が指揮を取る!」

 

ザハロフが放った言葉に兵士たちは目の色を変える。

本来立たせてはいけないはずの彼らが征くことが決まった事により、ならばせめて自分たちができることを全てやろうと腹を括ったのだ。

 

「織斑教諭!」

 

「...なんだ?」

 

「我々の指揮官を救うためにアナタの生徒の力を借りたい。」

 

「...無事に返してくれよ。」

 

千冬も正直、学生達を行かせるのは反対だ。

だからといってカズキを見捨てる気もない。

彼女の中では半ば二律背反の二つの考えが渦巻くが、助けに向かうために目を爛々と輝かせている己の弟の目を見た時悟った。

"あぁ、止めても無駄だ"と。

今やISを扱えない己の無力を呪いながらも、せめて無事にと願いを込めての返事だった。

 

「もちろんです!学生諸君は臨時編成を組みウォーカー中尉に指揮を任せます!また、コールサイン並びに作戦に関しては現地に向かいつつ説明します。」

 

そのことを知ってか知らずか、ザハロフは大きく返事を出すと息つく間もなく素早く指示を出す。

 

「さぁ、状況は待ってくれない。誘導はこちらで行うから速やかに出撃してくれ!それと、シェンフーとかいったな、焚き付けたからには責任持ってこの子達のサポートをしてくれ!」

 

『りょーかい。それぐらいならやってやるよ。』

 

───今度こそ軍法会議かな。

 

頼りなく感じる返事を聞きながらザハロフはそう思ったが、なぜだか妙に気持ちが軽くなっていた。

見捨てない、そう決めたからだと考え至ると何故だが思わず笑みがこぼれた。

 

「さぁ、我々は我々にしかできないことをやって全員生還させるぞ!」

 

 

 

 

<<作戦を説明する。まずガルーダ1の救援にはガルーダ2、ホーク隊(一夏、鈴、箒、セシリア)ラプターへの対処はシュヴァルツ隊(ラウラ、シャル、簪)で行う。ラプターは最悪足止めさえ出来ればいい。まずは銀の福音の撃墜、もしくは搭乗者であるナターシャ・ファイルス中尉の救助を優先。銀の福音の無力化したのち、ラプターを撃墜する。>>

 

カズキのいる場所に向かって飛行を開始してすぐに臨時の部隊編成のメンバーが伝えられ、拙いながらも編隊飛行に移っていた。

そんな中、CPから作戦が説明された。

とはいえ、軍事訓練も受けてない学生に長々と細かい作戦を説明したところで、理解して実行に移すことは難しいだろうという考えから苦肉の策としてシンプルな作戦が説明された。

敵を分断し各個撃破を目指す、ただそれだけだ。

 

「ガルーダ2、了解。ホーク隊の指揮は僕が執る。ホーク隊各機はラプターに構うことなくガルーダ1の救援を優先してくれ。....ラウラ、ラプターを頼んだよ。」

 

ホーク隊は一夏、鈴、箒、セシリアという構成であり、セシリアと鈴そしてヤンの3人で銀の福音の懐に一夏、箒の2人を送り込み銀の福音をできる限り早く倒す。

それを作戦としていた。

 

「任せろガルーダ2。こちらはバランスよく近中遠揃っている。それに、アドバイザーもいるからな。」

 

それに対してシュヴァルツ隊は、近中距離戦を主とするラウラを隊長とし、中距離砲戦を得意とするシャルロット、遠距離砲戦専門の簪といった編成で、ラプターの足止めもしくは撃墜を行う事になっている。

 

『それって俺のことだよね?....まぁ、口で助けてやることしかできないからシュヴァルツ隊各機が注意してくれなきゃ話にならんがね。』

 

「だ、そうだ。シュヴァルツ各機、この口だけの男に我々もやれることを見せつけてやろう。」

 

ラウラがヤンの言葉にシェンフーに対する皮肉を混ぜつつ返事をする。

シェンフーは再び皮肉で返すがラウラはどこ吹く風とばかりに受け流した。

 

「了解だよラウラ。いつも助けてもらってばっかりだから、今度はボクたちがカズキを助けなきゃね。」

 

「センドウくんのことはあまり知らないけど、口だけにはなりたくないからね。援護は私に任せて。」

 

シャルや簪はラウラの皮肉を混ぜた激励に、改めて気合いを入れ直す。

 

『おい、口だけなのはしょうがねぇだろ。肉体無いんだから....。』

 

なお、シェンフーのボヤキは無視された。

 

一方でホーク隊。

 

「もう間もなくカズキが見えてくるはずだ。....みんな、先に言っておくよ。ありがとう。」

 

ヤンは注意を促すと共にカズキ救出を願い出てくれた事に感謝を述べた。

ホーク隊の4人は照れ隠しのような笑みを浮かべた。

 

「ヤン、お礼はカズキを助けてからにしようぜ。そんでカズキになんか奢ってもらおうぜ。」

 

「それはいい考えね一夏。高いもの奢ってもらいましょう。」

 

「それなら私がお店を探しておきましょう。」

 

「セシリアなら良い店を選んでくれそうだな。」

 

一夏たちはそんなヤンの言葉に冗談を飛ばす。

そんな様子にリラックスできてることを理解したヤンは内心ホッとしていた。

新米が死ぬ最大の理由は、緊張による硬直や逆に初陣の高揚感で前に出過ぎるということが多い。

そんな様子は彼らには見えず、やる気はあれど力が入りすぎていない。

 

「おいおい、あまり高いところにしてやるなよ。」

 

そうヤンが冗談を飛ばしてやるとみんなクスクスと笑う。

そんな中、遠距離用にセンサー性能が高いセシリアが目標を発見した。

 

「皆さん!カズキさんを発見しました!」

 

セシリアはすぐさま確認できた望遠映像を共有する。

間に合った、その安心はすぐさま消えた。

はっきりと見えたのだ。

銀の福音へボロボロの機体で突撃を仕掛けようとしている姿を。

 

一夏たちにはカズキ救出以外にもう一つの目標があった。

それはカズキによる銀の福音撃墜の阻止。

銀の福音を墜としナターシャ・ファイルスの命をカズキが奪ってしまえば、何か大切なものが壊れてしまう。

そんな危機感を共有していた。

 

「斬り込む気だ!」

 

ヤンが声を上げる。

だが、まだ距離が離れている。

瞬時移動をしたところで間に合う距離ではない。

そのとき一夏が声を上げた。

 

「ヤン!フリューゲルベルデを!」

 

「どうするつもりだいッ!?」

 

「それにオレが乗ってお前がスラスターを全力で吹かしながらぶん投げてくれ!間に合うかわからないけどやる価値はある!」

 

一夏の無謀とすら思える提案に逡巡するが、考えている暇はないと判断したヤンはフリューゲルベルデをコールし構える。

それを確認した一夏はすぐさまフリューゲルベルデに乗る。

 

瞬間、ヤンは勢いよくスラスターを吹かし全力で振りかぶる。

一夏は足が離れる瞬間、瞬時加速でトップスピードに乗る。

 

「一夏さんが無茶をやるなら私も!」

 

一夏が飛ぶ姿を見たセシリアはライフルを構える。

いくら訓練を積んできたとはいえ、振りかぶられている刀にピンポイントで弾丸を当てるなど常人には不可能である。

しかも距離は未だ離れている。

手で持っている以上照準は若干ブレる。

その上、洋上のため風もある。

 

必死に照準を合わせる中、ふとライフルの重みが軽くなった。

スコープを覗き込むのをやめ、視線を向けると箒が滞空しながら肩に銃身を乗せてくれていた。

 

口を開く暇などないため内心で感謝を述べつつ、再びスコープを覗き込む。

訓練で掴んでいる自分の愛銃の癖と距離による着弾までのズレ。

狙うは斬る瞬間。

そのタイミングはどこにくるのかある程度の予想がつくからだ。

 

人を救うための弾丸。

今まで撃ってきたものに比べて遥かに引き金が重く感じてしまう。

だが、惚れた男の前で無様は晒せない。

そして何より、自分を認めてくれた人を救いたい。

自分の友人を救いたい。

 

そう思うと自然と力が抜ける。

 

先行している一夏とヤンはまだカズキに届かない。

ならば、やるしかない。

 

深く息を吐き出す。

 

そしていつも通り、狙いを定め引き金を、引いた。

 

肩にのしかかる反動を受け止めそのまま見送る。

 

数秒時間をあけ命中。

 

その直後、彼女の耳には声が響いた。

 

 

『少し頭冷やしやがれッ!』

 

 

自分の惚れた人が、確かに一歩踏み出した叫びを。

 

 




第六十一話、いかがだったでしょうか?

いやぁ、詰め込んだ結果かなり長引いてしまいました。
カズキの単機による撤退支援とナターシャへの突貫。
そしてCP組の葛藤とシェンフーの本格登場。
最後のセシリアの神がかった狙撃。

書いてて楽しかった〜(現実逃避
話が進まねえ〜!(現実の直視

こんな感じで今年もよろしくお願いします!
次回更新は今月中にできるように頑張ります!

それでは次回更新、もしくは活動報告でお会いしましょう!
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