転生失敗 ~異世界トラックに跳ねられたら全治三ヶ月で、しかも超美少女の婚約者が出来ました~ 作:無神 タカト
「暁人、私の家に行くわよ」
「は?」
予想外に早くなった退院から数日後。
掃除、片付け、新生活への用意と大忙しの我が家へ現れた夕華が開口一番にそう言った。
「で、どこ行くって?」
あれよあれよという間に夕華と実によって、俺のような一般人?が乗ることのない黒塗りのリムジンに押し込められた。
今は走るリムジンの中で、実に注いでもらった高級?りんごジュースを嗜んでいるところだ。
「私の家よ」
俺の対面でぶどうジュースを嗜む夕華がそう返す。
「そりゃまたなんで急に?」
「あなたが急に退院したからよ。実から事情を聞いたお父さんが、話がしたいと」
夕華の隣に座る実を見る。
「魔法使協会からも、少々圧力がかかりましたので・・・」
と、少し申し訳なさそうに行った。
「いや、まぁいいさ。口止めもしてなかったし、それにいずれちゃんと話さなきゃいけないことだった」
楓の魔法によって怪我が治り、俺の入院生活は急激に終わりを迎えた。
何故急に怪我が消えたのか、病院内でそのような疑問ももちろん生まれたが、そこは魔法使協会からの圧力によって追求を逃れた。
そしてこれは夕華の父である裕二さんも知るところとなり、事情を聞かれた実が洗いざらいを喋ったといったところだろう。
まぁ、夕華と実に魔法使であるということを明かした時点で、これは確実に起こる事であったし、そうでなくともいつかは話さなければならない事だったのだ。
それが遅いか早いかというだけなら、まぁ、早いに越したことはないだろう。
「ま、学園への入学時期も前倒しになるかもしれないし、早めに越したことはないな」
「それもそうね」
「で、ちなみにだけどさ。夕華の家ってどこにあるの?」
よくよく考えれば、俺は夕華の家、夏風家本邸の場所を知らない。
退院日に俺の家の住所は教えておいたが、夕華の家の住所は聞いていなかった。
「香鳳学園を囲うように存在する学園都市の端、香鳳カンパニー本社の裏にございます」
「あぁ~、あの辺か」
香鳳学園は奈良県西部の山間部を切り開いた場所に存在する。
俺の家からならば確か1時間ほどで着くはずだ。
ちなみに、この場所からならあと10分ほどだ。
「そういや、お土産こんなんしかなかったけど、大丈夫か?」
急な事で準備する間もなく、家にあった開封前のスイートポテトの詰め合わせを、そこそこ堅めな袋に入れて持ってきたのだが、大丈夫だろうか?
「急に呼んだのはお父さんなのだから、別になくても大丈夫よ」
「いや、そうは言ってもだなぁ」
「そのスイートポテトはお土産としてもよく使われる品ですし、恐らく大丈夫だと思いますよ」
「そっか、なら、いいか」
楓みたいな喋り方になったが、メイドさんでこういうお土産の受け取り経験もあるだろう実が言うのだから、たぶん大丈夫だろう。
「さて、暁人。これを見てください」
香鳳カンパニー本社の横を通り抜け、トンネルに入った瞬間、実が窓際のシェードを下げて喋りだした。
そのシェードには、なんらかの図が貼り付けられている。
「これは、香鳳カンパニー本社から夏風家本邸までを含んだ地図です。今いるのはここ、本社から第三山へ続く直通トンネルです」
メイド服のスカートの中から取り出した指示棒で、いくつかあるトンネルのひとつを指す。
そこには実の言う通り、第三山直通トンネルと書かれている。
「第三山?」
「はい。香鳳カンパニーの真裏にある三つの山が、夏風家本家の敷地となっております。手前から第一山、第二山、第三山です」
「山三つ!?デカ!」
それは東京ドーム幾つ分なのだろうか!?
ってな例えがあるが、関西の人間は東京ドームを見たことがあまりなく、現実味の薄い例えなので、ここは──────
「それって甲子園幾つ分?」
に、しておこう。
「さぁ、測ったことはないので分かりませんが、恐らく10個分以上にはなるかと。さて、今から行っていただくのは本邸がある第三山。裕二様もこちらにいらっしゃいます。出入りは原則として、今入ってきたように香鳳カンパニー本社横の関所を通ることとなっております。関所では、出入りする者の名前と人数の管理を徹底して行っており、関所以外からお帰りになると、人数が合わないなどのちょっとした騒ぎになりますので、お帰りの際、もしくは移動の際も車を用意させていただきますので、私にお申し付けください」
なんかもう、どっかの大型テーマパークみたいだな・・・。
「なんかデカすぎて迷子になりそうだな」
「今回は私と実が一緒に回るから大丈夫よ」
「それもそうか」
住んでる2人が着いてきてくれるのなら安心だ。
俺はほっと胸を撫で下ろした。
「ちなみに夕華様は先日、第二山で迷子になり、危うく捜索隊が編成される直前までの自体になりました」
「み、実!?何を言っているのかしら!?」
つまり着いていくなら実が吉ということか。
「さ、見えてきましたよ。あれが夏風家本邸です」
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