転生失敗 ~異世界トラックに跳ねられたら全治三ヶ月で、しかも超美少女の婚約者が出来ました~   作:無神 タカト

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その1-16【夏風の饗】

 コンコンッ

 

 扉がノックされた。

 おそらく、夕華の言っていた通り昼食が運ばれてきたのだろう。

 

「お」

 

「失礼致します。昼食をお持ちしました」

 

 扉を開いて現れたのは、実と同じデザインのメイド服を身に纏った老齢の女性。

 その女性は、押して来たカートから膳を取り出し、俺たち一人一人の前に置くと一礼して退出した。

 眼前に置かれた膳の内容は、メインの料理が入れられた赤い箱が一つ、そしてお吸い物と漬物が入れられた小皿が一つ。

 

「この匂いは、親子丼か?」

 

 蓋によって視界が遮られ、未だその中身がわからないメインの一品。俺は、その箱から漂う匂いでその中身を言い当てた。

 

「どうやら、そう見たいですね」

 

「今日も美味しそうね」

 

 夕華に続いて蓋を開けた実が俺の予想が正確であったことを肯定した。

 2人に続き、俺も蓋を開ける。

 

「おぉ」

 

 蓋を開けた途端に押し寄せる強い旨味の匂い。

 先ほどまでとは段違いの匂いに、俺の食欲が促進されていく。

 

「よし、食べようか」

 

「そうね。私も食欲が沸いて来たわ。実」

 

「はい。では、ご唱和願います」

 

 3人で手を合わせる。

 

「「「いただきます」」」

 

 言うや否や箸を手にし、親子丼を一口。

 

「めっちゃ美味い!」

 

 口の中で蕩ける卵。

 一噛で肉汁が溢れ出る鳥もも肉。

 そして調和の取れた出汁。

 今まで食べた中で一番の親子丼だった。

 

「えぇ、今日も美味しいわね」

 

「そうですね」

 

 食べ慣れているのか、2人は俺ほど驚きはしなかったが、喋りながらも箸が止まることがないあたり、その美味しさはしっかりと感じているのだろう。

 

「このご飯は、いつも実の家の人が作ってるのか?」

 

 従者というのは、ここまで料理スキルのレベルが高い物なのだろうか。

 

「いえ、この料理は香鳳カンパニーで雇われて、本社の食堂に在中しているシェフの方が作ってくださっている物です」

 

「シェ、シェフ・・・?」

 

「はい。香鳳カンパニー本社の食堂では、24時間4交代制でそれぞれ個人で店を持つような有名シェフが在中しており、いつでも美味しい食事を楽しむことができます。夏風家の皆様や、夏風家で働く者たちの食事もそこで用意され、時間になるとこのように運ばれて来るのです」

 

「有名シェフ・・・」

 

 通りで圧倒的美味さ。

 

「家で働いている人の中で言うと、この美味しさの料理を作れるのはきっと栞さんぐらいでしょうね」

 

「栞さん?」

 

「実のは父方のお婆様、つまりは一稀さんの奥さんよ」

 

「ヘェ〜」

 

 やっぱり料理スキル高い人もいるんだなぁ。

 

「ちなみに、さっきこの御膳を運んできてくれたのが栞さんよ」

 

「へェ〜・・・え!?」

 

 あの人か!

 確かに、よくよく思い返してみれば実と少し似ているような気もする。

 

「なんですか?」

 

 思い出しついでに実を見つめていると、お吸い物に口をつけようとしてた実が俺の視線に気づき、首を傾げた。

 

「その栞さんの料理はそんなに美味しいのか」

 

 実から視線を外し、対面に座る夕華を向く。

 

「えぇ、とても美味しいわよ。私も時折何か作ってもらうのだけれど、名だたる有名シェフに負けないぐらいの味よ」

 

「それは是非とも一度食べてみたいな」

 

 非常に興味が湧いた。

 

「お婆さんがそんなに料理上手いってことは、実も料理上手いのか?」

 

「いえ、私は・・・」

 

 実が気まずそうに口篭る。

 

「実はどちらかと言えばお菓子専門よ。と、いうか夏風、斯波の両家の人間は料理に手を出そうとすると栞さんの料理のあまりにも高い壁に心を折られるのよ。だから、両家で料理に手を出そうとする人はあまりいないわ」

 

「どんだけだよ・・・」

 

 ますます興味が湧いた。

 

「実のお菓子も、いつか食べたいな」

 

「実のお菓子はとっても美味しくて、暁人もきっと気にいると思うわよ」

 

「いつか、頼めるか?」

 

 実を見ると、その顔の大半はお椀によって隠れてしまっているが、はみ出した頬がほんのり赤い。

 喉を鳴らしてお吸い物を飲みきると、ゆっくりと顔の前からお椀を外して頷いた。

 

「分かりました。いつか、お作りましす」

 

「ふふっ。──────さ、皆食べ終えたわね。じゃあ、食後の運動と、模擬戦の場所を見学を兼ねて、ドームの方に行きましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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