もしも、モンスターにそれなりの知識があったら 作:てとらとて
私の一番思い入れのある記憶にこびりついたタイトルを一言で表すなら…
それは恐怖というより
憧れのほうが強かった
狩る側の眼
炎を体現させたかのような灼熱の鱗
王者の風格とはこういう存在のために使われるのだろう
………
思えばあれは奇跡だったのだ
いや…天恵?神の悪戯??
私の両親は古流観測の仕事に就いていて
誕生日の日、ちょうど慎重がガーグァの卵二個位の大きさになれて喜んでいた頃だったかな
フード付きの服をもらった後
なんども懇願していた観測の仕事を特別に体験することになった
けどそれが運の尽きだった
これから起こる幸運の対価のためだったのだろう
観測所は、突如発生した暴風雨(暴風雨と呼ぶのは相応しくないきもする…)により、私は、私だけ弾き飛ばされたのだ
逆巻く渦に実体となった暴風が渦巻くのを見届けながら
ガサガサガサと木々とブツかりながら
私は地面に、グシャリと墜ちたのだ
たしか、骨だったかな、何本か。
木々が邪魔していなかったら、痛みも感じることもなく死ねたのにね…
ともかく凄く痛くて、痛くて、もがいた
死にかけの昆虫のように…
呼吸が荒くなっていき…また暫くもがいているとふと、フードの中をコロコロと丸いなにかが転がっているのに気づいて、手を伸ばすと…
フードのなかに、秘薬が入っていたのだ
助かったと、深く深呼吸をして私は立ち上った…
目の前の崖から鬱蒼と生い茂る大森林を一望できて、とても絶景だった。右方向には私がいる地点よりもさらに高い壁のような地形もあったり…
[うわぁ…]と、凄いなぁ…と、思った
そして後ろは、洞穴
直ぐにモンスターの洞穴かと、不味いところに降りてしまった気分になったけど…
後ろから現れたのは…
グルル…
後ろから………うしろから…
なんども何度も繰り返し読んでいた本のヒーローが現れたのだ
!!!
火竜が、リオレウスが目の前に!
グルル…
!!?
眼があってしまった!!
私はどうなるのだろう…この後どうすればいいのだろう…何が起きてしまうのだろう…もう死期が目の前まで迫っているのだろう
……………
いや、そんな恐怖心は一切無かった
あったのはただひたすらに、興奮…
けど、どうなってしまうのだろう、とも思っていた
けどリオレウスは、一瞥、洞窟に戻ったのだ
見逃された…?
そう思っていたら…
パクリとフードを捕まれてしまった…
プレゼントね…リオレウスのフードだったんだよ
まさか私もリオレウスと見られている!?
そう思ったけど…後々それは違うと気づくのだ
洞窟内、眼が慣れ、巣には三つ卵があった
そこに私は放り投げられた
もさもさとした葉っぱと藁の巣いて、目の前にはヒーローとその卵…
取り敢えず卵にさわってみた
殻はひんやりしていて、しかし暫くさわると、中から鼓動、脈動まぁ生きていると感じさせてくれる温もりが伝わり、暖かくもあった。
もうなにしてもだいじょうぶかもしれないと思った私はこんこんと卵を指でつついてみたけど
……………
[っ……!]
それはダメだったらしく、睨まれてしまった
けど撫でるのは、というより餌として認識されないなら私はもうリオレウスの………まてよ?
餌さとして認識されている可能性もあるっ!!
悪寒が走った私はすぐさま巣から脱出したけど、それを見逃すはずもなく…
目の前にいたリオレウスにまた捕まれて戻されてしまった
そして、リオレウスは何処かへ飛び去った
そのときはチャンスとしか思ってなくてまた逃げようとした時
ピシピシと、卵にヒビが
もうね、無理だよ
両親から受け継いだ血が騒いでさわいで…観察することしか頭に入っていなかったよ。
ガーグァのように何度も嘴で頑張って卵に穴を空けるなんてことはなかった。
ただただそれはもう、豪快に、翼で、バキャリと
そしてキュイィという笛に似た産声を上げ、幼体が三匹産まれたのだ。
まだ赤みは薄くほんの若干ピンク寄り、眼も閉じていた。
[産まれた!目の前で産まれた!凄いや…]
けどここからが大変で、よく動く良く動く…なんども巣から落ちそうになっていて、それを必死に抱き抱えては戻していた。
ここで気づいたのだ
もしかして…任されている?
そんなことを思っていたら、親が帰ってきた
口にはアプトノスを咥えていて
…………
[首もとを掴むのか]
ドサリ
キュイィ
[!?もう眼が開いている…?]
グルル
[な、なんでずっと…こっちを]
[もしかして…お前も食べろと?]
(無言で首を振る)
グル!!
うっ…!
[だめ、か]
…………
死にそうだったり、そうでなかったり…
肉は新鮮なのだが当たらないわけがなく
地獄の苦しみと戦う日が多々あった
腐肉は更に惨く……
それから私は生肉を食べた後は必ず洞窟を出て崖に座るようにしていた。
そして月日は経ち…
私が生肉を、腐肉までも受け付けられるようになったころには…
子供達はすっかり私の背を越えていた
見た目はもう親とそっくりなんだけどね
なんかこう…子供達は若々しい雰囲気なんだよね。声もギュアアってヤンチャだし…
一緒に生肉を崖で食べて、ツツかれたり、幼い頃は頬擦りもされた。
一番思い入れがある出来事は、真ん中の背中に乗せてもらった時だ。
飛翔中あの子は私を見続けたのだ。
…………
グルル
(やけに私を見てくる)
[飛べないのかって?]
[…すまない、私は、自分自身の力では到底無理なことなんだ]
(腕を広げ、彼との違点を指差す。)
…………グルル
(高台に停まり、羽で覆う)
[ははっ、別に悲しんでないよ]
(顔に抱きつく)
[たとえちがくとも、一緒にすごしてきたという絆がある。今も君とこうやって絆を深めている…。君は私の大切な存在だ。]
(涙を流す)
[だからいいかい?もしも身の危険が迫ったら、真っ先に逃げてくれ。死んでほしくないのだ、君が…君たち家族が!]
…………
楽しかった
けどやはり、これが続くわけがなかった。
とある日、消えたのだ
そしてまたとある日、またまたとある日。
………巣立ったのだ
寂しくは、あった。
強く生きてほしい、そう思った。
けど、殆どが叶わないかもしれない。
同族は、狩っているのだ、生存のため。
一番上が巣だった時、心に逆鱗が刺さった気分がした。
私は思うんだ
私達は部外者、侵略者のようなものだと。
生きるためとはいえ、狩りすぎている気がする。
しかし私はそれを受け入れている。
変えることなんて出来ないからだ
赦してくれ
それこそ…伝説の黒龍、ミラボレアスが現れない限り私達は無益な殺生をし続ける。
そして、私も巣立った
というよりは、お別れをしたというべきか
一番下が巣立ったあと、リオレウスは私を背中にのせ、飛翔した。
そして、ベルナ村の近くで、私を下ろしたのだ。
私は涙を流し、その場で崩れた
嗚呼、君はなんて優しいんだ
こんなにも優しいのに…私達は…
[私のヒーローよ、どうか殺されずに…どうか死ぬときは、安らかに土に還ってくれ…]
これが私の大冒険の全てだ
元龍歴院研究員生態学者 現古龍観測員
ヴァレンチノ
「ふぅ」(日記を閉じ、コーヒーを口に含む)
「………これが私の物語」
「次は君の番だ。」
「聞かせてくれないか?君の冒険を…」
次の鍵話まであと○○話