双子の妹がキャンプにハマりました   作:トロホルモン

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まだ一話目なのに評価やら感想などありがとうございます。
それでは二話目もどうぞ。


第2話

 

 ランニングを始めてから数時間くらい経った。初めての山梨の雰囲気を楽しみながらのランニングは予想以上にのめり込んでしまい時間を忘れて走ってしまった。そんな時に携帯の入ったポケットが震えているのに気がついて俺は立ち止まって携帯を取り出すと姉から電話が掛かってきていた。

 

「もしもし、どうしたの姉ちゃん」

『走っている時になでしこ見かけなかった?』

「いいや見てないけど。まだなでしこ帰ってきてないの?」

『えぇ、本当に何処に行ったのよ』

「携帯には電話したの?」

『携帯を自分の部屋に置いていったのよ』

「なでしこらしいな。俺もそろそろ帰るよ」

『わかったわ、気をつけて帰るのよ』

 

 そう言って俺は電話を切ってから地図アプリをつけて現在地を確認した。地図には静岡にアイコンが配置されていた。予想以上に走ってしまった、まさか引っ越しして初日に静岡に帰ってくるなんてホームシックかよ。………さてと、帰る頃には真っ暗だろうな。

 そんな事を思いながら俺は来た道を戻るようにまた走り出した。

 

 

 

 

 予想通りに家に着いた時にはもう真っ暗になっていた。帰っている途中に母さんから電話掛かって来ていて、心配そうな声で俺に何処にいるかと聞いて来た。その時には静岡から戻って来ていて南船駅の近くに居たからそれを話すと安心していた。

 

「ただいま……あれ、姉ちゃん出かけるの?」

「おかえり。今からなでしこを迎えに行くのよ」

「なでしこから電話あったんだ。何処に居たの?」

「本栖湖だって、富士山を見たくて自転車漕いで行ったら着いて寝てしまって、起きた時に暗くて帰れなくなったそうよ。それで本栖湖に居たキャンプしている人に携帯を借りて電話して来たの」

「そうなんだ」

 

 アイツ本栖湖まで行ってたんだ。よくそこまで自転車で行けたな、俺も走って静岡に帰っていたけど。

 

「今からなでしこを迎えに行くからやまともついて来てよ」

「着替えてからでいいのなら行くよ」

「なら40秒でしたくしてきて」

「姉ちゃんは何処の空賊だよ」

 

 そう言って俺は慌てて自分の部屋に行き着替えてから姉ちゃんの車に乗った。そしてそのまま車を飛ばして本栖湖に向かった。

 

 

「そう言えばやまとは何処まで走っての?」

「展望の丘くらい」

「………はぁ〜変な所は似てるわね。やまとの場合はその度合いは馬鹿げてるけど」

「それ絶対に褒めてないだろ」

 

 姉ちゃんは呆れていた。まぁ、帰り道に展望の丘を通ったからそれ以上走ってるんだけどね。

 

 ⬜︎

 

 無事に本栖湖に着くと駐車場には2つの人影があった。一つは迷子の妹のなでしこ、隣には見慣れないお団子ヘアーの女の子が居た。たぶん、さっき姉ちゃんが言ってたなでしこに携帯を借してくれたキャンプをしている人なんだろう。律儀について来てくれたんだ。見た目からして中学生っぽいけど、一人で居るって事はソロでキャンプに来てるって事だよな。もしかすると年上なのかも。

 

「やまと、袋を持って」

「……何故キウイが沢山入ってるの?」

「なでしこを助けてくれたお礼に渡そうと思って」

「なるほど。姉ちゃんが渡さないの?」

「私はなでしこの方をやるから。やまとが渡して来て」

 

 人にお礼の品を渡すとかやった事ないんだけど、取り敢えずやれるだけやってみよう。俺はキウイが沢山入った袋を持った。そして車を駐車場に停めて俺と姉ちゃんは車から降りるとなでしこは嬉しそうな顔をしてコチラに走って来た。

 

「お姉ちゃん〜お兄ちゃん〜!」

 

 姉ちゃんの方を見ると何処かホッとした表情をしていた。そしてなでしこが俺たちの側まで来て姉ちゃんに抱きつこうとした瞬間に姉ちゃんの拳がなでしこの頭に炸裂。それも3発。それを見ていた俺は若干引きながら『姉ちゃんを怒らせないようにしよう』と心に誓った。そして姉ちゃんの雷がなでしこに落ちた。

 

 さてと、あの姉妹はそのままにして置いて姉ちゃんから待たされたキウイを持ってお団子ヘアーの女の子に近づいた。女の子は二人の方を見ながら引いていた。

 

「あの、この度は妹が本当にお世話になりました。心ばかりでございますが受け取ってください」

「えっいや……私は大した事はしていませんし」

「いいえ、貴方と出会わなかったら妹がこの寒い中で野宿して凍死したかも知れません。貴方は妹の命の恩人なのです」

「そ、そんな大袈裟な」

「どうか受け取ってください」

「で、では」

 

 そう言って女の子はキウイの入った袋を受け取ってくれた。ちょっと強引だったけどなんとか受け取ってくれたな、これで姉ちゃんに怒られなくて済むな。……それよりも姉ちゃんは最初にお礼を言わないと。

 そんな事を考えてると姉ちゃんがこっちに来た。

 

「すみません、お見苦しい所をお見せしてしまい。妹が本当にお世話になりました」

「大丈夫ですよ、携帯を貸したくらいなので」

「おおぉぉぉ……」

 

 姉の拳骨を3連続でくらったなでしこは涙を流しながら頭を抑えていた。頭には綺麗なタンコブが三つもできていた。

 

「アンタ持ち歩かなきゃ携帯電話とは言わないのよ。ほら、さっさと乗れこの豚野郎!!」

「ぐへぇ、いてて、いてて。お姉ちゃん、やめれーカレー麺でる!」

「「……」」

 

 姉ちゃんはなでしこ持ち上げて最初から開いていた助手席になでしこを放り込んでその足で踏みつけてながら押し込んだ。取り敢えずこのお団子ヘアーの女の子と会話をしておこう。

 

「ふ、普段は優しい姉なんです。今回は心配していた反動からあんな暴力的になったんだと思います」

「そ、そうなんですか」

「そう言えば一人でキャンプに来てるのですか?」

「えっ、はい」

「凄いですね一人でキャンプをするなんて。テントを建てたりご飯作りをしたり色々と大変ではないのですか?」

「そんな事ないですよ。毎回一人でキャンプをしていますので……それにテントを建てるのは慣れると簡単ですし、ご飯の方は毎回カップ麺なので」

「それでも凄いですよ。テントを建てるのに慣れるまで来ているなんて。それにカップ麺のお湯を沸かすにしても家ではガスや電気に頼りっきりだけど、キャンプでは木を拾ったりして火をつけたりと色々と大変じゃないですか。それを毎回してるなんて凄いですよ」

「そ、そうかな……」

 

 お団子ヘアーの女の子は少し嬉しそうな顔をした。昔読んだ人とのコミュニケーションの本で女の子には取り敢えず褒めようって項目があったから、それを活かして言葉を探して褒めてみたが何とかなったな。まぁでもさっきの言葉は本音だけど。こんな小柄な女の子でも一人でテントを建てたり、火を熾したり、一晩過ごしたりするなんて凄いと思うよ。

 

「やまとー、そろそろ行くわよ」

「わかった。それではおやすみなさい」

「おやすみなさい」

 

 俺は女の子にそう言ってから姉ちゃんの車に乗った。あれ、なんか車が煙臭いな。

 

「おやすみなさーい、カゼひかないでねー」

 

 姉ちゃんも女の子に別れを言ってから車を走らせようとした。

 

「お姉ちゃん車停めて!」

「えっ!?」

 

 するとなでしこは突然姉ちゃんに車を止めるように言った。姉ちゃんは驚きながらも車を停めた。

「どうしたんだなでしこ?」

「お兄ちゃん携帯電話持ってる!?」

「ランニングウェアに入れっぱなしで持ってきてないよ」

「もうお兄ちゃん、持ち歩かなきゃ携帯電話とは言わないんだよ!」

「それはお前にだけは絶対に言われたくない」

「お姉ちゃん持ってる!?」

「はい、どうするつもり?」

 

 そう言って姉ちゃんはポケットから携帯を取り出した。なでしこはそれを受け取ると慌ててダッシュボードを開けてそこに入っていたメモ帳とペンを出して慌てて書き出した。覗いてみるとなでしこは自分の名前と電話番号を書いていた。

 

「ちょっと届けてくるー!」

 

 そう言ってなでしこは車から降りて走り出した。どうやらあの子に電話番号とかを渡すようだ。相変わらず凄いよななでしこは、直ぐに誰かと仲良くなれるなんて……一種の才能だな。

 そしてなでしこが戻ってきて姉ちゃんはまた車を走らせた。なでしこは車の中で姉ちゃんに家にキャンプ道具があるかどうか聞いていた。確かデカイテントがあったような覚えがあると姉ちゃんは言っていた。どうならなでしこはあの子とキャンプをする約束をしたらしい。まぁ、なでしこが強引に約束してそうだけど。そんな事を思いながら俺は夜の山梨の景色を見ていた。

 

 

 ⬜︎

 

 無事に家に着くと父さんと母さんがなでしこに軽くお説教をした。そして姉ちゃんがなでしこに『あんた煙臭い』と言って風呂場になでしこを放り込んだので、俺はなでしこの後に風呂に入った。風呂の後はご飯を食べて自分の部屋に戻った。

 俺は自分の部屋の本棚に置いてある本を適当に一冊取り出してからキャンプ椅子に座って本を読み出した。このキャンプ椅子は中学の時にビンゴ大会で貰ったのだが、結構高いやつらしい。この座り心地がなんとも言えなくて、本を読む時は毎回この椅子に座っている。

 

 

「お兄ちゃん入るねー」

「うーん」

 

 するとなでしこが枕を抱きながら俺の部屋に入ってきた。なんだか嫌な予感しかしない。

 

「おい、まさかと思うが俺の部屋で寝たいとか言わないよな?」

「当たり。これが双子のシンパシーなのかな」

「その格好と枕を見たら誰でも分かる。自分の部屋で寝ろよ!」

「だって、私の部屋段ボール塗れで寝る所がないもん!」

「どっかのバカが荷解きせずに富士山を見に行って遭難したからだろ」

「お願いお兄ちゃん、一日だけ!」

「姉ちゃんの所に行けよ」

「これ以上お姉ちゃんに迷惑をかけたら私……またあんな地獄を見る事になる」

「浜名湖を自転車でぐるぐるさせられたアレか。今回は富士山までの道をぐるぐるさせられそうだな」

「だからお願いします!」

「はぁ〜、一日だけだからな」

「ありがとうお兄ちゃん!!」

 

 こうして俺は数年ぶりに妹と同じベッドで寝る事になった。

 俺は忘れていた。なでしこと一緒に寝るのは嫌いだって事を。

 理由はコイツ寝相が悪いからだ。

 

 

 

 

「くしゅん……コイツ俺の布団を全部持って行きやがった」

「すやすや」

 

 隣を向くとなでしこが幸せそうな顔をして布団にまるまりながら眠っていた。




 次回はオリジナルストーリーになります。
 やまととなでしこが学校に搬入する前日の話です。
 お楽しみに。
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