双子の妹がキャンプにハマりました 作:トロホルモン
なでしこと一緒に鍋を作り出した。
「今回は私達も明日までちゃんとキャンプするよ!」
「えっ各務原もか?」
「あぁ。ついでに姉ちゃんも」
「お姉さんも来てるんだ」
「今は友達と富士宮で遊ぶ予定があるからここには居ないけど」
今頃は姉ちゃんは富士宮について友達と遊んでいるだろう。9時くらいになったらキャンプ場に戻ってくると言っていた。それまでは志摩の所にお邪魔させて貰おう。
「えきし!!」
するとなでしこは大きなくしゃみをした。
冬のキャンプ場にして遮蔽物の無い芝生の真ん中にいるから風とかをダイレクトに感じる。どれだけ厚着をしていてもこれは寒いだろうな。
「う〜急に寒くなってきたねぇ」
「貼るカイロあるけど使う?」
「えっ……せ、1500円?」
「それはもういいよ」
「くっ……2人分をこれで」
「おい、マジで渡してくるな」
俺は悔しそうな顔をして志摩に3千円を志摩の方に差し出したが受け取ってくれなかった。お金はそのまま財布にしまった。
「好きなだけ使いなよ、鍋作ってくれてるし」
「ホント、ありがとー。貼るカイロってどこに貼るのが一番効果あるのかな?」
「両目」
「太い血管が通っている所に貼るといいらしい」
「本当、お兄ちゃん貼って貼って!」
「貼れる所は自分で貼れ」
そしてなでしこは自分の身体に貼るカイロを貼った。手の届かなかった肩甲骨は志摩に貼って貰っていた。
俺は別に寒くなかったから、カイロは貰わなかった。
「………5分だけ横になっていい?」
「やめた方がいいと思う」
「寝たら鍋は志摩と2人で食べるから、なでしこの今日の晩御飯は無しだ」
「絶対に起きてる!」
なでしこは固く決意した。
そして、なでしこと志摩は鍋が出来上がるまで少し散歩しに行くと言って何処かに行った。俺は1人残って、鍋を煮込み続けた。
戻ってきたなでしこは少しは残念そうな顔をしていた。理由を聞くと、このキャンプ場で飼っている犬2匹に避けられたらしい。
……どうでもいい事で落ち込むなよ。犬に避けられる事はよくあるだろお前は。
⬜︎
いつの間にか日は落ちて夜になっていた。
志摩が持ってきていたランプを点けて貰って明るくしてもらった。
「よーし、坦々餃子鍋の完成」
「ま………真っ赤だ」
「そんなに辛くないから心配しなくていいよ」
「多少は辛いと思うけど、寒い時こそ辛い食べ物を食べて暖かくならないとな。もしかして辛い物苦手だったか?」
「いや、大丈夫」
志摩は辛い食べ物は大丈夫そうだな。
鍋を装ってから志摩となでしこに装った器を渡した。
「それじゃあいただきますか」
「うん、いただきます」
「い……いただきます。辛そう」
志摩はスプーンで汁を掬って飲んだ。志摩は驚いた顔をして『うまい』と一言呟いた。志摩の口にあったようで良かった。なでしこも『美味しい』と言って鍋を食べていた。
そして志摩となでしこはパクパクっと鍋を食べた。途中で暑くて上着やマフラーなどを脱いでいた。
「あのさ……この間はごめん」
そう言って志摩はなでしこに謝った。なでしこはきょとんっとした顔をして志摩の方を見ながら食べ続けていた。いや、食べる手を止めろよ。
そんな事を思いながらも俺も食べる手をやめなかった。
「……この間ってなんだっけ?」
「サークルに誘ってくれたのに、なんというか……すごく嫌そうな顔をしてたから」
「あの時の事をずっと気にしてたんだ」
「まぁ、その……もっとちゃんとした断り方とかあったと思うから」
「そうか。志摩も反省してるしなでしこも許してあげな」
「うーんうん、私の方こそごめんなさい。あの時はなんだかテンション上がってて、無理に誘っちゃって。あの後、あおいちゃんに言われたんだよ。リンちゃんはグループでわいわいするキャンプよりも、静かにするキャンプの方が好きなんじゃないかって?」
志摩はみんなで騒ぐキャンプよりも、一人でゆっくりと焚き火をしてコーヒーを飲みながら本を読んでいる方があっているように思える。だけど、ここ1週間はほとんど志摩と過ごしていてわかった事がある。
「それはまぁ……そうだけど」
「別にこうやって誰かとキャンプするのも嫌いじゃないだろ?」
志摩は一人で本とかを読んでいるより、斉藤とかと話している方が嬉しそうな顔をしている。だから、孤独が好きとかではないのだろうな。
「まぁ。……偶にならいいかな」
「あっ、リンちゃん照れてる」
「うるさい」
そう言って志摩は顔を赤くしてそっぽを向いた。
俺の方からはその照れた顔が丸見えなんだけどな。これは珍しい表情をしてる。ジロジロと見るのも志摩に悪いからこれくらいにしておこう。
「じゃあまたやろうね。そんで気が向いたら、みんなでキャンプしようよ」
「………わかったよ」
「その時はお兄ちゃんも一緒に」
「嫌だよ」
「おい、一人だけ免れようとしてもそうはいかないからな」
「……俺に恨みでもあるのか」
「恨みしかないな。お前の所為で大変な目にばっか遭ってるわけだからな」
「身に覚えがないんだが……ってもう鍋を食い終わってる」
「ポテチもあるけど食べるー?」
「まだ食うか」
「これ以上食べると、また太るぞ豚野郎」
そう言って、俺はなでしこからポテトチップなどのスナック菓子を没収した。なでしこはまだ食べ足りなさそうにしていたが、これ以上食べるとまた中学生の頃みたいに戻りそうだからな。
食べ終えた鍋や器などを洗う為に水場に行った。
水場にはさっきの男子高生の二人とさっきまで居なかった女子校生二人が仲良さそうに後片付けをしていた。
「ちょ、まだ泡が皿についとんね」
「本当だ。空、ちゃんと皿洗わないと!」
「それは俺が洗ったやつじゃないよ優里ちゃん」
「それ俺が洗ったやつだ」
賑やかな人達だな。それと、女子高生の一人に凄いパンクな女子が居る。あの髪型ってどうやってセットしてるんだ?そんな事よりも早く片付けないとな。
「さてと、俺達も片付けるか」
「わかった」
「なら私はスプーンとかを洗うね」
各々分かれて洗い物を洗った。洗い物を洗い終わった頃にはさっきまでの高校生達は居なかった。
なんだか不思議な人達だったなっと心の中で呟いた。
⬜︎
洗い物を洗い終えて、志摩のテントに戻って来た。俺となでしこはビニールシートに座り、志摩はキャンプチェアーに座ってラジオを聴きながら富士山の話をしたりした。
さっき姉ちゃんからメールが来てこっちに戻って来たと言っている。そろそろ眠くなってきたから姉ちゃんの居る駐車場に向かおうかな。
「ねぇリンちゃん、日の出って何時ごろ?」
「6時くらいかな」
「起きられるかな」
「起こさないからな」
「私は寝てるかな」
「大丈夫、目覚ましかけるから。だから、日の出の富士山見よっか」
「やだ寝てる」
お互いが眠そうに話している。
そろそろ限界のようだからここらでお開きにして寝ようと俺は言うと志摩は身体でこっくりと船を漕ぎながら『わかった』と一言言った。俺となでしこは志摩に『おやすみ』と一言を言ってから姉ちゃんが居る駐車場に向かった。駐車場では姉ちゃんが居て、なでしこが『明日日の出見るから6時前に目覚ましかけて』と少し話していた。俺は大きな欠伸をしてから後ろの席に座り布団を取り出して丸まって寝ることにした。
目覚ましの音が聞こえて俺は目を覚ました。たぶん、昨日なでしこが言っていた日の出を見る為の目覚ましだろう。
俺は背伸びをしながら欠伸をした。その後に姉ちゃんも起きたのか背伸びをしていた。
「あら、起きたのね。おはようやまと」
「おはよう姉ちゃん。いつもはこれよりも前に起きてるから起きられるよ」
「そうだったわね」
土日はいつもこれよりも早く起きてランニングしてるから普通に起きられる。さてと、俺はいつものランニングでもしに行こうかな。
「なでしこ起きな。日の出見るんでしょ」
「う〜……起きてるよ。ふふっ、起きてるって」
「まだ寝てるなこれは」
俺がそう呟くと、姉ちゃんはなでしこの鼻を摘んだ引っ張った。なでしこはへんな悲鳴を上げながら目を覚ました。
起きたなでしこと一緒に車から降りた。だが、まだなでしこはウトウトしている。たぶん日の出を見ている時に寝落ちするだろうな。
「コンビニで朝食を買ってくるけど何にするの?」
「おにぎりと温かいお茶で」
「焼肉と炒飯とプリンと唐揚げとポテチとバームクーヘンとアイスと豚骨塩ラーメン」
「やまとと同じでいいわね」
そう言って姉ちゃんは車を発進させた。
コイツは朝からこんなにも食うのかよ。しかも脂っこい物ばかり頼んでるしよ。
「それじゃあなでしこ、俺はキャンプ場をランニングしてくるから、お前は志摩のテントの所に居ろよ」
「わかった〜」
そう言ってなでしこはのそりのそりっと歩き出した。俺はそれを見てから軽く柔軟をしてから走り出した。
走って直ぐに富士山から日が出てきた。富士山からの日の出を見たのはこれが初めてだったから、それは綺麗に見えて一言しか声にならなかった。
「綺麗だな」
そう呟いてから俺はポケットから携帯を取り出して写真を一枚撮った。
うん、ちゃんと撮れてるな。そう確認してからポケットにしまってからまた走り出した。
これで鍋キャンは終わりです。そろそろオリジナルストーリーを書きたいと思います。
足の怪我はだいぶよくなり、やっと現場に復帰出来ましたが直ぐにお盆休みになりました。携帯も新しく買い替えたのですが、すごく大きくなった所為で扱いにくくて、ちょくちょく落とす事があって大変です。
次回は斉藤さんが登場する予定です。