使用PC:九頭竜天音
出身システム:シノビガミ
URL:https://character-sheets.appspot.com/shinobigami/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYharczwMM
文字数:2000文字と少し。
時間:1時間と2分
「血に満ちた忍びの道よ」
都心に群がるビル。その内の空白地点。中央に佇むのは1人の少女だった。
赤い瞳に黒い眼鏡。二房だけが濃い、薄青の髪。いたって普通の少女だと言われても不思議ではないだろう。
おかしいのは二点。1つは時間帯。今が昼間や夕方であればなんら違和感などなかったであろうが、今は日はとっくのとうに沈み、つい先ほど”今日”の終わった深夜。
そうしてもう一点。彼女は体中のいたるところに傷が残り、最低限の止血はある物の未だに血が零れ落ちている。
そんな彼女の手には脇差が握られており、その周囲には闇夜に紛れた魑魅魍魎が耽々と彼女の息の根を止めようと狙いを定めていた。
月が空に輝く丑三つ時。一般人の誰にも知られぬ争いが始められた。
「世界忍者連合が中忍頭。九頭竜天音、参ります」
その口上は自らの名を広めんとする流派故か。
言い終わると同時に抜き放たれた刀身の残光を残して彼女の姿は掻き消えた。
彼女の全力の踏み込みは、一般人には到底追う事が出来ないもの故に。
九頭竜天音はシノビである。一般人の想像上に存在する忍者ではなく。
文字通りの光速で動き、四肢がもがれようと、死に瀕しようと、己の意思だけで生き延びる怪物の別称ではあるが。
彼女の踏み込みは一瞬で光の速さに達し、妖魔の包囲網を抜け出ることに成功する。
勢いのままビルの壁に着地すると、その壁を走り始める。懐から一枚の遁甲符を取り出すと簡素な詠唱を始めた。
「我が血を紡ぎし祖なる邪神よ。深き大海に眠りし神よ、今一時私に力を貸したまえ」
鈴を転がすような声色で詠唱を終えると、真っ赤な瞳に金が混じり始める。それだけでなく、彼女自身の身体能力が底上げされていると言うのはビルの壁に深々と刻まれる彼女の足跡を見れば自明だろう。
瞬く間にビルの群れを駆け抜け、大通りの行き止まりに存在するビル壁に着地する。
反転し先ほどまで進んでいた道を見れば妖魔が迫っていた。
都合12。ボロボロの彼女には流石に厳しいものがあるだろう。少なくともこの妖魔どもはそう考えているようで、どこか余裕そうに嗤っている個体も散見された。
不幸だったのは、彼女は追い詰められた時こそが真価であると知らなかったことだ。
「我が血よ、今ここに喚起せよ」
先ほどと違いたった二文の詠唱。或いは単なる口上だったのかもしれない。
そうして、彼女は逆手に握り直した脇差を自らの腹に突き立てた。
彼女の顔は苦悶に歪む。脇差を引きずり出した傷口からは鮮血がとめどなく溢れ出す。
しかし、彼女の握る脇差は、彼女自身の血で刀身が延長され、およそ大太刀ほどの長さを持っていた。
妖魔達はその異形と言って差し支えない武器にひるむ者も居れば、弱った獲物にこそ勝機を見出したのか。猿のようなその妖魔は勢いよくその腕を振り下ろそうとした。
一閃。
薙ぎ払うように振られた刀身は、とびかかってきた妖魔を易々と一刀両断した。
弱り切った筈の、ただ刀だけが不気味なそれに、いともたやすく両断された同胞を見て動揺したのか。
妖魔たちは次々に攻撃を仕掛ける。異形の爪の一撃。巨大な石を召喚するもの。動きを止めんと術を紡ぐ物までいた。
しかし、動揺し、まともに連携の取れないそれらの攻撃をいともたやすく避け切ると、その速度のまま反撃を行う。
六閃
一瞬のうちに6度行われた突きは、1度で1匹の妖魔を討ち払った。
交戦開始してからたった2度。たった2度の攻撃で既に妖魔の群れは壊滅状態だった。
形勢不利を悟った妖魔は共食いを開始する。
ただでさえ少ない数を減らす愚行に見えるが、その成果は如実に表れた。
5匹の妖魔がまるで融合でもするようにそのサイズを増やし、瞬く間に巨大な1つの妖魔として成立する。
それを見て、彼女は嗤った。
普段はなりをひそめている戦闘狂としての側面が覗かせたのもあるが、それ以上に彼女は一匹を打ち倒すことにこそ向いているのだ。対多攻撃は単に必要だから身に着けただけのこと。
妖魔の振りおろす剛腕に対し真っ直ぐ刀を振り上げる。
追い詰められ、死に瀕した時にこそ真価を発揮する一撃。《背水》と呼ばれる業はその巨躯を一刀両断する。
しかし、そのサイズこそが脅威だと言わんばかりに妖魔だった残骸は彼女に降りかかる。
それを見るや彼女は刀身に纏った血を振り払う。振り払われた血液は渦巻き、彼女を守る壁としてそびえたつ。
残骸が地面を叩く音が聞こえなくなったころ。彼女はその壁を解いて立ち上がる。
周囲を確認してまだ生きているものがいないことを確認して、彼女はその脇差を鞘に納める。
懐から取り出した絡繰りの鴉に幾つか言伝を託す。
その鴉が朝日と共に戻ってくる。
とある研究所から逃げ出した妖魔群の掃討。彼女に任じられた命は夜明けとともに終了した。
「はぁ……後始末なんて面倒な仕事受けちゃったなぁ……早く二人のところに帰らなきゃね。」
グズグズと治りかかっている腹を撫でながら帰路へとつく。
度重なる自傷で子を成せないと知ったのは何時だったろうか。
先天的な武の才も、天才とでも称すべき術の才能も存在しない自分にはこれしかないのだと。
目もくらむような友達に並び立つための手段。大切な友を守るための手段の代償としては後悔はしていないと、彼らに隠したままの秘密を抱えて、彼女の姿は朝焼けに紛れて消えていった。