またいつのまにか寝てしまっていた。
寝ている彼の隣で目覚め、喉の渇きを覚えた私は昨夜の情事で乱れたベッドをどかして伸びをする。
「んー!」
全身を思いっきり伸ばしてもどこかまだ気怠い。
股下から身に覚えのない湿り気を感じた私は、それが汗ではないことを指先で確かめることで、昨日何をしていたのかを思い出した。
「そっか……昨日私は……」
彼に沢山愛してもらったその幸福感を思い出し、私は肩を擽るように笑う。
昨夜の彼は、最初はぎこちなくて虚勢を張っているところさえも可愛かった。時間を重ねるに連れ、精一杯私と向き合い、その鍛えられた腕で私を優しく抱きしめてくれた。不安なのは私だけじゃなかった。カズマも初めては不安だったのだ。
姿見から映り込む彼の顔がさっきと角度が違う。
さては私の方を見ながら寝たフリをしているのだろう。
「カズマ?ホントは起きてるんでしょう?」
「……なんでわかったんだよ」
「わかりますよ、カズマのことならなんでもわかります」
私は誰よりもあなたのことを見ているのだから、あなたの事でわからない事は今はもうほとんどない。
「なんだよそれ」
彼は眠そうに片目だけ瞑り微笑むように言う。
「 ところで身体は大丈夫か? 痛かったら今日は無理せずこのまま寝ちまっても良いんだからな」
「その時はカズマが面倒を見てくれるんですか?」
「当たり前だろ、めぐみんが倒れたら……誰が日課の音を聞かせるんだよ。今じゃ爆裂魔法を撃たないと街中がザワつくんだから」
「そうなんですか」
「それだけ、お前の爆裂魔法は俺たちだけの日課ではなく街の人にも馴染んでるんだからな。嘘じゃないからな」
「そんな話初めて聞きましたよ。少し前まで迷惑がられていたのに、今ではなくてはならないものになっていたとは、これで私が倒れたらカズマが爆裂魔法を撃ちに行ってくださいね。あと今日は身体が少し重いのは本当です」
初めては痛いというのはこういうことなのだろう。
最初は身体が真っ二つに裂けるように痛かった。
だけれど、その痛みを上回るほどの幸福感をあなたは私に与えてくれた。それだけでもんな痛みでさえも乗り越えられるように思えた。
「もし、カズマが我慢出来ない時があったら私はいつでも……」
私の言葉を言い切るうちに彼は私の言葉を遮った。
「バーカ。無理するなって言ったろ?めぐみんの今日の当番は……洗濯だったよな? いいよ、俺が変わってやるから」
「どこまで優しいんですか。そこは十代の性欲をなめるなよ。とか言うところでしょう?」
「待て待て、めぐみんさんはさっき俺の事を知ってるような口振りだったのに、それはあまりにも見くびりすぎだと思いますよ」
飄々と応える彼の言葉には少しムカつくところはあるが
。
「めぐみんをこんな風にしたのは俺なんだし、その……責任は取らないとな。だから俺に任せとけって」
顔が熱い。耳が熱い。
微笑みながら応えてくれる彼の声が頭の中に響いてゆく。
こんな顔を彼に見られたくはない。
私は彼の布団を引き寄せて潜り込み、目元まで顔を出して。
「そ、それならカズマにおまかせしますね。 それとその……昨日言ってくれた言葉、もう一回言ってくれませんか?」
カズマはあごを指でぽりぽりと掻きながら怪訝な顔をする。
「昨日? 俺何か言ったっ……け」
それを言いかけると彼の顔がみるみる真っ赤になり。
「さて、俺はもうそろそろギルドに顔を出しに行こうかなー」
「あっ!それはわかって言ってますね!」
とぼけ方があまりにも不自然だ。
でもどうしても聞きたい。
「やだよ、そんなホイホイ言ってたら言葉の重みが変わってくるだろう?それに昨日とはいえまだ時間が経ってないんだからまだ言いたくない」
何を言っているのだろうこの人は。
「意味がわかりませんよ!良いじゃないですか減るもんじゃないですし」
「あの言葉は俺にとっての爆裂魔法なんだよ。一度言ったら魔力切れでその日は言葉すら話せなくなるんだよ」
どんな苦しい言い訳をしようとも、優しい顔をしたり、子供みたいに恥ずかしがる顔をしたり、忙しく変わる彼の表情を見るだけで許せてしまう。
そんな彼を見て私は諦め気味に溜息を吐く。
「はぁ……どうしても言ってくれないんですか? 」
「言わないってわけでもないけどさ……」
「カズマにとって、その言葉にはカズマなりのこだわりがあるんですね……」
私は彼の隣に歩み寄り、その彼の大きい手の上に自分の手を重ねる。
「私はあなたを……カズマを愛していますよ」
私のまたの告白に彼もまた諦め気味に大きなためいきをつき。
「俺もお前の事を愛してるよ。めぐみん」
先程まで目を泳がせていた彼はこういう時はしっかり目を合わせてくれる。それでも言ってくれた事が嬉しくて胸がいっぱいになる。
「あのさぁ、めぐみん?」
「言った手前物凄く申し訳ないんだけどさ、これの処理をお願いしたいんですけど」
そう言うと彼は自分の下半身に目配せして、察してくれと言わんばかりな苦い顔をした」
「気分が優れないと言ったじゃないですか。もう、しょうがないですねぇ……。動かないでくださいよ?」
そして私たちは誰にも邪魔されないように扉を施錠し、飽きるまで体を重ねて愛を確かめあった。