ヤンデレは世界を救う ─ホロライブ・オルタナティブ外伝─   作:らっくぅ

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サブタイトル、ひねりがなくてすみません…しばらくこれのナンバリングでやっていきます。


6話 逃避行⑶

 ハプニング、というか困難はいきなり訪れた。

 

 

 

 道中運良く見つけた電動バイクステーションでバイクを借り、街に着いた時。

 

「…あ」

 

「? どうしたのです?」

 

 レンタル料を支払おうとポケットに手を入れたスメラギの動きが、止まる。

 

「ない」

 

「え」

 

「そういえばデバイスはとっくの昔に捨てたんだった…」

 

 今の時代、ペーパーレス化なんて言葉が死語とされているくらい電子化が当たり前になっている。

 

 もちろんスメラギも例外ではなく。

 

「えー…と、ってことはスメラギさん、今一文なし…」

 

 るしあはちらりとさっきまで乗ってた電動バイクを見やる。

 

「…ご、ごめん…」

 

 こんな事になるなら、デバイスごと捨てるなんてしなくとも、中にいたAIだけ追い出せば良かった。完全に死ぬことも滅びることもできないのだから、どこかでこのような事態になるのはそれほど想像に難くないはずなのだ。自分はどうしてこうも詰めが甘いのか…

 

「ふふっ、スメラギさんにもこういう一面があったのですね」

 

「…幻滅したかい?」

 

「いいえそんなこと! むしろ親しみやすくて、るしあは好きですよっ。……あ、えと、好きって、そういうんじゃなくてですね…!」

 

 るしあが慌てて訂正するが、誰かに好意を向けられるのは純粋にありがたかった。

 

「…ありがとう。君は優しいね」

 

 今はただ、この気持ちをそうと表現することしかできなかった。

 

「そ、そうですかねぇ〜えへへ……あ、そ、そうだ、早く街に入りましょうっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずはご飯ですねっ。でも外食店だと顔を覚えられたりしたらまずいですよね。無人レジがあるスーパーとかコンビニの方がいいのかな…」

 

「長居するような所はやめといた方がいい。俺も手っ取り早い小売店に賛成だ。ただ、セルフレジは顔を見られずに済むけど、逆にレジの監視カメラにばっちり顔を写す事になってしまう。データより人の記憶の方が曖昧だし、有人レジのある店に行った方が安全だと思う」

 

 そうは言っても、人件費削減の為に完全無人制となった店は多い。専門店やコンビニなんかは真っ先に全滅だった。

 

「郊外へ行けば時代遅れのスーパーなんてすぐ見つかるよ。この世界の各都市がメガロポリス化していないのは、世界自体が田舎だからさ」

 

 つまりはどんなに大きい都市にも「縁」が存在するということ。そこならば未だに前時代的な営みが当たり前のように続いているはずだ。

 

「じゃあ、今るしあ達は街の入り口にいるから…ぐるっと回るように歩いていればそのうち見つかるかもしれないですねっ」

 

「あぁ。でもって、多分住居の問題もそこで解決すると思う」

 

「? そうなのです?」

 

 それは見たら分かる、とでも言うようにスメラギは首肯した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お腹いっぱいなのです…生き返ったぁ〜」

 

「とりあえず失血死することは無くなったな。じゃあ、行こうか」

 

 とっととスーパーから出ると、スメラギは歩き出す。

 

「どこへ行くのです?」

 

「拠点だよ。しばらくはここに潜伏することになるから、見つかりにくい所じゃなきゃダメだ。部屋を借りるのはもちろん、ホテルや民宿なんかもアウト。となると残る選択肢は1つだけ」

 

「うっ…できれば野宿以外の選択肢でお願いするのです…」

 

「そんな目立つようなことしないよ。アレだよ」

 

 スメラギは人気の少ない地区へ辿り着くと、見るからに古そうな小高い建物を指差す。

 

「あぁ、廃墟ですね」

 

「都市の衰退で使われなくなったかつての居住区。ここなら誰かの目につくことなく、しかも記録を残すこともなく安全に生活できる」

 

 さらに金を払うこともなく、というのは言わずもがなだ。ただでさえスメラギは一文なしなのだから。

 

「こういう所は得てしてホームレスの住処になってるとはいえ、誰も使ってない場所はあるはず」

 

 そう言うとスメラギは「超電磁砲」で微弱な電波を放出し、建物内の生体反応を探知していく。

 

「便利ですね〜その能力」

 

「まぁね…ありがたく使わせてもらっているよ」

 

 そうして、オンボロアパートにある1つの部屋にたどり着く。とりあえずドアは開閉できる程度には問題ないが、さて中はどうだろうか。

 

「埃っぽい…。でも窓が割れてるの以外は特に問題なさそう。ここ、いいんじゃないですか?」

 

「そうだね…窓のある部屋を使わなければまぁ何とかなるか」

 

「あ、窓直せますよ。〈創造建築(アイビス)〉」

 

 るしあは軽い調子で魔法陣を構築すると、割れて飛び散っていた窓の破片が元の場所へ戻っていった上に、足りない箇所すらも埋め合わさっていき、みるみるうちに窓は完全な状態に戻った。

 

「手先が器用だね」

 

「えへへ…こういうのは得意なんです」

 

 逆に言えば戦闘魔法は不向きということ。最初に会った時に魔物に対して腰を抜かしていたのは、彼女に戦闘能力がない為だったということか。

 

「いえ、本当は戦闘魔法も使えることは使えるのですが…あんまり、戦うのは慣れてなくて…」

 

「大丈夫。君は戦わなくていい。君のことは俺が守るよ、絶対に」

 

「は、はい…ありがとう、ございます…。でも、どうしてそこまでしてるしあを助けてくれるのですか?」

 

「…さあね。俺にも、よく分からない。だけど…君の事は守らなくちゃいけない。そう思うんだ」

 

 的を得ない回答だったが、るしあはそれで満足した。これはきっと本心だと、るしあは思ったからだ。

 

「…助けてくれたのがスメラギさんで良かった」

 

「? どういうこと?」

 

「あ、いえ何でもないのですっ! そ、それよりっ! お掃除しませんか? これからここで生活するんなら、最低限の清潔さは保っておくべきですっ」

 

「そうだね。とりあえず寝転がれるくらいには綺麗にしておこうか」




大学卒業までにはホロオルタの第二部を書き終えたいと思っているので、本作は何とか今年度中に書き終えます。対よろです。
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