「これで入学式を終わります。新入生は写真撮影がありますので、校舎の前に集合してください」
教員の言葉にふぅと一息ついて椅子から降りる。装飾された壁や天井を横目に校舎前に向かって歩き出す。全体的に見て面白味のない入学式だった。入学式の見どころは?と聞かれたら絞りだした末に風影様の御言葉と答えるぐらいだ。
というか、
後から知ったのだが、風影さまからの祝言は毎年あるわけではなくて戦況や執務の進局にもよるそうであったらかなり運がいいらしい。そりゃ盛り上がるわ。
考え事をしながら歩いていると名前を呼ばれた。
「マチちゃん!」
自分の名前が呼ばれたので足を止めて辺りを見渡す。が、それが悪かった。
「い"っ!」「わっ…!」
背中に衝撃と共に声が上がる。私も驚いて小さく悲鳴を上げる。後ろを振り向くと、尻餅をついた少年がこちらを睨んでいた。
どうやら私が急に止まったせいでぶつかってしまったらしい。軽く睨まれながら危ないだろと、言われすみませんと謝る。
「大丈夫ですか?本当にごめんなさい」
尻餅をついている少年に手を差しのばしたが乾いた音とともに払われてしまう。地味に痛い。
「別にあんたに頼らなくても立てる」
少年は立ち上がると早々に去って行く。
(あーあ。楽しくない入学式から最悪な入学式になっちゃった…。まぁ、私が悪いけど…)
そんなにツンケンしなくてもいいじゃんと思いながら手をさする。
鼻痛そうだったなと思いながら小さくなる少年の背中を見つめる。…まあ、いっか。大丈夫そうだったし…。急に止まった私が悪いし…、うん。
先ほどの反省を活かし、道の端に行き先程の声の主を探す。人が多くて、場所が分からず辺りを見回す。てか、まだいるの?さっきトラブって足止めくらっても声をかけられなかったのに。もういないのかな。なんなら、幻聴だった?
私の名前を呼ぶ人と言ったら、エテアさんぐらいしか思いつかないけど、声が違うしそもそもエテアさんは来てない。下の子たちの面倒を見なくちゃダメだから。
となると、残りは____
「うわっ!」
背後から肩に軽い衝撃を受け驚いて声を上げるとともに思考が中断される。驚いて距離を取り、数歩歩いて振り返る。
振り返ると、赤髪の見知った人物がいて口が開いたまま何も言えず代わりに目を釣り上げる。
「…いつものお返しってことかな?サソリ」
「ごめんね…、聞こえてないのかと思って…」
眉を八の字にして謝るサソリに、別にいいよと返して心を落ち着かせる。多分悪気はなかったんだろう。
というか、
(サソリって忍になるんだ…。まぁ、チヨさんが忍だしそうか。)
身内に忍がいる場合は本人も忍になるという人が多いらしく。それは憧れであったり、復讐であったりと理由は色々なのでエテアさんにそこは聞くなと言われている。エテアさんはその辺りにも厳しい。
サソリはいつも着ているようなゆったりとした服ではなく、動きやすいよう軽装をしている。そりゃあ、あの服じゃ動きにくいよね。
サソリはキョロキョロと辺りを見渡すと、探しものが見つかったのか背伸びをしながら、大きく手を振って自分を主張する。
「こっち!」
「…誰かと待ち合わせ?」
「ううん、違うよ」
待ち合わせじゃないならなんだろう。サソリに目を向けて答えを得ようとするが、ニコニコと笑っていて分からなかった。
「サソリ!」
少し高い声がサソリの名前を呼んだ。思わず声のした方向に目を向ける。サソリの名前を呼ぶってことは、サソリの身内かな?確かチヨさんは女性の人だけど、年齢的にこんなに高い声ではない筈。いやまて、木の葉にいたよね…。年齢詐欺の人。思い出せないけど、確か女の人で……まぁいいや。今思い出しても仕方ないし。
好奇心から人混みに目をやると人の流れから逆らう子を見つけた。茶髪で私たちと同じ年齢ぐらいの男の子だ。人の通行の邪魔にならないようにかすみませんと言いながら進むのが聞こえる。直ぐに人混みから抜け出すと、片手を上げて先ほどよりも速くこちらに向かって来た。
「サソリ急に走んなよ!」
「ごめん、でもそうしないと追いつけなかったから…」
「まぁいいぜ、追いつけたんだろ?」
「うん」
「で、この子がサソリが、言ってた子か?」
話が変わるように、サソリから私に目線が変わった。
「そうだよ。マチちゃんって言う僕の友だちなんだ」
サソリの友だちという言葉に恐る恐る聞く。
「もう友だちできたの…?」
「そうだよ」
内向的なサソリに友だちが出来たのに驚いて、思わず茶髪の男の子に目を向ける。目がバッチリ合い、速攻逸らす。
(やばい、やばい。目があった。どうしよう。自分から話す?てか、話さんと失礼じゃない?)
「あ、えーーっと…。その…ね?」
流石に失礼だと思い、茶髪の子に向かって自己紹介をする。
「えっと、初めてまして。マチって言います。その、よろしく、ね?」
…しどろもどろになりながらだが。
やめろよ。私人見知りなんだよ。サソリの時はテンション上がってグイグイ行ったけど私本当は内向的な奴なんだよ。ごめんよ、サソリ。あの時グイグイ来られて怖かったろ。
私の現実逃避をよそに男の子は人好きのする笑顔を浮かべて話しかける。
「おう、よろしく!俺はコムシ、好きに呼べよ!」
元気よく笑うコムシに口角を上げる。あ、この子めちゃくちゃいい子じゃん。
「なら私のことも好きに呼んで」
「じゃあ、マチ!」
ニカッと満面の笑みで名前を呼ばれる。
「コムシ…?」
流れに乗ってこちらも呼び捨てで呼ぶべきか迷った末に、小さく控えめに呼ぶ。
「ん?なんだ?」
振り返り目が合う。
「…ううん、呼んだだけだよ」
お友達。サソリ以外ではじめての友だち。凄い入学式で友だち…!めっちゃ嬉しい。前世では入学式で誰かに話しかけるなんて無理で、ましてや友だちを作るなんて夢のまた夢だ。だけど、それが今実現した!
今までにない経験で胸が躍る。思わず頬がにやける。多分今変な顔してるんだろう二人と目が合う。サソリは相変わらずの表情だけど、コムシはニコニコしてる。が、すぐにコムシの表情が一変した。
「ってか、走らねぇと間に合わねぇ!!走るぞ!」
コムシの言葉に思わず硬直する。あ、やっべ。そんなことを思っていると腕を掴まれ無理矢理走らされる。
「え、ちょ、まっ」
「ほら、走らないとマチちゃん!」
サソリもコムシの後を追い走る。私の手を掴んで。
右手はコムシに、左手はサソリに捕まって二人のペースで走らされる。いや、ほんと待ってほしい。私は足にチャクラを集中させ活性化して動くなんて無理なんだけど……!?なんでできんの!?二人の背中にそんな思いを込めてながら走るが、二人はペースを変えることはなかった。声を上げようとしたが、絶対舌を噛むと思い出来なかった…
「お、丁度だね〜。おいで」
カメラを構える初老の男性が穏やかな口調で声をかけるが、それに返事を出来るほど元気じゃない。二人に掴まれたまま列に並んでようやく手を離された。
なんとか間に合ったが、二人は少し息を荒げているのに対し、私はゼェハァと肩で息をしていた。撮影は私が回復する時間はなく、すぐに写真を撮られ、解散となった。
後日、写真を見たエテアさんとレンを含む下の子たちに笑われた。マチだけ、顔が真っ赤!と。
恥ずかしくてうるさい!と大声を出して写真を没収する。
改めて自分の写真を見ると納得した。うん、自分から見てもめっちゃ顔赤いわ。こんなのを残しておくのもなと思い捨てようかと思うが両隣にいる二人に目が止まり。考えが揺らぐ。
この二人めっちゃ笑ってるな。この二人のお陰で間に合ったけど、この二人のせいで私の顔が真っ赤になったんだと思うとなんだか、だんだん憎たらしくなり再度捨てようかと思う。が、どうせ誰も見ないんだしと思い、貰った本に挟んだ。もっと良いところに仕舞いたいが、ここにあるものはほとんど共有の物なのでこれで勘弁してほしい。
でも、そうだね。下忍になって給金を貰ったら、そしたら
_______写真立てでも買いに行こう
コムシって15歳で国境警備するぐらいなんだし、天才やろ…!!そうであってくれ