1話
入学祝いということでエテアさんが買ってきたショートパンツにブラウスそして砂と日差しよけの上着に袖を通す。砂隠れの日差しは強すぎて直に浴びると肌が赤くなってヒリヒリするので皆肌を覆っている。
なんで服のことについて話すかというと、今プチファッションショーを開催しているからだ。女性なら大半の人がやったことがあるだろう自室でのファッションショー。やったことない人は是非ともやってみて欲しい。お気に入りの服を並べて、手に取ったり実際に着てみたりするのは本当に楽しくて最高の気分になるから。こんな服を着てたらなと想像するのとは別の、ワクワク感みたいなのがあるから。
姿鏡の前に立ち、角度を変えて見る。
うん、めっちゃ可愛い!流石マチ。なんでも似合う。
クリーム色のショートパンツに、薄く藤色に染められたブラウスそして紺色の上着と、華美過ぎない服装だ。さらに言えば汚れても良い服装である。
最後に髪をポニーテールにして、もう一度姿鏡の前に立つ。おけおけ、アホ毛出てないな?前髪生きてるな?よしよし。最後にもう一度遠くからおかしなところはないかを確認する。__うん、ないね。
完璧!!
鏡に映った自分が頬を緩ませているのを見て、さらに舞い上がる。めっちゃ可愛い。最高!
「ねーちゃ、まだぁ?」
ドア越しに、レンの声が聞こえて慌てて返事をする。
「いいよ!」
言い終わるや否やドアが力強く開けられレンが突進してくる。その衝撃に身体のバランスが失いかけるがなんとか持ち堪える。
「どう?似合う?」
レンだけかと思ったら他の子達も一緒にいたらしくみんなぞろぞろと入ってくる。レンを下ろして、下の子たちに引っ張られたり引っ付かれたりしながら会話を続ける。
「…かわいいよ」
「でしょー!」
レンの返しに笑って自信満々に返す。
当たり前やろ!エテアさんのセンスある服選びにマチの顔にスタイルこれで可愛くないとかもう凹むからね。
レンを含む下の子たちに、今日は早く帰ってきてねと言われたり手を繋ぎたいと言われたので繋いだりして玄関まで一緒に歩く。靴を履くために手を離して段差を利用して座る。これまたエテアさんが買ってきた忍靴を履き、ドアを開ける。
閉める前に振り返って満面の笑みで口を開く。
「いってくるね」
「いってらっしゃい」
重なった言葉にクスリと笑って、ドアを閉めた。
足取り軽くアカデミーまで歩く。まぁ、スキップしてたけど。
そう、今日はアカデミー登校初日のめでたい日である!
校舎を目に映つして歩き出す。
新入生用に矢印などが描かれた壁を見ながら歩く。めっちゃわかりやすい!助かるなぁ。と思いながら所々可愛くデザインされたそれを見る。砂隠れのアカデミーは大きいというよりも広い。あと凝った内装をしている。緊急時にはシェルターとしての機能も持っているとか、風影さまの砂鉄が要所に使われているとか色々言われている。幽霊が出るとかあるのかなぁと思い聞いてみたが一切なかった。そんなのいるわけないじゃん、いないから大丈夫だよ怖くないよと子供扱いされた。取り敢えず大人の対応をしておいた。
案内に従って角を曲がる。壁に描かれた案内は最後に大きくここ!という言葉と共に矢印で示されていた。恐らくこの先に新入生の教室がある。そう思うと気持ちが昂って心が落ち着かない。新生活に対する不安と喜びが両立して立ち止まる。心を落ち着かせようと、目をゆっくり閉じ勢いよく開ける。うん、いける。エテアさんに教えてもらったリラックス法をしてドアに手をつけた。ドアを開けると一斉に視線が向けられ思わず後ずさる。しかし、大して気にならなかったのか一瞬で視線が逸らされる。
(これ地味に嫌なんだよね……。)
視線が怖いと言うよりも、急に一斉に見られるとビックリするみたいな。見られて緊張するのと少し似ていると思う。でも自分もドアとか開けられたら誰が入ってくるか見ちゃうんだよね。
ドアを閉め辺りを見渡して知り合いがいないから探す。教室が大きいこともあり、人数が少なめに見える。あと、グループで固まっているのもあり見にくい。知り合いはいないみたいだし取り敢えずあんまり人が来ないところに座わ__
「お、マチ!こっち!」
座れなかった。聞いたことのある声に名前を呼ばれ立ち止まる。声の出どころを探すとあっさり見つかった。コムシだ。
声を張り上げ、手を大きく振って場所を知らせてくれるコムシに手を振りかえす。友だちがいることに安心して、足取り軽く近づいて行く。
「おはよ」
「はよっ!」
お互い笑顔で挨拶をして隣に座る。
「来るの早いね、やっぱ楽しみだった?」
「そりゃあな。にしても、マチって結構真面目なんだな」
「流石に初日で遅刻は嫌だからね」
「それもそうだな」
話が続いている間も、何度もドアが開かれてはその度に目を向ける。今回は金髪の男の子が入ってきた。皆んなに見られて驚いてるのかわいいと、思いながら視線をコムシに戻す。
「そうだよ。あ、ねぇ、今日って何するの?自己紹介とか?」
「んー、毎年自己紹介して予定とか聞いて帰ってらしい」
「へぇー、よく知ってるね」
ドアの開かれる音を拾い、目を向ける。少しして見慣れた赤髪の男の子が視界に移り、体も向ける。教室に入ってきたのがサソリだと分かると立ち上がって声を出す。
「サソリ!こっち!」
コムシも同時に全く同じことを言っていたのが聞こえて、驚いて顔を見る。コムシもそれに驚いているらしく、思わず顔を見合わせると笑った。私もつられて笑った。何が面白いと聞かれると言えないけど、お互いを見て意見が一致したのに笑ってしまったんだと思う。お互いサソリが来ても暫く笑ってた。
「なんで二人とも笑ってるの?」
近くまで来たサソリが不思議そうに聞くが、笑っていて答えられず手を軽く持ち上げてちょっと待ってとジェスチャーする。コムシも声を押し殺して笑ってる。側から見たらヤバいやつだが勘違いしないでほしい。
答えてくれないとわかったのか、暫くするとサソリはジト目になって見てくるそれに思わずコムシの方を見たら一緒のことを考えていたらしく頷き返された。
コムシは笑いながらサソリに背中を叩き、私はサソリの肩に手を置いて笑う。大丈夫、ちゃんと理由いうからと込めたが伝わらなかったらしいサソリは歩き出して後方の席に座った。私とコムシはというと、そんなサソリを気にせず両サイドに挟み込むようにして座る。なんなら、コムシと一緒になって腕も組んでやった。
「暑いんだけど…」
サソリからの苦情を気にせず太ももが軽く当たるぐらいまで更に密着してやる。コムシはそれもう顔が当たるぐらい近づいていた。サソリは今までに見たことない顔をしていた。うん、多分怒ってないね。いけるいける。大丈夫大丈夫、サソリはこんなので怒らん。泣くだけだ。
「いやぁ、今日は寒いね!」
大袈裟にそういえば、コムシが私の意図を汲み取り口を開く。
「そうだな、さみぃな!」
「だから暑いって…!」
サソリがスペースを求めてこっちに寄ってくるが、コムシもそれに続いたため更に狭くなった。サソリ今すんごい顔をしてるんだよねぇ。かわいいね!
…待ってガチで寒い。サソリを揶揄ったあたりから寒気がする。
なんでだ、冷房でも聞きすぎてるのかなと思い辺りを見渡すと目つきがやばい女子たちがこちらを睨んでいた。即座に目を逸らし、現状をどうするか考えるよりも先に本能が動き即座に離れた。あの目…絶対一人になったらリンチされるやつだ。
急変している私に、不思議そうにしているコムシに告げる。(サソリはホッとしてる)
「…コムシ周り見てみて」
あまり聞こえないように小さく。コムシは私の言った通りに辺りを見渡すと、顔を悪くし距離をとって離れた。
「おいどうするだよ、あれ。絶対目をつけられたって」
「どうしようもないよ、これはもうサソリを差し出して機嫌を取るしかないよ」
「え」
サソリから驚きの声が上がるが、悪いけど今サソリを気にしてる場合じゃないんだ…。ごめんね
「マジかよ。てか、別に俺はいいだろ。男同士だし」
「え、なら、私終わった?終わったくない?なに、初日からアカデミーライフ終了とかまじ?」
「ほら、俺がいるから」
「僕もいるよ」
「優しい…二人の優しさが染みる…」
二人の言葉と笑顔に癒されつつ、頭を働かせる。
でもダメなんだよなぁ。女子って怖いから。女子って根にもつから…。共通の敵がいるととんでもなく叩くどころか、集団でゴリラ並みのフルパワーで殴ってくるから。主に精神に。
「お前らぁ!席につけ!前を向け!私語を慎め!俺がいいと言うまで喋んな!」
突然の声に肩が跳ねる。
ドアが開かれたと思ったら強面の男性が声を荒げて教壇を登り、持っていた書類やファイルを机の上に離した。重力に逆らうことなく音を立て机に置かれる。
「俺が今日からお前らのクラスを受け持つ、アラハだいいな?呼び捨てにしたいやつはそれ相応の覚悟を決めろ!次お前の番だ」
ばっちし目があったらしい、茶髪の男の子が物音を立てながら急いで席をたつ。
「僕はセントですっ!将来は風影になりたいです…!!」
声を震わせてセント君は、アラハ先生が頷いたのを見ると席に座った。
「そりやぁいいな!次!」
続々と当てられ自己紹介をしていくのを眺めて、何を言うのか考える。
(定番といえば、よろしくお願いしますとか将来の夢とか?でも私将来の夢とかないんだけど…。)
思考の海に沈んでいたのを見知った声によって引き上げられる。
「俺はコムシ!将来は親父みたいな忍になることです!」
(!そんなに順番進んでたのか…!)
というか、コムシのお父さんって忍だったのか。だから、あの時のチャクラを込めて走れたのか…。なら納得だ。恐らくだが、お父さんからチャクラの扱い方などを習っているんだろう。コムシもチャクラコントロールが上手いのかな?もしそうなら教えて欲しいんだけどなぁ…。サソリに教えてもらってばっかで申し訳ないし、サソリも自分の方に集中したいだろうし。
「頑張れよ!次!」
「サソリです。将来はチヨバア様みたいに人に傀儡を教えられるようになりたいです」
(まだ変わってなかったの、それ…)
照れたように笑ったコムシを見て昔を思い出す。サソリと修行中に休憩がてら話しているとチヨさんの話になった時があった。その日は珍しく弱っていたのか、「昔はずっと一緒にいたけど、最近は忙しくて会えない」と寂しげに溢した。私は珍しくチヨさんの自慢ではなかったことに驚いて返事に困った末に「そっか、ならご飯とか作ってあげたら?」と提案した覚えがある。なんの解決策にもならない提案をしたためサソリは無言だった。多分何言ってんだコイツとか思ってんだろうなと思い、これ以上何も言わない方が良いと自己完結して手元に集中した。ちなみに、サソリはその日は早めに帰った。私は居残りで練習したしめっちゃ反省した。後日サソリに詫びで手縫のテディーベアを上げた。テディーベアを受け取った際にサソリがお礼の言葉と共に言った。チヨバア様みたいな凄い傀儡師になるのだと、チヨバア様みたいに人に教えられるようになりたいと顔を赤くしてそう答えたのだ。
サソリがご飯を作ってあげたのか、チヨさんが多忙じゃなくなったのかは分からないが良い方に進展して良かったと思いその日はるんるんで帰った記憶がある。
(…そう思うとサソリってほんといい子だなぁ。)
「チヨバア様によろしく伝えとけ!次!」
目があったしサソリの隣にいるし、私だなと思い席をたつ。
「マチです。よろしくお願いします」
簡潔に自己紹介を終えて席に座る。これが一番良いわけではないが嘘を言うよりはマジだろう。
「よろしく!次!」
多分この先生いい人なんだろうなぁ。毎回律儀に一言返してくれるし。
この将来の夢も言わない無愛想な私にも一言くれるし。
自己紹介の後特に気になる子もいなかったので適当に聞き流す。ぼーっとしているとサソリから自己紹介の後に配られたらしい書類を受け取って帰る準備をする。
ぽんぽんとテンポ良く進む自己紹介のお陰で日が暮れる前に帰れて良かったと思いながら席を立つと既に準備を終えた二人が通路のそばで待っていた。
「ごめん、遅くなって」
謝りながら駆け足で近寄る。コムシは元気よく、サソリは静かに笑い口を開く。
「大して待ってないから気にすんなよ」
「大丈夫だよ」
二人の優しさに感謝しこちらも笑顔で返す。
「ありがと!」
三列に並んで家路を辿る。
喋ったり、相槌を打ったり、笑ったりしながらゆっくり歩いて行く。私は家の方向が違うため途中から二人と別れ一人で歩く。
明日は三人で遊びたいなとか、アカデミーがない日でも会いたいとか、一緒に修行したいと思いを膨らませて帰る。
明日も楽しみだなぁ!
サソリを揶揄えるのは今しかないぞ!!後々反抗期になるからね!と思って書いてしまった。
コムシ父については捏造。過去編でお母さんしか出て来なかったし実際のところどうなんでしょうね…