糸を紡いで   作:主食は梅と白米

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日常

 

たしかに実技中心とは聞いた。聞いたけど、そんなに多いとは思わないじゃん…

 

「大丈夫か?マチ」

 

「む、り…」

 

ゼェハァと肩で息をしながら地面に転がる。正確にはつけられたが。アカデミーでは実技の授業で一限に一回は必ず忍組手をするように指示されており、通常は先生が力量差のないのもの同士を選んで対戦させるが、今回相手は自由に選んで良いとのことでほぼ一緒にいるコムシと忍組手をした。

……したのだが、結果は私の負け。惨敗である。コムシに動きを読まれ私の体力だけが削られていき最終的には一本背負いを喰らい負けてしまった。背中を打ち付けた際にあまり痛みを感じなかったのでコムシの技量と優しさを垣間見た気がする。

 

疲れてそれ以上話す気力もなく青空を仰ぐ。わー、空がきれー。降り注ぐ日光に目を細める。眩しい。

…眩し過ぎるな。眩しさに空から目を逸らし、そのまま流れるように目を向ける。目を向けた先はコムシだ。心配そうに眉を歪めながら、こちらを見ている。

息を切らしていないコムシに途切れ途切れだが話しかける。

 

「な、でげん、きな、の?」

 

「親父が忍だったから、こうゆうの教わってんだよ」

 

「…いい、ね、それ」

 

こちとらサソリと一緒に座学しかやってないんだけど。なんなら、忍組手とか、手裏剣投げとか今やったわ。アカデミーに入る前は、エテアさんの家を訪れる先輩たちに実技を教わろうとしたのだが、危ないから見てるだけということで出来なかった。その為先輩たちに止血の仕方とか野営地での忍具の手入れのコツ等を教えてもらった。稀に印を教えてもらってもチャクラの練り方という基礎をすっ飛ばされたので全く出来なかった。

その後サソリに出会ってチャクラの練り方や扱い方を知ったので良かったが、同年代と比べると差が大きい。チャクラを練りながらチャクラ糸を出すなど、二つのことを同時にするのが難しく、使えるようになるまで時間がかかった。

それに、アカデミーの授業は何というか、出来てるのが前提だ。忍術スキルがないものは入学拒否なだけある。しかし、そんな条件で先輩たちが入学したのか不思議だ。蛇足だけど私はサソリから教えてもらった傀儡の術で入学できた。ありがとうサソリ、この恩はいつか返すね。

まぁ、そんな条件なので私のような一般家庭出身の人は数少ない。コムシ曰く今年は少し多く3人もいるらしい。

 

「マチ、日陰行こうぜ。地面暑いだろ」

 

降り注ぐ声に返事をする。

 

「うん」

 

私の息が整っててきたのを見てコムシが声をかけてくれた。上体を起こして、衣服についた砂を手で払って落とす。砂隠れは冷却性がある衣服を着ているとはいえかなり暑い。太陽に照らされた砂が熱を吸収して地面は熱いし、太陽から注がれる熱も日光も焼けるようだ。組手かはたまた暑さによって生じた汗を手の甲で拭い、太陽の光から目を覆ってコムシを見上げる。

 

「ほら、立てるか?」

 

言葉とともにコムシが手を伸ばしてくれた。有難いとか、紳士だなぁとか思いながら、その厚意を受け取って立ち上がる。コムシって兄貴肌みたいで頼れるんだよね。いつもありがとう、コムシの兄貴。頼りにしてます。心の中に留まらず感謝の言葉を述べようと口を開く、

 

「ありが」「きゃーー、サソリ君さすが!!」

 

…が、途中で感高い声によって遮られコムシに届かなかった。五月蝿い。今まで微かに聞こえてくる黄色い歓声に知らないふりをしていたが、無理だった。これだけ大きく騒がれたら嫌でも聞こえてくる。歓声にげんなりして視線を送る。

歓声の原因はサソリを取り巻く女子だ。恐らくだが、またサソリが組手で勝ったんだろう。今のところ無敗を誇っている。

 

「サソリってば人気者だねー」

「ほんとだよな」

 

会話をしながらコムシに連れられて日陰に入る。木影に入ると風が少し吹いているお陰で涼しい。欠伸を噛み殺しながらコムシの隣に座る。

顔良し!血筋良し!体術良し!忍術良し!人柄良し!ともう天から何物も与えられてるサソリは、それはもう女子に囲まれている。噂によるとファンクラブまであるらしい。コムシと数人の同級生としか関わりがない私でも知っているんだから確実に存在する。

 

サソリは優しいから邪険に出来ないんだろう困ったような顔をして何か言っているのを見たことがある。因みにそんな顔が女子の庇護欲や母性を掻き立てていることをサソリは知らない。というか、女子は大っぴらに言うのではなく、くノ一クラスという名前の通り女子だけが受けるクラスでしかそういったことを言わないので、誰かが漏らさない限りサソリどころか男子たちが知ることはない。更に言えば、くノ一クラスであったことを口外するのは御法度なので殆どの者は口を閉じる。まぁ、口が軽い子は村八分みたいな状態になる。……既にいるし。

 

男女混合のクラスはまだ良い。私の場合はコムシがいるので孤立しないし、あの子もなんとか組めてる。だけど、くノ一クラスの場合はお察しだ。女子から邪険に扱われてるしハブられるのは見てて可哀想だ。二人一組のペアを作れと指示があれば、一緒になる等少しだけなら助けられるが、全部となると無理がある。私は入学初日で目をつけられている為表立って庇うことができない。そもそも私と一緒にいると目をつけられかねない。コムシはその辺りの付き合いが上手いため上手く躱しているのだが、私は人並み以下な為睨まれている。裏の裏をかくなんて無理にも程がある。

 

あの時(入学初日)サソリと腕組んでた女と一緒にいるわけないよねー?ね?」ぐらい真っ直ぐ言ってくれたら分かる。まぁ、私に女友達がいないということで察してほしい。今のところコムシが唯一の友だちだ。なんなら親友。

 

まぁ、サソリも同じぐらい可哀想だけど。男子からは嫉妬の眼差しが、女子からは熱い視線が送られて板挟みになっているサソリが不憫でならない。コムシは同情の視線を送っていたし、なんならサソリの心情を察したコムシがサソリを囲む女子を引き剥がそうとしたが、恋する女子は強く結局無理だったらしい。珍しく落ち込んでいたので慰めた記憶がある。女子って怖いよね。わかる。

 

 

「コムシぃ」

 

忍組手をぼーっと眺めてコムシの肩に頭を乗せる。文句を言われたことがないのでたまにしてる。冷却性のある素材を使っている為暑くはない。

 

「なんだ?」

 

「放課後、修行付き合ってよ」

「ああ、いいぜ!」

 

気前の良い返事に笑って目を瞑る。流石兄貴、頼りになる。

その前に、この授業中に先生に対戦相手と勝敗を言わなくちゃだけど。疲れたし、眠いから実技の授業が終わるまでゆっくりしてから言おう。次の授業は……くノ一クラス。…嫌だなぁ。あんな気を張らなくちゃいけない所行きたくないなぁ。

そんなことを考えていくうちに頭が霞んでくる。だんだん体の力が抜けていく。

忍組手をした疲れか、コムシの丁度いい体温で自然に瞼が重くなる。多分それらも原因だし睡眠時間の少なさが要因だろう。家でもっと寝とくべきだった…。またコムシに迷惑がかかる。喋らなくなった私をみて理解したのかコムシが小声で言う。

 

「授業終わったら起こすから、寝とけ」

「うん……ありがとう」

 

またもや聞こえてきた女子の歓声を最後に、眠りに落ちた。

 

 





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