二つのコスモス~続・新世紀エヴァンゲリオン 第二部・夏のペンタグラム   作:VIA MEDIA

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第五十四話・絶体絶命

「レーザー発射!!!」

 

ブシュウウウウッ!!

 

グワアアアアアッ!!

 

 参号機が放ったレーザーはゼルエルの頭部を直撃した。しかしゼルエルは速度を落としながらも超音速のまま参号機の上空を通過する。

 

ドオオオオオンンッ!!

 

 参号機が潜む兵装ビルのすぐ横を衝撃波が襲い、建物が破壊されて行く。

 

「連続して発射!!」

 

 アスカの叫びに呼応して参号機は振り向き、離れて行くゼルエルめがけてレーザーを打つ。

 

ブシュウウウウッ!!

 

 しかしゼルエルはATフィールドでレーザーを跳ね返す。

 

「くそおっ!! ……あっ!!」

 

 突如ゼルエルは速度を落とし、急回転してまたもやこちらに向かって来た。

 

「つづけてうて!!」

 

 +  +  +  +  +

 

第五十四話・絶体絶命

 

 +  +  +  +  +

 

 日向か振り返り、

 

「ゼルエルが速度を落としました!! マッハ1前後です!!」

 

 ミサトは頷き、

 

「零号機!! 槍を準備して!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「了解!!」

「了解!!」

 

 レイとカヲルが頷く。すぐさま零号機は、ゼルエルめがけてロンギヌスの槍を投げるべく、投擲姿勢に入った。

 

 +  +  +  +  +

 

 コンソールを操作しながら、青葉が、

 

「だめです!! この速度ではまだ躱されてしまいますっ!!」

 

 ミサトが大声で、

 

「レイ! そのまま待って!! アスカ! 何とかもっとスピードを殺して!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「わかってるわよっ!! くそおおおっ!!」

 

 思ったより遥かに困難な射撃を何とかこなしながらも、アスカは焦って叫ぶ。

 

 +  +  +  +  +

 

 その時、青葉が振り返り、

 

「本部長!! 日重共の時田氏から無線です!! 音声出します!!」

 

『こちら時田!! 現在そちらへ向けて走行中です!! 後約10分で到着の予定!!』

 

「こちら五大!! 了解!!」

 

 +  +  +  +  +

 

ブオオオオオッ!!!

 

 時田、加納、操作員を乗せたJAが風を切って高速道路を疾走する。

 

 +  +  +  +  +

 

 一方、こちらは車の加持とシンジ。何とか衝撃波を躱しながら走って来たが、ゼルエルが参号機めがけて飛んで来たため、迂闊に動けなくなってしまった。加持が無線に、

 

「こちら加持!! 本部聞こえるか!!」

 

 すぐさま、ミサトの声が、

 

『加持君!! どこにいるのよ!!』

 

「連絡が遅れてすまない。シンジ君と一緒に車で街のど真中だ」

 

『みつかったの!!』

 

「ゲートに行きたいが、衝撃波のため迂闊に動けん。何とかならんか」

 

『わかったわ!! アスカに何とかさせるから、早く戻って来て!!』

 

「頼んだぞ。……さ、行くぞ」

 

「は、はい……」

 

 神妙な顔で、シンジは頷いた。

 

 +  +  +  +  +

 

 ミサトが、声を張り上げ、

 

「アスカ!! 加持君とシンジ君が街の真中で動けないのよ!! 何とかゼルエルを郊外に足止めして!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「シンジみつかったの!! うん、わかったわっ!! 西へ走れ!!」

 

 アスカが頷き、参号機はレーザーライフルを抱えて走り出した。それを見たゼルエルがコースを変える。

 

 +  +  +  +  +

 

 コンソールを見ていた日向が振り返り、

 

「ゼルエルがコースを変えました!! 明らかに参号機を追っていますっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 フロントウィンドウ越しに空を睨んでいた加持が頷き、シンジに、

 

「よしっ!! 今の内だ! つかまってろ!!」

 

「はいっ!!」

 

 車は急発進し、無人の街を疾走して行った。

 

 +  +  +  +  +

 

 五大は、またインカムを掴み直すと、

 

「西の山地では衝撃波をモロに食らうぞ!! 初号機と弐号機は参号機をバックアップしろっ!! 零号機は現在地を維持して待機!!」

 

 すかさず、ヒカリとトウジが、

 

『了解!! 西に走れ!!』

『了解!!』

 

 続いて、ナツミとケンスケが、

 

『了解!! 行けっ!!』

『了解!!』

 

 カヲルとレイも、

 

『了解!!』

『了解!!』

 

 +  +  +  +  +

 

 ゲートへ向かってひた走る車の中、シンジは「あの場所」での出来事を思い出し、改めて戦慄していた。

 

(……あの時……、あの時見たのは……)

 

「あの時」見たのは「レイの幻」だったのだろうか。それとも「リリスの姿」だったのだろうか。幾ら考えても判る筈もない。

 

(……なんで、あんなものを見たんだ……。あの時も、今日も……。考えてみたら、あの時、あんな所に綾波がいるはずなんかなかったんだ。……でも、今日の場合はリリス……。じゃ、あの時もリリスなのか……。一体、どうなってるんだ……)

 

「どうした、シンジ君」

 

 加持の言葉がシンジを現実に引き戻す。

 

「えっ!? ……いえ、なんでもありません……」

 

「そうか、もうすぐゲートだからな」

 

「はい……」

 

 +  +  +  +  +

 

(アスカ、気をつけてね……)

 

 槍を構えたままの零号機の中、レイはじっとスクリーンを見詰めている。

 

 +  +  +  +  +

 

「レーザー発射!!」

 

 市街地からかなり西の山に辿り着いた参号機は、連続してレーザーを撃ち、牽制を続けた。無論、直接的な効果はないが、さしものゼルエルもイライラした様子で上空を旋回している。

 

「速度がだいぶおちたわねっ!! もうすこしよっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「ゼルエルの速度がかなり落ちました!! 音速を切っています!!」

 

と、日向が言ったのへ、五大は、

 

「あれだけ大きな図体だ! 音速で小回りは効かんからな!! よし、そろそろいいだろう!! 葛城君! 槍だ! タイミングは任す!」

 

 ミサトが頷き、

 

「了解!! 零号機!! 投擲の最終準備に入って!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「了解!!」

「了解!!」

 

 レイとカヲルが真剣な表情でスクリーンを睨む。

 

 +  +  +  +  +

 

 弐号機と初号機が参号機の所に辿り着いた直後、ゼルエルは3機の方に向かって急激に速度を上げながら旋回した。

 

 +  +  +  +  +

 

 ここで日向が、

 

「ゼルエルが音速を突破!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 トウジとヒカリが叫ぶ。

 

「ATフィールド全開!! 参号機を守れっ!!」

「行けえええっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 ケンスケとナツミも、

 

「うおおおおおっ!!」

「行けえええっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

ドオオオオオオンンッ!!!

 

 弐号機と初号機が自ら楯となって参号機を守るが、強烈な衝撃波はATフィールドごと2機を弾き飛ばさんばかりに襲いかかる。体を前傾して懸命に耐える2機。

 

 +  +  +  +  +

 

「レーザー発射!!」

 

 参号機の放ったレーザーがゼルエルを真正面から捉える。

 

ブシュウウウッ!!

 

「グエエエエエエッ!!!」

 

 明らかにレーザーを嫌がり、速度を落として旋回するゼルエル。

 

 +  +  +  +  +

 

 その時、ミサトは叫んだ。

 

「今だわっ!! 投擲!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「行けえっ!!」

「行けええっ!!」

 

 レイとカヲルの声がプラグに響き渡る。

 

 +  +  +  +  +

 

ビュウウウウウッ!!!

 

 零号機が投げたロンギヌスの槍が風を切ってゼルエルに襲いかかる。

 

バスウウウウウッ!!!

 

「グワアアアアアアアアッ!!!」

 

 槍はATフィールドを破り、背後からゼルエルの体を貫いた。

 

 +  +  +  +  +

 

 ミサトと五大は、思わず、

 

「やったわ!!」

「やったか!!」

 

 +  +  +  +  +

 

ヒュウウウウッ!! …………ズウウウウウウンンンッ!!

 

 ゼルエルは速度を落としながら高度を下げ、地響きを立てて市の西側の山に落下した。

 

 +  +  +  +  +

 

 コンソールを操作していた日向が振り向き、大声で、

 

「ゼルエルは完全に活動を停止しましたっ!!」

 

 五大は大きく頷き、

 

「よしっ!! 引き続き調査と後処理だ!! 青葉君!! 処理班を編成してくれ!!」

 

「了解!!」

 

 青葉が立ち上がり、技術部へ急ぐ。五大は続いてマヤに、

 

「伊吹君! 時田氏に連絡しておいてくれ!」

 

「了解しました! こちらIBO本部! 日重共の時田さん! 応答願います!」

 

『こちら時田! 聞いていましたよ! やりましたね!』

 

 五大は、会心の笑みを浮かべ、

 

「何とかなりましたよ! ご協力感謝します!」

 

『とにかく一応そちらへ向かいます。「後始末」の方でもお手伝いさせて戴きます』

 

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

 嬉しそうなアスカの声も飛び込んで来て、

 

『レイ! やったじゃない!!』

 

 レイも喜び、

 

『ありがとう。アスカのおかげよ!』

 

 ミサトも上機嫌で、

 

「みんな! よくやったわね! とにかく回収ポイントに戻ってちょうだい」

 

 真っ先にアスカが、

 

『りょうか〜い♪』

 

 次に、レイとカヲルも、

 

『了解!』

『了解しました』

 

 トウジとヒカリも、

 

『了解です!』

『了解しました』

 

 最後に、ケンスケとナツミが、

 

『了解しましたっ!』

『了解です!』

 

 そして、加持の声も、

 

『こちら加持! 今ゲートから地下に入った所だ! まあ、どっちにせよそっちに行くよ!』

 

 ミサトは、やや苦笑して、

 

「了解よ。ま、今回はシンジ君にたっぷりお小言ね♪」

 

 アスカも同じく、

 

『そうそう、シンジにはバッチリおしおきしてあげるからねっ♪』

 

 シンジが、申し訳なさそうに、

 

『!! ど、どうもごめんなさい……』

 

 ミサトは笑い、

 

「冗談よ♪ まあ、どっちにしても戻ってらっしゃい♪」

 

 +  +  +  +  +

 

「じゃ、みんな、もどろっか」

 

と、ほっとした表情のアスカが、操縦桿を握り直した時だった。

 

ビィィーーッ!!

 

 コックピットに警報が響き渡る。

 

「えっ!? なにっ!?」

 

 +  +  +  +  +

 

「グ……、グエエエエエッ!!」

 

 突然、活動を停止した筈のゼルエルの眼が強く輝いたかと思う間もなく、眼にも止まらぬ速さで立ち上がったのである。そして、リボンのような腕を伸ばし、槍に巻き付けて抜き取ると、槍を持ったまま空中に浮び上がって静止した。

 

 +  +  +  +  +

 

 日向が顔色を変え、

 

「ゼルエルが活動を再開!!」

 

 ミサトも大声で、

 

「槍を奪われたわっ!!」

 

 五大は、インカムを掴み直し、

 

「エヴァ全機!! 防御態勢だ!! 処理班の出動は中止させろ!! 敵は槍を持っているぞっ!! 充分注意しろっ!!」

 

 すかさずミサトが、

 

「本部長! 槍を使われたらエヴァには致命的ですっ!!」

 

 しかし五大は、

 

「わかっている! しかし、敵は1体、槍も1本だ! 最初の一撃を躱せば勝機はある! このまま全機を撤退させてもどうにもならんっ!」

 

「!! ……確かに」

 

「葛城君、君の腕の見せ所だぞっ!」

 

「了解しましたっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 アスカが、歯噛みして、

 

「くそおおっ!! なんてやつよっ! ナイフ装備! ATフィールド全開!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 レイとカヲルも、今までにない真剣な顔で、

 

「ATフィールド全開!! 防御態勢!」

 

「ナイフ装備!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 トウジとヒカリも、

 

「ナイフ装備!!」

 

「ATフィールド全開!! 防御態勢とって!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 そして、ケンスケとナツミも、

 

「プログナイフ装備だ!!」

 

「ATフィールド全開!! 防御態勢をとりながら攻撃のチャンスを見て!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 その時、五大が、

 

「しまった! 白兵戦では参号機は未知数だった! 参号機を回収するんだ! 碇君も乗せろ!! 少しでも戦力を上げるんだ! 他の3機は参号機の撤退を援護しろっ!」

 

 ミサトが頷き、

 

「アスカ! 戻って!! シンジ君も乗せるわっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「了解!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 参号機は急いで回収ポイントに戻るべく、レーザーライフルを置いて走り出した。他の3機はATフィールドを全開にしてナイフを構えたまま、空中に浮ぶゼルエルを注視している。

 

 +  +  +  +  +

 

 その時だった。日向が顔色を変えて振り返るや、

 

「!!! 本部長!! こ、これはっ!!」

 

 五大が慌てて駆け寄り、

 

「どうした!?」

 

 コンソールを覗き込んだ五大に、日向は表示を指し、

 

「パターン灰色!! 今までの使徒ではありませんっ!!」

 

「なんだと!?」

 

 五大の表情が一変した。ミサトも顔色を変え、

 

「!!! マーラ!!?」

 

 +  +  +  +  +

 

 JAの中で無線をモニタしていた時田が操作員に怒鳴る。

 

「速度を上げろっ!! 使徒が復活したぞっ!!」

 

「了解!!」

 

ビュウウウウウッ!!

 

 JAは速度を上げて高速道路を疾走する。

 

 +  +  +  +  +

 

 参号機は回収ポイントに戻って来た。

 

「回収ポイントにもどったわ!! 回収して!!」

 

ガガガガガガガ

 

「えっ!! 無線がっ!? 故障したのっ!?」

 

 アスカが顔色を変える。

 

 +  +  +  +  +

 

 中央制御室のメインモニタにも突然強いノイズが混ざり出した。

 

 五大が大声で、

 

「どうしたんだっ!!」

 

 マヤも、蒼白な顔で、

 

「極めて強力なノイズが発生している模様ですっ!! 無線が使えませんっ!!」

 

 それを聞いたミサトが、

 

「ゼルエルが、いえ、マーラがノイズを出しているのよっ!」

 

「なにっ!?」

 

と、振り返った五大に、ミサトは、

 

「マーラはノイズを出すんですっ!! あの本に書いてあったでしょうっ!!」

 

「!! そうか! クソっ! ……構内の有線通信はどうだっ!?」

 

 マヤが、悲痛な声で、

 

「ノイズが混じっていますが何とか使えますっ!!」

 

 その時、加持が飛び込んで来て、

 

「どうだ!? 状況はっ!?」

 

 ミサトが振り向き、

 

「加持君!! シンジ君はっ!?」

 

「参号機ケージに行かせた。もう着いているだろう」

 

 マヤが、インカムに手を添えたまま振り返り、

 

「参号機ケージからサードチルドレン搭乗準備完了の連絡が入りました!!」

 

 五大は勢い込み、

 

「参号機はどうした!?」

 

 しかし、マヤは、

 

「外の状況がモニタ出来ませんっ!」

 

 五大は、苦渋に満ちた顔で、

 

「くそっ! …………よしっ!! 構わん!! 回収ポイントのシャッターを開けろ!!」

 

 マヤが驚き、

 

「でも、どこを開けたら!?」

 

「参号機が戻って来そうな所を全部開けるんだ!」

 

「了解!」

 

 ミサトも、声を限りに、

 

「シンジ君!! 参号機が帰って来たらすぐ乗るのよっ!!」

 

『……ガ……了解しましたっ……ガガ……』

 

 ノイズだらけの音の中、シンジの声がかすかに響く。

 

 +  +  +  +  +

 

 回収ポイントで呆然と立ち尽くす参号機の目前のシャッターが突然開いた。

 

「あいたわ! 行けっ!」

 

 アスカの叫びと同時に参号機が中に飛び込む。しかし、中央ではその状態を認識出来ないのか、リフトは下がって行こうとしない。

 

「はやく! はやくおろしてよっ!!」

 

ガガガガガガ……

 

 悲痛な声で叫ぶアスカの声に応答するのはノイズのみ。

 

 +  +  +  +  +

 

 参号機の「撤退」など「何処吹く風」と言った様子で、相変わらずゼルエルは手に槍を持ったまま、眼を光らせて浮遊している。

 

 +  +  +  +  +

 

 零号機。

 

 カヲルが、蒼白な顔で、

 

「本部! 応答ねがいます! 本部!」

 

ガガガガガ……

 

「だめだ。無線が通じない! どうする?!」

 

 レイは、しっかりとした口調で、

 

「今へたに動くのはまずいわ! あの槍にやられたらひとたまりもないわよ!」

 

「わかった! とにかくこのまま様子を見よう!」

 

「うん!」

 

 +  +  +  +  +

 

 弐号機。

 

「クソっ!! どうなっとるんやっ! 無線が全然通じよらへんっ!」

 

 吐き捨てたトウジに、ヒカリは、

 

「鈴原! 落ちついて! じっくり相手の様子を見るのよっ!」

 

 +  +  +  +  +

 

 初号機。

 

「八雲ちゃん! どうしよう! 無線がぜんぜん通じないよっ!!」

 

と、やや狼狽しているケンスケに対し、意外にも、ナツミは落ち着いて、一呼吸置いた後、

 

「とにかく敵の動きをよくみるんですっ!! 槍さえかわしたらなんとかなりますっ!」

 

「わかった!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 流石の五大もかなり焦って、

 

「参号機はリフトに乗ったのか!?」

 

 しかし、マヤは、

 

「センサー信号にノイズが混じってよくわかりませんっ!!」

 

「何とか知る方法はないのか!?」

 

 その時ミサトが、

 

「マヤちゃん!! 全てのリフトのセンサー信号を比較するのよ!! 何か違いはない?!」

 

「分析しますっ!! …………8番の信号が違うようですっ!!」

 

「そこだ!! 8番回収しろっ!!」

 

 五大の叫びに、マヤは、

 

「了解!!」

 

 強いノイズが混じるメインモニタに映るゼルエルは微動だにせず眼を光らせている。

 

 +  +  +  +  +

 

 リフトの中でイラ付くアスカの目前の景色が突然動き始めた。

 

「おりた!!! やったわ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 その時だった。突如ゼルエルは手にした槍を振り上げるや、凄い勢いで、

 

ビュウウウウッ!!

 

 +  +  +  +  +

 

 レイとカヲルが、

 

「えっ!?」

「えっ!?」

 

 +  +  +  +  +

 

 トウジとヒカリが、

 

「ああっ!!」

「ええっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 ケンスケとナツミも、

 

「ああああっ!!!」

「アスカさんっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

ビュウウウウッ!!

 

 呆気に取られた六人を無視するように、ゼルエルの放った槍は参号機が乗っているリフトめがけて超高速で飛んで行く。

 

 +  +  +  +  +

 

「!!!!! わああああああああああっ!!!」

 

 地下に沈みつつある参号機の中で、スクリーンに映った映像にアスカは悲鳴を上げた。

 

 +  +  +  +  +

 

 日向が大声で叫ぶ。

 

「槍が参号機めがけて飛んで行きますっ!!」

 

 五大も、

 

「しまった!!!!」

 

 ミサトとマヤも、

 

「アスカ!!!」

「アスカ!!!」

 

 +  +  +  +  +

 

ズガアアアアアアアアアッ!!!!!!!!

 

「ぎゃあああああああああああっ!!!」

 

 槍は参号機のコアを直撃した。アスカはシートから投げ出され、プラグ内壁に激しく叩き付けられながら底へ落ちて行く。

 

 +  +  +  +  +

 

 トウジとヒカリが、

 

「惣流!!!」

「アスカ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 ケンスケとナツミが、

 

「惣流!!!」

「アスカさんっ!!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 レイとカヲルが、

 

「アスカ!!!」

「惣流さんっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 ミサトは、声を限りに、

 

「アスカ! アスカああっ!!」

 

 蒼白な顔の五大が、

 

「何としてでも回収しろっ!!」

 

「リフトが動きませんっ!! 槍が挟まっていますっ!!」

 

 マヤの悲痛な声が響き渡った。

 

 +  +  +  +  +

 

「く……くそおおっ……、槍を……ぬいて……」

 

 エントリープラグの底で、アスカは最後の力を振り絞り、インカムにそれだけ呟くと気を失った。

 

ググググクッ……

 

 活動停止寸前の参号機も、最後の力を振り絞るように右手を槍にかけて引き抜き、外に放り出す。

 

ガキンッ!!

 

……ゴオオオオオオッ!!!

 

 槍が外れたリフトは動かなくなった参号機を載せて地下に降りて行った。

 

 +  +  +  +  +

 

 マヤが叫んだ。

 

「リフトが動き出しましたっ!!」

 

 すかさず五大が、

 

「葛城君!! 参号機ケージに行け!! ここは私が指揮を執る!!」

 

 ミサトは頷き、

 

「はいっ!!」

 

と、駆け出した。加持もすぐさま、

 

「俺も行く!!」

 

 その時、日向が、

 

「あっ!! ゼルエルが上昇!!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 地上で身構える3機のエヴァンゲリオンを無視するように、ゼルエルは速度を上げて上昇して行った。

 

 +  +  +  +  +

 

 日向は続けて、

 

「ゼルエルは上昇を続けています!!」

 

 マヤも、

 

「ノイズ減少! 映像と通信が回復しました!」

 

 五大は、呆気に取られ、

 

「またどこかへ行くのか……」

 

 その時、

 

ビィィーーッ!!

 

「パターンオレンジ!! これはっ!!?」

 

と、顔色を変えた日向に、五大は、

 

「オレンジ!? レリエルかっ!?」

 

「上空には何もありませんっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 突然、エヴァ3機の立つ地面が突然墨を流したように真っ黒になった。

 

 +  +  +  +  +

 

「わああああっ!!!」

「きゃあああっ!!!」

 

 トウジとヒカリが思わず叫ぶ。

 

 +  +  +  +  +

 

「わああああっ!!!」

「きゃあああっ!!!」

 

 ケンスケとナツミも悲鳴を上げる。

 

 +  +  +  +  +

 

「うわあああっ!!!」

「あああああっ!!!」

 

 カヲルとレイも叫んでいた。

 

 +  +  +  +  +

 

「エヴァ3機、沈んで行きますっ!!」

 

 日向の叫びに、五大も、

 

「ディラックの海かっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 なすすべもなく「黒い海」にゆっくり沈んで行くエヴァ3機。そこに疾風の如く黒い影が飛び込んで来た。

 

ビュウウウッ!!!

 

 +  +  +  +  +

 

 日向が振り返り、

 

「JAですっ!!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「エヴァ3機を救出しろっ!!」

 

 時田の怒号に呼応して、脳神経スキャンインタフェースをセットした操作員が反重力フィールドを解放する。

 

ズズズズウッ!!

 

 JAは下半身をディラックの海の中に入れた。しかし上半身は地表に出たままだ。

 

「手応えありましたっ!! 浮上しますっ!! 反重力エンジン全開!!」

 

 操作員が叫ぶとJAはゆっくり浮上を始めた。地表に現れたその両脚に何かが捉まっている。エヴァンゲリオンだ。

 

「2機しかいない!!」

 

 モニタを見ていた時田が叫んだ。

 

 +  +  +  +  +

 

 悲痛な声で、日向が、

 

「零号機がいませんっ!!」

 

 五大は顔色を変え、

 

「何だと!!」

 

 マヤも思わず、

 

「!!! レイ!! 渚君っ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 初号機と弐号機が捉まったままの状態で、JAは上昇を続ける。そして、2機の体が完全に地表に出た瞬間、「黒い海」は忽然と消え去った。

 

 +  +  +  +  +

 

「パターンオレンジ消失!! 使徒は消えましたっ!!」

 

と、叫んだ日向に続き、マヤも、

 

「零号機は行方不明ですっ!!」

 

 五大は、歯噛みして、

 

「く、クソっ!……」

(レイ……、渚君……、惣流君……)

 

 大本を辿れば、参号機を回収しようとした自分の判断ミスが全てだ。五大は心からそれを悔やんでいた。

 

 +  +  +  +  +

 

 参号機ケージ。

 

 作業員が、やって来たミサトに、

 

「パイロットを救出しましたっ!!」

 

 ミサトは、勢い込み、

 

「アスカはどうなのっ!!」

 

「気を失っていますっ!! 外傷は見当たりませんっ!!」

 

「すぐに病院に運んでっ!!」

 

「了解!!」

 

 ここで、加持も、

 

「俺も手伝おう」

 

 無言のアスカを乗せた寝台が、加持と作業員の手によって目の前を通り過ぎて行く。

 

「…………」

(アスカ……、僕は……、僕は……)

 

 シンジは、なすすべもなく唇を噛み締めながら、その様子を見ているしかなかった。

 

 続く

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