二つのコスモス~続・新世紀エヴァンゲリオン 第二部・夏のペンタグラム   作:VIA MEDIA

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第七話・外柔内剛

 いきなり現れたカヲルに、シンジ、アスカ、レイの三人は呆気に取られた。

 

「どうしたんだい。驚かせちゃったかな」

 

と、カヲルは相変わらず微笑している。シンジは慌てて引きつったような笑いを浮かべ、

 

「いや、そんな。……おはよう、渚君」

 

と、言ったのへ、カヲルも、

 

「おはよう、碇君、惣流さん、綾波さん」

 

 アスカとレイも、やや慌てたが、何とか、

 

「あ、……おはよう、渚くん♪」

 

「……おはよう、渚くん……」

 

と、合わせた。すると、カヲルは、

 

「僕のことを話していてくれたのかい」

 

と、言いながら、シンジのとアスカの間に割り込んで来た。それに連られるように四人は歩き出したが、その時シンジが咄嗟に、

 

「あ、僕たち三人ね、学校じゃけっこう変わりものでとおってるんだ。それで、同じIBOの仲間だし、渚君にも変に思われるんじゃないかな、って、話してたんだよ。あはは」

 

 一瞬言葉に詰まっていたアスカは、シンジの「切り返し」に感心し、心の中で、

 

(あら、シンジ、なかなかうまいこと言うじゃない。ちょっとみなおしたわ……)

 

 カヲルは、シンジの言葉に、

 

「そうなの。僕も結構変わり者だって言われているんだよ。同じだね」

 

「そう、あはは。エヴァのパイロット、って、変わり者が選ばれるのかな。ま、今はパイロットじゃないけど。あはは」

 

 二人の様子を見たレイも、合わせて、

 

「そうよねえ。わたしなんか、『綾波は変わりものそのものだ』、なんて、言われてるもんねえ。うふふ」

 

 更には、アスカまでが、やや引きつった笑顔で、

 

「なに言ってんのよお♪ いちばんのかわり者はあたし、この惣流アスカ・ラングレーでしょ。うふ、うふふ♪」

 

 流石に、女の子は苦手ではないかと思われるカヲルも、

 

「……なんだか、綾波さんや惣流さんも、楽しい人だね。ふふ。……なかよくしてよね」

 

と、言ったので、アスカとレイも、ここぞとばかりに、

 

「もちろんよお♪ よろしくね。うふふっ♪」

 

「わたしもよろしくね。うふ、うふふっ……」

 

 二人の「ひょうきんな応対」に、カヲルは苦笑とも微笑ともつかない笑いを浮かべていた。

 

 +  +  +  +  +

 

第七話・外柔内剛

 

 +  +  +  +  +

 

「おはよう」

「おはよう♪」

「おはよう」

「おはよう……」

 

 やや早めに学校に着いたと思ったが、教室に入ると既に半数以上の級友が来ている。

 

 四人が一緒に入って来た所を見て、ケンスケが意外そうな顔で、

 

「お? ……よう、おはよう」

 

 ヒカリは委員長らしく、相変わらず「健全で明るい」表情をして、

 

「おはよう♪」

 

 などと、そんなやり取りをしながら席に着いたシンジの所に、ケンスケがやって来た。

 

「シンジ、ちょっと顔貸してくんないかな」

 

「いいよ。……じゃ、廊下にでも……」

 

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 アスカの所にはヒカリがやって来た。

 

「ねえアスカ、ちょっといいかな」

 

「うん? なに?」

 

「ちょっと廊下で……」

 

 +  +  +  +  +

 

 ケンスケ一緒に廊下の端までやって来たシンジは、

 

「なんだい?」

 

「あの転校生のことなんだけど、あいつ、シンジたちと同じ、エヴァパイロットだったんだって?」

 

「うん、そうだよ。フィフスチルドレンだって。……事件は解決したけど、フィフスとしての立場はIBOでも継続されているから、日本に来たらしいよ」

 

「ふーん。……ところでさ、シンジたちはもうエヴァに乗ることはないんだろ。IBOでなにやるんだい?」

 

「エヴァの操縦技術を応用した機械制御の研究らしいよ。今準備中で、まだ実験はやってないけど。……そのへんはケンスケの方がくわしいんじゃないの。お父さんからなにか聞いてない?」

 

「一応聞いてはいるけど、具体的なことはなかなか教えてくれないんだよ……。そうかー。トウジもまた参加するのかい?」

 

「うん、そうらしいよ。ミサトさんが言ってた」

 

「ふーん。……なんかうらやましいよなあ。……やる気なら俺が一番なのに……。俺もなんとかやらせてもらえないかなあ……。なあシンジ、ミサトさんに言っておいてよ。……人手がいるなら、いつでもお手伝いするから、ってさあ」

 

「うん、わかった。言っておくよ」

 

「サンキュー。……ところでさあ、話はかわって、綾波のことなんだけど」

 

「綾波の?」

 

 +  +  +  +  +

 

 アスカとヒカリはシンジ達と反対側の廊下の端に来た。

 

「ねえアスカ、綾波さんのことなんだけど」

 

「レイの?」

 

 ヒカリにいきなりレイの事を切り出されたアスカは少々ドキリとした。

 

「あれ? そう言えば、アスカ、いつから綾波さんの事を『レイ』って呼んでるの? ……それもそうだし、なんか綾波さん、急に明るく元気になったみたいだけど、どうしたの? ……それに、髪の色も目の色も、少し変わったみたいだし……」

 

 アスカは、前にミサトから言われた事を思い出し、

 

「あ、それはねえ。レイはもともとそんなにくらい性格じゃなかったらしいのよ。それがね、パイロットやってたときはさ、自分の気持ちをずっとおさえてたんだって。それが、あの『最終決戦』のあとねえ、ほっとしたら気がぬけたみたいになって、急に気持ちがかわっちゃったんだってさ。それで、精神分析も受けたら、やっぱりいままでの反動で性格がすっかりかわった、って言うか、もとにもどっちゃったらしい、って言うことなんだって。それでさ、なんだか急にあたしともなかよくなっちゃってさ。おたがいに名前で呼ぶようになっちゃったのよ」

 

「そうなの。よかったわ。これで綾波さんもみんなにとけこめるわね。……じゃ、髪の色もそうなの?」

 

「うん。精神的なショックで、髪が急にまっ白になることがあるでしょ。その逆で、色素が沈着しだしたらしいよ。それとね、これはすごい話なんだけど、不明だったレイの身元がわかってね。おどろかないでよ。なんと、シンジの母方のいとこだったの」

 

「えっ! そうなの……。おどろきねえ。……でも、なんだか、ほんとによかったわ。……事件も解決したし、みんななかよく元気でやっていけるわね……。うれしいな。……アスカ、ありがと」

 

「え? どうして?」

 

「だって、エヴァのパイロットとしてアスカや碇君や綾波さんが、いのちがけでがんばってくれたから、平和になったんでしょ。……だから、……ありがと」

 

 ヒカリの言葉に、アスカは少し顔を赤らめた。

 

「やだなあ、ヒカリ。そんなにあらたまって言われると……。なんか、てれくさいよね」

 

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「……と、言うことらしいよ。それで綾波もすっかり元気になっちゃったんだってさ。……それから、これは僕もびっくりしたんだけど、不明だった綾波の身元がわかったんだ。……なんとね、僕の母方のいとこだったんだ」

 

 シンジの説明を聞いたケンスケは目を見開いた。

 

「ええっ!? シンジと綾波がいとこ同士だったって?! へえー。なんとねえ。……そうなのか。……まあそれはよかったよなあ。でも、それは別として、俺も綾波を見る目がかわるよなあ」

 

「どうして?」

 

「お前って、ほんとににぶい奴だな。いいか、綾波をよく見てみろよ。あれだけの美人なんだぞ。今まではなんかすごく暗くて近寄りにくかったけど、明るくなったら、男がほっておかないぜ。あーあ、シンジ、って奴は、ほんとに、うらやましい、って言うか、どうしようもない奴だなあ」

 

「なんでどうしようもないんだよ」

 

「なに言ってんだ。お前は綾波といとこ同士でそれなりになかよくできるし、しかもアスカともなんかなかよくなったみたいじゃないか。おまけにミサトさんとも同居してんだぞ。こんなにうらやましい奴がほかにいるか?」

 

「……そうなのかな……」

 

「あーあ、これだからシンジは……」

 

と、苦笑するケンスケに、シンジは、

 

「……う、うん……」

 

と、言った切り、それ以上何も言えなかった。

 

 +  +  +  +  +

 

キーコーンカーンコーン

 

「起立! 礼! 着席!」

 

 午前中の授業が終わった。昼休みとなると俄然元気が出るのがトウジである。

 

「さあメシやメシや。今日はなに食おうかいなあ」

 

 そこへヒカリがやって来て、やや控えめな態度で包みを差し出した。

 

「鈴原、悪いけど、お弁当余っちゃったんだ。協力してよ」

 

「おおそうかー。なんぼでも協力したるでー」

 

「ありがとう」

 

 トウジの屈託の無さに、ヒカリも嬉しそうである。しかしトウジは「ヒカリの本心」を理解しているとは到底言い難かった。

 

 +  +  +  +  +

 

「シンジ、お弁当たべようよ」

 

 シンジの所にアスカがやって来て声をかけた。

 

「そうだね、食べようか」

 

 アスカはカヲルの様子をチラリと窺っている。それを見たシンジは、

 

「……あ、渚君はお昼どうするの?

 

「パンを買ってきたから屋上ででも食べようかな、って思ってるんだ」

 

 すると、アスカがにこやかに、

 

「あ、いいわねえ。天気もいいから、みんなでたべようよ。ね」

 

 意外に思ったのか、カヲルは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、

 

「……う、うん。……ありがとう」

 

 それを聞いたアスカはレイの方を向き、

 

「レイー、いっしょに行こうよー」

 

「うん、いいよー」

 

 レイも弁当の包みを持って立ち上がった。

 

 +  +  +  +  +

 

 屋上に出ると、天気がいい事もあってやはり暑い。しかし、風が爽やかな事は救いである。四人は階段室の日陰に陣取って弁当を広げた。

 

 額にうっすら汗をにじませたアスカが、

 

「あついわねえ。……日本って、ずっと『夏』なのよね」

 

 日差しがまぶしそうなレイも、

 

「うん。セカンドインパクトで地軸がかたむいてしまって、日本も熱帯に近い亜熱帯になっちゃったもんね」

 

 それを受け、シンジが、

 

「僕ら、季節、ってものを知らないんだよねえ。ミサトさんや加持さんは知ってるけどね……」

 

 レイが、しみじみと、

 

「そうよねえ。……『冬』、ってどんな感じなのかなあ」

 

 二人とも、自分達が知らない、そして知る事が出来ない、「季節」に思いを馳せていた。その時カヲルが、

 

「ドイツは涼しかったよ。大人の人は、『ずっと秋みたいだ』って言ってたな」

 

と、言ったのへ、アスカが応え、

 

「あ、そうよねえ。きのうはいってなかったけど、あたしもドイツにずっといたから、それ、よくわかるわ」

 

「え? そうだったの。向こうではそれは聞いてなかったよ」

 

「あたしは7月のおわりごろに日本にきたから、知らなくてもとうぜんだと思うわよ。……でも、かんがえてみたら、『ドイツは秋みたいだった』、っていってもさ、『すずしかった』ってだけのことなのよねえ。ほんとの『秋』って、あたしたち、知らないもんねえ……」

 

 シンジ、アスカ、レイの三人は、心に少々引っ掛かりを感じながらカヲルに接していた。無理もない。幾ら「注意せねばならない」とは言うものの、言わば「偵察」をやっているようなものである。「良心の呵責」を全く感じないと言ったらウソになる。

 

(渚君、……やっぱり悪い人じゃなさそうだな……)

 

 シンジは少しずつカヲルに対する「信頼」を感じ始めていた。

 

 +  +  +  +  +

 

 こうしてその日も特に何事もなく過ぎて行った。カヲルは相変わらず女子生徒の人気を集めているが、本人はさほど嬉しくないようである。しかし、シンジ達三人と「仲良く」なり始めた事もあって心に少々の余裕が出来たのか、女の子との受け答えは普通にこなしていた。シンジ達は、カヲルの事では内心は少々ヒヤヒヤしながらも、何とか無難にやり過ごしていた。

 

 レイは態度が明るくなった事や、事情を知ったケンスケやヒカリが他の生徒に話した事もあって、クラスの生徒達の見る目も少し変わったようである。授業中や休み時間にはレイに視線を向ける男子もちらほら出て来た。

 

(あ、……あいつも綾波を見てる……)

 

 シンジはケンスケに指摘された事もあって、少々複雑な気持ちである。

 

(「お前って、ほんとににぶい奴だな。いいか、綾波をよく見てみろよ。あれだけの美人なんだぞ。今まではなんかすごく暗くて近寄りにくかったけど、明るくなったら、男がほっておかないぜ」)

 

 アスカと「いい仲」になったのに、いざレイが他の男子の注目を集めるようになると、何となく落ち着かない。

 

(……綾波もかわったしな……。あれだけの美人だもんな……。みんなの見る目もかわるよなあ。……あ、なに考えてんだろ。僕はアスカのことが好きなはずなのに……)

 

 無論、アスカを好きな事には変わりはない。それだけに、シンジはレイに対する気持ちをムリヤリ否定しようとはしたが、「今までにない、ほのかな想い」が芽生えて来た事はやはり否定出来なかった。ただ、シンジ自身にもその気持ちが何であるかはまだ理解出来ていなかった。

 

 +  +  +  +  +

 

キーコーンカーンコーン

 

「起立! 礼! 着席!」

 

 その日の授業も終わり、みんな帰り支度を始めた。レイとアスカも支度をしている。

 

「シンジ、きのうミサトさんから電話があったで」

 

 帰り支度をしているシンジの所へトウジがやって来た。隣りの席ではカヲルが二人のやり取りを見ている。

 

「うん、聞いてるよ。手伝ってくれることになったんだって?」

 

「おお、そうなんや。ワシも参号機ではひどい目におうたけど、もうあんなこともあらへんやろしな。……こんどはいっしょにやれるなあ」

 

「そうだね。……あらためてよろしくね」

 

「おお、まかしとけ。なんちゅうても、ワシも参号機をいきなり起動できたんやさかい。機械制御ぐらいは朝メシ前や。……わはは」

 

 すると、その時、二人の所にケンスケがやって来て、

 

「トウジもIBOの手伝いをするんだろ。いいなあ……。シンジ、あの件、ミサトさんにちゃんと伝えといてくれよ」

 

「うん、わかった。……ところでトウジ、聞いてるかもしれないけど、渚君もいっしょに手伝ってくれることになってるんだ」

 

「おお、きのうおまえらが話しとったのをちらっと聞いたわ。……渚君、よろしゅうたのむで」

 

「うん、こっちこそよろしく、鈴原君。……話は聞いてるよ。参号機では大変だったね」

 

「ほんまや。えらい目におうたわ。助かっただけもうけもんやったで。ま、そやけど、もうなんぼなんでもあんなことはあらへんやろけどな。わははははは」

 

 屈託なく笑うトウジに、三人も安心したような笑顔を見せた。

 

 カヲルに対して最初は余り良い印象を持っていなかったトウジやケンスケも、この二日間様子を見ていて、「どちらかと言うと女の子を苦手にしているように見えるカヲル」に対して「悪いヤツではなさそうだ」と言う印象を持ったのか、結構気楽に接している。

 

 その時、ケンスケがやや不思議そうに、

 

「そう言えば、渚君はなんで急に日本に来たんだい? 事件も解決して、もうエヴァに乗ることはないんだろ」

 

 それを聞いたトウジも、

 

「そう言うたらそうやな。なんでなんや?」

 

「それがよくわからないんだ。僕は今までエヴァについてはテストをやらされたこともないし、事件が解決したからパイロットはやめさせられると思ってたんだ。それが、まあ、エヴァに乗ることはないけど、日本へ帰って研究を手伝うように、って、急に言われたのさ」

 

 カヲルの言葉にシンジは昨夜の加持の言葉を思い出した。

 

(あれ、やっぱり「急に言われた」って言ってるな……。そうだ、後でそれとなく……)

 

 その時、帰り支度を終えてシンジ達の様子を見ていたアスカとレイが四人の所にやって来た。

 

「シンジ、そろそろ帰ろうよ」

 

「そうだね。……じゃ、僕らは帰るから。トウジ、ケンスケ、またね」

 

「おお、そんならまた明日な」

「じゃ、また明日な」

 

 シンジは席から立ち上がった。カヲルもシンジに続く。

 

「じゃ、僕も。また明日」

 

 アスカとレイも、

 

「じゃ、またね♪」

 

「じゃ、また明日ね……」

 

 すると、その時トウジが、

 

「ほなまたな。……おお、そう言うたら、綾波も元気になったやないか。ええことやで」

 

「うん、ありがとう……」

 

 レイは心から微笑んだ。

 

 +  +  +  +  +

 

 帰る道すがら、シンジはそれとなくカヲルに聞いてみた。

 

「渚君さあ、君はいつごろフィフスに選ばれたの? 僕が、サードとしてエヴァに乗れ、って言われたのは、今年の6月ごろなんだけど」

 

「それが僕もよく知らないんだ。はっきり言われたのは2週間前だったんだけど、お世話になっていた人からそれらしき話を聞かされたのは2ヶ月ほど前だったよ。……実はお前はフィフスに選ばれている、ってね」

 

「ふーん、そうなの。……でさあ、どんな人にお世話になってたの?」

 

「ネルフドイツ支部の職員だった人なんだ。僕は母親とは早く死に別れたし、父親も行方不明になったらしくて、子供の時は施設にあずけられてたんだ。それで、5年ぐらい前からその人の所でお世話になってたんだよ。……でも、この前の『最終決戦』の時、その人、亡くなっちゃったけどね……」

 

 アスカとレイもカヲルの話を興味深そうに聞いている。そうこうしている内に、「別れ道」に差し掛かった。

 

 カヲルは、

 

「……じゃ、僕はここで。明日またね」

 

「じゃ、またね」

「またね♪」

「また明日ね……」

 

 一人歩いて行くカヲルの後姿も、心なしか、昨日よりは寂しそうではない。一呼吸置いて三人は再び歩き出した。

 

 まず、シンジが、

 

「……今日のところも、渚君、べつにあやしい感じはなかったね」

 

「そうねえ。まあ、本人の言葉をしんじるかぎりは、『配属日の変更』のこともしらないみたいだしねえ。……でも、まだ確信はもてないわよ」

 

と、アスカもまだ少々迷っているようだ。シンジは頷き、

 

「そうだよねえ。……ま、明日なにかわかるだろうし、あと一日のしんぼうだね」

 

と、言ったのへ、レイが、

 

「そうね……。ま、明日も注意しましょ。……じゃ、わたしはここで……」

 

「うん。じゃあしたまたね♪ バイバイレイ♪」

 

「じゃ、またね、綾波」

 

 その時シンジは、去って行くレイの後姿に初めて「妙な寂しさ」を感じた。

 

(どうしたんだろ……。僕……。なんで、綾波がさびしそうだ、なんて、考えたんだろ……)

 

「シンジ、どうしたの?」

 

 シンジの表情の微妙な変化に気付いたアスカが心配そうに聞いて来た。

 

「いやその……。なんだかさ、綾波、ちよっとさびしそうにしてるな、って、思ったんだ。……で、どうしたのかな、って、考えてさ……」

 

「ふーん。……あたしはべつにそうは思わなかったわよ。……でもまあ、レイも人間くさくなって、感情が表に出るようになったから、そんなふうに思ったんじゃない?」

 

「そうかも知れないね。……ま、綾波のことだから心配ないとは思うけどね……」

 

「そうよ。なんのかんのと言っても、レイはずっと一人ぐらしだったんだから、シンジよりはずっとしっかりしてるわよ。ふふ」

 

「あ、またそんなこと言って……。ひどいなあアスカは」

 

「なによ。シンジはあたしのためにしっかりしてくれるんでしょ。ふふ」

 

「あ、そうだよね。……あはは」

 

 続く

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