二つのコスモス~続・新世紀エヴァンゲリオン 第三部・トップはオレだ!   作:VIA MEDIA

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第二十五話・会者定離

 今日は6月17日。使徒が出現し、撃退された5月17日から1ヶ月が経過したが、この間、ずっと不気味な沈黙が続いていた。

 

 各国の軍は捜索を続けていたが、相変わらず何も発見出来ない。核保有国の「使徒との全面核戦争」の態勢は既に整っていたが、現在の所、それは「ただ待つのみ」に留まっている。

 

 JRLと自衛隊も「使徒迎撃」の準備を整えて待機を続けているだけだ。時間があるのは有り難いが、何の情報もない状態は、スタッフの心労を募らせていた。

 

 +  +  +  +  +

 

第二十五話・会者定離

 

 +  +  +  +  +

 

 さてこちらは青嵐学園。

 

 この所、オクタヘドロンのパイロット達は、常に「臨戦態勢」をとっており、精神的負担がかなり増加している。サトシも思わず授業中に外を見てしまう事が多く、

 

(……一体、どうなっているんだ。ここんとこ、何もない……。こんな状態がいつまで続くんだ……)

 

と、空を見ていたら、

 

「こら沢田、ボケッとするな!」

 

「は、はい、すみません」

 

 担任の本郷の一喝に、サトシは慌てて姿勢を正す。しかし、本郷としても、オクタヘドロンのパイロット全員の精神状態は充分判っていた。「授業中にぼんやりしていた事を咎めた」と言うよりは、「活を入れてやった」と言う所であろう。

 

 本来、こんな状況ならばクラスに失笑が漏れても仕方ない所だが、そんな様子はカケラもなく、教室は静まり返っている。アキコもリョウコも大作も疲れた顔で黙っていた。

 

 考えて見れば無理もない。前回の使徒の出現に際しては、「実績」と言う点から、かつてのオクタヘドロンのパイロットに出撃命令が下ったが、今は青嵐学園の学生も生徒も全て「予備役」の立場である。授業のカリキュラムも急遽変更され、実戦のシミュレーションがやたらと増えた。中には、訓練の重圧感や来るべき使徒との戦争に対する恐怖感に耐えられず、休学する者も少なからずいたのである。幾ら、「マハカーラ」や、「カオス・コスモス」を経験して来たとは言え、やはり、「実際に戦争をしなければならないかも知れない」となると話は別であった。

 

 しかし、中には持って生まれた性格からか、訓練に一層力が入る者も多数いた。「成績によってはパイロットを交代させる」と言う事が公表されていたので、彼等は、「オレにもチャンスはある」とばかりに訓練に励んでいたのである。その意味では、サトシ達もうかうかしてはおれなかった。

 

 +  +  +  +  +

 

 下校時間になったが、操縦科の学生や生徒は結構自主的に残って訓練を続けている。そんな中、サトシ達六人にゆかりと大作を加えた八人はJRL本部に向かっていた。無論これも訓練のためであるが、特に、サトシ、リョウコ、アキコの三人は「テレパシー通信を行う」と言う任務を与えられたため、その意味でも本部に行った方が都合がよかったのである。

 

 道すがら、マサキが、

 

「ところで沢田君、どうや、テレパシーの方は?」

 

 サトシは首を振り、

 

「それが、さっぱりなんです」

 

「そうか。北原ちゃんと形代ちゃんの方はどないやねん?」

 

 リョウコとアキコも、

 

「わたしも今のところなにも」

 

「わたしもなんよ」

 

 ここでサリナが、

 

「そやけど、しゃあないわなあ。ウチら、なんぼ『魔法使い』としての才能見込まれてここへ来た、言うても、『カオス・コスモス』の後は普通の人と別になんも変わるとこあらへんのやもんなあ……」

 

 タカシも

 

「そうたい。僕もあれから後はなんちゅうことないけんねえ……」

 

 みんなの話を受け、ゆかりが、

 

「まあ、それは仕方ないと思いますわ。今は、『魔界の力』を頼りに出来ないのですからねえ。感覚的な物は磨けても、『テレパシー通信』となりますと、ねえ……」

 

 大作も頷き、

 

「そうだね。でもまあ、それに関しては『三人だけ』が頼りだろ。何とかちょっとした手掛かりだけでもいいから、つかんで欲しいのが人情だよ」

 

 サトシは苦笑して、

 

「おいおい、草野、そうアオるなよ。プレッシャーがかかっちゃうじゃないか」

 

「なに言ってんだ。今の時点ではこの件に関しては沢田が一番手なんだぜ。『この件に関しては、トップはオレだ!』ぐらいの意欲を持てよ」

 

と、笑う大作に合わせて、マサキもニヤリと笑い、

 

「そやそや、何のかんの言うても、『通常時』に綾波ちゃんと『通信』出来たんは沢田君だけなんやぞ。がんばってもらわんとな」

 

 ゆかりも微笑んで、

 

「そうですわ。『異次元の双子』たる碇さんじゃなく、綾波さんと『通信』なさったんですものねえ」

 

「綾小路さあん……。参ったな……」

 

と、閉口したサトシに、マサキは一段と笑って、

 

「お、なんか照れとるみたいやな。綾波ちゃんとなんぞあったんけ?」

 

「し、四条さんっ、なにもありませんよお……。参ったなあ……」

 

 ここでアキコが、

 

「あーあ、沢田くんらしいなあ。平気な顔して、『そうなんですよ。実は綾波と異次元でデートしたんですよ』ぐらい言うといたらええんよ。うふふふ」

 

「かたしろお……」

 

 リョウコまでが、

 

「そうそう。なにしろ、サトシくんはレイと一番最初に出会ったんだもんねー。うふふふっ」

 

「もう、リョウコまでなに言ってんだよお……」

 

「……♪;」

「……♪;」

「……♪;」

 

 タカシ、サリナ、大作は苦笑している。

 

 +  +  +  +  +

 

 本部に着いた八人の内、「テレパシー通信」を行う三人は道場に向かい、他の五人はカプセルに乗ってシミュレーションを行うために格納庫に行った。

 

 サトシ、リョウコ、アキコの三人が道場に入ると岩城が既に待っていた。今日は由美子と山之内も来ている。

 

 三人が来たのを見た岩城が、

 

「お、揃ったな。では開始するか。それぞれ個室に入ってくれ。脳神経スキャンインタフェースのスイッチを入れるのを忘れずにな」

 

と言った後、山之内と由美子に、

 

「山之内室長と山之内部長も、ええい、何か言いづらいですねえ……」

 

 由美子は苦笑し、

 

「あはは、そうですね。由美子、でいいですよ……♪;」

 

「そうですか。ではお言葉に甘えて、室長と由美子さんもお願いします」

 

「了解です」

「了解しました」

 

 +  +  +  +  +

 

「オーム! アヴァラハカッ!」

 

 道場内の一室に篭ったサトシは早速壁の大日如来像に向かい、半跏座を組んでマントラを唱えた。

 

( □ ○ △ ∪ ∩ □ ○ △ ∪ ∩ □ ○ △ ∪ ∩ □ ○ △ ∪ ∩ ………)

 

(……どうせ今日も何もないんだろうな……。向こうの世界、レイの髪の毛……)

 

 雑念が次から次へと湧き起こって来るが、一切気にせずひたすら心でマントラを追い続ける。しかし一向に「青い光」は見えない。しかし今のサトシはそれを続けるしかなかった。

 

 +  +  +  +  +

 

「…………」

 

 薄暗い部屋の中で、リョウコはテーブルにタロットを並べ、中心には「星」を置いて見続けたが、これと言って何もない。

 

 +  +  +  +  +

 

「…………」

 

 アキコもタロットの「太陽」をじっと見詰めている。時折太陽のフレアが青い色にチラ付くが、それ以外は何も起こらない。

 

 +  +  +  +  +

 

( □ ○ △ ∪ ∩ □ ○ △ ∪ ∩ □ ○ △ ∪ ∩ □ ○ △ ∪ ∩ ………)

 

 由美子はマントラ瞑想を行っている。流石に「大人」だけあって、やるべき事に集中はするのだが、特に何かが起こる気配もない。

 

 +  +  +  +  +

 

( □ ○ △ ∪ ∩ □ ○ △ ∪ ∩ □ ○ △ ∪ ∩ □ ○ △ ∪ ∩ ………)

 

 山之内もマントラ瞑想を行っていたが、何も起こらなかった。

 

(……やっぱり「付け焼刃」ではだめか……)

 

 +  +  +  +  +

 

「…………」

 

 岩城は道場の片隅に設置されたデスクの上のモニタを見詰めていた。5つのウインドウが開き、そこにサトシ達五人の潜在意識の状態が映っている。しかし、特に見るべきものはない。

 

(……こんな状態が3週間以上か……)

 

 その時、岩城のスマートフォンが、

 

トゥルルル トゥルルル トゥルルル

 

「はい。岩城です」

 

『総務部の中森です。すみません』

 

「あ、どうも。何でしょう」

 

『訓練中すみません。総務省の高沢担当がおみえになりました。緊急に会議を開きたいと言う事ですので、全員作戦室に集まって欲しい、との、本部長のご指示です』

 

「そうなんですか。すぐに参ります」

 

 岩城は椅子から立ち上がった。

 

 +  +  +  +  +

 

 作戦室。

 

 集まった全員に、松下が、

 

「訓練中すまないな。総務省から高沢担当がおみえになられた。重要な情報が入ったので会議を開きたいとの事なのでこうして集まってもらったのだ。では、高沢担当、お願い致します」

 

 高沢が立ち上がり、

 

「総務省の高沢です。みんな忙しい中をすまないが、アメリカから重要な要請が入ったのですぐにこっちに来たのだ。まず結論から言おう。オクタⅡで宇宙へ飛んで欲しい」

 

 八人のパイロット達は、驚き、口々に、

 

「えっ!! 宇宙へ!?」

「!!!!」

「!! 宇宙へ!?」

「えっ!! 宇宙へ!?」

「宇宙へ!?」

「ええっ!! 宇宙へ!?」

「宇宙へ!?」

「宇宙へっ!?」

 

 由美子、山之内、岩城も、

 

「!! ……宇宙へ……」

「……宇宙へ、か……」

「……宇宙へ……」

 

 ここで中之島が、ニヤリと笑い、

 

「ふぉっふぉっふぉっ。何を驚いておる。君達はそもそも宇宙パイロット候補生なんぢゃろ」

 

 高沢は続けて、

 

「アメリカが宇宙戦艦を建造していた事は君達も知っていると思うが、それがつい先日完成した。無論この前の使徒の襲来を受けて建造を急がせていたのだが、すぐにテストを行った後、月の裏側に調査飛行に行く事になったのだ。

 

 君達も知っている通り、最初にハワイに使徒が現れた時、その直前に月の裏側から未確認飛行物体が飛んで来てハワイ近海に着水したのが確認されているが、それを踏まえると、『使徒は月の裏側から来た可能性がある』とも考えられる。

 

 その上、あれから1ヶ月経ったのに、一向に使徒は現れない。しかも、世界中の軍隊がいくら調査を行っても何も発見されていないのが実状だ。それで、もしかしたら宇宙に戻って様子を見ているのかも知れん、と言う見解が、アメリカの研究者から出されてな、軍としても、思い切って月の裏側に行ってみようと言う事になったのだが、日本からも調査班を派遣してくれと言う要請が来た。オクタⅡは元々宇宙空間での作業用に開発されたから、この作戦行動には持って来いと言う訳だ」

 

 松下が、それを受け、

 

「高沢担当が仰った通りだ。厄介な任務だとは思うが、現在オクタⅡを使いこなすと言う点においては君達が一番適任なのは間違いない。何とか引き受けてもらいたいのだ。それから、今回の調査飛行には中之島博士にも同行して戴く事になっている」

 

「えっ! 博士もですか?!」

 

と、驚くサトシに、中之島は、

 

「ふぉっふぉっふぉっ。そうなのぢゃ。何かあった場合、オカルティズムの観点から分析して欲しいとの、アメリカのたっての希望でな。合流するまではオクタⅡのどれかに乗せて貰うが、その後はエンタープライズで監視と分析をする予定なのぢゃよ」

 

 その時、由美子が、

 

「本部長。お聞きしてよろしいですか」

 

「何だね」

 

「確かに彼等はオクタⅡの操縦に関しては一番適任だと思いますが、宇宙飛行の経験がありません。大気圏内と宇宙空間では全く勝手が違うと思いますが、その点は考慮して戴けるのでしょうか」

 

「無論考慮はしている。宇宙開発事業団のパイロットがやってくれたテスト飛行の時のデータは全てオモイカネⅡにインプットしてあるし、質量・慣性中和システムを使っていれば、操縦者の感覚としては大気圏内と同じだ。無論、『宇宙飛行経験』と言う点では問題があるのだが、それよりも、もし使徒がいて戦闘になったとしたら、『戦闘経験』が問題になる。それを考えると、現時点では彼等が一番適任だ」

 

「了解しました」

 

と、由美子は頷いた後、

 

「みんな、話としては今聞いてもらった通りだけど、何か確認しておきたい事はある?」

 

と、全員を見回し、

 

「ないわね。じゃ、了解してもらったとみなします」

 

 更に続けて、高沢に、

 

「それで、高沢担当、出発はいつですか?」

 

「3日後の6月20日だ。衛星軌道でアメリカの宇宙戦艦エンタープライズと合流する。それから月の裏側へ飛行する予定だ。各自準備を整えておいてくれ」

 

と、高沢が言うのへ、由美子は、

 

「あ、今思い付いたんですが、オクタⅡは8機とも出すんですか」

 

「問題はそこだ。政府内でも、全機出してしまうと地上で何かあった場合はどうするのだ、と言う意見も出たのだが、驚いた事にな、エンタープライズは、宇宙空間ではとんでもない速度を出せるそうだ。フルスピードなら月軌道から地球軌道まで20分かからないらしい」

 

「!! そんなに速いんですか!」

 

「そうだ。だからもし地上で何か起きたらすぐに戻って来る事は出来る。それで全機出してもよかろうと決断したのだよ。それに、いざとなったら前のオクタ3機が自動モードで出せるし、自衛隊もその間は対応してくれるから大丈夫だろう」

 

「了解致しました」

 

 ここで岩城が、

 

「予定ではどれぐらいの期間になるのでしょう? その間は『テレパシー通信』は行えない、と言う事でよろしいのでしょうか?」

 

と、言うのへ、高沢は、

 

「期間に関しては特に決まっていないが、まあ数日間と言う所だろう。その間の『テレパシー通信』なんだが、一つの試みとして、もしチャンスがあれば宇宙空間で実験をやって貰う事も視野には入れている」

 

「宇宙で、ですか」

 

「そうだ。地上ではなく、宇宙と言う『非日常的な環境』で行う事が何かを呼ぶきっかけになるかも知れない、と言う期待もあってね。中之島博士の御提案だよ」

 

「成程。了解しました。それで、潜在意識のモニタはどうします?」

 

 中之島が、それを受け、

 

「儂がやるから心配するな。お前は由美子君と山之内君を監督してやってくれ」

 

「了解しました」

 

 ここで松下が立ち上がり、

 

「ではその方向で調整する。今日は一応ここまでとしよう」

 

と、全員を見回した後、高沢に、

 

「高沢担当、どうもお疲れ様でした」

 

 高沢は頷き、

 

「うむ、では私は総務庁に戻るから、後は宜しく頼む」

 

 +  +  +  +  +

 

「宇宙への調査飛行」を命じられた八人は、何とも言えない表情で廊下を歩いていた。由美子と山之内、そして岩城も少々暗い表情をしている。

 

 由美子が岩城に、

 

「岩城理事長。申し訳ありませんが、今日の実験はここまでにさせて戴けませんか……」

 

 岩城は頷き、

 

「ええ、そうしましょう。あんな話の後では気持ちも集中させられないでしょうしね……」

 

 それを受け、由美子は全員に、

 

「みんな、今日は解散しましょう。部屋に帰ってじっくり英気を養っておいてちょうだい」

 

 +  +  +  +  +

 

 部屋に帰って来たサトシはベッドに転がり込んだ。

 

(……いよいよ宇宙か……)

 

 何と言っても初めての宇宙である。こんな状況でなかったらもっと心が弾んでいただろうし、みんなともその話題で盛り上がっていたに違いない。しかし、

 

「宇宙での戦闘もないとは言えない」

 

と言う状況は、サトシの心を重くするのに充分だった。

 

(……まさか、初めての宇宙飛行が、こんな形になるなんて……)

 

 今まで何度かマーラや使徒との戦闘を経験して来たサトシにとっても、今度ばかりは「恐怖」が先に立っている事は否めない。

 

(……でも、あれこれ悩んでいても仕方ないな。メシでも食って、それから身の回りの物だけでも揃えておくか………)

 

 ふと時計を見るともう19:30である。サトシが食堂へ向かうべく、ベッドから起き上がると、

 

トゥル トゥル トゥル

 

「……はい、沢田です」

 

『形代です』

 

「あ、どうしたの?」

 

『……あの、もしよかったら、ちょっと会えんかな……』

 

「いいよ。ちょうど晩ご飯に行こうと思ってたところだから、一緒に行こうか?」

 

『……あの、それが、もしよかったら、中庭のベンチのところで会いたいんじゃけんど……』

 

「え? うん、いいけど」

 

『じゃ、これから行くけん、おねがいね』

 

「わかった。じゃ、すぐ行くよ」

 

 サトシは電話を切ると出口に向かった。

 

(形代、どうしたんだろ……)

 

 +  +  +  +  +

 

 サトシがベンチの所に行くと、既にアキコが座って待っている。

 

「ごめんね。急に呼び出して」

 

「いや、そんな事はいいんだけどさ、どうしたの?」

 

「ねえ沢田くん。……宇宙に行くの、恐うない?……」

 

「えっ? ……う、うん……。正直言うとさ、やっぱりちょっと恐いよ」

 

「わたしもなんよ。……パイロット目指してここまでやって来たのに、宇宙で使徒と戦うことがあるかもしれん、思うたら、恐うなったんよ……」

 

「じゃ、形代は行くのをやめるの?」

 

「ううん、それはせんよ。今までずっと訓練を受けて来たんじゃし、元々わたしらは『怪物』と戦うためにここに来たんじゃもん。……恐いけど、それぐらいの覚悟はできとるつもりじゃけんね。……じゃけんどね……」

 

「でも、なんだい?」

 

「この前、使徒が現れて、アグニで出た時も、ここまでは思わんかった……。もしかしたら死ぬかもしれん、言うのは、いつもちょっとは思うとるけんど、それでも、そんなことない、こんなことでは死なんけん、死んでたまるか、て、思うておったんよ……」

 

「…………」

 

「……でも、今度はなんか、それだけじゃないんよ。もし、戦って死んでも、それは仕方ない、て思うとるけんど、もし、死んで、沢田くんと二度と会えんようになったら、て、思うたら、なんか、すごう悲しなって……」

 

「……形代……」

 

「……ごめんね。こんなこと言うたらいかん、言うのは、ようわかっとるんよ。じゃけんど、なんか、今日だけは、どうしても沢田くんに聞いてもらいとうなって………。ぐすっ……」

 

「……形代、そんな事ないって、みんな元気で生き残るさ。そのために戦ってんだろ。心配すんなって」

 

 サトシは思わず強がりを言ってしまった。正直な所、流石に「宇宙戦闘」となれば死ぬかも知れない、と言う恐怖感は否定出来ないが、なぜかその時のサトシはアキコにこう言わずにはいられなかったのだ。

 

「……うん、そうじゃね。……絶対に生き残って、事件を解決して、またみんなで仲良くやって行くんじゃね………。ぐすっ……」

 

 サトシはアキコの顔をそっと覗き込んだ。端正な横顔に涙が一筋かかっている。思わずサトシはアキコの肩を抱き寄せた。

 

「!………」

 

 アキコは一瞬びくっとしたが、そのままサトシに身を任せるように寄りかかって来た。もう一度顔を見ると、アキコは目を閉じている。

 

「…………」

 

 サトシはもう何も考えられなかった。そのままやさしくアキコの顔を持ち上げ、そっと唇を重ねた。

 

 続く

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