二つのコスモス~続・新世紀エヴァンゲリオン 第四部・二つの光   作:VIA MEDIA

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第九話・因縁

 京都財団本部地下シェルター。

 

 持明院が、顔色を変え、

 

「むっ!!?」

 

 思わず安倍は身を乗り出し、

 

「元締! いかがなされました!?」

 

「たった今、強烈な霊気を感じた。これはなんだ……。うむっ!! 第3に異様な霊気が集まり始めているぞ!! 加納! 連絡は取れるか!?」

 

「地上に出れば取れます!」

 

「すぐに連絡を取れ!!」

 

「はっ!!」

 

 加納は部屋を飛び出して行った。加持も、顔色を変え、

 

「私も行きます!!」

 

 +  +  +  +  +

 

第九話・因縁

 

 +  +  +  +  +

 

 IBO本部中央制御室。

 

 五大が、かつてない大声で、

 

「零号機!! 聞こえるか!! 応答しろ!!」

 

 すると、

 

『こちら綾波! 聞こえます!』

 

 ミサトも、大声で、

 

「レイ!! 無事だったの! よかった!」

 

『ご心配おかけしました! 渚くんも無事です!』

 

 ここで五大が、

 

「そのロボットはなんだ!? もしかして!」

 

『オクタヘドロンです!!』

 

「!!!!!!」

「やっぱり!!」

 

 絶句した五大と叫んだミサト。その時、

 

『割り込んですまん!! 儂はJRL顧問の中之島ぢゃ!!』

 

 それを聞いた五大は思わず身を乗り出し、

 

「ええっ!!? あなたが中之島博士!!?」

 

 ミサトも、

 

「博士!! 博士なんですか!?」

 

『おお、葛城君か! 中之島ぢゃ!!』

 

 五大は、ミサトに向かって、

 

「葛城君! とにかく全機地下に回収するんだ!」

 

 ミサトは頷き、

 

「了解! レイ! オクタヘドロンを回収ポイントに誘導してちょうだい! 全機とも地下に下ろすわ!」

 

『了解!!』

 

 その時、マヤが、

 

「加持部長から無線です!! 繋ぎます!!」

 

『こちら京都の加持だ!! なにかあったのか!?』

 

 +  +  +  +  +

 

「グワアアアアアアッ!!!」

 

 完全に破壊され、瓦礫の山と化したIBOアメリカ東支部に、エヴァンゲリオン量産型拾参号機の咆哮が響き渡る。

 

ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ!

 

 誰も搭乗していないのに突然動き出した拾参号機は、「当たるを幸い」とばかりに破壊と殺戮の限りを尽くした。通信と外部からのエネルギー供給を断たれ、自家発電で何とか凌いでいたアメリカ東支部は、拾参号機の「侵攻」の前に呆気なく全滅してしまった。

 

「グワアアアアアアッ!!!」

 

 施設を完全に破壊し、「外への通路」を確保した拾参号機は、再び咆哮を上げると空を見上げ、翼を広げて何処へともなく飛び去って行った。

 

 +  +  +  +  +

 

 京都。

 

 ミサトの話に加持は顔色を変えた。

 

「なんだって!! オクタヘドロンが来た??!!」

 

「!!!!」

 

 時田も絶句している。

 

『そう!! オクタヘドロンが5機来たのよ!! 零号機も帰って来たわ!!』

 

「わかった!! また連絡する!!」

 

『了解!!』

 

 時田は、身を乗り出し、

 

「加持さん!『オクタヘドロン』とは、まさか……」

 

 加持は頷くと、

 

「そうです。この前お話しした、『向こうの世界』のロボットですよ」

 

「!! まさか……」

 

 +  +  +  +  +

 

 駒ケ岳山中。

 

 ゲンドウが、アダムに向かって、

 

「どうだ? アダム。量産型と使徒の様子は」

 

「量産型は全機起動したよ。支部を破壊してこっちに向かっている。使徒も全速で移動中だ」

 

「そうか。とにかく急がせろ」

 

「ああ、わかってるよ」

 

 その時、何故かリツコが、

 

「…アダム」

 

「なんだい?」

 

「『ヨーロッパにいる4機とはテレパシーがうまく通じない』、って、言ってたけど、そっちはどうなの?」

 

「大丈夫だよ。今はうまく通じてる」

 

 それを聞いた祇園寺は、

 

「おお、そうか。それはよかった。わははははは。赤木博士、取り越し苦労だったな。わはははは」

 

 リツコは頷き、

 

「ええ、そのようですね……」

 

 ここで、ゲンドウが、

 

「とにかく量産型と使徒を全部ここに集めれば17体、レリエルを除いても16体だから楽に勝てる。……祇園寺、敵の戦力はどれぐらいだ?」

 

 祇園寺は、やや顔を顰め、

 

「それがだ、連中、妙な霊的バリヤーを張っているようで、上手く透視出来んのだ。当然、『丸腰』で来ている訳はなかろうから、ロボットを何台か持って来てはいるだろうがな……」

 

 ゲンドウは、頷くと、

 

「いずれにせよ、中之島如きに邪魔はさせん。連中も残りのエヴァも全滅させるのみだ」

 

「うむ、それしかあるまいな」

 

 ここで、またもリツコが、

 

「…碇司令」

 

「なんだ」

 

「レリエルを除いても、と仰いましたわね。どう言うことですの?」

 

「レリエルは直接戦闘には参加させん。ヤツにはもっと重要な仕事をさせねばならんからな。……まあ見ていろ。すぐにわかる」

 

「そう言う事だ。くくくくくく」

 

と、笑う祇園寺。リツコは、頷くと、

 

「…はい…」

 

「…………」

 

 相変わらずリリスは押し黙っている。

 

 +  +  +  +  +

 

 京都財団本部地下シェルター。

 

 加持の話に、安倍は仰天し、

 

「なんですと!! オクタヘドロンが!!??」

 

「そうです。信じ難い事ですが、『向こうの世界』からこっちに来たらしいのです」

 

 安倍は、持明院に向かって、

 

「元締、先程感じたと仰った霊気はそれですか?」

 

 しかし、持明院は、軽く首を振ると、

 

「いや、違う。この霊気は、……微かに魔界の臭いがする! マーラの臭いだ!」

 

「えっ!?」

「元締!!」

 

 加持と安倍は顔色を変えた。持明院は続けて、

 

「今まで気付かなかったが、これはマーラの臭いだ。今となって改めて考えてみると、敵が使徒の姿を借りたマーラだったからこそ、既に京都に備わっていた霊的防衛システムを稼動させる事で我々は何とか助かったのだろう」

 

「えっ?『霊的防衛システム』、ですって?」

 

と、驚いた加持に、安倍は、

 

「ええ、平安京は風水の理論に基づいた『霊的防衛都市』として作られています。そのシステムを稼動させたのですよ」

 

 続けて、持明院が、

 

「その観点に立てば、第3は霊的には無防備に近い。いや、それどころか、あそこは『黄泉比良坂』だ。戦力を分散させてはならん。すぐにJAで戻れ」

 

 それを聞いた加持は驚き、

 

「えっ!? しかし、京都の防衛は……」

 

 しかし、持明院は、力強く、

 

「私の透視では霊気は第3に向かって流れている。霊的防衛システムをフル稼働すれば、もしもの事があっても京都は何とか耐えられる。構わんからJAで戻れ」

 

 安倍も、

 

「加持さん、こっちは何とかします。元締のご指示に従って下さい」

 

 その言葉に加持も頷き、

 

「そうですか。……わかりました」

 

 ここで、持明院が、

 

「安倍、私も第3に行く」

 

「えっ!? しかし、元締が行ってしまわれると、結界の強度が……」

 

「私がいなくても、行者全員の力を合わせ、波動増幅器を通せば結界の強度は何とか確保出来るだろう。研究所の残りのエネルギーは全部増幅器に回せ」

 

「しかし、自家発電用の燃料は後僅かです。生命維持の分を無視したとしてもそう長くは持ちませんから、どこかから持って来ないと……」

 

「そうか……。どうしたものか……」

 

 安部の言葉に持明院も表情を曇らせる。その時、加持が、

 

「どんな燃料をお使いなんです?」

 

 安倍が、顔を上げ、

 

「液体酸素と液体水素です。燃料電池なんですよ」

 

 加持は、軽く頷き、

 

「燃料電池か……。第3に行けばいくらでもあるんだが……。近くにはないのですか?」

 

「探せばあると思います。しかし上手く見つかっても、どうやって運ぶか、ですよ」

 

 それを聞いた加持は、加納に向かって、

 

「加納さん、JAで運べませんか?」

 

「タンクに詰めた状態で表に出してあるのならともかく、普通は倉庫に入っているでしょうから、それを運び出す方法が……」

 

「そうか、JAでは大き過ぎるか……」

 

と、加持は一瞬考え込んだが、その直後、

 

「うむ! そうだ! 思い切って第3から運ばせよう!」

 

 加納は驚き、

 

「えっ!? どうやって?」

 

「オクタヘドロンに運んでもらうんですよ! あれなら高速飛行が可能です! こっちで探す手間を考えたらその方がずっと早い!」

 

「あっ! なるほど!」

 

「連絡して来ます! ちょっとお待ち下さい!」

 

 +  +  +  +  +

 

 IBO本部零号機ケージ。

 

バシュウッ!

 

 回収された零号機からエントリープラグが射出された。その様子を五大とミサト、そして五人のチルドレンが固唾を飲んで見守っている。

 

ギイイイイッ!

 

 プラグのハッチが開き、二つの人影が姿を現す。

 

「レイ! 渚君!」

 

 ミサトは叫ぶと二人の近くに走り寄った。五大とチルドレンも後に続く。

 

「葛城部長! 戻りました!」

 

 やや涙声になりながらレイはミサトに駆け寄った。カヲルも眼をやや赤くしながら無言で駆けて来る。涙をこらえながらミサトはレイの両手をしっかりと握り、

 

「レイ! よく帰ってきたわね!」

 

 ヒカリも懸命に涙をこらえ、

 

「綾波さん!! 渚くん!」

 

 ナツミは眼を真っ赤にしながら唇をかみしめ、

 

「……よかった。……二人とも……。ぐすっ………」

 

 トウジとケンスケも、

 

「綾波! 渚君! よう戻って来たな!!」

 

「ほんとに二人とも無事でよかったよ!」

 

と、真顔ながら声が上ずらせている。その様子を上目遣いに見ながら、

 

「………綾波、渚君……」

 

と、シンジも思わず泣き出しそうになる自分を抑えている。レイとカヲルはシンジに近寄ると、

 

「シンちゃん……」

 

「碇君……」

 

 シンジは、俯き加減のまま、

 

「……よかった。ほんとによかった……」

 

 二人の顔などまともに見られる筈もない。顔を見たら大声を上げて泣き出してしまうだろう。

 

 その時、五大が、

 

「二人とも、よく戻って来たな。本当によかった……」

 

と、真剣な表情ながらも、温かい声で、

 

「とにかく中央に戻ろう。本当なら君達二人にゆっくりさせてやりたい所だが、今は緊急事態だ。オクタヘドロンの事もあるし、一刻も早く態勢を整えねばな」

 

「はい、了解しました」

 

「はい、わかりました」

 

 カヲルとレイは力強く答えた。しかしその時、レイはアスカの姿がない事に初めて気付き、

 

「あの、アスカは……」

 

「惣流君は、意識不明で入院している」

 

「えっ!!」

「えっ!!」

 

 五大の言葉に二人は顔色を変える。その時五大のスマートフォンが、

 

トゥル トゥル トゥル

 

「……五大だ」

 

『伊吹です! 京都の加持部長から緊急の依頼がありました! 燃料電池ユニットと液体酸素、液体水素を、オクタヘドロンですぐに京都まで運んで欲しい、との事です!』

 

「なに!? オクタヘドロンでだと!? 加持君とは通信が繋がったままか!?」

 

『はい! そうです!』

 

「よし! とにかくそっちに行く! 待たせておいてくれ!」

 

『了解しました!』

 

 +  +  +  +  +

 

 中央制御室。

 

 加持から話を聞いた五大は、

 

「成程、そう言う事か。わかった。すぐに手を打とう」

 

『よろしくお願いします! ではこれにて!』

 

 通信が終わるや、五大はマヤに向かって、

 

「伊吹君、オクタヘドロンはどうなっている?」

 

「全機ジオフロントの中です。本部内には格納するスペースがありませんので、本部の横に臨時駐機場を設営しました」

 

「搭乗員の諸君は?」

 

「日向代行と青葉代行が現在こちらに案内中です。一応、応接室にお通しする事に致しましたが」

 

「そうか。よし、わかった。早速行って燃料電池の運搬を依頼しよう」

 

 その時、スピーカーから、

 

『こちら日向です! オクタヘドロンの関係者は全員第2応接室にお連れしました!』

 

「五大だ! 了解した! すぐに行く! ……葛城君!」

 

「はいっ!」

 

「君は私と一緒に応接室だ。チルドレンは全員自室で待機させておいてくれ」

 

「了解しました! ……みんな聞いた?! 自室で待機よ!」

 

「はいっ!」

「はいっ!」

「了解しましたっ!」

「了解ですっ!」

「はいっ!」

「はいっ!」

「はいっ!」

 

 続いて五大は、レナと服部に向かって、

 

「田沢君! 服部君! 君達は燃料電池ユニットと燃料タンクをオクタヘドロンの所まで運んでおくように段取りしてくれ!」

 

「了解しました!」

「はいっ!」

 

 +  +  +  +  +

 

 第2応接室。

 

 日向が、中之島に向かって、

 

「しばらくお待ち下さい。すぐに本部長が参ります」

 

「うむ。かたじけない」

 

 その時、ドアが開き、五大とミサトが入って来た。

 

「お待たせしました」

 

と、五大は一礼したが、ミサトは思わず、

 

「博士!!」

 

 中之島も、

 

「おお! 葛城君!」

 

 ミサトは、五大を手で指し、

 

「博士、こちらがIBO本部長の五大です」

 

 五大はまたも一礼すると、

 

「あなたが中之島博士でいらっしゃいますか。初めまして、私がIBO本部長の五大アキラです」

 

 中之島も一礼し、

 

「お初にお目にかかる。儂はJRL顧問の中之島浩司郎ぢゃ。葛城君達とは多少因縁があっての。こうしてこちらの世界にお邪魔させて貰ったのぢゃ。こちらの五人は、向かって右から、沢田サトシ、形代アキコ、北原リョウコ、草野大作、綾小路ゆかりぢゃ。全員オクタヘドロンⅡのパイロットぢゃ」

 

「沢田サトシです。初めまして」

 

「形代アキコです。よろしくお願い致します」

 

「北原リョウコです。よろしくお願い致します」

 

「草野大作です。初めまして」

 

「お初に御目文字致します。綾小路ゆかりと申します」

 

 五大は全員を見渡し、

 

「五大です。草野君と綾小路さん以外はお名前は存じておりますよ」

 

 中之島は苦笑すると、

 

「そうらしいのう。綾波君から『原初の光』の事を聞いた時は流石に驚いたぞよ」

 

 しかし五大は、真顔で中之島に、

 

「博士、早速で申し訳ないのですが、一つどうしてもやって戴きたい事があります」

 

「何ぢゃな」

 

「燃料電池をオクタヘドロンで京都まで運んで戴きたいのです」

 

「えっ?! オクタでぢゃと?!」

 

 +  +  +  +  +

 

 京都財団地下シェルターでは、持明院、安倍、加納、加持の四人が今までの経過と今後の行動に関して情報交換を行っていた。

 

 その時、時田が入って来て、

 

「失礼します!」

 

 加納が顔を上げ、

 

「何かありましたか?!」

 

「戦自が近くのシェルターを捜索した所、生存者が発見されました!」

 

 安倍も驚き、

 

「えっ!? そうなんですか!」

 

 加持も、

 

「生存者が他にもいたか!」

 

 時田は頷き、

 

「それで、応援のため、第3から戦自の部隊がこちらに向かっています。あ、それから加持さん、今しがた、IBO本部から連絡がありました。間もなく燃料電池を持ってオクタヘドロンが出発するそうです。20分もかからないで到着出来ると言っていましたよ」

 

 加持は、軽く首を振ると、

 

「そうですか。やはり速いな。……では安倍理事長、オクタヘドロンの到着を待って我々は出発します」

 

 安倍は頷き、

 

「そうですか。わかりました。では、そうして下さい。そちらと連絡を取れるように短波無線機もすぐに準備します」

 

「後は宜しくお願い致します」

 

と、安倍に一礼した後、加持は顔を上げ、

 

「加納さん、時田さん、出発の準備をお願いします」

 

 時田は頷き、

 

「了解しました」

 

 加納も、

 

「元締、準備が出来たらお迎えに上がります」

 

 持明院も深く頷き、

 

「うむ。頼んだぞ」

 

 +  +  +  +  +

 

 IBO本部オクタヘドロンⅡ臨時駐機場では、五大の依頼により燃料電池と液体燃料を運搬するため、中之島、サトシ、大作の三人が、それぞれアカシャとヴァーユに乗り込んでいた。

 

 中之島が、オモイカネⅡのモニタを睨みつつ、

 

「よし、では出発するぞ! 草野君! 準備はいいか!」

 

『準備オーケーです!』

 

「沢田君! 君はユニットの方ぢゃ! 草野君は燃料タンクを持て!」

 

「了解!」

『了解!』

 

「中央聞こえるか! ここから直接飛行する! ゲートを開けてくれ!」

 

 ミサトの声が飛び込んで来る。

 

『了解! ゲート開きます!』

 

「では出発ぢゃ!!」

 

「了解!」

『了解!』

 

 アカシャとヴァーユはそれぞれユニットとタンクを手に持ち、音もなく上昇を始めた。

 

 +  +  +  +  +

 

 中央制御室では五大を始めとするスタッフがモニタを食い入るように見ていた。

 

 五大は唸り、

 

「うーむ、オクタへドロンか。…こうやって改めて見ると凄いな。音もなく飛べるとは…」

 

 ミサトが頷き、

 

「ええ、あのオクタヘドロンは前のタイプとは違うようです。大きさが倍ほどあります」

 

「高さはざっと24,5メートルだな。34メートルのエヴァよりは小さいが、飛べると言う事は、大きさと戦闘能力は関係ない、と言う事か……」

 

「ええ、そうですね……」

 

 ここで五大は、レナに向かって、

 

「そうだ。田沢君」

 

「はい」

 

「六人分の部屋は用意してくれたか」

 

「はい。用意致しました」

 

「では、ここに残っている三人のパイロット諸君を部屋に案内して、そこで待っていて貰ってくれ」

 

「了解しました」

 

 +  +  +  +  +

 

 第3新東京を飛び立ったアカシャとヴァーユは超高速で飛行し、10分もしない内に旧名古屋市上空まで差し掛かっていた。

 

 スクリーンに映る地上の様子を見ながら、中之島が、

 

「うーむ、こっちの世界の日本はやっぱりちと地形が違うのう。セカンド・インパクトのせいぢゃな」

 

 サトシも、

 

「博士、あそこが名古屋ですよね。海岸線が相当山の方まで来ていますねえ。やっぱりあのアニメの通りなんですかね……」

 

「それなんぢゃがのう……。草野君、聞こえるかの?」

 

『はい、感度良好です』

 

「そうか。では聞くだけ聞いておいてくれ。……まあ、取り敢えずここだけの話なんぢゃが、沢田君と草野君は、さっきの応接室にあったカレンダーを見たかの?」

 

『あ、博士もご覧になられましたか』

 

 大作は相槌を打ったが、サトシは、

 

「え? なんのことですか?」

 

 中之島は苦笑し、

 

「ふぉっふぉっふぉっ、沢田君、それではいかんのう。今日はこの世界の暦で、2016年2月12日らしいのぢゃが、曜日が月曜日だったのぢゃよ」

 

「はあ、……それがなにか?……」

 

 相変わらず、訳が判らない様子のサトシに、中之島は、

 

「ほれ、このモニタを見てみい。儂等の世界の暦では、2016年2月12日は金曜日ぢゃ。つまり、曜日が違うのぢゃよ」

 

 これには流石のサトシも驚き、

 

「えっ!? それは、どう言う……」

 

 中之島は、軽く頷くと、

 

「『新世紀エヴァンゲリオン』は1995年後半から翌年の前半にかけて放映されたアニメぢゃ。その中でカレンダーが出て来るのは一度だけでの。第九話・『瞬間、心、重ねて』の中なんぢゃが、シンジとアスカ、おっと、碇君と惣流君が特訓をした時のシーンに、『8月11日、金曜日』、と出て来るのぢゃ。それが、儂等の世界の1995年のカレンダーと同じ曜日の割り付けになっておるのぢゃよ」

 

「へえー、全然知りませんでした……」

 

「第八話の最後にも、黒板に『9月21日、月曜日』と言う日付が出て来るのぢゃが、それは生徒がいたずらで日付を書き直したのだ、と言う説明も一応可能ぢゃろう。何しろ、第八話で9月、第九話で8月と言う訳には行くまい。しかし、あれほど明確にカレンダーが出て来たら、アニメを作る上での間違いだったとしか思えん。儂はそう解釈しておった」

 

「はあ……」

 

「所がぢゃ。実際にこっちに来てみるとその通りになっておった。2月12日が月曜日と言うのは、儂等の世界では1996年のカレンダーぢゃ。つまり、時間の流れでは辻褄が合う。それで、カレンダーが出て来るあのシーンが正しい『透視』ぢゃったとすると、ちと気になる事があっての……」

 

 しかしサトシは、まだ訳が判らず、

 

「はあ……、でも博士、曜日がそんなに重要なんですか?」

 

 ここで、大作が、

 

『沢田、重要なのは曜日じゃないよ。この世界を支配する物理法則の事なんだよ。そうですね、博士?』

 

「えっ? どう言うことなんだ?」

 

と、驚いたサトシに、中之島は、

 

「草野君の言う通りぢゃ。あのアニメには、色々な場面で反粒子ビームみたいなビームを撃つシーンがあった。特に、第六話では、使徒ラミエルに対して『反陽子砲』をぶっ放しておったが、あんなものを本当に撃ったら儂等の世界では大変な事になる。第六話の通りだったとしたら、18京ジュールのガンマ線が撒き散らされた事になり、地球が水平なら半径1万7千キロ以内の生物は放射線被曝で即死した筈だ、と、誰かが指摘しておった。ぢゃから、もしこの世界で本当にあんな事を平然とやらかしておったとしたら、つまり、作者の『透視』が正しかったとしたら、儂等の世界の物理法則はこちらでは通用しない、と言う事にもなりかねんのぢゃ。それが気がかりなんぢゃよ」

 

 ようやく納得したサトシは、

 

「そう言うことですか……」

 

 中之島は続けて、

 

「とにかく二人とも、この話は儂等六人以外には他言無用ぢゃぞ。この件に関しては儂がこっそりと調べておくからの」

 

「了解しました」

『了解しました』

 

と、この話題は終わったと見た大作が、

 

『ところで博士、琵琶湖が見えて来ました。もうすぐ京都です』

 

「おお、もう滋賀まで来たか。最終着陸態勢に入れ」

 

「了解」

『了解』

 

 その時だった。

 

ビィィィィィィーーーッ!!

 

「えっ!?」

「何ぢゃ!?」

 

 突然の警報にサトシと中之島は顔色を変えた。続いて大作の声が飛び込んで来る。

 

『あっ! ウィンドウが!!』

 

「これは! ゼルエルだ!!!」

「何ぢゃとっ!!!」

 

 サトシと中之島も思わず叫ぶ。アカシャのコックピットに開いたウィンドウに映った物体は、紛れもなく使徒ゼルエルの姿だった。

 

 続く

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