二つのコスモス~続・新世紀エヴァンゲリオン 第四部・二つの光   作:VIA MEDIA

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第二十一話・逆転

 地上と空中で使徒に対する牽制攻撃が続けられる中、超高速で1万メートルを越える高さまで上昇したアカシャは急激に体勢を変えると、両手に握り拳を作って下を向いた。

 

 サトシはスクリーンを睨み付ると、

 

「アカシャ!! 行くぞおおおおおおっ!!! サイコバルカンのエネルギーを両手に充填しろっ!!!!」

 

 +  +  +  +  +

 

第二十一話・逆転

 

 +  +  +  +  +

 

バシュウウウウッ!!!

 

 強烈な風切音を立ててアカシャが急降下する。左手は伸ばし、右手は拳を右肩のあたりに付けて構えていた。

 

「うわあああああああああああああっ!!! 行けええええっ!!!」

 

 目前に赤いサハクィエルの巨大な姿が迫って来る。

 

「サイコバリヤー全開!! 敵のATフィールドをブチ破れ!!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「アカシャが超高速でサハクィエルに突入します!!」

 

 マヤが大声で叫ぶ。五大は中之島に、

 

「博士!! どうするつもりなんです?!!」

 

「うむ!! まあ見ておれ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「うわあああああああああああっ!!!」

 

バシイイイイイイイイイイイイッ!!!!

 

 猛烈な勢いで突っ込んで来たアカシャのサイコバリヤーがサハクィエルのATフィールドに接触し、音を立てながら激しく光った。

 

「今だ!!! 行けえええっ!!」

 

 ATフィールドを突き破り、アカシャの左手がサハクィエルの体を掴む。

 

「うわあああああああああああっ!!!」

 

 サトシが大声で叫びながら無意識的に右手を突き出す。

 

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!!

 

 アカシャの右手がサハクィエルを掴んでいる左手を強烈に叩いた瞬間、信じられない程の白い強烈な光が閃いた。

 

 +  +  +  +  +

 

『ガリガリガリガリッ!!!』

 

 中央制御室のスピーカーから強いノイズ音が迸り、メインモニタは激しく光る。

 

「うわああああああっ!!!」

「うわああああああっ!!!」

 

 あちこちでスタッフの叫び声が上がった。

 

 +  +  +  +  +

 

「ああっ!!!」

「!……………」

 

 アダムの叫びに、ゲンドウは、

 

「どうした!?」

 

 アダムは、呆然とした顔で、

 

「…サハクィエルが…、一人死んだ……」

 

「なんだと!?」

「なにっ!?」

「ええっ!?」

 

 ゲンドウと祇園寺が顔色を変える。リツコも叫んでいた。

 

 +  +  +  +  +

 

ブシュウウウウウウウウウウッ!!

 

 驚くべき事に、まるで赤く熱せられた鉄にかけられた水が瞬間的に蒸発するかの如く、サハクィエルの姿は消えてしまったではないか。サトシは思わず、

 

「消えた!!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 ゲンドウが、リリスに詰め寄り、

 

「リリス! どうなんだ!?」

 

「…向こうの世界から悲鳴が聞こえました……」

 

「!! …く、クソっ!………」

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

『ガリガリガリガリッ!!!!!』

 

「な、なんやっ!!!??」

 

 カーラで使徒を追い回していたマサキは、突然無線に飛び込んで来たノイズに驚いて思わず周囲を見回した。

 

「あっ!! あれはっ!?」

 

 メインモニタの左前方に浮かぶ赤いサハクィエルが燃えるように光っている。

 

 +  +  +  +  +

 

 松下が怒鳴る。

 

「今のノイズはなんだ!? 分析しろ!!」

 

「サハクィエル赤が発したマーラのノイズです!! 今までのパターンと基本的には同じですが、短時間に集中して発生しました!!」

 

 真由美の言葉に、松下は、

 

「どう言う事だ?!」

 

 +  +  +  +  +

 

 その時、ジョン・ヘンリー大尉の戦闘機が赤いサハクィエル目掛けて突っ込んで来た。

 

「メアリー! 行クゾ! 使徒ノ周囲ヲ旋回シナガラ攻撃スル!!」

 

『了解ヨッ!!』

 

「ウオオオオオオオオッ!!」

 

バスバスバスバスッ!!!!!

 

『発射!!』

 

バスバスバスバスッ!!!!!

 

 恰も惑星の周囲を人工衛星が周回するかのように飛びながら、2機は赤いサハクィエルめがけてサイコバルカンを発射する。

 

『ガリガリガリガリッ!!!!!』

 

 +  +  +  +  +

 

 真由美が叫んだ。

 

「また同じノイズです!!」

 

 松下も大声で、

 

「何故だ!? 今まではこんなノイズは検出されておらんぞ!?」

 

 その時だった。山之内が振り向き、

 

「本部長!!!」

 

「どうした!!??」

 

 駆け寄って来た松下に、山之内は、

 

「このデータを見て下さい! 今の戦闘機の攻撃で使徒がノイズを出した時、一瞬ですがエネルギー反応が極端に低下していました!!」

 

「なにっ!!??」

 

「これは一体………」

 

と、呟いた直後、突然山之内は、

 

「そうか!! わかったぞ!!!」

 

「なんだと!! 何がわかったんだ!!??」

 

「オモイカネに分析させます! これを見て下さい!!」

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

「サハクィエル赤が消滅しました! エネルギー反応もありません!!」

 

 マヤの叫びに五大は、

 

「やったか!!? 博士! どうです!?」

 

 中之島が、キーボードを叩きながら、

 

「ちょっと待て! 計算中ぢゃ!」

 

 そして、その直後、

 

「うむ!! 完全に消滅しおったぞ!! ゼルエルを倒した時と同じぢゃ!! 本部長! 今の要領で攻撃するのぢゃ!! データファイルをマギに送信したから、エヴァ全機とJAに転送せいっ!!」

 

 五大は大声で、

 

「伊吹君!! 今の攻撃法のデータをエヴァ全機とJAに転送しろ!!」

 

「了解しました!!」

 

 続いて五大は、中之島に、

 

「博士! オクタヘドロンの方はどうします!?」

 

「アカシャから他機に直接送信させる! 心配無用ぢゃ!」

 

「わかりました!」

 

 中之島は、オモイカネⅡのマイクに向かって、

 

「沢田君!! 今のデータを全機に転送しておけ!! それから引き続き攻撃ぢゃ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「了解!! データ転送開始!! ………よしっ! 完了だ! 続けて行くぞっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 マヤが振り向き、

 

「データ転送は全て完了しましたっ!!」

 

 五大は頷き、

 

「エヴァ全機とJA! 今送信したデータを使って攻撃しろ! 要領はアカシャがやった攻撃方法と同じだ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 シンジも大きく頷くと、アスカに、

 

「よしっ!! アスカ!! 行くよっ!!」

 

「まっかせなさいっ!! 攻撃開始!! 目標はサキエル青!! 両手にATバルカンのエネルギーを充填!!」

 

 アスカの叫びに呼応して参号機の両手が強く光る。

 

 +  +  +  +  +

 

 トウジとヒカリも、

 

「こっちも行くでえええっ!! 委員長!!」

 

「うんっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 ケンスケとナツミも、

 

「俺たちもだああっ!!」

 

「行けええっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 そして、カヲルとレイも、

 

「綾波さんっ!!」

 

「行くわよっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 時田が操作員甲に怒鳴る。

 

「サイコバルカンのパワーを最大に上げろっ!!」」

 

「了解っ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「参号機!! 行けえええええええええっ!!!」

 

 シンジが叫んだ次の瞬間、信じられない現象が起こった。

 

「ウオオオオオオオオオオオオンンンンッ!!!!」

 

 参号機が突然両手を構えて激しく咆哮したと思う間もなく、全身が一瞬真っ青な光に包まれたのである。

 

「ウオオオオオオオオオオオオンンンンッ!!!!」

 

 参号機はもう一度咆哮を上げ、猛スピードで青いサキエルに向かってダッシュして行った。

 

「グワアアアアアアアアアッ!!」

 

 青いサキエルもただならぬ参号機の様子に気付き、叫び声を上げて身構えている。

 

「アスカ!! まかせたっ!!」

 

「うんっ!! 今よっ!!! とびこめっ!!」

 

 参号機は姿勢を低くし、真正面からサキエルに突っ込んで行った。

 

バシイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!!

 

 ATフィールドがお互いに干渉し、激しい音と光が発せられる。

 

「うてええええっ!!!」

 

 アスカの叫びと共に参号機の左手はATフィールドを突き破ってサキエルの腹部を掴んだ。殆ど同時に右の拳が伸びる。

 

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!!

 

「グエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

ブシュウウウウウウウウウッ!!!

 

『ガリガリガリガリッ!!!』

 

 断末魔の悲鳴と激しいノイズを発しながら青いサキエルは消滅してしまった。

 

「消えたっ!! やったぞおおっ!!!」

「やった!! やったわっ!!」

 

 コックピットに二人の声が響き渡る。

 

 +  +  +  +  +

 

 五大は思わず大声で、

 

「やったぞっ!!!」

 

 中之島も負けずに怒鳴る。

 

「うむっ!! これぢゃっ!! これでいいのぢゃっ!!」

 

 その時、マヤが顔色を変え、

 

「ああっ!!?? 本部長!! これはっ!!!」

 

「どうした!!??」

 

「信じられません!! 参号機のシンクロ率が400パーセントを超えていますっ!!」

 

「なにっ!!??」

 

 すかさず中之島が、

 

「伊吹君!! パイロットには異状はないかっ!!??」

 

 しかし、すぐさまシンジの声が、

 

『博士!! 大丈夫ですっ!! 僕らは正常ですっ!!』

 

「碇君!!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「僕もアスカも正常ですっ!! 心配いりませんっ!!」

 

『そうか!! 判ったわいっ!!』

 

 +  +  +  +  +

 

 五大が、中之島に詰め寄り、

 

「博士! どう言う事なんですか!?」

 

「今詳しく話しているヒマはないがの、『前の歴史』で、碇君が乗った初号機のシンクロ率が400パーセントを超えよった事があったのぢゃ。その時えらい事が起こっての」

 

「えらい事?!」

 

「そうぢゃ。碇君が『溶けてしまった』のぢゃよ」

 

「溶けた!?」

 

「詳しくは一段落してから話す。今は問題なかろうからな」

 

「わかりました」

 

 +  +  +  +  +

 

「次だっ!! 目標はサキエル赤!!」

 

 シンジが叫ぶと、またもや参号機は身構えて激しく吼える。

 

「ウオオオオオオオオオオオオンンンンッ!!!!」

 

 参号機の全身は赤い炎のような光に包まれた。

 

 +  +  +  +  +

 

 五大は刮目した。

 

「今度は赤い光!!?」

 

「そうか!! 相手の五大元素に合わせておるのか!!」

 

 中之島の言葉に五大が振り向き、

 

「えっ!?」

 

「敵の元素の波動と同調すれば、ATフィールドを潜り抜け易くなるのぢゃろう! 上手くやったものぢゃ!!」

 

「成程!」

 

 +  +  +  +  +

 

「つっこめええええっ!!」

 

 アスカの叫びに呼応して、参号機は赤いサキエルを掴んだ左拳めがけて右拳を突き出す。

 

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!!

 

「グエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

ブシュウウウウウウウウウッ!!!

 

『ガリガリガリガリッ!!!』

 

「次は黄色のサキエルよっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

「分析完了です!!」

 

 山之内が示したコンソールのデータに、松下は思わず、

 

「これはっ!!!」

 

 山之内は頷くと、

 

「そうです!! エンタープライズと戦闘機の違いは、言わば直流と交流の違いだったんです!!」

 

「そうか!! 戦闘機のサイコバルカンはサイコバリヤーと交互に切り替えて使っているから、たまたまその時のエネルギーの流れが交流になっていたのか!!」

 

「そうです! 使徒はエンタープライズのサイコバルカンのエネルギーをきっかけにしてわざとS2機関を暴走させて爆発し、増殖したんですよ!! ところが戦闘機の攻撃は『交流』だったため、暴走した時に発生した使徒のエネルギーが戦闘機のエンジンに逆に吸い取られるタイミングも発生し、結果としてプラスマイナスゼロになっていたんです! それで爆発しなかったんです!!」

 

 ここで岩城が、

 

「成程。しかし、そうだとしても、サイコバルカンを交流にした場合、結果として留めを刺せないのでは!?」

 

「確かに、普通に攻撃してたのではそうなるでしょう。しかし今さっきの戦闘機の攻撃ではエネルギー反応が極端に低下しました。で、その時の攻撃パターンはこれです!」

 

 山之内が引き続いて示したデータに、岩城は、

 

「おおっ! これは!」

 

 松下も唸り、

 

「そうか! 使徒の周囲を旋回して攻撃すれば、コアにサイコバルカンのエネルギーが集中するのか!!」

 

「そうです! コア以外の部分はプラスマイナスゼロですから爆発しません。しかしコアに関しては、旋回飛行しながら攻撃を継続した場合、少しずつタイミングがずれながら『交流』が集中するため、結果としてプラスマイナスゼロにならないタイミングが生まれます! それを利用すればコアだけを破壊出来ます!! それがさっきのエネルギー反応低下に結びついたのでは!?」

 

「成程! 確かにそうだ!! 使徒の弱点はコアだし、その方法ならコアだけを破壊出来る!! 末川君!! 今の理論に基づくデータをオクタ全機に送信しろ!!」

 

「了解!!」

 

「こちら松下だ! オクタ全機!! データを送信するから、受け取ったら返事しろっ!!」

 

「転送完了しましたっ!!」

 

『こちら四条!! データは確かに受け取りましたっ!! 攻撃を開始しますっ!!』

 

『こちら橋渡!! 受信完了です!!』

 

『玉置ですっ!! こちらも受け取りましたっ!!』

 

 コンソールを操作しながら、山之内は、

 

「僕は嘉手納基地にデータを送信しておきます!!」

 

 松下は頷き、

 

「うむ、頼む! …エンタープライズ!! 応答願います!! こちらJRL本部松下!!」

 

『こちらエンタープライズ山之内です!!』

 

「使徒に対する効果的な攻撃方法が判明した!! そちらにもデータを送るが、この攻撃法を実行するには使徒に接近しなければならん! よってそちらでは使えないから、引き続きマントラレーザーによるバックアップ攻撃を頼みたい!!」

 

『了解しました!! …艦長! お聞きの通りです!!』

 

『事情はわっかりましたー!! 了解ねー!!』

 

「有り難うございます!! では!!」

 

 真由美が振り向き、

 

「嘉手納基地から連絡です!! つなぎます!!」

 

「JRL本部松下です!!」

 

『嘉手納基地のカジマです! データは受け取りました! 在日米軍の全基地に転送しておきます!!』

 

「宜しくお願いします!!」

 

『ではこれにて!!』

 

 続いて松下は、

 

「よしっ!! 末川君! 引き続き自衛隊にもデータを送信するんだ!」

 

「了解!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「よっしゃあああっ!!! もろたあああっ!!」

 

 マサキの叫びがコックピット内に響き渡ると同時に、カーラは超高速で青いラミエルの内の1体の背後に回り込んだ。ラミエルはビームを発射せんと体を回転させる。

 

「そうは行くかあああああああっ!!」

 

バスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスッ!!

 

 カーラは目にも留まらぬ速さでラミエルの周囲を旋回しながらサイコバルカンを発射し続けた。

 

ブシュウウウウウウウウウッ!!!

 

『ガリガリガリガリッ!!!』

 

 突然ラミエルが凄まじい光とノイズを発した。

 

「わああああっ!!」

 

 マサキが思わず眼を閉じて叫ぶ。しかし、その直後、

 

「…あれっ!!?? なんや!!?? ああっ!! 消えよったああっ!!」

 

 恐る恐る眼を開くと、かき消されたようにラミエルの姿はなくなっていた。

 

 +  +  +  +  +

 

 松下は仰天し、

 

「使徒が消えた!!! 末川君!!」

 

「一瞬強力なノイズが検知されましたが、現在は何の反応もありませんっ!! 使徒は完全に消滅していますっ!!!」

 

「なんだとっ!!!」

 

 山之内は興奮し、

 

「本部長!! これですよっ!! これでいいんですよっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「艦長!! 使徒が消滅しましたっ!!」

 

 由美子の叫びにライカーも、

 

「おおーっ!! ワンダフォーねえーっ!! 砲手!! 地上ノ攻撃班ガ使徒ヲ攻撃シ易イヨウニ、マントラレーザーデ使徒ヲ追イ回スンダ!!」

 

「了解デスッ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

『メアリー!! サッキノ要領デ攻撃ヲ続ケレバイインダ!! 行クゾオオッ!!』

 

 ジョンの叫びにメアリーも、

 

「ワカッタワッ!! 行クワヨオオッ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 嘉手納基地では、カジマが、通信員に、

 

「急ゲ!! 在日米軍全テニデータヲ転送スルンダッ!!」

 

「了解デスッ!!!」

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

 暗い顔のアダムが、

 

「もうだめだ…。みんな殺されてしまうよ……」

 

 リリスも、

 

「…向こうの状態はよくわかりません。みんな心を閉ざしてしまいました……」

 

 祇園寺が、歯噛みしながら、

 

「アダム、量産型はどうなんだ? バルディエルとはテレパシーが通じないのか?」

 

「こっちもみんな心を閉ざしてる。どうなってるのかわからないよ……」

 

 それを聞いた祇園寺は、ゲンドウの方を向くと、

 

「碇、もうこうなったら仕方ない。最後の手段を講じるしかあるまい」

 

「…あれをやるのか……」

 

と、呟いたゲンドウに、祇園寺は、

 

「そうだ。あれならここにいる五人だけで出来る。ビッグバンは無理でも、サード・インパクトなら起こせるからな」

 

 一呼吸の後、ゲンドウは、

 

「止むを得んな。…また一からやり直しか」

 

 流石のリツコもこれには驚き、

 

「ええっ!! 碇司令!『やり直し』とはどう言う事ですの!!?」

 

 +  +  +  +  +

 

「加持君、あれ」

 

「うん、開いてるな」

 

 ターミナルドグマへの入口にやって来たミサト達三人は、ドアのところから漏れる一筋の光を目に留めた。

 

「腐った生ゴミの臭いを感じる。連中は間違いなくいるぞ」

 

 持明院が声を潜めて言う。ミサトは腕にはめた通信機を見て、

 

「今のところ、ATフィールドもサイコバリヤーも検知されていないわ。…持明院さん、一応我々三人の気配は消されている筈ですね」

 

「大丈夫だ。完全に消してある」

 

「加持君、ドアの隙間から中を見てみましょう」

 

「うむ、そうだな」

 

 +  +  +  +  +

 

「うおおおおおおおおおおっ!!!」

「うわあああああああああっ!!!」

 

 シンジとアスカの声がコックピットに響き渡る。

 

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!!

 

「グエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

ブシュウウウウウウウウウッ!!!

 

『ガリガリガリガリッ!!!』

 

 まさに阿修羅と化した参号機は次々と地上の使徒を仕留めて行く。

 

 +  +  +  +  +

 

 中央制御室でモニタを見詰る五大も唯々驚くのみだった。

 

「なんて強さだ!! 参号機はバケモノか!!」

 

「うーむ、シンクロ率400パーセントの威力ぢゃな!!」

 

 中之島も感嘆の声を漏らす。

 

 +  +  +  +  +

 

「なんちゅうやっちゃ!! シンジのやつ、あんなに強かったんかっ!!」

 

 凄まじいばかりの参号機の活躍にトウジが目を丸くする。

 

「鈴原! こっちも行くわよっ!!」

 

「お、おうっ!!」

 

 ヒカリの叱咤にトウジは改めて操縦桿を握り直した。

 

 +  +  +  +  +

 

「なんですって!! サード・インパクトは何回も起きていたとおっしゃるのですか!!?」

 

 眼を丸くして驚いたリツコに、ゲンドウは続けて、

 

「その通りだ。祇園寺と私とアダムが『向こうの世界』で戦った後、異次元世界を通ってこちらに帰って来る時に初めて知ったのだが、この世界は、何十回か何百回かはわからんが、サード・インパクトで破滅しては時間が巻き戻され、似たような歴史を延々と繰り返しているらしいのだ」

 

「どう言う事ですの!?」

 

 ここで、祇園寺が、

 

「私が説明しよう」

 

 ゲンドウは頷き、

 

「そうか。頼む」

 

 祇園寺は、リツコに向かって、

 

「要するに、『最初のサード・インパクト』の時に発生したエネルギーが余りに強烈だったためにだ、セカンド・インパクトの時点まで時間が巻き戻されてしまったらしいのだよ。それが全ての始まりだった。詳しくは私にもわからんが、それから後、この世界は、短い時で数ヶ月、長い時では数十年の単位で歴史をやり直している。癖がついてしまったようなもんだな」

 

 しかし、リツコは納得出来ない様子で、ゲンドウに、

 

「でも、碇司令、最初に私に、『真実の歴史』をお見せになられたじゃありませんか。もしこの世界が何度も歴史を繰り返していたとするならば、あの映像は一体何なのです?」

 

「あの映像は『直前の歴史』だ。言わば我々にとっては『一番真実に近付いた歴史』だな。まあ、正確に言えば、確かにあれを『真実』と言い切るのには無理があるかも知れんが、あの時点では君や冬月に言うとしたら、あのようにしか言いようがなかった、と言う事だよ」

 

「そうですの…。でも、…碇司令」

 

「なんだ」

 

「あなたはまだ私に隠していらっしゃいますね。この際はっきりお聞きしますわ。ここに来た本当の目的は一体何なのです? 確かに、サード・インパクトにせよビッグバンにせよ、事を起こすのには第3新東京が最適なのは判ります。でも、わざわざ危険を冒してまでターミナルドグマに来る理由はなかったはずですわ。向こうとこちらで使徒のS2機関を同時に暴走させてビッグバンを起こすだけなら、私たちは地上にいてもよかったのじゃありませんの?」

 

「ふっ、…そう来たか……」

 

 +  +  +  +  +

 

「攻撃っ!!」

 

 レイの叫びに呼応して零号機は白いマトリエルに「裏当て」を入れる。

 

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!!

 

「グエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

ブシュウウウウウウウウウッ!!!

 

『ガリガリガリガリッ!!!』

 

「綾波さんっ! 次だっ!!」

 

「うんっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!!

 

 初号機の右拳が白いイスラフェルを掴んでいる左手に激しくぶつかる。

 

「グエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

ブシュウウウウウウウウウッ!!!

 

『ガリガリガリガリッ!!!』

 

「よしっ!! やったぞっ!!」

 

 ケンスケの歓声をナツミの金切り声が遮る。

 

「相田さんっ!! うしろっ!!」

 

「もぐりこめっ!!」

 

 初号機がしゃがみながら後を振り向く。

 

「わわっ!! 二ついるっ!! よけろっ!!」

 

 2体に分裂した黄色のイスラフェルが同時に手を振り下ろす。

 

「ビュウウウッ!!」

 

 鋭い爪が空を切り、初号機は辛くも躱す。そこに無線が飛び込んで来た。

 

『ケンスケ!! 左を捕まえるんや!! ワシが右をやる!!』

 

「わかった!! トウジ!!」

 

「左をつかまえてっ!!」

 

 ナツミの叫びに呼応して初号機は左側のイスラフェルの腕を掴んだ。

 

「ふりまわしてっ!!」

 

 初号機はムチを振るように、掴んだイスラフェルをもう一体に投げ付ける。

 

ドスウウウウッ!!

 

「今よっ!! 行けっ!!」

『今やああっ!!』

 

 初号機は重なった2体のイスラフェルめがけて突進し、前にいる1体の腹部を左手で掴んだ。そこに弐号機が横から飛び込んで来て、後の1体の腹部を掴む。

 

「撃てええっ!!」

「うてええっ!!」

『行けやあっ!!』

『行ってえっ!!』

 

 四人が叫ぶと同時に初号機と弐号機は渾身の力で右拳を突き出す。

 

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!!

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!!

 

「グエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」

「グエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

ブシュウウウウウウウウウッ!!!

ブシュウウウウウウウウウッ!!!

 

『ガリガリガリガリッ!!!』

『ガリガリガリガリッ!!!』

 

 2体の黄色のイスラフェルは同時に断末魔の悲鳴を上げながら消滅した。

 

 +  +  +  +  +

 

 ここに至って、ゲンドウも、

 

「確かにこの期に及んで隠し事と言うのも野暮な話だ。わかった。全て話そう。…祇園寺」

 

 祇園寺は頷くと、

 

「赤木博士、さっき私は、『ここは黄泉比良坂だ』と言ったな」

 

「はい」

 

「ここは確かに魔界と密接な関係がある『黄泉比良坂』だ。しかし、それと同時に、ここは我々にとっては『全ての根源』なのだ。即ち、ここは、『約束の地』なのだよ」

 

「!! どう言うことですの!?」

 

 驚いたリツコに、ゲンドウは、

 

「後は私が話した方がよさそうだな。…ここは君も知っての通り、地球上に存在するジオフロントの内の一つだ。もう一つはこれまた知っての通り南極にあったが、セカンド・インパクトで完全に破壊されてしまった」

 

「………」

 

「元々アダムが存在していたのは南極のジオフロントだ。しかし、リリスは南極から運んだのではなく、実は元からここにあったのだ」

 

「ええっ!? そんな話は…」

 

「それは無理もない。この話はネルフ時代は極秘事項で、ゼーレと私しか知らなかったからな。…アダムがS2機関の暴走で爆発した時、流石のゼーレの連中も青くなった。アダム再生計画が御破算になってしまったのだからな。しかし流石はゼーレだ。裏死海文書をなんとか解読した結果、なんとここにもう一つジオフロントがあり、『原初のヒトたるアダム』、即ち『生命の根源』が同時に設置されていると言う事が判明したのだ」

 

「………」

 

「それで急遽調査して見ると、案の定、ここでジオフロントが見つかったが、同時にとんでもないものも見つかった。それが、なくなったと思われていたリリスだったのだ」

 

 祇園寺が割り込み、

 

「リリスは神とアダムを裏切ってルシファーの元に行った、と言う事になっているからな」

 

「………」

 

 黙って聞くリツコに、ゲンドウは続けて、

 

「それと同時に裏死海文書の記述を裏切る形になったが、何故かアダムはみつからなかった。ゼーレはリリスに対して多少不信を持っていたが、『アダムはサンプルから再生可能だからいざとなればどうにでもなる、取り敢えずはリリスを活用すべきだ』と言う論法で、ここに設備を持って来るように、私が強引に通したのだ。他に方法はなかったからな」

 

「………」

 

「それから後はもうわかるだろう。元々ここにあったリリスをアダムだと言う事にしてここにネルフ本部を建設した、と言う訳だ。…話は前後するが、さっき祇園寺が言った、『約束の地』と言うのは、ネルフ時代は私も知らなかったのだが、オカルティズムの観点に立つと、この場所には地水火風の四大のエネルギーが集約されていて、そのエネルギーを使ってリリスは人類と使徒を生み出した、と言う事なのだ」

 

 祇園寺は頷くと、

 

「地下が『地』、湖が『水』、火山帯が『火』、空間の空気が『風』、と言う訳だよ。全てを生み出すエレメントたる四大は全てここに霊的エネルギーとして存在している。如何にリリスとは言え、何もない所から人類や使徒を生み出す事は出来ないからな」

 

 リツコは、驚き顔で、

 

「じゃ、ここに来た本当の目的は……」

 

 ゲンドウは、頷くと、

 

「そうだ。ビックバンを起こすと同時に新たなる生命を生み出すためには、どうしてもこの場所に集約されている四大エネルギーとリリスが必要だったからだ」

 

 +  +  +  +  +

 

「加持君、聞こえた? おどろきね……」

 

と、ミサトが加持に低い声で語りかける。

 

「ああ、全くな…。しかしだ、それはさておき、どうやって連中を取り押さえるか、だな……」

 

と、加持も声を抑えて応えた後、続けて、

 

「葛城、余り時間はなさそうだが、かと言って今正面から踏み込むのは得策とは言えないだろう。…持明院さんはどう思われます?」

 

「私の考えでは、今の話の内容から察するに、連中はそろそろ儀式を行おうとする筈だ。その時隙が生まれるだろうから、それに乗じて踏み込んだらどうか、と思うがね」

 

「成程。…葛城、敵のATフィールドとサイコバリヤーの状態はどうだ?」

 

 ミサトは再び通信機に目をやり、

 

「まだ大丈夫よ。今の所は連中はどちらも展開していないわ。今なら攻撃出来るわよ」

 

「わかった。ちよっと考えさせてくれ」

 

と、加持は少し俯きながら無意識的に眉間に右手をやった。

 

 +  +  +  +  +

 

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!!

 

『ブシュウウウウウウウウウッ!!!』

 

「よしっ!! サハクィエルは全部やったぞっ!!」

 

 サトシが思わず拳を振った時、大作からの無線が飛び込んで来た。

 

『沢田!! 手を貸してくれ!! ラミエルは流石にでかすぎるんだ!!』

 

「わかった!! 今行くからな!!」

 

 続く

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