二つのコスモス~続・新世紀エヴァンゲリオン 第四部・二つの光   作:VIA MEDIA

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第三十話・復活

 いきなり叫んだレイにミサトが問いかける。

 

「レイ! どうしたの!?」

 

 レイは、静かに口を開き、

 

「今、わかりました。…わたしは、時間に関する能力をもっています」

 

「なんですって!!??」

「なにっ!?」

「なにっ!?」

「何ぢゃと!?」

 

 ミサト、五大、加持、中之島が一斉に驚きの声を上げる。一瞬遅れてサトシが、

 

「レイ!! やっぱりそうだったのか!!」

 

 +  +  +  +  +

 

第三十話・復活

 

 +  +  +  +  +

 

 ミサトは、声を上ずらせ、

 

「レイ! 説明して!」

 

 レイは頷くと、

 

「はい。…わたしは、かつてリリスとなるべく仕組まれた子供でした。色々ないきさつで、今はこうして普通の子供として生きています。

 

 でも、碇くんが言霊の能力、葛城部長と八雲さんが透視能力、加持部長がタロット呪術の能力、アスカはサイコメトリを発揮できたように、わたしには、時間に関する能力がめざめたんです。

 

 さっき、沢田くんといっしょにアカシャに乗った時、時間の流れが、去年の10月の最終決戦から、みんなを助け終わる何分かの未来まで、一瞬にしてみんな見えたんです。でも、その時はそれがなにを意味しているのか、なんとなくしかわかりませんでした。

 

 でも、つい、今さっき、わたしの眼に、碇くんがはじめてここに来た時、電話をかけようとしてかけられなかった、その時の姿が見えました。そのほかにも、クローンになった自分や、リリスになって巨大化した自分の姿も見えました」

 

 それを聞いたシンジは、愕然として、

 

「綾波!! やっぱり君は!!」

 

 しかし、レイはシンジの方を向いてにっこり微笑み、軽く首を横に振ると、

 

「シンちゃん、だいじょうぶよ。心配しないで」

 

 そして、レイは再びミサトの方に向き直り、

 

「失礼しました。話を戻します。

 

 でも、だからといって、わたしがやっぱりリリスだった、と言うことではありません。わたしはわたしです。

 

 でも、わたしの分身のクローンも、リリスも、そして、わたし自身も、それぞれが持っていた宿命を、すべて、時間の流れの中に見ることができました。時間の流れの外から時間の流れの中を見ることができたんです。

 

 それに、それだけじゃありません。異次元の自分の姿も見えました。第3新東京に引っ越してきて、転校初日に、トーストをくわえて走って、碇くんとぶつかる自分が見えました。教室の中で、アスカと言い合いする自分が見えました」

 

 それを聞いたサトシは、

 

「レイ! それを見たのか!!」

 

と、思わず叫んでいた。レイは頷き、真顔で、

 

「そう。『違う世界、違う時間に存在した、またはするであろう、自分の一つの可能性』よ」

 

 事情を知らない「こちらの世界」のメンバーは「なんの事かわからない」と言う表情であったが、事情を知っている「向こうの世界」のメンバーは一様に驚いている。

 

 そんな中、レイは、きっぱりと、

 

「ですから、今のわたしなら、時間に対してなにかをおこなうことが、きっとできます」

 

 レイの話に全員が絶句していたが、やがて中之島が口を開き、

 

「ふーむ、アカシャに乗った事がきっかけとなって、能力が発現した、と考えられるのう……」

 

 すかさずミサトが、

 

「博士、それはどう言う事ですか?」

 

と、不思議そうに問いかける。中之島は、軽く頷くと、

 

「アカシャは空間に関する能力を持っておる。他のオクタに比べれば、時間と言う概念に馴染みが深い、と言う事ぢゃよ。だからこそ、異次元空間の映像も見えたのぢゃ。時空と言う表現をするぢゃろう。時間の概念と空間の概念は密接に結びついておるからな」

 

と、言った後、レイに向かって、

 

「綾波君、つまり君は、例えば、アカシャに乗れば、カーラと同じ事をやってみせる、と言うのぢゃな」

 

 レイは、しっかりとした口調で、

 

「はい、そうです」

 

 全員の溜息が中央制御室に響き渡った後、五大が口を開いた。

 

「綾波君、もう一度アカシャに乗って貰うぞ!」

 

「はいっ!!」

 

 五大はレイの顔を見て頷くと、中之島の方に振り向き、

 

「博士! 後はなんとしてでも時間を逆に戻す方法を考えねばなりませんぞ!!」

 

 中之島も、大きく頷くと、

 

「無論ぢゃ!! この中之島浩司郎、一身を擲ってでも、必ず方法を見つけてみせるわい!!」

 

 その時だった。

 

「そうですわ!!! 思い出しましたわ!!!」

 

 突然叫んだのはゆかりである。彼女は続けて、

 

「博士!! 重力による加速は、唯一光速を超えられるかも知れない方法として認められています!! 反重力エンジンを使い切って、なんとか光速を超える速度は出せませんか!?」

 

「光速を超してどうするのぢゃ!?」

 

と、訊き返した中之島は、すぐさま気付き、

 

「むっ! まさか!?」

 

 ゆかりは、確と頷くと、

 

「その通りですわ! 移動する物体は光速に近付くに連れ、時間の進む速度が遅くなります! もしそのまま光速を超えたら、時間が逆に進むと言う事は、ありえませんでしょうか?! もちろん、普通ならばそんな事はありえないでしょうが、現在の状況なら可能かも知れませんわよ!!」

 

 それを聞いた中之島は、思わず立ち上がり、

 

「そうぢゃ! 基本的にはないと言われておるが、今は虚構と現実が混同しておる!! 可能かも知れん!! そうぢゃ!! きっとそうぢゃ!! ロンギヌスの槍に書かれていた記述を信用する限り、技術的には判らんが、理論的には時間を戻す事は可能なのぢゃ!!」

 

 加持も声を上げ、

 

「そうですよ!! あの記述では、時間を戻す事など、ごく普通の技術のように書かれていました!! だから『どうやって時間を戻すか』は書いてなかったんですよ!! 時間を戻す事は可能なんですよ!!」

 

 中之島は、オモイカネⅡの所へ駆け戻ると、

 

「よしっ!! とにかくマギとオモイカネとオモイカネⅡに今のアイデアをパラメータとしてぶち込むのぢゃ!! 制限を外してフル回転で計算するぞよ!!」

 

と、言うや、インカムを掴んで、

 

「松下!! 聞こえるか!! オモイカネの速度を最高に上げろ!! 全ての制限を外せ!!」

 

『了解!!』

 

 続いてミサトが、

 

「マヤちゃん! 日向君! 青葉君! 全力で博士をサポートして!!」

 

と、三人に檄を飛ばす。

 

「了解!!!」

「了解!!!」

「了解!!!」

 

 その時だった。突然ナツミがメインモニタを指差して、

 

「ああっ!! あれは!? 地球!?」

 

 ミサトが慌ててナツミの所に駆け付け、

 

「なんですって!? 八雲さん! どうしたの!?」

 

 ナツミは声をやや震わせ、

 

「あの『黒い球』が地球に見えるんです!! とても暗くて、そんな感じがする、ってだけなんですけど!」

 

 その時、既にコンソールの所に陣取っている五大が、

 

「葛城君!! 八雲君にインタフェースを着けろ!!」

 

「了解!!」

 

 ミサトはすぐにナツミをコンソールの近くの椅子に座らせ、脳神経スキャンインタフェースをセットするや、

 

「セット完了です!!」

 

「モニタに出すぞ!!」

 

 五大の叫びと共にメインモニタにウィンドウが一つ開いた。

 

「おおおっ!!!!」

「おおおっ!!!!」

「おおおっ!!!!」

 

 あちこちでスタッフの声が上がる。確かに暗い画像だが、そこに映っていたのは紛れもない、地球の姿だったのだ。

 

 それを見たミサトは、五大に、

 

「本部長! これは一体!?」

 

と、言った後、すぐさま事実に気付き、

 

「あっ!!」

 

と、驚きの声を上げた。五大は真顔で、

 

「そうだ。これは『向こうの地球』だよ。次元の壁に入った亀裂が拡大して来たんだろう。だから八雲君が向こうの地球を透視出来たんだ」

 

「じゃ! このまま行くと!?」

 

「現在時刻は15時ジャストか、亀裂の入った時刻が14時3分だから、その時は完全な暗黒の状態だとして、現在の明るさと比較すればだな、…ちょっと待て! 計算する!!」

 

 五大は眼にも止まらぬ速さでキーボードを叩くと、

 

「大変だ!! このペースで行くと、今夜24時ちょうどに二つの世界の一部が融着するぞ!! 後9時間しかない!!」

 

 それを聞いた中之島はまたもやインカムを掴み、

 

「松下!! 融着まであと9時間しかないぞ!!!」

 

『わかりました!!!』

 

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 +  +  +  +  +

 

「急げ!! 全力で計算するんだ!!」

 

 松下が陣頭指揮に立ち、怒鳴る。オペレータ全員がコンソールに向かって一心にキーボードを叩く。

 

 その時、突然山之内が、

 

「本部長!!」

 

と、歓声を上げた。松下が振り向き、

 

「どうした!?」

 

「幸いにして僕のカンが当たっていました!! 向こうで量産型を倒した時に出たノイズとこっちのバルディエルらしきノイズを比較してみたんですが、合致しました! バルディエルの心配はなさそうです!!」

 

「そうか! よかった! これで『黒い球体』の処置に全力を集中出来るな!!」

 

「そうです! 僕もすぐにそっちにかかります!!」

 

「うむ!! 頼むぞ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「艦長!! コンピュータの演算速度を最大に上げて下さい!!」

 

 由美子の叫びにライカーが応える。

 

「ヘーイ! エンジニア! コンピュータ! フルスピード!!」

 

「オクタ全機! パイロットは各自現況を報告して!!」

 

『こちら四条! 格納庫の横の待機室で待機中! いつでも出られまっせ!!』

 

『橋渡も同様です!!』

 

『玉置も同様です!!』

 

「了解!! 指示するまでそのままで待機!!」

 

『了解!!』

『了解!!』

『了解!!』

 

「こちら山之内! 中之島博士! 応答願います!!」

 

『中之島ぢゃ!!』

 

「現在エンタープライズでも同時に計算を進めています!! パラメータなどの変更が発生したら、リアルタイムで更新して下さい!!」

 

『判った!! 了解ぢゃ!!』

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

 2016年2月13日16:00。

 

 計算開始から1時間が経過したが、確たる答は得られていなかった。24時まで後8時間に迫っている。

 

「駄目ぢゃ!! こっちは何とかなるが、向こうのエネルギーが足りん!!」

 

 中之島が机を叩き、歯噛みした。それを見た日向が問いかける。

 

「博士! 向こうのエネルギーが足りない、と言うのは?」

 

「こっちの世界にはエヴァンゲリオンがある! つまり初号機と弐号機をリリスとアダムの代用に使えると言う事ぢゃ! しかし向こうにはそれがない!」

 

「ちょっと待って下さい! エヴァで代用する、って言っても、パイロットはどうするんですか!?」

 

「別に戦闘をやらせる訳ではないぢゃろう! 反応程度の起動だけ出来ればいいから、遠隔でやればこっちは何とかなる!」

 

「成程」

 

「向こうでこっちと同じレベルのエネルギー反応を起こすためには、S2機関に相当する馬鹿でかいリアクターが必要ぢゃ! しかし、向こうにはそんなものはないのぢゃよ!!」

 

「原子炉とかは使えないんですか!?」

 

「駄目ぢゃ! 宇宙空間に持ち上げて、それだけのエネルギーを発生させられるものはない!」

 

「エンタープライズのエンジンではだめなんですか!?」

 

「それを使うと、球体を光速以上に加速するためのエンジンがなくなってしまうのぢゃ! 向こうにもオクタは6機あるが、その内3機は大気圏内用の旧型ぢゃからパワーが足りん! エンタープライズの反重力エンジンはどうしても必要ぢゃ! エネルギー反応のために使いたくとも使えん!!」

 

「そうですか、困りましたねえ。…そちらの世界にもアダムとかリリスがあればいいんですが……」

 

「何っ!?」

 

 中之島の表情が一変した。一呼吸置いて、

 

「…日向君、君、今、何と言うた……?」

 

「えっ!? あ、あの、博士の世界にも、アダムとか、リリスがあれば、って、言ったんですけど、どうもすみません。余計な事を言いました。ほんとにすみません……」

 

 二人の話を聞いていたミサトも表情を変え、

 

「…博士……、確か、向こうの世界を出発する時、月の裏側から次元の通路に入った、と、そう、仰いましたよねえ……」

 

「…そうぢゃよ。それで、こっちでは、第3新東京に、出たのぢゃ……」

 

 中之島とミサトの眼がギラギラと輝いている。

 

「博士!!!」

「葛城君!!」

 

 二人は大声で叫びながら椅子から立ち上がった。

 

「博士!! それですよ!!」

 

「葛城君!! それぢゃ!! まさにそれぢゃ!! 早速エンタープライズの由美子君に連絡せいっ!!」

 

「了解いっ!!」

 

 二人の会話に驚いた日向はひたすら恐縮している。

 

「あ、あの、…部長も、博士も、どうなさったんです。すみません、僕が余計な事を言ったばっかりに……」

 

「違うのぢゃ!!」

「ちがうのよ!!」

 

「えっ!?」

 

 ミサトが、日向に顔を着けんばかりに寄って、

 

「日向君!! もしかしたら、大手柄かも知れないわよ!!」

 

「えっ!!」

 

 中之島も日向の顔を舐めんばかりに近寄って来て、

 

「そうぢゃ!! 大手柄かも知れんぞ!!」

 

「いいっ!!…………;」

 

 訳の判らない日向を尻目に、ミサトは、インカムを掴むと、とんでもない大声で、

 

「こちらIBO本部葛城ミサト!! おいっ!! エンタープライズの山之内由美子!! さっさと応答せんかいっ!!」

 

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「はいっ!! こちら山之内由美子!! ミサト!! いくら異次元の双子だからって、なによその言い方は!!」

 

『うっせえうっせえ!! そっちだけ先に結婚しやがって!! ってなことはどうでもいいのよっ!! すぐに月の裏側、博士たちが出発した地点を調査してちょうだい!! それも地下を調べるのよっ!!』

 

「どう言うことよっ!!」

 

『ええい、ごちゃごちゃ言うなっての!! 調べればわかるわ!! いい!? 地下を調べるのよ!! 地面の下!! わかったわね!!』

 

「わかったわよっ!! すぐに艦長に頼むわっ!! はいっ!! 通信終了!!」

 

『なに言ってんのよっ!! 回線はつなぎっぱなしでしょっ!!』

 

「うっさいわねえ! こっちも忙しいのよっ!! そっちもヒマじゃないんでしょ!! さっさと仕事しなさいよっ!!」

 

 その時、

 

『由美子君!! 中之島ぢゃ!!』

 

 気を取り直した由美子は、

 

「博士!! なにを調査するんですか!?」

 

『儂等が出発した地点の地下を調べて欲しいのぢゃ!! ガルバを使え!』

 

「了解しました! でも、なにがあるんです!?」

 

『ジオフロントぢゃ!』

 

「ジオフロント!?」

 

『それから、アダムとリリスとロンギヌスの槍ぢゃ!!』

 

「なんですって!!??」

 

 +  +  +  +  +

 

「要するに、月の地下にそれらが隠されている可能性がなきにしもあらず、と言う事ぢゃ!! それで、次元の壁の亀裂を塞ぐためにはどうしてもそれらが必要なのぢゃ!! とにかく探してみてくれ!!」

 

『了解しました! 調べてみます!!』

 

「頼むぞ!! …よしっ!! 日向君、計算を続けるぞよ!!」

 

「は、はいっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

 エンタープライズは最高速で月の裏側まで移動した。

 

「こちらガルバの玉置です! 発進準備完了!!」

 

『カーラの四条です! 当機も準備完了!!』

『ヴァジュラの橋渡です! 準備完了!!』

 

 ガルバのコックピットにマサキとタカシの声が入った直後、由美子からの通信が飛び込んで来て、

 

『了解!! ハッチを開けるわ!! オクタ3機! 発進して!!』

 

「了解!!」

『了解!!』

『了解!!』

 

 ハッチが開き、3機は発進して行った。

 

 +  +  +  +  +

 

 一方、京都のJRL本部では、オモイカネをフル回転させ、計算を続けていた。

 

”現在地上ニ存在シ、宇宙空間ニ搬送可能ナ、如何ナルエネルギー源ヲ以テシテモ、要求サレタル結論ヲ出ス事ハ不可能ナリ。然レドモ、若シ、直前ニ入力サレタル、「アダム」及ビ「リリス」ナル存在ガ、入力サレタル通リノエネルギーヲ発生シタル時ハ、要求サレタル結論ニ適合スト推測サルル”

 

「うむっ!!」

 

 オモイカネが出した結論を見ながら、松下は力強く頷くと、

 

「博士!! 仰る通りです!! もしこちらにも、そちらから貰ったデータ通りのアダムとリリスがあれば、オクタ6機とエンタープライズのエンジンを全て使い切る事を前提として、亀裂を修復する事が可能、と出ました!!」

 

『判った!! こっちもほぼその結論ぢゃ!! 後は何とか見つかってくれる事を祈るのみぢゃ!!』

 

 +  +  +  +  +

 

 3機のオクタヘドロンは遠征班が出発した地点に立ち、地下を調査していた。

 

『うーん、あかんなあ。何もあらへんぞ……』

 

 渋ったマサキの声がガルバのコックピットに飛び込んで来る。

 

「四条さん、何メートルぐらいのとこ見てるん?」

 

『5000メートルぐらいや。カーラではこのへんが限界みたいやなあ。それより深いとこは、ようわからん……』

 

「橋渡君の方はどないやの?」

 

『だめじゃね。バジュラも5000メートルぐらいが限界じゃね……』

 

「ウチの方はもっと行けるみたいやし、もうちょっと深いとこ見てみるわ。…………ああっ!!」

 

 サリナの叫びにマサキが呼応し、

 

『なんかあったか!?』

 

「あったわ!! みつかったえ!! …こちら玉置! 言われた通りでした! 当該地点の地下7000メートル付近に大きな空洞があります!!」

 

『こちらエンタープライズの山之内!! カーラとヴァジュラのスキャナはどうなの!?』

 

『四条です!! カーラのスキャナには反応がありまへん!!』

 

『橋渡です!! ヴァジュラのスキャナにも反応はありません!!』

 

『うーん、やっぱりガルバしかみつけられないって事なのかしらねえ……』

 

「どうしましょう!?」

 

『いいわ!! もう時間がないから、思い切って行ってみてちょうだい!! 3機でサイコバルカンを交互に打ち込んだら穴が掘れるでしょう!!』

 

「了解しました!! やってみます!! 四条さん!! 橋渡君!! たのむええっ!!」

 

『よっしゃあ!! いっちょやったろかいっ!!』

 

『おうっ!! やっちゃるけんねっ!!』

 

「サイコバルカン断続発射準備!! ガルバ完了!!」

 

『カーラ完了!!』

 

『ヴァジュラ完了!!』

 

「サイコバルカン発射!!!」

 

(ドドドドドドドッ!!!!!!)

(ドドドドドドドッ!!!!!!)

(ドドドドドドドッ!!!!!!)

 

 3機のオクタヘドロンから発射されたサイコバルカンが地面を抉る。その衝撃が三重の振動となってガルバのコックピットにも伝わって来た。

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

『こちらエンタープライズの山之内です! 中之島博士! 応答願います!!』

 

「こちら中之島ぢゃ!! 何かあったか!?」

 

『月の中に空洞がみつかりました! 現在掘削中です!!』

 

「そうか!! とにかく何かあったらまたすぐに連絡してくれ!!」

 

『了解です!!』

 

「葛城君!! 聞いた通りぢゃ!!」

 

「ええ! 希望が出て来ましたね!!」

 

 ミサトは拳を握り締めていた。

 

(助かる! きっと二つの世界は助かるわ!!)

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

(ドドドドドドドッ!!!!!!)

(ドドドドドドドッ!!!!!!)

(ドドドドドドドッ!!!!!!)

 

 掘り進むに連れ、細かく粉砕された岩盤が穴の周囲に盛り上がり、山を作る。これでは掘削の能率が下がってしまう。

 

『二人とも、ちょっと待て!』

 

 マサキの声がコックピットに飛び込んで来た。3機はサイコバルカンを一時停止する。

 

「なんですのん?!」

 

『砕けた岩が盛り上がっとる! このままでは能率が悪いやろ! めんどくさいけど、取り除かんとあかんな!』

 

「わかりました! そんなら、とにかく一応全部どけた後、2機が穴を掘って1機が運ぶ、言うやり方で行きましょか!」

 

『そやな! それで行こ! 僕が運び役やるさかい、二人で掘ってくれ! とにかく急がんとあかんさかい、何とか後1時間ぐらいでやってしまいたいとこやな!』

 

「了解しました!」

『了解です!』

 

『ほんなら、とにかくどけよか! 砂みたいになっとるし、もぐってから反重力フィールドで包み込んで弾き飛ばしたら何とかなるやろ!』

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

 2016年2月13日18:00。

 

「こちらIBO本部葛城ミサト! エンタープライズの山之内由美子!! 応答してっ!!」

 

『こちら山之内!』

 

「そっちの状況はどうっ!? もう時間がないわよっ!!」

 

『もうすぐ空洞部にたどりつくはずよ!! ちょっと待って!! …オクタヘドロン3機!! 状況はどうっ!?』

 

『こちらガルバの玉置です!! もう間もなく空洞に到達します!!。…………あっ!!』

 

『届いた!?』

 

『空洞部に到達しましたっ!!』

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

「これはっ!!??」

 

 サリナは驚きの声を上げた。その空洞部は地上からスキャナで検知していた数値を裏切っており、遥かに大きな物だったのだ。サーチライトで照らしたぐらいでは底は全く見えない。

 

「とにかく下を探さんと!!」

 

 スキャナをフル回転させ、空洞内を探る。

 

『ビイィィィーーーッ!!』

 

「あった!! 四条さん!! 橋渡君!! 行くええっ!!」

 

『おうっ!!』

『了解っ!!』

 

 3機は猛スピードで降下して行き、間もなく底部の目的地に辿り着いた。しかし目視出来る範囲には何もない。

 

『玉置ちゃん! どのへんや!?』

 

 マサキの声がコックピットに飛び込んで来る。

 

「ここでまちがいないと思うんやけど……」

 

 モニタに表示された数値は確かに目的物がこの付近にある事を示している。

 

「うん、まちがいないわ!! ここや!」

 

 サリナはそう呟きつつ、ガルバが立っている足元をサーチライトで照らした。

 

「ああっ!!」

『ああっ!!』

『ああっ!!』

 

 三人は同時に叫んだ。今まで角度が悪かったため何も見えなかったのだが、たまたま岩の隙間に差し込んだガルバのサーチライトの光が一瞬鋭く跳ね返されたのである。

 

「ここやわ!!」

 

 サリナの叫びに呼応し、ガルバはしゃがみ込んで右手を岩の隙間に差し込んだ。

 

「あっ!!!」

 

『おおっ!!』

『おおっ!!』

 

 岩の隙間から抜き出された右手に掴まれていたのは、「銀色に輝く二又の槍」であった。そして、槍を抜き取るに連れ、付近の岩盤が砕け散って行く。

 

「これはっ!!?」

『おおおっ!?』

『あああっ!!??』

 

 三人は叫んだ後、言葉を失った。砕けた岩盤の下から現れたのは、2体の巨大な人型の物体の頭部だったのだ。

 

「こちらガルバ!! エンタープライズ応答願います!! 目的物を発見しましたっ!!」

 

 +  +  +  +  +

 

「こちら山之内!! 大至急目的物を回収してこっちに運んでちょうだい!!」

 

『了解っ!!』

 

「ミサト!! 聞こえた!!??」

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

「聞こえたわっ!! 聞こえたわよっ!! とにかく一刻も早くアダムとリリスを回収してちょうだいっ!!」

 

『まっかせなさいっ!!!』

 

「博士!! お願いしますっ!!」

 

 中之島の方を振り向いたミサトの眼にはうっすらと涙が滲んでいる。

 

「うむっ!! 任せとけっ!! ……日向君!! 青葉君!! 伊吹君!! 最終計算に取りかかるぞよっ!!!」

 

「了解っ!!」

「了解っ!!」

「了解っ!!」

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

『こちら玉置!! 間もなく目的物を持って地表に出ますっ!! 回収準備願いますっ!!』

 

「了解っ!! 艦長!!」

 

 振り向いて叫んだ由美子に、ライカーは大きく頷いた。

 

「ヘイ!! ハンガー!! レディ!!」

 

『アイサー!!』

 

 その次の瞬間だった。月の裏側に開いた穴から物体が飛び出して来た。

 

「ああっ!!!」

「オーッ!!!」

 

 由美子とライカーは叫んだ。3機のオクタヘドロンに抱えられて上がって来たのは、オクタヘドロンより一回り大きい2体の人型の物体と、銀色に輝く「二又の槍」だったのだ。

 

「あれがこの世界のアダムとリリス!!??」

 

「オーッ!! インクレディボーッ!! オペレータ!! ズームイン!!」

 

「アイサー!!」

 

 メインモニタの映像が拡大され、3機と2体の姿が大きく映った。

 

「これは!! あの光の巨人じゃないの!!」

 

 驚きの余り由美子は叫んだ。ガルバとカーラが抱えているのは、紛れもなく「新世紀エヴァンゲリオン」に出て来た「光の巨人」だったのだ。但し、ガルバが抱えている方は白っぽい銀色であり、カーラが抱えているのはやや黄色っぽい金色である。そしてどちらも胸に水晶球のような球体を持っていた。

 

「艦長!! この映像をJRL本部に送信します!!」

 

「オッケーねー!!」

 

 由美子は頷くと素早くコンソールを操作した。

 

 +  +  +  +  +

 

「おおっ!! これはっ!!」

 

 エンタープライズから送信されて来た映像信号に松下は驚愕した。山之内も、

 

「本部長!! これがアダムとリリス、と言う事ですか!!」

 

「うーむ、まさかこっちにもあったとは……。末川君! 通信速度を落とせば何とか向こうに送れそうか!?」

 

「はい、ギリギリまで下げれば何とかなると思います!」

 

「よし! わかった! 送ってくれ!!」

 

「了解!!」

 

 +  +  +  +  +

 +  +  +  +  +

 

 マヤが振り返りながら叫ぶ。

 

「本部長!! 向こうの世界から低速映像信号が送られて来ました!!」

 

「準リアルタイムと言う事だな! 映せ!!」

 

「了解!! モニタに出します!!」

 

 マヤが叫び終わるか否かの内に、メインモニタにウィンドウが開き、

 

「!!!!!!!!!」

「!!!!!!!!!」

「!!!!!!!!!」

「!!!!!!!!!」

 

 スタッフは一様に声をなくしたが、一瞬後にミサトが口を開いた。

 

「これが向こうの世界のアダムとリリス!!」

 

 +  +  +  +  +

 

 待機室での待機を命じられていたパイロット全員とレナも固唾を飲んでモニタを見詰めていたが、流石に「向こうの世界のアダムとリリス」には驚いたようで、あちこちから嘆息が漏れている。そんな中、シンジは「銀色の光の巨人」の胸の球に奇妙な引っ掛かりを感じていた。

 

(こ、これは!?)

 

 何気なく隣のアスカを見ると、これまた食い入るようにモニタを見ている。

 

(アスカも?……)

 

 その時、シンジの視線に気付いたのか、アスカがこちらを向いた。彼女の瞳の青い色がシンジの眼に飛び込んで来る。

 

(青……!?)

 

 その時だった。

 

「ああっ!!!」

 

 シンジは思わず叫んで立ち上がった。全員が驚いてシンジに視線を集める。そして次の瞬間、アスカもいきなり立ち上がるや、

 

「シンジ!!! あれ! もしかして!!」

 

「そうだよ!! あれ、そうだよ!!」

 

 二人は興奮の余り両手を握り合う。そして、その次の瞬間、レイも叫んで立ち上がった。

 

「そうよ!! あれはきっとそうよ!!」

 

 続く

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