二つのコスモス~続・新世紀エヴァンゲリオン 第四部・二つの光   作:VIA MEDIA

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第三十五話・月の光

「ああっ!! あれは!!??」

 

 最初にメインモニタを指差して叫んだのはカヲルだった。中之島が大声で、

 

「アカシャのカプセルぢゃ!! こっちに向かっておるぞ!!!」

 

「わあああっ!!!」

「わあああっ!!!」

「わあああっ!!!」

「わあああっ!!!」

「わあああっ!!!」

「わあああっ!!!」

「わあああっ!!!」

「わあああっ!!!」

「わあああっ!!!」

「わあああっ!!!」

「わあああっ!!!」

 

 それに合わせて、十一人のパイロット達は一斉に歓声を上げると中央を飛び出し、外に向かって走り出した。

 

「博士!! 博士!! あれは!!」

 

 大声で泣きながらミサトが中之島に抱き付いた。カプセルの映像は段々大きくなって来る。

 

「葛城くうんんっ!! 外ぢゃああっ!!」

 

「はあいいいっっ!!」

 

 中之島も怒鳴ってミサトと共に走り出した。とても百歳近い年齢とは思えない。

 

「本部長!!」

 

「うむ!!」

 

 加持と五大も駆け出した。

 

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第三十五話・月の光

 

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 中庭に出て来て大声を上げるスタッフの頭上に、猛スピードで飛んで来たアカシャのカプセルが静止したのは、ほんの数分後の事だった。そして、泣き声と歓声が湧き起こる中、カプセルはゆっくりと着地し、

 

グイーーン

 

 静かな音がしてカプセルのハッチが開き、中からサトシとレイが姿を現す。

 

「わあああああっ!!!」

「わあああああっ!!!」

 

 アキコとアスカが大声で泣きながら二人に飛び付いた。無論アキコはサトシに、アスカはレイに、である。

 

「バカ! バカ! どこ行ってたんよ!! こんなに心配かけて!!! サトシくんのことなんかもう知らんけんね!!!」

 

 アキコは大声で叫びながらサトシにしがみ付いている。サトシは訳が判らずに目を白黒させている。

 

「バカ! バカ! しんぱいかけて!! なんでもっとはやく連絡してこなかったのよ!! レイのバカ!!」

 

 アスカもわんわん泣きながらレイにしがみ付いている。レイも訳が判らないと言う顔をしている。

 

「ちょっ、ちょっと、アスカ、どうしたのよ!?」

 

「どうしたの、って! なにいってんのよ!! 3ヶ月も連絡してこないで!!」

 

「3ヶ月う!!??」

「3ヶ月う!!??」

 

 サトシとレイが同時に素っ頓狂な声を上げる。その時、中之島が飛び出して来て、サトシの腕をひねった。サトシは驚いて、

 

「いてて!! 博士!! なにするんですか!?」

 

「通信機を見せんかい!!」

 

 サトシの通信機のディスプレイを見た中之島は、眼を丸くして、

 

「何ぢゃこりゃあ!?」

 

 ミサトが駆け寄って来て、

 

「博士! どうしたんです!?」

 

 中之島は、呆気に取られた顔で、

 

「2月16日、23時50分、ぢゃと……」

 

「えええっ!!!???」

「えええっ!!!???」

「えええっ!!!???」

「えええっ!!!???」

「えええっ!!!???」

 

 それを聞いた全員もまた呆気に取られるだけだった。サトシは憮然として、

 

「一体どうなってるんです!? 大体、みんなこそなんですか! 任務が終わって、二日かけて帰って来て、それで、第3に連絡したのに、なにも連絡は取れないし、第3を上空からスキャンしたら廃墟になってるし、仕方ないから京都に来たんじゃないですか! それに、京都財団の本部じゃなくてこんなとこに来てるし! 探すのに苦労したんですよ! 大体、みんなで京都に来るんだったら、一言そう言ってくれたらいいでしょ! それと、3ヶ月って、なんの事なんですか!?」

 

と、大声でまくし立てる。それを聞いたミサトは、スマートフォンを取り出し、

 

「沢田君、これ」

 

「スマートフォンがどうしたんです」

 

 ミサトは無言で液晶画面の日付を指差す。それを見たサトシは、

 

「………ええっ!? 5月21日い!?」

 

と、大声を上げた。それを聞いたレイも、

 

「サトシくん!!」

 

と、素っ頓狂な声を上げる。中之島が何とも言えない表情で泣き笑いし、

 

「要するに、君等は『タイムワープ』したんぢゃよ!! わはははははっ!!」

 

と、叫んだ。

 

 その時、

 

パチパチパチパチ!!!

 

 拍手の音に全員が振り向くと、加持が微笑みながら手を叩いている。そして、大声で、

 

「任務完了!! お疲れさま!!」

 

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

 

 中庭は凄まじい拍手の音で埋め尽くされた。アキコとアスカに抱き付かれたままの二人は、照れ臭そうに顔を赤らめている。

 

 その時、

 

「あっ! そうだ!」

 

 突然サトシが叫んだ。そして、カヲルに向かって、

 

「渚君!!」

 

「えっ!?」

 

 名指しされたカヲルが飛んで来る。

 

「どうしたんだい!?」

 

 驚き顔のカヲルに、サトシはニヤリと笑いかけ、

 

「長い間ありがとう。レイを返すよ♪」

 

「えっ!?………」

「えっ!?………」

 

 カヲルとレイが一瞬にして真っ赤になる。それを見たサトシは改めて微笑んだ。

 

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

 

 拍手はいつまでも鳴り止まなかった。

 

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 大騒ぎも一段落し、全員が持ち場に帰った。五大も本部長室で仕事の続きに取りかかっている。

 

 その時、

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

「失礼します」

 

「お!」

 

 五大は驚いた。入って来たのはレイである。

 

「どうしたね?」

 

「…本部長、葛城部長と加持部長から、全部聞きました……」

 

「えっ!?」

 

 五大が椅子から立ち上がり、レイの前に歩み出る。レイは、満面に笑みを浮かべ、

 

「…わたしのこと、みすてないでいてくれてたんですね。子供のときから、ずっと……」

 

「!! ……それを、聞いたのか……」

 

「はい……」

 

 レイは、瞳をキラキラと輝かせ、

 

「…あの、ひとつだけ、おねがいが、あるんですけど……」

 

「なんだね?」

 

「一度だけ、お父さん、って、呼ばせてください!」

 

「えっ!? そ、それは……」

 

「だめですか?……」

 

「い、いや、…いいが……」

 

 五大が照れながらそう言った直後、

 

「お父さん!! うわああああっ!!!」

 

 大声で泣きながら、レイが五大の胸に飛び込む。

 

「うわあっ!! うわあああっ!!!」

 

 五大は無言で、泣きじゃくるレイを抱きしめていた。

 

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 2016年6月1日16:00。

 

「本当にありがとうございました。みんな、お元気で」

 

 ミサトの眼が潤んでいる。 中之島も感慨深げに、

 

「葛城君も元気でな」

 

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 サトシ達は、自分達の世界に帰れる事になった。

 

 アカシャのカプセルが戻って来た事により、次元の通路に入る方法が判明したのである。尤も、「向こうからこちらに来た」時の「次元エネルギー」の痕跡がアカシャのオモイカネⅡに残っていたからこそ出来る、と言う「裏技」であり、「今回一回限り」の事であった。

 

 だから、向こうの世界に帰ってしまえば、もう二度とこちらの世界に来る事もないのである。

 

 あれから10日間、色々な事があった。

 

 こちらの世界に来た思い出に、と言う事で、忙しい仕事の合間を縫ってみんなで比良山にハイキングにも行ったし、「こちらの京都」もあちこち見て回った。無論、全員で行くばかりではない。特に縁の深いカップルがダブルデートを楽しんだ事もあったのだ。

 

 シンジとアスカ、サトシとアキコの四人で海に行った。

 

 カヲルとレイ、リョウコと大作の四人で山に行った。

 

 ケンスケとナツミ、トウジとヒカリ、そしてゆかりの五人で名所旧跡を見て回った。

 

 特にナツミとゆかりは妙に気が合い、まるで姉妹のように慕い合うようにさえなっていた。

 

 夢のような10日間はあっと言う間に過ぎて行った。

 

 そして今日、6月1日。六人が元の世界に帰る日である。

 

 別れを惜しみ、北山研究所の中庭で、送別パーティーが開かれていた。

 

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「シンジ君、お互い、こんな事になっちゃったな」

 

「そ、そうだね…」

 

 それぞれ、アキコとアスカに腕を組まれたサトシとシンジは照れながら苦笑した。この10日間で、二人ともお互いに名前で呼び合うようになっている。

 

「がんばれよ。これからの人生。…僕もがんばるから」

 

「うん、がんばるよ。サトシ君もがんばってね」

 

「アキコ、あんたさ、沢田くんのこと、とうとう、サトシくん、ってよんだわね」

 

「うん、そうじゃね。…アスカは前からシンジ、て、呼び捨てじゃけんどねえ」

 

 照れながらもアキコは笑っている。

 

「へへっ、シンジなんてよびすてでじゅうぶんよ」

 

「あ、アスカ、なに言ってんだよ」

 

「あんただってあたしのこと、アスカ、って、よびすてにしてんじゃないの」

 

「…そ、そりゃそうだけどさ……」

 

 サトシとアキコは笑っていた。

 

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「レイ、ほんとに今回はよくがんばったわね。わたし、感動したわよ」

 

「リョウコにそう言ってもらえて、うれしいわ」

 

「じゃ、これで」

 

「ええ……」

 

 髪の色と眼の色が違うだけの、瓜二つの「異次元の双子」は、心から別れを惜しんでいた。

 

「渚君、元気で頑張れよ。綾波さんと仲良くな」

 

「ありがとう。草野君も元気で」

 

「僕な、ヴァーユのカプセルでの君の言葉、ちょっと感動したんだぜ」

 

「えっ!? そ、そうかい……」

 

「アダムに対して決着を付ける、と言う君の気持は充分理解出来たんだけど、僕が思うに、あれは、それだけじゃなかっただろ。…綾波さんを助けたい一心だった筈だ。そうじゃないかい?」

 

「!! いや、それは、その……」

 

 カヲルは顔を赤らめて俯いてしまった。レイも同じく顔を赤くして俯いている。それを見ながら大作とリョウコは微笑んだ。

 

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「ゆかりさん、わたしのこと、わすれないでくださいね」

 

 ナツミが涙を浮かべながらゆかりに花束を渡している。

 

「忘れませんわ。私、ナツミさんの事を、異次元の妹と思っておりますわよ」

 

「だったら、俺にとってもお姉さんみたいなものだね」

 

 ケンスケの言葉にゆかりは明るく笑った。

 

「おほほほほほ。急に兄弟が増えましたわね。おほほほほほ」

 

「ワシかて、綾小路さんのこと、素敵な姉貴やと思うてまっせ」

 

 トウジもにこやかに声をかけた。

 

「それは光栄ですわ。私も、少なくとも、葛城部長並みには思って戴いた事になりますわね。おほほほほほ」

 

「え? なんでそれを?」

 

 トウジは一瞬驚いたが、すぐに事情を理解し、苦笑しながら頭を掻いた。

 

「あ、そうやった。『アニメ』でんな……」

 

「鈴原ったら……」

 

 ヒカリも苦笑していた。

 

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「本当なら、みなさんに、私たちの結婚式に出てもらいたかったんですよ」

 

 ミサトは今にも泣き出しそうになっている。中之島は笑いながら口を開いた。

 

「何を言うか。そんな長い間こっちにおったら、元の世界の連中に、儂等が『死んだ』と思われてしまうではないか。…まあ、名残は惜しいが、出会いがあれば別れもある。これでいいのぢゃ」

 

「は、はい。そうですね……」

 

「博士、お元気で。本当にお世話になりました」

 

 加持は両手を差し出し、中之島の両手をしっかりと握った。

 

「そうぢゃ。一つ思い出したわい。…加持君、鈴原君の妹さんなんぢゃが、もしかして、名前は、サクラ、ではないかの?」

 

「ご明察です。その通りですよ」

 

「そうかそうか。ふぉっふぉっふぉっ。儂の『透視能力』も満更ではなかった、と言う事ぢゃな。ふぉっふぉっふぉっ」

 

「博士、『タロット呪術』とか『透視』とかなんですが、普段でも出来ますかね」

 

「ああ、タロット呪術と透視は可能ぢゃ。儂が教えた通りにやればよい。但し、『白い光の球』を飛ばす事は出来んぞよ」

 

 加持はニヤリと笑い、

 

「肝に銘じておきます」

 

 ここで突然、中之島が、

 

「おお、それから、伊吹君、日向君、青葉君に土産を渡そうかの」

 

 加持は、「へえ」と言う顔をして、

 

「それはどうも。…お、ちょうどあそこに三人います。…おーい、伊吹君、日向君、青葉君」

 

 やって来た三人に、加持は、

 

「博士が、君たちに渡したいものがあるそうだ」

 

 マヤが一礼し、

 

「あ、それはどうも、ありがとうございます」

 

「これぢゃ」

 

と、言って中之島がマヤに渡したものは、一枚のメモリカードである。

 

「これは?」

 

「オモイカネⅡのメモリカードぢゃ。ちと面白いデータが入っておる。後の処理は君達三人に任すから、消すなり、コピーしてバラ撒くなり、好きにしたらいいぞよ」

 

「どんなデータなんですか?」

 

と、日向が問いかけたが、中之島はニヤリと笑い、

 

「それは見てのお楽しみぢゃ。マギに送ったデータと同じ形式のファイルぢゃから、この世界のコンピュータでも読める筈ぢゃよ。ま、よかったら見てやってくれ」

 

 それを聞いた日向は、一礼し、

 

「そうですか。では、見るまでのお楽しみにさせてもらいます。…博士、今回は本当にありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 

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 2016年6月1日18:00。

 

「よし、そろそろ出発するぞよ! 全員アカシャのカプセルとプリティヴィのカプセルに乗るのぢゃ!」

 

 中之島の号令で、オクタヘドロンのパイロット五人は、次々と2機のカプセルに分かれて乗り込んだ。無論、少々狭苦しいが、乗るだけなら何とかなる。サトシとアキコはアカシャのカプセル。ゆかり、大作、リョウコの三人はプリティヴィのカプセルである。中之島はアカシャのカプセルに乗る事になっていた。

 

 五大が中之島の両手をしっかり握り、

 

「博士、本当にお世話になりました。いつまでもお元気で」

 

と、言った。中之島も五大の手をしっかりと握り返し、

 

「本部長も元気での。では、これで失礼する。さらばぢゃ」

 

「さようなら」

 

 中之島は手を振り、アカシャのカプセルに乗り込んだ。

 

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「綾小路さん、準備はいいですか!?」

 

と、コックピットのサトシが大声を上げる。

 

『準備オーケーですわ! いつでもどうぞ!』

 

「では出発します! 発進!!」

 

 サトシの号令で、2機のカプセルは浮上を始めた。窓から下を見たアキコは、半泣きになりながら、

 

「あ、みんな手を振ってくれとるよ!」

 

 サトシも、

 

「うん、なんだか名残惜しいよね……」

 

 二人の様子に、中之島が敢えて声を張り上げ、

 

「沢田君! 綾小路君! 月に向かって一直線ぢゃ!」

 

「了解!」

『了解!』

 

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 1時間後、2機のカプセルは月までやって来ていた。中之島がオモイカネⅡのモニタを見ながら、

 

「沢田君、綾小路君、ノイズパターンをセットしてサイコバリヤーを展開せい。それで、そのまま月の周りを全速で周回するのぢゃ」

 

「了解」

『了解』

 

「セット完了! 発進!!」

 

『セット完了! 発進します!!』

 

 2機のカプセルは超高速で月の周囲を旋回し始めたが、15周回った時、強い青い光を発し、忽然と消えた。

 

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「こちら沢田、綾小路さん、応答願います」

 

『こちら綾小路、感度良好ですわ』

 

「計算では間もなく通路の出口にたどりつくと思います」

 

『了解』

 

「おっ、ここぢゃ。出るぞ」

 

 中之島がそう言った次の瞬間、2機のカプセルはまたもや強い青い光を発して消えた。

 

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「あっ! あれは!?」

 

 由美子がメインモニタを指差して叫んだ。大きく映った月の映像の向こうから小さな光の点が二つ、こっちにやって来るではないか。

 

「こちらエンタープライズの山之内! オクタヘドロン応答願います!」

 

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「おっ! 由美子君ぢゃ!!」

 

「帰って来たんですね!!」

 

 中之島とサトシが大声を上げる。

 

「こちら沢田! エンタープライズ応答願います!!」

 

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 程なくして、2機のカプセルはエンタープライズの格納庫に入っていた。

 

「みんなお疲れさま!! よくやったわね!!」

 

 由美子が手を振りながら駆け寄って来る。

 

「オーッ! ベリーベリーグッドねーっ!!」

 

 ライカー艦長も両手を上げて走って来た。

 

「おーい、ようやったなー!!」

「がんばったとねーっ!!」

「みんなー! やったやんかー!!」

 

 マサキが、タカシが、サリナが駆けて来る。

 

 カプセルから降りた六人は、次々とやって来るスタッフの手荒い祝福にもみくちゃにされながら、泣き笑いしていた。

 

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「何ぢゃと? 今、帰って来たばかりぢゃと?」

 

 エンタープライズの作戦室に入った六人は、由美子の言葉に呆気に取られた。

 

「ええ、任務が終わって戻って来たところです。秒速1万キロに達した場所からここまで戻るのには18時間かかりましたが」

 

「うーむ、儂等は向こうに3ヶ月以上もおったのにのう………」

 

「へえ、そうなんですか」

 

 中之島の言葉に由美子も目を丸くした。

 

「それはそうと、こっちの、全体としての様子はどうぢゃ?」

 

「国連が事態終結宣言を出したところです。『カオス・コスモス』の時ほどではありませんでしたが、使徒の直接攻撃とイロウルの感染で多くの人が亡くなりましたし、これから後始末が大変です……」

 

 由美子の声は明るくない。中之島も、八人のパイロットも沈んだ表情をしている。その時、ライカーが大声で、

 

「ヘーイ、みんな、なにをシケた顔していまーすかー! どんなに大変な災難であっても、みんなで力をあわせてまたがんばれば、きっととりもどせまーす。元気だしましょーっ!!」

 

 それを聞いた中之島は、

 

「…そうぢゃな。…うむ! 艦長の仰るとおりぢゃ! 儂ももう一踏ん張り生きて、世界の復興に努力するぞよ!!」

 

と、立ち上がって叫んだ。

 

「オーッ!! いーですねーっ!!」

 

パチパチパチパチ!!!

 

 ライカーが手を叩き始める。それにつられるように、全員が手を叩き出し、作戦室は大きな拍手の渦に巻き込まれた。

 

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

 

 その拍手の音は次第に隣のブリッジにも伝わり、新たな拍手の波を生んだ。そして最後にはエンタープライズ全体が拍手の渦に飲み込まれて行った。

 

 +  +  +  +  +

 

「…やっと、終わったね……」

 

「そうじゃね……」

 

 サトシとアキコは展望ラウンジにやって来て、コーヒーを飲みながら月を見ていた。

 

「もうすぐ地球か。…とにかく、沖縄に行くんだろ」

 

「そうみたいじゃね」

 

「形代…、これからさ、アキコ、って呼んでもいいか」

 

「うん。わたしも、サトシくん、って呼ぶけんね」

 

「アキコ、いろいろあったけど、これからも仲良くしてよね」

 

「わたしも、おねがいね……」

 

 アキコは目を輝かせながらサトシを見詰める。サトシは周囲を見渡して、人目を気にしながらも、テーブルの下でアキコの手をそっと握った。

 

 その時、

 

「あっ、ここにいたの」

 

 リョウコの声に二人が振り向くと、そこにはパイロット六人がニヤニヤしながら立っている。サトシは慌てて握っていたアキコの手を離した。

 

「ねえ、サトシくん、『カオス・コスモス』の時さ、私と沖縄でした約束、覚えてる?」

 

 リョウコにしては珍しく、いたずらっぽく笑っている。

 

「え? 約束、って……?」

 

 サトシは慌てた。当時はリョウコと付き合っていたようなものだし、頭に血が昇ってどんな約束をしたか、知れたものではない。

 

「あーあ、やっぱり忘れてる。『事件が解決したら、みんなで沖縄に行こう』って、約束したじゃないの」

 

「あっ!……」

 

 サトシは思わず立ち上がった。

 

「そ、そうだったよね……」

 

「ちょうどさ、その約束も果たす事になったわよ。これからみんなで沖縄でしょ。そのまましばらくはゆっくりさせてもらえるそうよ」

 

「えっ、そうなの?!」

「そうなん!?」

 

 サトシとアキコが眼を丸くする。

 

「そうですのよ。任務も終わりましたし、暫くは沖縄で休暇をいただけるそうですわ。…もっとも、事件の後始末の事もありますし、遊んでばかりいられるわけじゃないそうですけどね」

 

 ゆかりの言葉にサトシは苦笑し、

 

「そんな事じゃないかと思いましたよ。…あーあ……」

 

 サトシの溜息につられ、全員が苦笑した。

 

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(おっ、これは………)

 

 アカシャのカプセルのコンピュータの点検を行っていた中之島が眼を見張った。何と、「次元エネルギーの痕跡」がまた残っていたのである。

 

(そうか、帰って来たと言う事は、その時の痕跡が残るのか……)

 

 中之島は周囲を見渡し、誰もいない事を確認すると、その痕跡のデータをメモリカードに移し替え、本体に残っていた痕跡を消し、

 

(これは、何かの時のためにだけ、使おうかのう……)

 

 カードをそっと内ポケットに入れると、何食わぬ顔でカプセルから出て行った。

 

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 2016年6月9日。

 

 サトシ達が帰って1週間が経ち、みんな一応落ち着いた。今日は日曜なので、チルドレンはそれぞれ出かけている。

 

 シンジはアスカに付き合わされ、デパートで「お買い物」であった。

 

「シンジ、なにのろのろしてんのよ! さっさとあるきなさいよ!」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。こんなに荷物持ってんだよ。ゆっくり歩いてよ」

 

 確かにシンジは山積の荷物を持たされている。

 

「なにいってんのよ! 男でしょ! そんなぐらいもてなくでどうすんのよ!」

 

「アスカはこんな時だけ、男あつかいするんだからあ……。あ、あ、ああーっ!」

 

バサバサバサッ!!!!

 

「もおーっ!! バカシンジ!! なにひっくりかえしてんのよ!! さっさとひろってひろって!!」

 

「ちょ、ちょっとお、アスカあ、てつだってよお……」

 

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「緑がきれいだね……」

 

「うん……」

 

 カヲルとレイは植物園にいた。あの時と同じように、ベンチに腰掛け、緑の風と小鳥のさえずりだけに心を傾ける二人だったが、少しだけ違うのは、あの時よりもしっかりと手を握り合っている事だった。

 

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「相田さん、じゃ、撮りますよお」

 

「ちょっと待った。この角度よりも、こっちの方がいいんじゃないかな」

 

 ナツミとケンスケは、二人で琵琶湖に写真撮影に来ていた。浜辺で戯れる水鳥の写真が今回の目的である。

 

「もうちょっとズームをきかして、大写しにした方がいいんじゃないですかあ」

 

「うーむ、俺はこれぐらいがいいけどなあ……。よし、今回は八雲ちゃんの言う通りにしてみようか」

 

「はーい♪」

 

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「委員長! こんなもんかあ!」

 

「もうちょっと左、左よ!」

 

 トウジはヒカリの家に来ていた。文字通り、料理を「エサ」に、部屋の模様替えを手伝わされていたのである。

 

「ヒカリい、おしょうゆ、どこにやったのよお!」

 

「ヒカリ姉ちゃん! みりん、切れてるよお!」

 

 姉のコダマと妹のノゾミが下ごしらえを手伝っている。

 

「ちょっと待ってよお! すぐ行くからあ!! ……鈴原、悪いけど、ちょっとこのまま待ってて!!」

 

「お、おい、委員長! そんな殺生な………」

 

 重い荷物を持たされたまま、トウジは待たされてしまった。しかし足の方はすっかり治っており、力仕事をしても少しも痛まなかった。

 

「おにいちゃん。あそんでよ」

 

「サクラ、ちょっと待っとってくれ! おーい、委員長!」

 

「…じゃ、しかたないから、サクラ、ペンペンちゃんとあそぼうっと……」

 

「クククッ!! キュウッ!!」

 

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 IBO技術部

 

 サトシ達が帰った後も多忙を極めていたIBO本部では、多くの職員達が休日も返上して業務に当たっていたが、ここ技術部も例外ではなく、「部長代行三人衆」も当然の如く、本日も出勤している。

 

 マギのメンテナンスが一段落したと見た日向が、

 

「お、そうだ。そう言や……」

 

と、抽斗の中から、「例のメモリカード」を取り出し、青葉とマヤに向かって、

 

「青葉、マヤちゃん」

 

「ん?」

「なに?」

 

と、二人がやって来る。

 

「ほれ、これこれ」

 

と、日向にカードを見せられ、

 

「お、そうだったな。すっかり忘れてたよ」

 

と、苦笑する青葉。マヤも笑って、

 

「じゃ、作業も一段落したから、コーヒーでも飲みながら見ましょうよ」

 

 すかさず青葉が、

 

「おお、いいね」

 

 日向も、

 

「俺も賛成。じゃ、マギにデータを読ませておくぜ」

 

「おねがい、私、コーヒー入れてくる」

 

 マヤが立ち上がって台所に向かった後、日向はカードを見ながら、

 

「どうやって繋ぐんだ? ……お、ここにS−USBのポートがあるな。ケーブルは、と……」

 

 抽斗の中からケーブルを取り出し、マギのコンソールとカードを繋ぐ。

 

「…で、データは、と……。お、ちゃんとファイルが見えるな。全部コピーしちまえ……。よし、完了だ。…青葉」

 

 青葉が振り向き、

 

「準備出来たか?」

 

「おお、完了だ」

 

 丁度その時、マヤが帰って来て、

 

「お待たせ。はい、コーヒー」

 

と、コーヒーを載せた盆をコンソールのサイドデスクに置いた。それを受け、日向が、

 

「おお、サンキュー。こっちもセットが終わったぜ。座んなよ」

 

 青葉とマヤは近くの椅子を引いて来て腰掛けた。

 

 日向がコーヒーカップを手にし、

 

「じゃ、始めるぜ」

 

と、コンソールを操作する。

 

 程なくして、コンソールのモニタに、

 

『新世紀エヴァンゲリオン』

 

 +  +  +  +  +

 

 IBO技術部。数時間後。

 

 日向も青葉もマヤも、眼は点になり、開いた口が塞がらない。

 

 +  +  +  +  +

 

 IBO技術部。更に数時間後。

 

 日向が、げんなりした顔で、

 

「このファイル、どうする……?」

 

 ややあって、青葉が、

 

「……とにかくさ、共有ディレクトリに入れておくしかないだろ。後は見つけるヤツの運次第だよ……」

 

 マヤが溜息をついて、

 

「見つけた事が幸運なのか不運かはわかんないわね……」

 

 日向が、

 

「まったくだ……」

 

 青葉も、

 

「その通りだな……」

 

 後日譚になるが、この「新世紀エヴァンゲリオン」と「中之島が書いた追加シナリオ」を見た者は、例外なくこの三人と同じ反応を見せたと言う事である。

 

 +  +  +  +  +

 

 シンジ達が京都に来てから半年が経った。

 

 みんなすっかり新しい環境にもなれ、学校では友達もたくさん出来た。

 

 第3新東京は着実に復興への道を歩んでおり、来年早々には全てが再開される予定である。

 

 そんな中の、2016年8月17日。

 

 今日はミサトと加持の結婚式の日である。

 

 北山研究所近くのガーデンチャペルで、ムーンライトウエディングと銘打ち、夜に式を行う事になったのだ。

 

 今夜は満月であり、月がとても美しい。

 

 ウエディングドレスに身を包んだミサトは、信じられないほど美しかった。左手の薬指には、無論、大粒のエメラルドが光っている。

 

「ミサト、とってもきれいよ」

 

「おきれいです。葛城部長」

 

 付き添いのため、アスカとレイがそばにいる。アスカはオレンジのワンピースに真珠のペンダント。レイはあの水色のワンピース姿だった。

 

「ありがと。…でも、ウエディングドレス着て、部長、って言われると、なんかこそばゆいわねえ……♪」

 

「でも、葛城さん、って、言えないでしょ♪」

 

 レイにしては珍しく、軽口を叩いている。

 

「あ、そうよね♪……;」

 

 ミサトは苦笑している。アスカもつられて笑い、

 

「そうそう、ミサトのまけよ♪ ……あ、そうだ!」

 

と、言うや、アスカはハンドバッグからタロットカードを取り出し、

 

「ほんとうはさ、教会で占いなんかやったらダメなんだけど、ここは式場のひかえ室だから、こっそりね♪」

 

と、言いつつ、ミサトとレイの目前でカードを繰り、テーブルに3枚抜き出した。「03:女帝」「06:恋人たち」「04:皇帝」である。

 

「バッチリね♪ かいしゃくなんかいらないわ♪ 幸せにね、ミサト♪」

 

「アスカ、ありがと♪;」

 

 ミサトもやや苦笑しながら、実に嬉しそうである。レイがその様子を微笑みながら見ていた時、式場の係員がやって来た。

 

「式が始まります。付き添いの方はチャペルにお入りください」

 

「はい」

「はあい♪」

 

 レイとアスカは立ち上がった。

 

「じゃ、しっかりね。ミサト♪」

 

 アスカはミサトにウインクすると、レイと一緒に部屋を出て行った。

 

 +  +  +  +  +

 

 式が始まった。

 

 結婚行進曲に合わせ、父親代わりの五大による、花嫁の花婿への引渡し、二人の行進、賛美歌斉唱、と、式は順調に続く。

 

 そして、いよいよ「誓いの言葉」である。

 

「加持リョウジ、あなたはこの女性、葛城ミサトを生涯の妻とし、健やかなる時も病める時も、変わらず慈しみ、死が二人を分かつまで、愛する事を約束しますか」

 

「約束します」

 

「葛城ミサト、あなたはこの男性、加持リョウジを生涯の夫とし、健やかなる時も病める時も、変わらず慈しみ、死が二人を分かつまで、愛する事を約束しますか」

 

「約束します」

 

「では、誓いのくちづけを」

 

 加持がミサトのベールを上げ、額にくちづけた。

 

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチ!!!

 

 拍手が一斉に湧き起こる。シンジも、アスカも、レイも、カヲルも、ナツミも、トウジも、ケンスケも、ヒカリも、日向も、青葉も、マヤも、レナも、服部も、五大も、冬月も、最高の笑顔と盛大な拍手で二人を祝福していた。

 

 そして、二人の退場とウエディングベルである。

 

カーン! カーン! カーン!

 

 満月の輝く夜空に、高らかに鐘の音が鳴り響く。

 

「おめでとう!!」

 

パチパチパチパチ!!!

 

「おめでとう!!」

 

パチパチパチパチ!!!

 

「おめでとう!!」

 

パチパチパチパチ!!!

 

 みんなの祝福の拍手とライスシャワーの中、加持とミサトが並んで進む。

 

 そしていよいよ最後の締めくくり、ブーケの放り投げである。ミサトはマヤとレナの二人を探し、

 

(マヤちゃんとレナちゃんは、と……。あ、あそこだわ。じゃ、二人のどちらかに……)

 

 一心に拍手するマヤかレナのどちらかに、と、ミサトはブーケを放り上げた。

 

 その時、

 

ヒュウウウウッ!!

 

 突然、強い一陣の風が巻き起こり、ブーケを飛ばした。そして、ブーケは、並んで拍手していた、レイ、アスカ、ナツミ、ヒカリの四人の所に流れて行ってしまったのである。

 

「えっ!?」

「えっ!?」

「えっ!?」

「えっ!?」

 

 満月の光に輝くブーケに、四人は反射的に右手を上げてしまった。

 

 

第四部・二つの光 完

 

 

二つのコスモス〜続・新世紀エヴァンゲリオン 完結

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