第1話なので初投稿です。
「はぁっ、はぁっ、っ────!」
走る、走る、走る。
何故だ。
何がどうしてこうなった?
そんなものはとっくに分かっている。…いや原理がどうこうとか言われたら分からないんだが、大まかな経緯だけなら懇切丁寧に説明して貰っている。
だからこそ、余計に解らない事がある。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「長門伶弥さん、貴方は死んでしまいました。」
「……はい?」
目を覚ますと、そこは四方八方全て真っ白だった。
自分がそこに立っているのかすら怪しく感じてしまう程の白さだ。それだけでここは夢か幻覚か、或いは人間の常識の埒外にある場所なのだと理解できる。
そこで突然お前は死んだと言われれば、まず真っ先に夢を疑うだろう。俺だってそうする。そうして俺は実際に自分の頬を思いっきり引っ張ってみた。
痛い。
うん、めちゃくちゃ痛い。これ現実だわ。
とするとこの答えは────、
「『答えは3番目、"人の常識の埒外にある場所か"…』と考えていますね?はい、正解ですよ。」
「いやいや、さも当たり前かのように人の心の内を読まないで貰いたいんですけども。」
と、そこまで話して異常に気付く。
自分はいったい誰と話しているのか?いや在り来りな表現をするならそれは「神様」だとかそんな類のモノなんだろうけども。それはそれとして姿が見えないまま話している理由は気になるものだ。
「えー、っと。神様?なんで姿を見せないまま話してるんですかね?アレですか、みだりに下々の民へその姿を晒してはならない、的な何かですか。」
「へ?あー……忘れてましたっ☆」
きゃぴるんっ☆みたいな語尾と共にこの神様が中々のポンコツで存在ある事が判明してしまった。
ポンコツ神の咳払いが一つ、直後にパチンッと指を鳴らす音が反響すると…目の前にその姿が現れる。
「…改めまして、長門伶弥さん。私が今貴方と話していた存在。人呼んで『女神リジェ』です。」
「────めっちゃ綺麗じゃん…」
おっと、つい本音が漏れ出てしまった。
流石に神様相手に不敬が過ぎただろうか。などと内心ビビり倒しながら怒っているかも知れない神様の方へと視線をやってみればそこには…
「えへ、えへへ…そうですかねぇ…?」
大丈夫かこのポンコツ神。
くねくねと腰をくねらせ、にへらにへらと頬に手を当ててめちゃくちゃに照れまくっている、威厳の欠片も感じられない駄女神様がそこにいた。
いやしかし、美人であるというのに変わりは無い。スピリチュアルな結わえ方をされた柚葉色の艶髪に、和装とも洋装とも異なる変わった風体の服装がなんとも神々しい。そこに湛えられた美貌で、伊達に女神を名乗っている訳では無いというのは一目で解った。
「…コホン、それで神様。何故このような場所に、何の特別さも無い筈の俺が呼ばれたのでしょうか。」
本題に戻ろう。
とはいえ突然「あなたは死にました」なんて言われて、こんな不可思議空間に連れて来られたんだから、その先に待っているのが今流行りの「アレ」である事ぐらいは容易に想像がつく。
ここでこの質問をしたのは、一種の社交辞令だ。
「んっんん、そうでした。伶弥さん、貴方にはこれから私が創った世界へ転生して頂きたいのです。」
「なるほど、解りました。」
「はい、重大な案件に軽過ぎるお返事ありがとうございます。それでは転生にあたって、これから貴方が宿る新しい肉体を構築していきますね。」
そう言って、つい先程までくねくねヘラヘラしていたとは思えない勢いで真面目さを取り戻した女神様は、どこからとも無く3個のダイスを取り出した。
……は?ダイス?
「ちょ、ちょっと待ってください神様。まさか俺の能力値はそのダイスでランダムに決められると?」
「?えぇ、そうですよ?」
いやそうですよじゃないが!!!???
何言ってんだこのポンコツ女神。人の一生を左右する能力値をサイコロ6個で決定するとかお前まさかTRPGか何かでもやってるつもりなのか?
「あぁ、と言ってもダイスで決まるのは才能の面だけですから、ある程度低くても後の努力ではどうにか解決する場合がほとんどなんですよ?」
「あぁなるほど、それなら良かっ……」
いや欠片も良くないが!!!???
どの道低数値が出たらその面で苦労するって事じゃないか!涼しい顔して何言ってんだこの駄女神!!
「む、さてはワガママですね貴方…」
「己の人生が賭かってるんだから当たり前でしょう…神様がポンコツなのは解ったんで、こっから先は遠慮なくジャンジャン文句言っていきますからね。」
「むぅ…仕方ないですね…」
不満げだが何とか文句を言う程度の主張は許された。せめてこのぐらいはさせて貰わないとな。
「こほん…では、気を取り直して運命のダイスロールと行きましょう!せぇー、のォッッ!!!」
さて、と気を取り直してポンコツ駄女神がダイスを3つ握りしめたその手を振り上げる。そうして威勢の良い掛け声と共に投げ放たれたソレは────、
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「さいあくだ……ちくしょうめ…」
絶望に打ちひしがれる俺の目の前に開かれた才能値…初期ステータスの項目に記された数値は……
2つのファンブル…想定される最低値を叩き出し、加えて2つの平均以下を抱える転生後のステータス。
だが筋力と魔力だけなら最大値…即ち天才の部類に入るし、敏捷性も平均をそれなりに上回る数値だ。
それ故に、後ろでドヤってるポンコツ女神に対して下手に文句を言う事も出来ないのである。
この数値を文章にして評価するのなら…
筋力と魔力は圧倒的だし脚も速いが、持久力は無いし精神攻撃にも弱い。更には教養の無さが精神力の低さと相まって堪え性も人より相当に劣っている。
挙句の果てには運気まで悪く不幸に縁がある。
といったところだろうか。
これがゲームなら脳筋プレイをしていれば何とかなったかも知れない。だがこれから俺が転生すると言われた先の世界は、間違いなく現実そのものだ。
ゲームならいざ知らず、現実で教養が壊滅的なのはとてつもなく困った事になる。文字が読めない、なんてなった日には目も当てられない。
それだけでは無い、どんなに瞬間火力や敏捷性が高くても、持久力が低くては長期戦に弱いし、それを避けても急な状況の変化に対応できない可能性がある。
俺はこれから、この壊滅的な教養と持久力をどうにかして補って生きていかなければならないのだ。
「んー、教養と持久力に関しては数値を直接上げる事は出来ませんけど、人になめられない程度に誤魔化すぐらいならこちらで手配出来ますよ?」
「是非ともお願いします偉大なる神様。」
「わぁとっても露骨。」
即決だった。
俺が心配したのは実質的な数値の低さだけではなく、それによって人からどう見られるのか、と言った面も大きかった。何をするのかは知らないがそこを補って貰えるなら、心労も多少は軽減されるだろう。
「それで、誤魔化すって何するんです?」
「ふふふ…種族設定、です!☆」
十数分ぶりにキランッ☆がついた。
…なるほど、種族か。話を聞くに転生する先が剣と魔法のファンタジー世界なのは間違い無さそうだ。そうして教養が不足していても不思議に思われない、魔力やそういう系に長けたファンタジー種族と言えば…
「エルフ、ですか。」
「む…言葉の先取りは良くないと思います。」
「でしたら俺は神様に一度思考を読まれて先取りされているので、これでおあいこですね。」
「なんて口達者な…こほん、まぁいいです。正確に言うならエルフでは無く、ハイエルフですからね。」
「ハイエルフ…世界観によって色々変わってくる存在ですね。ここではどんな感じなんです?」
エルフと言えば凡そ「森と共に永い時を生きる存在」というイメージだろうが、ハイエルフのイメージは固まっているようでいて案外バラけている。
シンプルにエルフの先祖返り等、上位互換であったり、エルフが精霊や妖精と近しい種族であればより精霊寄りであったり、かと思えばエルフとは似て非なる種族であったりと、総じて「エルフよりも一段神秘的な存在」ではあってもその立ち位置は疎らだ。
場合によってはエルフに神のように崇められている存在だ、なんていう設定になっている事もある。
だからこそ、その辺の確認は結構重要なのだ。
「この世界のハイエルフは主にエルフの先祖返りと言われる存在ですね。不老の命に高い魔力、エルフと同じように美形揃いで、果実のみを糧に生きる事が出来る、人型の中でも上位の種族です。」
「そしてエルフよりも更に封鎖的で、聖域と呼ばれる地域から出る事は極めて珍しい…ですか?」
「そういう事です。あの子達、封建主義で人と触れ合いたがりませんから多少世間知らずでも誤魔化せますし、並外れた魔力の高さも説明がつくでしょう。」
そして更に加えれば、封鎖された社会で大規模な移動をした事が無いから持久力は人より劣り、いい身分であったから堪え性があまり育っていない。
なるほど、確かに種族がハイエルフであれば現状生きていく上での問題点が半分以上解決される。
「問題は筋力ですが…まぁ、これは身体強化魔法とでも言っておけばどうにかなるでしょう。」
「感心しました。伊達に神をやっている訳では無いんですね。ポンコツ呼ばわりした事は謝ります。」
「ふふんっ、良いんですよ解ってくれたのなら」
こういう俗っぽいところがポンコツの由縁なのだが…実際よくラノベで見る駄女神や迷惑神よりか余っ程有能だったし、そこは良しとしておこう。
これで異世界転生にあたって問題と言える問題は一通り解決したし、残すは待ちに待った転生本番だ。
これまで身体の実感が掴めなかった俺の元へ、待っていましたと言わんばかりに懐かしい五感が戻って来る。未だに慣れていないせいか感覚そのものは薄いものの、それでもこれから生まれ変わるのだと思うと高揚感が湧き上がるのを感じた。
「あぁそうそう、貴女にも転生者の例に漏れず特典を付与しておきました。物事をよく視て、異世界セカンドライフを楽しんでくださいな。」
転生が始まったと思しき淡い光に身を包まれながら、女神様が思い出したように事を告げる。語感に少し違和感を感じたが、今更文句を言う暇は無い。
かくして
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ッッてぇ……」
後頭部がすごく痛い。
どうやら転生の瞬間、落下して地面に頭を打ち付けてしまったらしい。これでは転生では無く転移じゃないか。いや肉体は生前から変わっているのだから、厳密なジャンルの上では一応転生にあたる訳だが。
はたと、思い出したように辺りを見回す。
良かった、幸い近くに人はいないようだ。空から落ちてきたところなんて見られた日には全て台無しになってしまう。それだけは避けなければならない。
周囲は見渡す限りの森、森、森。もはや樹海と言っても相違無い広大さで、唯一左手側に澄んだ泉が存在している以外、視界のほぼ全てが樹木と草だ。
「人気が無いのは助かるけど……ん?」
ちょっと待った。
なんか声が高い。前世の聞き慣れた声色では無いどころか、そもそも男の声が発する音程ですら無い。
慌てて俺は泉に駆け寄って、その顔を確認する。
「な、何だこれ…冗談キツいって……」
澄んだ泉に映し出されたのは、俺好みな柚葉色の艶髪にエメラルドブルーの瞳、シミやニキビ等のありがちな肌トラブルとは無縁そうな色白の柔肌。
「ふっっざけんなポンコツアホ女神ぃぃぃ!!」
長期連載(予定)です( ˇωˇ )
主人公くんちゃんの紹介はまた次話にて…