TS転生全員俺!?   作:麻婆炒飯

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だいたい週1話ぐらいで投稿出来そうなので初投稿です。


第2話 「外見がゴリラだからって賢者とは限らない」

 

「どうせ見てんだろポンコツアホ女神ィッ!余計なことしやがって!次会ったら覚えとけよお前ぇ!!」

 

 

人の気配一つ無い深い森に無駄に透き通った声が響き渡る。流石はハイエルフ、どんな罵声でも甲高すぎない美しい声で、とても俺好みの愛らしい美声だ。

 

これが(おれ)自身の声で無ければ、だが。

 

ところで、ハイエルフとは森の精霊に限りなく近い存在…らしい。転生にあたって刷り込まれた最低限の知識に依れば、この世界におけるハイエルフはエルフ族の祖先、或いは先祖返りにあたる種族であり、生まれてから十年程で人間の二十歳程まで成長を遂げたその美貌は千年を経ても衰える事が無く、声は数多の動物を引き寄せるのだとか。

 

(おれ)はポンコツ女神への怒りのあまりここが原生動物の宝庫である樹海だと言う事も忘れて、その透き通った声で宛もなく怒鳴り散らしてしまった。

 

その結果がどうなるか等言うまでも無く…

 

 

『ボッフ…ボッフ…ボゥオ?』

 

「………は?」

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

そして状況ははじまり(第1話冒頭)に戻る。

 

俺は自分の声で樹海の原生生物を呼び寄せ、更にはその美貌でついうっかり微笑み掛けてしまった。

 

結果として後ろの巨躯…体長3mはゆうに超えているであろう巨大な白いゴリラが、目をハートにしながら一心不乱に(おれ)を追い掛けて来るのだ。

 

 

「ちくしょう…!人気が無いとは言ったけどゴリラがいないとは言ってないってか!あのアホぉ!!」

 

 

どんなに魔力や筋力があったって、丸腰であの白デカゴリラに勝てる訳が無い。現に今ゴリラは行く手を遮る木々を薙ぎ倒しながらスピードを緩めず追い掛けて来るのだ。あんなもの相手に素手で立ち向かった日には5分と保たずに樹海の養分になる事だろう。

 

幸いと言うべきか、白ゴリラよりも全力疾走している(おれ)の方が少しだけ速く、このまま走り続ける事ができれば追い付かれる心配は無さそうだ。

 

それは不可能なのだが。

 

 

「くっ……そぉ…持久力が貧弱過ぎる…!」

 

 

ポンコツでアホな女神のダイスロールによって体力を3(最低値)に設定されてしまった(おれ)の持久力は壊滅的で、数分走ったところで既に体力の限界を訴え始めていた。

 

これ以上の逃走は不可能と見切りをつけると潔く脚を止め、振り返り白い巨体を見据える。

 

相変わらずギャグ漫画の如く目をハートマークにした、しかし謎に解像度の高い巨大な白ゴリラは(おれ)が逃走を諦めたと思ったのか、ゆっくりと眼前の獲物を追い詰めるかのように歩み近付いて来る。

 

 

「もう勝った気でいるのかよこのゴリラ…」

 

 

白ゴリラが体格に見合った巨大な掌を開き、(おれ)に向けてその腕を伸ばす。この華奢な身体を捕まえようとする動きに(おれ)は……余力の全てを使って反撃に出た。

 

向かってくる掌に対して垂直に跳躍し、手首の辺りに跳び乗る。そのまま毛むくじゃらの腕を駆け上り、白ゴリラの頭を射程に捉えられる位置で腕から跳躍し、俺を捕えようとする反対の掌を避けて跳び上がる。

 

だが(おれ)には武器が無い。

このゴリラをぶった斬るだけの剣はおろか、申し訳程度のナイフすら手元にない正真正銘の丸腰だ。

だが(おれ)には…目には見えないモノがあった。

 

 

「これでもくらって反省しとけ、エロゴリラッ!」

 

『ヴォ、オォ…!?』

 

 

両の拳に怒りを込めて、白ゴリラの顎を思いっきり殴打する。その刹那に異様な程の熱と痛みを右手に覚えたが、勢いと怒りに任せた一撃は当然止まってくれる訳も無く、硬い骨の感触が手に伝わり、みしりと嫌な音が拳から脳髄に鈍く響いた気がした。

 

だがやはり、どんなに筋力と魔力が高くても体格の差は埋めきれないのか。殴打によって跳躍の勢いを失った(おれ)の身体は重力に任せた自由落下を始めて…

 

 

「ッ…とぉ!間に合った!」

 

「………は、何が…?」

 

 

結論から言うと、(おれ)の身体が地面に叩き付けられる事は無かった。突如現れた力強い腕が勢いよく落下する身体を抱きとめ、衝撃を相殺したのだ。

 

落下の瞬間、つい反射的に閉じていた瞼を開けるとそこには…橙色のショートヘアーに、白銀色の鎧を身に纏った男の安堵したような顔面があった。

 

トゥンク……なんてする訳無いだろ中身は男だぞ。

 

 

「ッ…感謝する、お陰で命拾いした。」

 

 

男の腕から跳び降りて地面に着地すると、まだ倒れていない白ゴリラに再び相対しようとして…

 

 

「こらこら、あまり無理をしない方が良いよ。中身がもう限界以上にボロボロじゃないか。」

 

 

そんな声を聞いた直後、脚から力が抜けて地に膝をついてしまう。声の主に何をされたとかじゃない、ただ単に体力と気力が底をついてしまったのだ。

 

そんな状態の(おれ)に手を貸してくれた声の主は……(おれ)の新しい身体と同じ柚葉色の髪をショートボブに揃えた、如何にも魔法使いらしき装備の美少女だった。

 

 

「悪い…助かった。…いや、助かりました。」

 

「ふふ、無理に取り繕う必要は無いさ。それよりも今はその無茶し過ぎな腕をどうにかしないとね。」

 

 

そう言って彼女が視線を向けた先にあった(おれ)の右腕は…骨が歪んで痣まみれに切傷だらけのボロボロ、真っ赤な鮮血も滴って無惨な姿に成り果てていた。

 

 

「うわっ…あれ、でも痛くない…?」

 

「痛覚まで死んでる証拠だね。まったく、どんな無茶な使い方をしたらこんな有様になるんだか……」

 

「えぇ…治るのこれ…?」

 

 

痛覚って事は神経まで死んでるって事じゃないか。そんなん現代医学でも絶望的だぞ。まさか異世界転生初日から酷使の結果に右腕麻痺とか……

 

 

「あぁ、治せるとも。ちょっと荒くはなるけど、明日にはしっかり十全に動かせるようになるよ。」

 

 

マジか、ファンタジーの力ってすげぇ。

 

こんなヤバいレベルまで損傷しても治せるとか凄まじいな剣と魔法の世界…極度に欠損さえしてなきゃだいたい治るとか、そういう次元の世界なんだろうか。

 

 

「うわぁ…ってか忘れてたけどさっきの彼奴は放ったらかしで良いのかよ。あの白いゴリ…魔物、基準は解らないけどそれなりに強いやつなんだろ?」

 

「あぁ、そこのところは心配いらないよ。彼はああ見えて、この私が見出した正真正銘の天才だからね。それに彼には…最高の武器と強化、もっと言うなら…この世界において最強クラスの剣術がある。」

 

 

自信たっぷりに言い放つその表情は正にドヤ顔と言ったところか。美少女な事も相まって凄く可愛い。

 

そんな彼女が自信満々に言ってのけるあの男を見ると…あぁ、確かにそれは天才のソレだった。

 

三次元的な挙動は白ゴリラを翻弄し、僅か一瞬でも視点が逸れると、その隙を逃さず手にした剣で白い剛毛に覆われた巨大を絶え間無く切り刻んでいく。

 

武器のジャンルは俗に言うロングソード。片手で振るう剣にしては少しだけ大振りで、しかしソレを短剣のように軽々と扱って見せる様は、剣士でありながらまるでダンスを踊っているようにも見える。

 

強い、素人目でもそれだけはハッキリと解った。

 

 

『ヴォ…オォォ…ッ!!』

 

「これでぇ…トドメッ!!」

 

 

剣士が雄叫びと共に剣を天高く掲げ、跳躍と共に白ゴリラの脳天へ切っ先を力強く振り下ろす。

普通に考えればあんな頑丈そうなゴリラの脳天なんか狙った日には剣が折れるか弾かれるかのどちらかだとしか思えないのだが…その一撃は、しっかりと最後まで振り切られて白ゴリラの頭部を斬り裂いた。

 

 

『オ…ヴォ…ォ……』

 

 

大きな土煙を立てて、自身の血に染まった白ゴリラの巨体が崩れ落ちる。空を舞い踊る剣士の勇ましい姿は、男心から素直に「カッコイイ」と思った。

 

 

「ふぅ…意外と呆気無かったな。君、怪我は…あるね…エマ、彼女の怪我は問題無く治せそうかな?」

 

「勿論、どんなに治りが遅かったとしても、明日中には問題なく振り回せるようになる筈だよ。」

 

 

なら良かった、とでも言うかのように剣士は頷くと(おれ)の方に向き直り、爽やかな笑顔を向けてきた。

 

まさしく好青年を体現したようなイケメンだ。(おれ)の中身が男じゃなかったら惚れてたかも知れない。

 

 

「だそうだ、無事で良かったよ。俺の名はアルサー、見ての通り冒険者をやってるよ。君の名前は?」

 

「あ、あぁ。ありがとう。お…私の名は…ブフッ!?」

 

 

「な、ちょッ!?大丈夫かい!?エマっ!彼女、まだ何処か見えない箇所を負傷しているんじゃ…」

 

剣士に名を尋ねられ、今更自分のプロフィールを確認していなかった事を思い出した(おれ)は手早く自身の記憶を掘り返し…そしてその内容に思わず吹き出した。

 

突然の事に少し取り乱した剣士…アルサーは美少女魔法使いに異常を確認するが、当人は何を思ったのか笑顔を浮かべている。何故この状況で笑顔…?

 

 

「ゲホッ…ん…大丈夫。少し()せただけだから。」

 

「本当かい…?何か不調があったら遠慮なく言うんだよ?さっきの魔物は凄く厄介な相手だからね。」

 

「心配かけた…けど本当に大丈夫だ。改めて、私の名前は『オグマ』。見ての通り、ハイエルフだ。」

 

 

そう名乗った途端、アルサーは少し驚いたような表情を浮かべる。…成程、どうやらこの世界ではハイエルフは希少な種族らしい。一つ勉強になった。

 

 

「すまない、故郷を出てきたばかりで外の事情には疎いんだ…これからはエルフ族を名乗る事にするから、さっき言った事は出来れば忘れて欲しい。」

 

「あぁ、その方が懸命だろうね。…アル、いつまで呆けてるんだい?彼女を街まで案内してあげないと。」

 

「あ、あぁ!そうだった。ごめんよ、俺も本物のハイエルフは初めて見たから、少し驚いちゃって。」

 

 

そう言ってアルサーは呆け顔から元のイケメンに戻ると、身振り手振りで道順を指し示す。…が、正直分かりづらいなんてものじゃなかった。(おれ)の教養値が低いから理解出来なかった訳では無いと思いたい。

 

その後なんとかエマの補足も得て、街がある方向は理解出来た。どうやら(おれ)が全力疾走していた方向は、そのまま街に向かう道順だったらしい。だからこそアルサーやエマはいち早く辿り着く事が出来たし、(おれ)は転生初日で死なずに済んだようだ。己の幸運に感謝しながら、(おれ)は2人の案内に従って、この無駄に青々と生い茂った樹海から脱出すべく、歩を進めるのだった。

 

 

 





◆ちょっとしたキャラ紹介◆
「オグマ」
柚葉色のロングヘアーに黒の外套を纏った美少女。
種族は「ハイエルフ」だが、この世界においてハイエルフはとてつもなく希少な種族である為、当人は今後通常の「エルフ族」として生きていく事になる。
膨大な魔力と天性の格闘センスを持ち合わせているが、知性の面が少々残念な事になっているようで、煽り耐性が低く人に乗せられ易い性格な上、持久力の才能も人より劣るようで苦労する事もしばしばあるとか。
その中身は異世界転生者である「長門伶弥」であり、この肉体も女神によって鋳造された特注品。その為この世の何処かに存在する他のハイエルフには存在を認知されていない。


次も1週間で投稿出来たら良いなぁ…と思ってマス。
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