サンブレイクにかまけ過ぎて執筆が疎かになっているので初投稿です。
「見えてきた、アレがシュタットだよ」
一晩の野営を経て深い森を抜け、街道を暫く歩いた先に見えてきた人工物を指さしてアルサーが言う。
それは見るからに「ファンタジー世界の街の門」な石造りの壁に鉄枠と木製の大扉で、あまりにもイメージ通り過ぎて少しばかり色々な心配が過る程だった。
昨夜の夜営の内に2人から聞いて学んだ話によると、この大きな門を潜った先には「シュタット」という名の街があるらしく、なんでもこの国では王都に次いで二番目に大きく栄えている街なのだそうだ。
「成程…あの門で持ち物検査を受けて、初通過用の臨時通行証を発行して貰えば良いんだな?」
「そう、あんまり挙動不審が過ぎると通して貰えない事もあるから、あまり気負わず自然に行こうね」
笑顔で「まぁ、俺がいるし問題無いとは思うけど」などと気楽な言葉を繋げつつ穏やかに歩みを進めるアルサーに着いて歩く。それはつまり、いわゆる顔パスが出来る程に彼は有名人だという事なのだろう。
ちなみに前日まで同行していたエマは森を抜けて街道に出るなり、「私は用事があるからまた後で」なんて言って、シュタットとは反対側に歩き去って行った。彼女の口振りから察するに次に会う時もそう遠い未来では無い、という事なんだろうか。
そんな事を考えながら歩みを進めていると…数十分程で門番との意思疎通が取れる距離まで来ていた。
「お!帰ったなアルサー。調子はどうよ?」
「あぁ、ただいまグスタフ。んー…まずまずかな、前回よりは比較的安全に倒せたと思うんだけど、まだ俺1人だけじゃ倒すのはちょっと厳しいかも。」
グスタフと呼ばれた髭面のおっさんは、どうやらここの門番らしい。銀色の軽鎧を身に着け、背中にはただでさえ大柄な彼の背丈程もある長柄の大斧…俗に言うバトルアックスとかいう武器を背負っている。
アルサーも相応に高身長だが、グスタフの方が頭一つ大きい。
「ハッハッ!コイツめ言いやがる、そもそもフォレストオーガ…それも白変種となりゃあ今まで衛兵15人以上で取り囲んで相手すんのがセオリーだったんだ、2人で倒せんならそれだけで十分強いってもんよ。」
「それはまぁ…そうなんだけどさ。」
「まぁ、謙遜も程々にな。…ところでだ、そっちの可愛いお嬢ちゃんは何処で引っ掛けて来たんだ?道中に寄り道できる村なんか無ぇはずだろ?」
ここで話題の矛先が
とはいえそれは想定通り、当然ながら初めてこの街に来た俺はここの人間にとっては新顔だし、仮に1人で、しかも身分を証明するものも無いとなれば門番に怪しまれるのは至極当たり前の流れだし、この門を潜って街に入るにも検査を受けなければならないだろう。
それをアルサーは解決してくれると言うのだから、彼の提案に乗らない手は無いだろう。言い訳も考えてくれているらしいし、ここは一つ、彼の脚本に乗っかるという事で昨夜のうちに予め同意していた。
「あぁ、彼女はオグマ。なんでも森を挟んで北側の村から来たらしくてね。元々ここを目指してたんだけど、街道を迂回するのが面倒で近道をしようとして、森に入ったら遭難したみたいなんだ。」
………はっ?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「馬鹿!ばぁーかっ!何で
「いてっ、いててっ、ごめんって。でもグスタフはこういう笑い話が好きなんだよ。彼の覚えが良い方が後々も君の助けになると思って、いててっ」
げしっ、げしっ、なんて擬音が聞こえてきそうな蹴りをアルサーの脛に連続して叩き込む。痛いなんて言ってる割に少しも軸がブレてない辺り、実際には少しもダメージを受けていない事がよく分かる。
一頻り蹴りを入れ終えて満足した頃、歩を進め続けていた
「さてと、到着。ここが冒険者ギルドだよ。」
そう言われて見上げた建物は、如何にもなファンタジー世界の酒場と言った雰囲気だった。高さ的には二階建て程度だろうか。横に大きく、扉は漫画なんかでよく見る仕切りを押して開く簡単なタイプだ。
「ギルドの役割とかは解るかな?1人で生きてく以上、こういうとこに所属するのが一番だと思うんだ。」
「あぁ、
おそらく、というかほぼ間違いなく、この世界においてもギルドはいわゆる「何でも屋の互助組織」のようなものだろう。某モンスターな狩人の世界の某ギルドのような「特別な訓練を経た職業に携わる者達を支える役割」だとしたら、まずアルサーがここに
そう決めて扉を開いた先は…想像通りの光景だった。
「報告処理頼むぜッ!」
「はい、確認しました!依頼品を鑑定に出しますから、呼ばれるまで少し待っててくださいね。」
「おうよッ!」
「ハッハハ!やるじゃねェか!」
「ッたりめぇよ!これで昇格まであと1つ!」
「バカ言え!条件満たしても筆記試験通過しなきゃならねぇだろうが!お前の頭じゃ無理だよ!」
「あァ!?やッたるわ!俺はやる時ゃ────、」
……うん、とてもうるさい。
右を見ても左を見ても、4人掛けのテーブルに座ってるのは厳つい髭面の男達がほとんど。よく見ると2,3人程度は女性もいるようだが、この雰囲気のせいか用事が終わるなりさっさと出ていく人ばかりだ。
そして中央、入口であるここから見て真っ直ぐ進んだ突き当たりにはカウンターがある。そこに座っている、他と比べて圧倒的に身なりの良い女性は、いわゆる「受付嬢」と呼ばれる役職に属する人だろう。
「今日は一段と人が多いな…オグマ、初登録には向かない状況だけど、君が嫌ならまた後日でも…」
「いや問題無い、行ける。」
そう言いながら喧騒の中を抜けて、受付カウンターへ向かう。やはりこういう連中にとって新人は注目の対象なのか、通り過ぎると同時に喧騒がほんの少し緩やかになり、興味の視線がコチラへ集中した。
「いらっしゃいませ!依頼の受付でしたら…」
「いや、依頼じゃない。冒険者の登録に来た。」
一気に酒場内がザワつく。
女性の数である程度の見当は付いていたが、やはり女の冒険者というのはかなり珍しいのだろうか。
その理由を少し考え、嫌な可能性が浮上した所でこの思考は打ち切った。こんなん考えるだけ損だ。
「えっと…念の為にお聞きしておきますね。冒険者というのはとても危険な仕事です。どんなにランクの低い依頼でも、想定外の状況で命を落とす人は数えきれません。女性ともなれば…その、
「そうだぞ嬢ちゃん、命が惜しくば帰んな」
「怖い魔物の餌になるかも知れねぇんだぞぉ?」
受付嬢さんの警告に続いて、後ろの厳つい冒険者達からヤジの声が上がる。…いや、この感じは酔っ払いの揶揄に聞こえて、本気で命の心配をしているやつだ。
確かに、他の仕事はあるかも知れない。
だがどんな仕事も、基本的には頭を使う…つまりはある程度以上の教養を必要とするものだ。
ポンコツ女神のダイスロールで知能面にファンブルを出してしまった俺には、頭を使って覚えるのは至難の業なのだ。ならば単純作業で身体で覚えられる力仕事はどうなのかとなるが、それもそれで問題がある。
同じくダイスロールで得た筋力の最大値だ。
故あって知った事だが、この世界における筋力の才能平均値はおそらく6程度、アルサーでさえ13、明らかにパワー型な門番のグスタフすらも15止まりなのだ。
そんな中で最大値の18なんて持つ存在は、手に持った物を壊してしまう確率の方が遥かに高い。
魔法か何かで筋力を減衰させるか制御しなければ、下手に物を持ち運ぶ事すら危うい。そうなれば力仕事もろくに出来やしない。
そうなると、一番手っ取り早いのは冒険者となる。
強過ぎる筋力は攻撃手段となるし、最初は簡単な狩りから始めれば身体で覚えられるだろう。魔物の解体は覚えられないが、そこはギルドに委託するなりすれば、多少の出費はあれど問題無く解決する。
受付嬢さんや他の冒険者が危惧する命の危険は捨て置けないが、自分の力量を見極めて無茶さえしなければどうとでもなる。聞くに先の白ゴリラはこの辺の魔物の中でもかなり素早い部類らしく、アレからある程度逃げられたのなら有事の逃走も問題無いだろう。
「承知の上だ、登録してくれ。」
「……解りました。ではこちらのギルド登録用の水晶に手を触れてください。現在の保有ステータスと万が一に備えた賞罰歴を登録、参照します。」
諦めたような表情で一息ついた受付嬢さんが、カウンターの下から水晶を取り出す。ファンタジー世界ではよくある便利な登録魔法が入った水晶だ。
「筋力B+…過去にレベリングの経験でも?」
「いや、特にそういうのは無い…と思う。」
レベリング。やはりこの世界にはレベルの概念があるようだ。受付嬢さんを「視る」と10レベルあるようだし、水晶に反射して映った
これは後から知った事だが、後ろの厳つい冒険者達のレベルは平均30前後、加えてアルサーはレベル60だったし、門番のグスタフはレベル45だった。
「驚きました…基礎値でこんなに…納得しました。でも気を付けてくださいね。さっきも言いましたけど、どんなに強い冒険者でも、一瞬の油断で命を落とす事は日常茶飯事です。絶対に無茶しないでください。」
「分かってる、
受付嬢さんの言葉に有難みを込めて言葉を返しながら手渡された登録証…所謂ギルドカードを受け取る。
これで俺は、晴れてこの世界の住人になった。
「上手く登録出来たみたいだね。」
「あ、おかえりなさいアルサーさん。…アルサーさんの紹介だったんですね。出来れば今度は事前に連絡を入れた上で、ちゃんと付き添って頂きたいです。」
「うっ…ごめんごめん、そういう度の過ぎたお節介はオグマが特に嫌がりそうだったからさ。」
「彼女が嫌がっても、です。今日も
「……行くのか?」
「うん、宿屋の場所は伝えた通りだよ。既に話は通してあるから、名乗るだけで泊めてもらえる。7日分は俺の名義でツケに出来るから、頑張って。」
「あぁ、世話になった。この借りは必ず返す。」
「別に気にしなくても…って言っても無理か。うん、分かった。返してくれるのを楽しみに待ってるよ。」
そう言って
ここから
一人頭の中でよく分からない事を考えながら、
祝!無職脱出!オグマは森ニートから新人冒険者にジョブチェンジした!