TS転生全員俺!?   作:麻婆炒飯

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当初の予定より1時間程遅刻してしまったので初投稿です。

ふ、不定期更新だしへーきへーき…!




第5話 「会話が噛み合わないまま事が進む現象、割とよくある」

 

「ふぁ……ぁー…ねむ…」

 

やってしまった。

睡眠時間は大事だと散々反芻したというのに、(おれ)という奴は厨二心に夢見たチート能力の獲得によってついついはしゃいで、見える範囲のあらゆるものを鑑定しまくるのに夢中になり、挙句部屋の窓から見える範囲にある夜の街のあらゆるものを鑑定し尽くし、ついにはそのまま寝ずに夜を明かしてしまった。

 

日の出を見て正気に戻っても時既に遅し、目の下にたっぷりとクマを作って、受付横に食堂が併設された一階へと重い足取りで階段を降りる。

 

そして部屋の境界線を跨いで早速、(おれ)の情けない顔を目にした女将さんに笑われてしまった。

 

「あっはは!随分遅くまで起きてると思ったけど、その顔は夜景にはしゃいで夜更かししたねぇ!?」

 

「はは……仰る通りです…」

 

言い訳の一つも思い浮かばねぇ。

 

まぁチートスキルを試すのに夢中になったって点では厳密には違うかも知れんが、下手に弁明して怪しまれるよりはそういう事にしておいた方が良いだろう。門でのズボラキャラといい(おれ)に新たなポンコツ要素を足してしまった…これもきっと次見た時には自分の称号欄に新しく追加されてるんだろうなちくしょうめ……

 

(おれ)は未だに眠たい意識と葛藤しつつ、睡魔で重たい眼を手で雑に擦りながらのそりと食卓に着く。

 

この宿の食事は、代金さえ払っておけば女将さんが拵えて出してくれるのだ。別料金で値が張るとはいえ、至れり尽くせりの高待遇で実にありがたい。

 

「んぁ……ありがとう女将さん…」

 

「なぁに、ちょっとのサービスぐらい構わないよ!それより食うもん食って眠気覚ましなよ!」

 

寝惚けた頭にピリ辛の味付けが効く…夜更かししてんのバレてたって事はその辺の眠気覚ましも兼ねて献立考えてたのかな…だとしたら気の利く女将さんだな…

 

「それでも気付けが足りなさそうなら、後で教会に顔出してついでに治癒魔法(リフレッシュ)の一つでも掛けて貰いな。その調子じゃ、昨日挨拶にも行くどころか坊やから何も聞かされて無かったんじゃないかい?」

 

「ふぁ?ほうふぁい(きょうかい)?」

 

そういう決まり事があったのか。アルサーは昨日その辺何も言ってなかったぞあの野郎。

 

なんでもこの街…というか人間社会には幾つか信仰する神が存在し、この辺で信仰されているのが生と死、創造と破壊の輪廻を司るリジェとかいう女神様らしい。

 

……いやそれあのポンコツ女神じゃねぇか。

 

あの女神サラッと自分が信仰されてる区域に飛ばしてたのな。「自分の信仰区域にしか飛ばせない」誓約か何かが科せられていたりするのだろうか。

 

そしてあの女神の信仰派が現状の最大宗教だと言うのだから、世の中わからんものだ。…もしかすると単純にあの女神が猫被りの達人なだけかも知らんが。

 

ともかく、どうやらこの街では「体調が芳しくない→教会で治療して貰おう」ってのが基本なんだそうだ。(おれ)が体調が悪そうでもそうした考えをしている様子が無さそうだったから、と見抜かれたらしい。

 

「ん…宿屋の女将さん恐るべし」

 

「飯食いながら余計な事考える余力は戻ったみたいだね!その調子なら問題無さそうだよ!」

 

……言われてみれば、眠気は完全にでこそ無いもののだいぶ改善した気がする。後でステータスを鑑定して、「寝不足」がどうなったか確認してみよう。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「さてと…有難う女将さん、行ってきます。」

 

「あぁ、道中怪我の無いようにね!」

 

朝食後、様々な支度を済ませた(おれ)は軽い手荷物をポーチに詰めて、挨拶も程々に宿屋の玄関口を出る。

 

いくら体調はマシになったとはいえ、慣習として普及している教会に挨拶の一つもしないというのは、下手なタイミングで悪目立ちする要素になりかねない。

 

女将さんに渡された簡易的な地図を頼りに、(おれ)は宿場町を抜けて繁華街を通り、昨日お世話になった冒険者ギルドの前を通過して、街の中央通りからほんの少しだけ離れた非商業区域へ、宿から30分程歩き続けてようやく辿り着いた。

 

この辺りには、商売事とは関係の無い…表向きにはそうあるべきな組織…それこそ教会だとか、そこが管理する共同墓地に慰霊碑、他には街の住民に広く解放されている公営図書館なんかがあるそうだ。

 

俺の用事は当然、教会なのだが……

 

「お姉ちゃん誰?」

 

「……ん?」

 

下から声が聞こえた。声の方向を見ると、(おれ)の腹程の背丈の少女が興味深げに此方を見つめている。

この辺りに住んでる家の子だろうか?だが近くに民家らしい建物は見当たらない…等と訝しんでいると…

 

「コンー?どうしたー?」

 

「あっ…リッタ。」

 

今度は少年がゴムボールらしき玩具を持って駆け寄って来た。どうやら少女…コンと呼ばれているらしい。彼女の呼び方から察するに少年の方はリッタか。どうやら彼はコンを追い掛けて来たらしい。親しい友達とか幼馴染とか、大方そんなところの関係なのだろう。

 

「何だよ、お前…見掛けない奴だな…」

 

おっと、警戒されてしまったようだ。

仕方ない、この年頃の男子は見慣れない女とか警戒するよな。思春期少し前ぐらいの感情も混ざるし。

ここは必要以上に警戒させてしまわないよう、ちゃんと目的も話しておかないといけないだろう。

 

「すまない、この近くに教会があると聞いて挨拶に来たのだが、何処だか知らないだろうか?」

 

少し腰を低くしてコンとリッタに視線を合わせ、努めて平静に教会の場所を尋ねる。案内してくれなんて言った日には不審者になってしまう可能性が高いので、ここは方向とか場所を聞くだけに留めておこう。

 

「……なんだ、レアねーちゃんのお客さんか」

 

おっとぉ?

方向だけ知れれば御の字だと思っていたが、どうやらリッタ少年は教会の…シスター?らしき人物と知り合いらしい。横でコンが頷いているのを見るに、彼女もレアという名のシスターとは知己の間柄なのだろう。

 

「コンー?リッター?何処ですかー?」

 

ここで3人目のエントリーだ。

二人の名を呼びながら物陰から出てきたのは……

青磁色の長髪が微風に靡く、修道服の美女だった。

 

かわいい、タイプだ。

整っていながらも幸薄げな顔付きに、艶のある青磁色の肩に掛かる長髪。修道服とのコントラストも然ることながら、その洗練された所作も素晴らしい。今の(おれ)が女で無ければ、確実に恋に落ちていただろう。

 

おっといけない、当初の目的を果たさなければ。

 

「2人共心配しましたよ、どうし…あっ…」

 

「貴殿が中央教会のレア殿だろうか。私はエルフのオグマという。この街の慣習として挨拶に……」

 

「は、はい…!事情は解りました、此方へ…」

 

うん??

いったいどうしたというのか、急にシスターさんが挙動不審になってしまった。もしかして、大人との会話に慣れていないとか、そういう感じのコミュニケーション下手なのだろうか。……可愛いかよ。

 

「ふ、二人は早く戻って庭で皆と遊んであげて下さいね。皆も待っていましたから。」

 

「うん!行こうぜコン!」

 

「あっ、待ってよリッタ…!」

 

相変わらず落ち着きの無い様子で歩き出すシスターさんと、その横を追い越して一足先に目的地らしき場所へと駆けていく二人の背を見ながらついて歩く。

 

リッタやシスターさんが来た方向へ数分歩いて行くと、そこそこ大きな建物が見えてきた。

ファンタジーだとかでよく見る西洋風の教会だ。その隣には平屋建ての建物が建っていて、コンとリッタの二人はそっちの方へ掛けて行った。建物と教会の間の茂る芝生に何人か子供がいるのが見えたが……

 

一方で(おれ)とシスターさんは教会の方へ入っていく。正面口から入って奥へ進み、右手側の扉を通って小部屋に入った。そこには机と椅子が2つ置かれている。窓からはさっきの庭と、子供達が元気に遊ぶ姿が見えた。

 

「元気な子供達だ。」

 

「はい、皆とても良い子なんですよ。」

 

「その、彼等は……」

 

「…えぇ、あの子達は孤児です。理由は様々ですけれど、皆、家族を喪った身寄りの無い子供達です。」

 

やはりそうか。

とすると、庭の向こうに見える建物がおそらく子供達の宿泊棟…いわゆる孤児院なのだろう。

近そうな年頃の子が20人以上いるのを見ると、やはりこの世界は元の世界よりもずっと命が軽いのだろうと理解させられる。少しだけ、心が重たくなった。

 

「……コホン、そろそろ本題に入りましょうか。」

 

「…ん??あ、あぁ。そうだな、それが良い。」

 

突然居住まいを正したシスターさんが、さっきまでの動揺したような表情からキリッとした顔に変わって(おれ)を見つめてくる。照れるじゃねぇかよ。

 

「正直、とても驚いています。ここまでお気付きになるのが早かったのは、貴女が初めてです。」

 

……うん?気付くってのは、教会への挨拶って事か?女将さんは街の常識のように教えてくれたし、街に来たばっかの奴ってそんなマナー悪いのか??

 

「それでは、話を伺いましょう。新たに降りたる転生者、オーレオール・グラン・マイノリティさん。」

 

「はっ??」

 

はっ??

なんて?いや何て言われたのかは解る。意味も俺の勝手な勘違いじゃなければ解る。

だが、何の意図でその名を口走った?

まさか、このシスターは……

 

「貴殿は……いや、アンタも転生者…なのか…?」

 

「………へっ…?」

 

意を決した質問に対して、キリッとした表情だったシスターさんからは…間の抜けた返事が返ってきた。

 

「え、えっと……私が転生者だと知って、挨拶に来てくださったのでは…無いのですか…?」

 

えぇ…何それ知らん…こわ……

 

簡素な応接室を、気まずそうな静寂が支配した。

 

あー、外の子供達が元気だなぁ。

 

 





自白…己の隠し事を洗いざらい喋ること。

自爆…今日のシスターさんみたい状況。
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