TS魔法少女の刑に処す 作:TS魔法少女を曇らせ隊
「高位の『
それを把握したレッドパッションはすぐさま地面を蹴って飛び退き、腰のスマホを強く叩いて
次いで側に現れた火蜥蜴と頷き合い、両手をヒトガタに向けて思い切り突き出した。
「《
上方に突き出した両手で被害が出ない照準を定め、
『そレは頂ケないなァ』
「ッ!?」
刹那のうちに現れたヒトガタによって、光が集い始めていた両腕を掴まれる。
咄嗟に炎を噴き出して引き剥がそうとするも、片手で抑え込まれているだけなのに、動かない!
純粋な膂力の差を突きつけられ、レッドパッションは歯噛みする。だがそれでも、どうにか状況を打破しようとヒトガタを睨みつけ──その表情が凍り付く。
『ほォんと、ずルいよねェ』
『QUA、AAッ!』
ヒトガタの、使われていなかった片手が火色の蜥蜴をぎりぎりと掴んでいる。サラマンダーも必死に抵抗しているが、矮小な体躯のせいで抜け出すことも叶わない。
『
「サラマンッ……てめ、離しやがれッ!!」
『すこォし、黙っておこうねェ』
──めぎっ。
暴れるレッドパッションの両腕が、歪に曲がった。その鈍痛でレッドパッションのこめかみが引き攣り、喉が震え、脂汗が滝のように流れる。
「ぎ、……づゥ、ァッ!!」
それでも彼女は悲鳴を噛み殺して、痛みで瞳が潤みながらも気丈にヒトガタを睨みつけている。
ヒトガタはそれにほォと愉快そうな声を漏らし……直後、片手で捉えたサラマンダーが悲痛な鳴き声を発した。
ぎりぎり、ぎりぎりと締め付けて──片腕がゆっくりと、レッドパッションに見せつけるようにして上げられていく。
近づいていく先は、犬歯の生えた醜い口。
「お、いっ、やめろッ……!」
悲鳴にも似て焦燥を孕んだ声に、ヒトガタは醜悪に微笑んだ。
『ン』
暴れる蜥蜴を口元に。
「やめッ──!!」
『ばクり』
ふざけるように、あざけるように、下手な擬音を吐き出したその口で。
ヒトガタは、サラマンダーを噛み砕いた。
血の気が引いていくレッドパッションの目の前で、ばりばり、ばりばり──鱗が砕け、血潮が弾け、とびっきり露悪的にヒトガタはソレを咀嚼した。
「あ、ァあ」
呆然と、レッドパッションはうめきにも満たない息を漏らす。
そんな彼女の姿が心底楽しくて仕方がないとでも言うように、下劣に笑うヒトガタは、ごくん、とわざとらしく喉を鳴らし──がパァ、と頬まで避けた口角を、限界まで広げ見せつけて。
『
汚らしい
己がへし折ったレッドパッションの両腕をふらふらと揺らし、その苦痛に喘ぐ彼女を眺めてにやにやと嗤い──少女らしく健康的に引き締まった前腕の肉を、ぶちり、と。
「っづ、ぁあ──ッッ!!?」
『んーフ、美味シいですねェ』
引きちぎったそれを口に運び、だらしなく頬を緩める姿は、怪物らしく悼ましい。
肉を抉られたレッドパッションはだくだくと流れる血をそのままに、それまでの鈍痛とはあまりにも異なる鮮烈な痛みに悲鳴を堪えることができずに身体を震わせていた。
「げはっ!?」
ヒトガタは彼女を枯れ木のような脚で蹴り飛ばし、塵となりかけている獣の死体に叩きつける。
幸い獣の脂肪が緩衝材となったことで衝撃そのものはそれほどではなく──しかし。
「が、はっ、はっ、っぐぅッ……!」
純粋な蹴りの破壊力で筋繊維が弾け、肋骨が砕ける。内臓が血を吐いて、彼女の口から呻きとともに血反吐が垂れた。
圧倒的な、どうしようもない力。
人間が想像する人外を体現するがごとき悪趣味な言動と言い、
「……くふっ」
畜生、そう悪態を吐き出そうとするも、その余裕すら彼女にはない。
意味を成さない吐息だけを吐き出して、唇を噛み締めた。
そんな彼女をとても愉しそうに眺めて、ヒトガタは唇を厭に歪めた。
『後はァ、そうですねェ……太もも、いイなァ。かぶりツいたらドれだけ美味しいダろう……久しブりだカら、目移りしてしまマうなァ……』
腕、二の腕。
脚、ふくらはぎ。
首元、流れる血。
『でも、早くシないと、
それらを順々に指差して、舌なめずりするヒトガタは、細い片腕を少女に伸ばす。
レッドパッションの瞳は、もはや霞んで何も見えない。わずかな影のみを捉える瞳を必死に細めている。それは光を見つけようと足掻いているようにも、見たくないものを拒む諦めのようにも受け取れた。
だくだくと腕から流れる、生々しく温い鮮血──広がっていくそれ。
ああ。
もっと自分が強ければ。
こんな無様な死を、迎えることはなかったのに。
──“勿体ないと思わないかな?”
端から感覚を失っていく中で、そんな声が脳裏に聞こえた。
──“オマエが心に秘めたるモノを、むざむざ、抑圧しているなど”
聞いたことがある──けれど、違う気もする妙な声。
──“もしもオマエが、汝が炎に焼き尽くされる覚悟があるなら”
傷口から、体温もろとも血が流れ出ていく。
──“■れ”
──“■れ”
──“■れ”
──“■れ”
折れた骨の痛み。
理不尽にも与えられたそれが、少女の意識を支えていて──
──どこだっ
遠く、声が聞こえた。
気のせいかと、気の間違いかと聞き流してしまうほどの小さな声。
だが。
迫り来る手が、わずかに止まったのを感じて確信する。
彼女が、来たのだと。
行ってくると、言ったはずなのに。
「ぁ」
痙攣し、震える喉がわずかに開き──
「ひな、た……?」
竜胆あかねは、彼女の名を呼ぶ。
相変わらず、瞳は霞んで見えないけれど。
どうして来たと怒鳴りたい──けれど、それでも。
「ッ、あかねぇえ────ッ!!!」
嗚呼。
ようやく、名前を呼んでくれた。
それだけで竜胆あかねは──この絶望的な状況の中で、救われるような気がしたのだ。