TS魔法少女の刑に処す   作:TS魔法少女を曇らせ隊

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第二十四話 力の確認

 “では、魔法少女の力の確認を始めよう”

 

「おう」

 

 あかねが目覚めて数時間後、泣き疲れて眠ってしまった彼女を置いて訪れたのは、本部地下に設けられている訓練場。

 そこで俺は首にかけていたネックレスを手のひらに乗せ、脳裏に響く声に従い目を閉じていた。

 

 あかねを守るには、俺はまだまだ力不足だ。あの変態クソ吸血鬼を退けることこそできたが、あかねやイエローアイ……楓信寺静理が備えている第一魔法を持っていないのだから、それで満足するのは間違いだ。

 

 少なくとも知識不足を解消して、不足なく戦えるようにしなければ話にならない。

 

 だからこそ、俺は身近にいる魔法少女に詳しい存在に頼った。

 

 “魔法少女の力の根源は我々……を通して汲み上げる、人類の認識、想念だ。ゆえに汝はそれを理解し、その認識を現実に出力する術を学ばなければならない”

 

 ネックレスから語りかけてくる硝子の異形の声に従い、彼が導くままに俺は意識を闇に沈める。

 

 “人々の認識、すなわち“魔法とはこういうものだろう”という基盤(プレート)に、それぞれの想念を乗せる。それが汎用魔法の基本的な原理だ”

 

「それは前に聞いたぜ。それで、それはどう使うんだ?」

 

 “汝──我々と繋がっている魔法少女の意志、精神の力によって、それを現実に引き上げるのだ”

 

「……すまん、もうちょっと明確に説明してくれねェか?」

 

 引き上げるだの言われての、と困ってしまう。そんな俺に呆れたようにため息を吐いて、硝子の異形はかぶりを振った……気がした。

 

 “汝の頭は硬いな、凝り固まった石のようだ”

 

「うっせ」

 

 “……まあ、そうでなければこうはならない、か。そうだな……少し我に意識を傾けながら、汝が思う魔法らしい魔法を思い浮かべてみろ”

 

 呆れたような声はともかく、その言葉に従って彼に意識を向けながら、考える。

 魔法らしい魔法、ね。

 

「…………」

 

 ──思い浮かぶのは、数年前。

 ひなたと一緒にゲームをしていた時のこと。

 

 あの頃は、暇さえあれば日本的なRPGをやっていた。

 俺がやっているところに、ひなたが頭を突っ込んできて……それを押し退けるのも忍びなくて、頬が当たるくらいの近さでさまざまな技を使っていた。

 

 そのうち、ひなたも興味を持ち始めて……カセットを取り合って喧嘩して、二人仲良く母さんに怒られた覚えがある。

 

 確か、そう。

 あのゲームで一番最初に覚える攻撃魔法。

 敵を倒す、第一歩(ちから)──その名前は。

 

「──《ファイアボール》

 

 静かに、確かな想像(イメージ)のもとに紡いだ言葉。

 それが空気の解け、消えゆく刹那──ポッ。

 

 俺の掌に、炎……と言えるほどの勢いはないが、しかし、人間が決して生理的に生み出せるはずのない火球が生まれた。

 

「……これが」

 

 “それこそが原始的な魔法だ。個々人の想像(イメージ)によって現実に想念を引き上げる──これを『魔乞(マゴイ)』と呼ぶ”

 

「『魔乞(マゴイ)』、ねェ……っとと」

 

 燃え続ける火球を眺めていると、ふとくらりと来て身体を揺らす。咄嗟に体勢を立て直すが、どこか身体に倦怠感を覚えてしまう。

 首を傾げる俺の掌から、音もなく火球が消えた。

 

 “現実に魔法を引き上げる『魔乞(マゴイ)』には、個々人の精神力を必要とする。大幅に精神力が強固になる戦闘時ならともかく、平時であればこの程度の使用でも疲れるだろう”

 

「まあ、そら万能じゃねェわな……」

 

 “これを明文化し、体系化することで想像(イメージ)を素早く、そして強固に行えるように技術として確立したのが『魔求数式(マグスクリプト)』だ。魔法少女イエローアイが使っていた《治癒(ヒール)》もこれに当たる”

 

 つまり、『魔求数式(マグスクリプト)』は『魔乞(マゴイ)』の発展形、というわけだ。

 これは骨が折れそうだが……引き出したい情報に合わせて拷問(じんもん)の形式を変えるようなものだろう。

 

 その辺は慣れているし、習熟すればどんな状況でも最適な魔法を繰り出せると考えればやりがいもあると言うものだ。

 

 “これに加えて特定の宗教を基盤とする魔法もあるが……難易度が高いゆえ、まだ後に回しても良いだろう”

 

「そこら辺は基礎に慣れてからってことだろ、別にいい……けどよ、例えばどんなモンがあるんだ?」

 

 ふと気になって聞いてみた。

 宗教に所以する魔法、と言えばなんだか不穏な気配がするが、宗教は人類の認識の中に深く根付いている概念だ。それをもとにする魔法というのは、やはり強力なのだろうか。

 

 “そうだな、一番有名なものであれば『聖典魔法(ダウンワード)』だろうか”

 

 そんな俺の考えを知ってか、硝子の異形はさらりと教えてくれた。

 ……『聖典魔法(ダウンワード)』。なんとなく字面で想像はできる。

 

「キリスト教、か?」

 

 “その通り。キリスト教の聖書に所以する、言葉によって物質を創造する大魔法だ。通常、汎用魔法は『理想の結果』のみを出力し、それらは自ずと消え去る運命にある”

 

 先ほど、俺の生み出した炎はすぐに消えた。熱も形もあったが、俺が精神力の供給を止めるとすぐに消えたのだ。そこに残るものは何もなく、まるで夢のように掻き消えた.

 ということは、この炎は温度が上がった結果として発火するという理屈に反して──炎が炎として、何を燃やすわけでもなく、現象として存在していることになる。

 

 “──だがこの魔法によって生まれたモノは消えず、永劫世界に残り続ける”

 

「それは……!」

 

 “もっとも我らの規模では創世など叶うべくもないが……それでも人類には手に余る代物だ”

 

 それはそうだろう、少し考えるだけでいくらでも悪用の仕方が思い浮かぶのだから。

 例えば危険物質を作って物理的に害することや、あるいは金塊などを作って市場価値を破壊することもできる。

 考えるだけで恐ろしく──常日頃から言葉に振り回される人間は、あまり持つべきではない力にも思えた。

 

 “これの習得には汝ら魔法少女の適性や我らの相性も関わってくる。聖書に関連する概念のアマイガスならば、比較的習得は容易だろうが……”

 

「…………」

 

 聖書に関連するアマイガス。

 それはどのような概念なのだろう。

 あるいは、どのような存在(すがた)なのだろう。

 

 いずれにせよ、その力をヒトが振るうのは……とても覚悟がいるのだろう。

 

「……まァ、そんな恐ろしいモンに夢を見るより、今は堅実に力を身に付けていきますか」

 

 そんな魔法は、きっと己の手に余る。

 

 “……そうだな。であれば、まずは我らと相性の良い『魔求数式(マグスクリプト)』から訓練を始めよう”

 

 彼もそれに頷くと、俺の脳裏に『魔求数式(マグスクリプト)』の一覧を送ってくる。

 そんなこともできるのか、と驚きつつ──

 

 

「『魔求数式(マグスクリプト)』──」

 

 

 俺は、自分の力を高める訓練に没頭した。




色々展開に困っておりまして少し間が空いてしまいました
情報の開示は本編ですべき、後書きで語るものではないと考えているので、少し構成に迷っていますが、必ず書き切りたいと考えているので応援よろしくお願いします。
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