ハリー・ポッターとオリーブの杖   作:Tohka.A

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ヘルメスの学徒たれ

 

 

 

「 さぁそのネズミ、縛って調べようか 」

 

 

“忍びの地図”は知らせていた。もうすぐ真の助けが来る、と!

 

その思いからガラハッドは、少しばかり浮足立っていた。

高らかにそう宣言して振り向いてきたガラハッドに、ゼエゼエ声でロンは答えた。

 

 

「 僕の…スキャバーズが?スキャバーズが、未登録のアニメーガスで本物の殺人犯だって?君は―――君までとことんイカれてる!! 」

 

「 よく言われる。イカレてんの上等って、今言わなかったっけ?フレジョだってこういうとき地図のほうを信じるんだ。お兄様たちの言うこと聞きな?さあ、ネズミ寄越せよ 」

 

 

ガラハッドは平然と言った。

急に視力が下がったかのように、ルーピン先生は目をすがめた。

 

高慢に見える素振りのとき、彼らの顔立ちは最も人の目を奪う。

これで親子じゃないだって?ガラハッドの、今の様子はやっぱり若い頃のシリウスに似ている!―――そうリーマスには思えてならないのだ。

 

 

ギギィ…と、そのとき大きく軋む音がした。

ベッドルームの扉が、ひとりでに開いた。

 

 

ハリー、ロン、ハーマイオニー、シリウスの四人は、驚いて一斉にドアを見つめた。

ガラハッドは、手にしていた騙し船(忍びの地図だ)をポケットへと仕舞った。彼の手つきは荒っぽくて、ドアを見やるときの顔は片眉がはねあがっていた―――そこでルーピン先生は多少考えを改めた。彼もドアの動きのことは気になったが、ガラハッドの挙動のほうに目を奪われていた。

 

ルーピン先生はちらりと旧友を見た。

 

うーん…こうして見ると、たしかに…十四のガラハッドには、往年のシリウスとは似ていない部分も多々ある。癇の強そうなガラハッドに対して、若い頃のシリウスにはもっと優雅な雰囲気があった。それでも面影があるような気がしてしまうのは、この子は冗句を述べるときほど澄ました顔をするからだろうか…。

 

 

「 良い屋敷だな 」

 

 

ガラハッドはしゃあしゃあと言った。

 

 

「 素晴らしく呪われてる 」

 

「 そうではない 」

 

 

ルーピン先生は真面目に訂正した。

 

これを機に頭を切り替えて、ルーピン先生は目的の達成に向けて努力しようとした。彼は、村人たちがかつて聞いたという叫びや吠え声は、自分の出した声だという話を始めた。それは、彼の生い立ち語りでもあった。

 

ハリー・ロン・ハーマイオニーの態度を軟化させるため、人狼である彼にはこの作業が必要だったのだ。

 

そのあたりの事情はガラハッドにもまあわかった。黙って待っているシリウスには、ガラハッドよりも余程よくこの作業の必要性がわかった。

 

ルーピン先生は熱心に話し続けた。

ガラハッドはそれを聞きながら、心ここにあらずの状態だった。

 

 

( ―――ちぇっ、フリットウィック先生だったら、もっと巧くやるのになあ…! )

 

 

自然に唇が尖りそうになって、ガラハッドはつとめて涼しい顔つきを保とうと意識していた。本当は今すぐこう述べたかった。

 

 

( 姿を隠している割に、部屋への入り方が雑だったぞスネイプ!開けたドアは閉めろよ!! )

 

 

もしも本当にそこにいるネズミがペティグリューだった場合、開いた隙間から逃げられるかもしれないのである。仕方ないのでガラハッドは、無粋な男の代わりにドアを閉めてやった。もはやこの期に及んでは、この程度の突然の行動をとるくらい、ガラハッドは誰にも気にされなかった。

 

 

ルーピン先生は話を続けている。

耳を澄ませながらも内容が頭に入らず、部屋全体を見回してガラハッドは考えた。

スネイプは、この状況をどう思うのだろう?何をどう判断して、真っ先に誰に杖を向けるだろう?と…。

 

 

仮に本当にスキャバーズがピーター・ペティグリューだったとして、ガラハッドは、実は生きていた≪ポッター家へのヴォルデモート誘致犯≫のペティグリュー同様に、シリウス・ブラックもまた逮捕されるべきだと思っている。

だってブラックは、“太った婦人”を切り裂いたし、ついさっきロンに大怪我を負わせたし―――実は≪ポッター夫妻殺し及びマグル殺しの犯人≫ではなかったとしても、問われるべき罪はいろいろあると思う。

 

だからガラハッドは、感情を抑えて語るルーピン先生を遮って、「助けが来た」とはみんなに知らせなかった。彼はどうにかスネイプと連携して、ペティグリューとブラック両方をお縄につけたかった。

 

 

而してこれが難しい。

 

 

ルーピン先生は、「自分は脱狼薬のおかげで、事務所で丸まっているだけの無害な狼になれた」という話をした。けれども話は発展して、彼は「自分は入学後、シリウス・ブラック、ピーター・ペティグリュー、ジェームズ・ポッターという友を得た」とも言い始めた。

 

ガラハッドは反応に困った。

おいおいマズいながれでは?と、考えてしまって上手に微笑できない…。

 

室内に入ってきたはずのスネイプは、「この部屋には、ピーター・ペティグリューという、死んだはずであるのに生きている男がいる(可能性がある)こと」と、「十中八九それはスキャバーズであること」を知らない。

ガラハッドは悪い想像をした。

スネイプは、名探偵みたいな語り方で自供を続けるルーピン先生のことを、彼が「どうしてこんなことになっているのか」を明らかにしないうちに、ただちにぶっ飛ばすかもしれない。だって指名手配犯とその共犯者―――ブラックとルーピンの関係は、一見そういうものであるように見えるのだ。

 

 

どうしよう?

 

ガラハッドは、もしも自分がスネイプの立場だったら、大いなる危険から生徒たちを守るため、なんとか工夫をしたうえで彼らをふたり同時に制圧する。

 

 

だから、スネイプは…スネイプも、自分と同じように考えて…ふたりを同時にノックアウトするために、そっと自分へと耳打ちしてくれないかな?

そのとき自分は、どう振舞えるか?

獲らぬ狸の皮算用だと知りながら、ガラハッドは熱心に考え続けた。

 

 

素直にスネイプに言われたほうの相手を攻撃するか、「ちょっと待て。狙うべきはルーピン先生ではなくネズミだ!」と伝えるか…どうやって伝えるのがいいだろう?

即座に納得してもらえないと困るけど、それは難しそうなんだよなぁ…。

 

悩みすぎて息が詰まってくるほどだ。

 

 

授業のときのようにルーピン先生は、ハーマイオニーからの質問に答えて補足をした。「シリウス、ピーター、ジェームズの三人は、わたしと一緒に過ごすためにアニメーガスになってくれたのだ」と。そこからは褒められない行為列伝が披露されていき、ガラハッドの感覚では、そこには明確な“こたえ”があった。

 

 

「 ―――っ! 」

 

 

そう、もしも事実がフィクションで、フィクションみたいに現実にも秩序があったら、今のは“ミステリーのこたえ”だった。

 

 

リーマス・ルーピンは、たびたびの侵入襲撃事件の際、シリウス・ブラックを城内に手引きしてなどいない。アニメーガスであるブラックにとって、城の内と外を出入りすることは非常にたやすいのだ。

 

 

ああっ!けれどスネイプは、今のでちゃんと理解しやがったのかなぁ!?

あの野郎って人体の感覚しか知らないボケだから、この自分がホグワーツを出入りするとしたら、鷲の翼ではなく鏡を使うと思っているみたいだし…今の話を聞いたうえでも、相変わらず「ルーピンこそブラックの共犯者だ」と思い込んでいるかもしれない…!

 

 

待てども間近に衣擦れの音が訪れないことに、ガラハッドはひそかに焦っていった。

スネイプは、単身でブラックに対してのみ、強力な呪文を放つつもりかな?―――ガラハッドの憶測は尽きなかった。

 

 

ブラックはいま杖を持っていないことに、スネイプは気がついたのかも?

だとしたら、彼はひとりでまずルーピン先生を倒すだろうな…。

 

 

あんまり見たくない光景だけども、そうなればよいと思うのだ。どうかそうなってほしい―――頼むルーピン先生よ、スネイプに初手でぶっとばされてくれ!

ガラハッドは怖々と祈った。

 

だって万が一スネイプが先にブラックを倒した場合、ルーピン先生は相手がスネイプだと知る場合もそうでない場合も、間髪入れずに反撃してしまうと思う。

ああ、ルーピン先生は、今はまだ『指名手配犯の協力者』ではなくても、スネイプと杖を向け合った瞬間に『それ』になってしまうんだ!

どうか予見の力が欲しい!

()()()()がいつ訪れるか、わからないことが過剰に神経を焼き焦がす。よく考えれば防ぎようのある悲劇が、落ち着いて考えられないことによって起こってしまい、取り返しのつかない事態を招いてしまう気がする…。

 

 

こうしてガラハッドの焦りが限界に達したとき、「リーマス、早くしてくれ」と、シリウスもまた低い唸りをあげた。「彼を名前で呼ぶなよ」と感じながら、ガラハッドは急いで声を重ねた。

 

 

「 ピーター・ペティグリューの話をしましょうよ!なぜ彼は生きているのか、それが問題だ。細かい部分の話は、今はいいんですよ! 」

 

「 そんなことはない 」

 

 

ところがルーピン先生の返事は重苦しかった。

彼の、その傷だらけの顔は強張っており、声には自己嫌悪の響きがあった。

 

 

「 ガラハッド、これは重要な話さ。わたしは、今でもあの頃から変われていないんだ。学友を非合法な存在にして、あわや…という出来事を何度も起こして―――それなのに過ぎれば笑い話にして、次の冒険の計画を練ることを楽しんだ。学生時代のわたしは、ダンブルドア先生の信頼を裏切っていた。ダンブルドア先生が、わたしを入学させてくださったのに。ダンブルドア先生の信頼が、わたしにとってはすべてだったのに!大人になっても、わたしはまともな職に就けない。正体が正体なもので、すべての社会から締め出されているんでね。こんなわたしに、職をくださったのもダンブルドア先生だ。それなのにわたしは…この一年というもの… 」

 

「 正体―――というのは変でしょう。あなたは不運な、狂犬病の患者みたいなものだ 」

 

「 そう考えてくれる人は少ない…! 」

 

 

蚊の鳴くような声でルーピン先生は言った。

ハリーは、ハッとしてまじまじとルーピン先生の痩せた面差しを見つめた。

 

ロンは、狂犬病とは何なのかわかっていないながら、病気だということはわかって、さっきは不味いことを言ったような気がした。

ハーマイオニーは唇を噛んだ。

 

ガラハッドは返答に困った。

ルーピン先生は真剣な目つきだった。こんなに誠実に自身を語れる人に、憧れるなだなんて無茶な話だ。

ガラハッドはスネイプの目を気にして、一秒でも早くスキャバーズに“変身解除呪文”を浴びせかけたいのに、ルーピン先生が喋り続けるのを遮れなかった。

 

 

「 ガラハッド、君は、すべて知っているものだと思っていたよ。知っていて、“あの世”から来た存在として、わたしを試しているのかなと―――君には、救われた部分がもちろん大きい。そうともわたしは感染症の犠牲者だ。防疫体制さえ発展していれば、わたしの両親の努力は、もっと良い結果を残したのに。

だが、君はこうも教えてくれたね。わたしは、大脳辺縁系まで病によって侵されているのだと。脳が侵されているんだぞ?人格だって侵されているさ!どこまでがわたしで、どこからが病なんだ?――――この一年はとても悩んだよ。

とてつもない誘惑だった。全部全部、病のせいにしてしまいたくなった…。

けれども、物心つく前からわたしは人狼の身の上だからね。そうでない身体を体験した記憶がない。だから、全部病のせいにして罪悪感を捨てれば、わたしのもとに残るものは何にもなくて―――…それに、いくら罪に汚れていたところで、友と過ごす瞬間は楽しかった。卒業して以来、わたしはそれだけを支えに生きてきた。

だから、自然に口から出た。さっき“正体”と言ったのは、別に過剰に卑下したわけじゃないさ。“本質”と呼ぶのがいいかもしれない―――わたしは、人間であるまま、醜く、凶暴で物事を考えられず、欲望のままに動いている。

わたしは、口に出すのもおぞましいような、誰からも嫌われるべき、信用に足らない、下劣で卑怯な男なんだ。

わたしは、シリウスがアニメーガスであることを、今以てなおダンブルドア先生に言えていない。彼がホグワーツに入り込めることと、アニメーガスであることは何の関わりもないと自分に言い聞かせてきた。

謝らせてくれシリウス。わたしは、君がホグワーツに入り込めるのは、ヴォルデモートから学んだ闇の魔術を使っているからにちがいないと、自分の愚かさを棚に上げて…信じようとしてきた―――吐き気のする邪悪だ。義によって断罪されるべきだ。

こんな軟弱な男を、ガラハッド、君は、“先生”だなんて呼びたくはないだろう?君に贈ってもらえた信頼を、ああ、わたしは、傲慢の材料になんかしたくないよ 」

 

「 では、遠慮なく 」

 

 

冷たい、低い声がした。

振り絞るように語っていたルーピン先生の背後の壁あたりから、その声は響いた。

 

 

「 ―――ッ!!? 」

 

 

ばさりと“透明マント”を脱ぎ棄てて、セブルス・スネイプはリーマス・ルーピンに杖を向けた。

ルーピン先生の言葉に気をとられていたガラハッドは、愕然としてそれを見る羽目になった。

 

ハーマイオニーが悲鳴を上げた。

シリウスは獣のような呻きをあげた。

ハリーはバネ仕掛けのように飛び上がり、スネイプの持っていたマントを見竦めた。スネイプが“透明マント”を使っておりそれを床に投げ捨てたことは、彼のなかでは大罪に値する。

 

ロンはしゃっくりに似た声を出した。

嬉しそうにスネイプは言った。

 

 

「 “暴れ柳”の根元でこれを見つけましてね。ポッター、なかなか役に立ったよ、感謝する 」

 

 

ルーピン先生は両手を挙げて言った。

 

 

「 セブルス、何故ここに… 」

 

「 見覚えのある箒に迎えにこられましてなぁ 」

 

 

スネイプは少し息切れしていた。勝利の喜びを抑えきれなくて、おのずから呼気が増えているかのようだった。

 

 

「 とんでもない動きをしてくれおった!ふざけるなよオリバンダー、危険極まりない―――寿命が縮んだ。規制されろ。あんなもの世に放つな―――しかしだ…今宵は多少の加点をしてやらねばなるまいなあ?ルーピン、我輩は校長に繰り返し進言した!君が、獣性に呑まれて教師として道を踏み外しているとね。ルーピン、これがいい証拠だ!この古巣を隠れ家に使うとは、そのいけ図々しさ、我輩の予想を大いに超えていた!とんでもない恥知らずだ…! 」

 

「 セブルス、君は誤解している 」

 

 

ルーピン先生はきっぱりと言った。

「何でスネイプなんか招いたんだよ!?」とガラハッドは、思いっきりハリーに襟首をつかまれた。「招いてない…」とガラハッドは小声ながら、ハリーに言い返したというよりは一緒に文句を言った。

 

 

「 ヤナギが選んできたんだからしょうがないだろ?僕だってスネイプ以外が良かった… 」

 

「 貴様ッ、無理やり呼びつけておいてこの…ッ! 」

 

「 セブルス。君は、話を全部聞いていないんだ。説明させてくれ。シリウスは、ハリーを殺しに来たのではない。彼は、今夜別の目的を果たそうとしていて… 」

 

「 だから、その話を先にしろって言ったじゃないですか! 」

 

 

それみたことか、という顔でガラハッドは叫んだ。

スネイプの目つきは、いまや狂気を帯びているかのように光っていた。

 

 

「 貴様らの好きにはさせん 」

 

 

バーン!と、スネイプの杖から細い紐が蛇のように吹き出て、ルーピン先生の口、手首、足首に巻きついた。ルーピン先生はバランスを崩して、ばったりと床に倒れてしまった。

 

怒りの唸り声をあげ、シリウスは丸腰であるにも関わらずスネイプを襲おうとした。しかし、スネイプは彼の眉間にただちに杖を突きつけた。

 

 

「 ブラック、貴様のことは許せん 」

 

 

スネイプは低い声で言った。

 

 

「 レディを…グレイス様を辱め続けた罰だ。二度とアズカバンから出てくるな。否、二度と出てこれん状態にしなくてはならんな? 」

 

「 お前に何がわかる! 」

 

「 わからん。我輩には、何もわからんとも。あれほどグレイス様に愛されておきながら、彼女を傷つけ続けた男の言い分など。あのかたのお目に留まることが、あのかたにお声をかけられることが、どれほど光栄なことかわからん奴の言い分に価値はない!貴様は… 」

 

「 わからないのであれば口出しするな!! 」

 

「 …貴様には、吸魂鬼のキスがふさわしい 」

 

 

スネイプは夢見るようにそう言った。ガラハッドは、有力な関係者を自認するがまったく口出しができなかった。スネイプとブラックの見据えあいは、嵐のなかで行われているかのようだった。

 

二人のあいだの憎しみは、甲乙つけ難い激しさに見えた。「呪いたい」という思いが先走って、スネイプの杖の先からは火花が散っている。

 

 

「 あのぅ、先生…この人たちの言い分を、少しは聞いてあげても…? 」

 

「 黙れ馬鹿娘!今は貴様に構っていられん 」

 

 

いきなりスネイプに怒鳴りつけられて、ハーマイオニーは黙りこくった。事態がどう転ぶかわからなくて、ガラハッドは何度もちらちらとロン(彼はどうにかこうにかスキャバーズを抑え込んでいる)やルーピン先生のほうを見た。

 

一番どう動くかわからないのはハリーだ。

 

ブラックと違って杖を持っている彼は、口先では冷静なことを言っているが、それがまた不気味だとガラハッドには思えた。ハリーは、「もしもルーピン先生がブラックの手先だったら、この一年の間に僕を殺す機会は何百回もあった」とスネイプに対して述べた。

こうして尤もな主張によって説得するかと思いきや、両者の会話はたちどころに口論へと変わった。

 

 

「 学生時代にからかわれたというだけで、話も聞かないなんて!! 」

 

 

ハリーの足元の床がミシミシといった。その前に放たれたハリーの「恥を知れ!」は半分以上言いがかりだったが、スネイプのほうも生憎負けていなかった。「蛙の子は蛙」という言葉が飛び出したとき、ガラハッドは「あっ…」と思った(思っただけで何もしなかった点で共犯だ)

 

スネイプは、この瞬間も立派に仕事だけはしている。果敢に杖を構えて、彼は凶悪犯から生徒たちのことを庇っていた。視線はブラックからは外さないままにスネイプは、口角泡を飛ばして背中に庇う生徒のことを罵った。

 

 

「 ポッター!我輩はいまお前のその首を助けてやっている。ひれ伏して感謝するところだ!こいつに殺されれば、自業自得だったろうに!お前は、お前の父親と同じような死に方をするところだった!このブラックという男は――― 」

 

 

「「「 エクスペリアームス!!! 」」」

 

 

三つ重なった声によって、セブルス・スネイプは面白いくらい吹っ飛んでこんにゃくのように震えた。グリフィンドール三人組の団結力に、ガラハッドは純粋に舌を巻いて茶化せなかった。

 

 

「 …あーぁあ 」

 

 

冷ややかにガラハッドは言った。―――本当にこれでいいのだろうか?これにてブラックは助かってしまった。

 

後味の悪い展開だ。

よりによっていま過去と向き合い感情を清算しようとした二人も、みすみす姿をあらわしたスネイプも、後先考えずにスネイプをぶっとばした三人も、「全員馬鹿では?」と思う自分は高慢に歪んでいるのだろうか?

 

ガラハッドは鋭い目でスキャバーズを射抜いた。

ひとまず救護よりも、真相の究明のほうが先だと思っていた。

 

 

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