ハリー・ポッターとオリーブの杖   作:Tohka.A

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はじめましてよろしく

 

レイブンクロー席で大歓迎されているものの、俺はまた新たな冷や汗をかいていた。

 

 

「 オリバンダーをとった!オリバンダーはレイブンクロー! 」

 

そう宣伝して回られましても…。

 

誇らしくてならないという顔つきで、上級生たちは互いに叫びあっていた。

上座の来賓席ではさっきの小男が椅子の上に立ち上がり、紫のターバンを巻いた青白い男の肩を叩いていた。

 

どうしよう。知性・機知・知恵のレイブンクロー…やばいぞ…これは困ったことになった!

俺は、どうせいつかは出征するからと思って、税法や教職課程のひとつも履修せずぼんやりした大学生活を送っていたのだ。

そんな俺には、最も縁がないと決め込んでいた寮に来てしまった。いくら人数合わせか何かで入れられたからって、この寮の気風は真面目に決まっている。遊びにうつつを抜かして、鳴かず飛ばずという塩梅はなんだか許されそうにない。―――――そういえば今後は、まだたったの11才の子供たちに混じって一から学業をはじめるわけだ?いくら不得手な分野があったとして、11才児には負けたくはないな…という思いも、少なからずある。

 

 

「 ~~~っ 」

 

 

うわあやっべえ、これから頑張らなきゃ…と、ガラハッドが眉根を寄せて尻で椅子を温めていると、同じ白い布を敷いた食卓を囲むはす向かいの子が、隣の先輩に背を押されながら言った。

 

 

「 僕のこと覚えてる? 」

 

「 ん?ああ… 」

 

 

瓜のような丸くて長い顔に、黒い目と茶色の髪。たしかにこの子のことを見た覚えがある。

 

 

「 覚えてるよ。林檎の木に、一角獣の毛の杖に選ばれた子だ。あのときは… 」

 

「 そう!そうだよあのときは、僕、嬉しくって!夢中になっちゃって、あいさつできてなかったよね。よろしく、僕はマーカス・ベルビィ! 」

 

「 ガラハッド・オリバンダー 」

 

 

二人は握手をした。どちらも背が低いので、座ったままでは握手できず、互いに腰を浮かせた。

 

 

「 君の放った虹、綺麗だったよ 」

 

 

ガラハッドは、それで彼を覚えていたのだ。マーカスは、ギャリックからぴったりの杖をあてがわれたときに、歓声をあげて店内を虹で満たした。よい者をみつけると、杖が喜んで歌うのだとギャリックは日頃言っている。ギャリックにはそのときに、何かしらの音が聞こえているらしい。

 

 

「 なあ!僕のことは?覚えてるかい? 」

 

 

次の質問者は難問だった。

 

 

「「 ――――… 」」

 

 

見つめあうような形で、ガラハッドはしばし考え込んでしまった。今度の少年は黒髪黒目で、丸顔だが目元が涼しく、こざっぱりしたハンサムだった。新入生ではないことはわかる。けれども、誰であるかまでは正直わからない。失礼を承知で、降参するしかない。ガラハッドは、苦笑いしながら少年にたずねた。

 

 

「 ええっとすみません…おたくは、何年生? 」

 

 

何年前に見かけた子供だろうか?子供って、容姿がすぐに変わる。特に西洋人の変化はすさまじい。うちに来た時よりも、さぞ大きくなったんでしょうねえと、遠くの親戚みたいな謎の感慨を抱かされた。その子はハッとして恥じたようだ。

 

 

「 ちょっと困らせるのやめなよ! 」

 

 

女の子が割り込んできた。

 

 

「 いいのよ、今から少しずつ覚えていけば。よろしくねガラハッド、同じ寮になれて嬉しいわ。私はペネロピー・クリアウォーター 」

 

「 …どうも 」

 

 

彼女はもう年頃に見える。今しがたの少年と同じくらいの年かさだが、女児ならばそういうものである。ガラハッドは、女性と握手をするのは気が引けたのだが、どうもこの世界ではこれが普通のようだった。汽車で会ったニンファドーラ・トンクスも、別れ際にこちらにぎゅっとハグをしていった。ぴょこんとペネロピーの後ろから顔を出して、“あの少女”が言った。

 

 

「 覚えてる?私はチョウ・チャン! 」

 

「 ばっちり覚えてる!!! 」

 

 

日本人が来たかと思ったから!!!

 

猛烈に頷いてガラハッドは言った。女児らしからぬ闊達さであるといえば、ひとつくくりでおでこを出しているこの子もまた、そうだ。ここ数年間杖店の客として見かけた人々のうち、ガラハッドには、チャン家の人々が一番記憶に残っている。マジか、いたのかこの世界にもと、めちゃくちゃ好感を持ってしまったアジア人たちだ。そのあと黒人もいると知った。

 

 

「 まさか同じ寮になるとはね。これからよろしく! 」

 

「 ああ 」

 

 

この子と同じ寮でよかった。ハイタッチのような握手をして、二人は笑った。

 

 

それからもガラハッドは、引きも切らず人に話しかけられ続けた。

本物のアルバス・ダンブルドア(有名!)に、無限に湧き出すごちそう、御伽噺のような城、おしゃべりな肖像画たち――――目を奪われるようなものだってここには山ほどあるのに、もう目も耳も忙しくって忙しくってその日布団に飛び込んだときは、熱が出そうなくらいだった。

その布団がまたふわふわで、およそ学校の備品だとは思えない。今日からはこの群青に支配されたような居室で、我々は寝泊まりするらしかった。

三人ひと部屋だった。

ホテルかな?軍隊とはえらい違いだ。ガラハッドは、てっきり二十人ひと部屋くらいを想像していた。

 

 

「 ぐぅ… 」

 

 

さっき名乗ったマーカスがもういびきをかいている。よだれを垂らしそうになりながら、ガラハッドはさっき廊下でした会話を思い出していた。

制服の着用が板についた上級生は、幼子の歩みを面白がるような目で、ガラハッドを含む新入生たちのことを見ていた。ガラハッドは経験から質問してしまったのだ。集団生活といったら、“これ”がつきものだと思っていたので。

 

 

「 班長はいつ決まるんですか? 」

 

 

聞き慣れない言葉に、監督生はちょっと考えたあとおうむ返しに言った。

 

 

「 班長?―――ないよ、そんなのは 」

 

「 へえ。…起床のラッパは? 」

 

「 ないよ?くくく、欲しいよね。おやすみ。明日は起こしてあげるよ 」

 

 

いやいやそういう意味で聞いたんじゃないし。あるのかどうか確認しただけ!絶対自分で起きるもん!!

 

 

と、念じながら11才のガラハッド・オリバンダーは、気絶していった。

 

 




結局名乗らなかった黒髪の子は主人公の二級上です。
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