ハリー・ポッターとオリーブの杖   作:Tohka.A

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魔法使いの子供たち

 

体のほうはあくまで11才児とはいえ、別世界で20年あまり生きた記憶持ちの俺からすると、同学年の子供たちはいずれも落ち着きがなく、人の話を最後まで聞けない。

 

ガタガタ、バタバタと、するべきでないときに行う必要のない動きをして、特に意味もなくこちらにちょっかいをかけてきたり、ところかまわず杖を振り回したり、周囲への配慮がなく、判断力が弱く、どいつもこいつも危なっかしくて仕方ない!!!

 

 

時は九月。入学からは早くも、二週間が経とうとしていた。

 

だんだん日にちが経つにつれて、どの教科も初心の説諭ではなく、実技を伴う学習へと移っていった。

するとどうだ、レイブンクロー生のガラハッド・オリバンダーは、授業のときに自然と、もうひとりの教師のようになってしまった。彼が特に看過できないのは、「妖精の呪文学」の時間だった。その日も少年は苦虫を噛み潰していた。

 

どうして!子供というのは!目の前にあるものから危険を予測して、身を慎もうとしないのか!?ピクシーのような子供たちに何をどうされても寛容なフリットウィック教授をよそに、ガラハッドは、今日も額の青筋が切れそうだった。

 

 

「 よせ。危ない! 」

 

 

ほら言わんこっちゃない!

わあ出来た見てみてとかナントカ言って、浮遊呪文中に少女が雑談を始めたせいで、浮いていた本が落ちて別の子にごつんと当たった。たちまちその子は泣き出した。

 

 

「 杖先で羽根を指すんだ。ここにある 羽 根 を 指すんだ。とりあえず掲げたらいいってもんじゃないんだぞ 」

 

「 ええ~? 」

 

「 ああっ。よせ。よせってさっきも言っただろ! 」

 

 

隙あらばコンコンと杖で何でも叩いてリズムを刻む子供がいて、そのたびに連動して跳ねあがってしまう子がいる。その子とその周囲ときたら、一体何が起きているやらわかっていないまま、原因を調べようともしないでケラケラと笑い転げているばかりだった。また別のところには、指の上でくるくると杖を回そうとしては、しょっちゅう取り落として床に杖を転がす者もおり、杖が暴走するせいで、止めようとしたフリットウィック先生がまた吹っ飛んでいった。

 

男の子が杖を拾おうとした。

 

しかしガラハッドは手を掲げて、男の子が再び杖を手にしようとするや否や、見えない糸で引っ張るようにして彼から杖を取り上げ、自分の手中へと収めた。「さあ磨くよ!」と自宅で手を掲げたら、自ら箱をこじ開けて舞い込んでくる杖をつかまえるときと同じだ。ずいぶん乱暴な目に遭ったと見えて、手のなかで杖は震えて悲しんでいた。

 

 

「 小瑕だらけじゃないか 」

 

 

イライラとガラハッドは呻いた。周囲の子供たちはぽかんとして、羽根の焦げた匂いだけが奇妙に広がっていた。

 

 

「 ついこないだ売られたばかりなのに。お前な、杖のこともっと大事に扱えよ! 」

 

「 オリバンダーの言うとおり! 」

 

 

ふぅふぅ言って起き上がりながらフリットウィック先生も叫んだ。

 

 

「 返せよ! 」

 

 

紅蓮のような真新しいネクタイを光らせて、手をつきだして少年――――コーマック・マクラーゲンは言った。折角かっこいい杖回しの新技に挑もうとしたのに、”仕切り屋”から杖を取り上げられて、おかんむりだ。

 

 

「 返せよ!お金を出して買ったんだ。もう僕の杖だぞ。 」

 

「 一度水拭きして、油をさしてやれ 」

 

 

しみじみと杖を眺めながらガラハッドは言った。そのようにしたら、木材は多少の傷を自己回復していく。杖よ、大変だなお前…でもお前がこいつを選んだんだもんな。

 

 

「 正しく、丁寧に使って、手入れしな。自分の杖だと思うなら 」

 

 

劇場型になっている教室は教壇側が低い。三列三段ぶんを降りてガラハッドは、コーマックのつきだされた手に没収した杖を握らせてやった。ちょうど終了の鐘が鳴り響き、阿鼻叫喚の「妖精の呪文学」の時間は終わった。

 

 

 

 

 

とはいえ休み時間も気楽ではないのだ。こちとら一年生だと舐めくさって、いつまでも渡らせてくれない動く階段を所在なく待っているとき、ガラハッドはさっき狼藉を注意した子供たちが、背後に集まってぶちぶち言いあっているのを聞いた。

 

 

「 “よせ!危ない”だってさ 」

 

 

珍妙な声色で真似をする奴がいる。あんな粗末な芸で笑えるのだから、子供とはおめでたい生き物である。

 

 

「 何様のつもりだよな 」

 

 

貴様らが何様のつもりだガキ共。まったく、この国の親は、子供に物を与えるだけ与えて、しつけが全然なってない。杖を振ってよい状況かどうか見てから動くこともできないくせに、文句を垂れる能だけは一人前か、ああ?しかしまあ11才って、こんなもんかなあと―――精神だけは大人のガラハッドは、独り過去を思い出して苦悶の息をついた。

 

 

たしかに、俺も11才だった頃は、親や檀家さんの目のないところでは有頂天になり、道を歩けば枝を拾いところ構わずチャンバラに興じたような気もする…。そんな年頃の子供に、棒状の危険物を持たせるこの世界が、おかしいんじゃないのか?いいやそれ以前に、この世界にはなぜ、魔法学校以前に子供に読み書きそろばんを教える機関が存在しないのか。ガラハッドが推察するにこの世界の平均的11才には、尋常小学校6年生に相当する学力がない。修身も体操もしていないから、学力とは別に忍耐力や集中力もない。これこそが人災を生んでいる気がする!!

 

 

ガラハッドが再び深々と息を吐くと、悪ガキ共は何やら恐怖したようだった。

 

 

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