ハリー・ポッターとオリーブの杖   作:Tohka.A

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ぼくらの寮杯戦争

 

 

「あのハッフルパフチームがぺしゃんこに!」とその夜の談話室で、オリバー・ウッドは悲愴な声をあげた。我々グリフィンドールをボコボコにしたハッフルパフが、あのハッフルパフが、ぺしゃんこにされた…。

ハリーは、惨めな気持ちでそのニュースを聞きながら、膝のうえに開いたパンフレットを眺めていた。優勝杯への道のりは険しいし、今、自分には箒がない―――「チョウ・チャン対策のために」と、さっきからオリバーはニンバス2001を勧めてくるが、マルフォイが良いと思っている箒なんか、自分は買いたくない。

 

 

「 そんなことを言っている場合か! 」

 

 

軽業師。ニンジャ。類い稀なる飛行の名手。

そのようにチョウ・チャンのことを言い立てて、なんとしてもオリバーはハリーにニンバス2001を買わせたがった。ぐずぐずとハリーは文句を言い、アンジェリーナやアリシアにまで囲まれるに至った。そんなことは知らないチョウ・チャン本人は、その頃レイブンクロー寮の談話室で、オレンジジュース片手に素面で酔っ払っていた。

 

 

 

「 みんな最高~~~~っ! 」

 

 

\イェェェエイ/

 

みんなでピザをわけあって、ソフトドリンクで乾杯!お祭り騒ぎのレイブンクロー寮内では、次なる対戦相手であるスリザリンへの勝利は、早くも確実なものであると見なされていた。

だってあのチームの攻略法ときたら、本日のチョウちゃんが咄嗟に編み出してしまえたのである!

選手の選考基準は技術よりもデカさ。ニンバス2001の速度をいかして、どこの区域だろうとクアッフルを持っていなかろうと正面からでなかろうと、質量に任せたタックルをしてくるスリザリン選手には、わざと吹っ飛ばされてやってペナルティをとり、失点されていただけばいい!とはいえ彼らは頭蓋骨が分厚そうだから、ひとりずつ昏倒させて削いでいくためには、ビーターは今日よりもブラッジャーの威力を上げないといけない。代表選手は揃って天空宙返りをマスターし、箒との絆を深めないといけない。

 

 

「 練習!練習しなきゃ~~~! 」

 

 

狂気的な熱量によって、練習は毎日行われた。

 

 

 

 

文字通り物理的な意味でもボコボコにされたハッフルパフチームを、どのように立て直せばいいやら、セドリックにはわからなかった。ああこんなとき去年までのキャプテンなら、チームのメンバーに対してどう振る舞うだろう?セドリックは昨夜、取り敢えず自分の思い描く「キャプテンらしさ」に従い、奮戦したメンバーの健闘をたたえ、気絶から回復した者たちに大きな怪我のなかったことを喜び、次の試合についての前向きなビジョンを示したが、それはあんまり上手くいったとは言えなかった。

 

翌朝、過剰にまばゆく感じられる大広間にて、セドリックは級友に心配されて、ほとんど無理矢理のようにエッグノッグを飲まされた。溜め息という形で口からたましいが出てきて、エッグノッグすらも上手く喉を通らなかったが…。

 

 

「 はぁ… 」

 

 

傍目にはどう見えていたか知らないけれど、セドリックは一応このとき、「負けたショックで茫然自失」という過程は、既にとおりすぎていた。

ただ、とても賑やかで楽しそうな一団が、隣の青いテーブルにいるのが俯いていてもわかるので、握りしめるほどの力でゴブレットを持ちながら、セドリックは恥ずかしさと居たたまれなさで、ひとりで勝手に死にそうになっていただけだ。

 

 

「 さあ今日からまた頑張りましょ!スリザリン戦に向けて、かんぱ~い! 」

「「「「 乾杯! 」」」」

 

 

“彼”もまたゴブレットをあげている。

ああ、うん、そうだよね―――当然、そうだよね。君が、誰かをクィディッチで応援するのなら、それは当然、レイブンクローチームだよね…。「ファイト!」と言ってくれた笑顔に浮かれていた、一日前の自分を殴りたい。

 

 

「 先輩!僕はシーカーで出るんですよ 」

 

 

おしゃべり虫が彼にくっついている。

連れだって東棟に向かう二人組を、泥のようにみじめな気持ちでセドリックは目で追ってしまった。すると跳ね橋のところで彼はぴたりと足を止め、射抜くほどまっすぐにこちらへと振り向いてきた。凪ぎ渡った内堀の湖水が、鏡のように往く者を反射していたのだ。

 

 

「 セドリック! 」

 

「 ――――ッ 」

 

 

そんな名前の呼び方はずるい。ガラハッドはふふんと楽しそうに、挑戦的に笑ってこちらへと闊歩してきた。通路のど真ん中であることを忘れて立ち止まり、セドリックはひととき橋の上を渋滞させた。

 

 

「 おめでとう。レイブンクロー、強かったよ 」

 

 

こぶしを握りしめてセドリックはそう告げた。

毅然として、これだけは言わなくちゃ。

正々堂々勝負して負けて、「参りました」を言えない奴は恥ずかしいんだから。

 

するとガラハッドは悪戯がバレたような顔でひょいっと眉をあげ、「そっちこそ…」と小さな声で言った。「敵わないなあ」と苦笑したかと思いきや、キラッと瞳を光らせ、爽やかに言うことには、こうだ。竹を割ったような清々しさで、ごつんとガラハッドはセドリックの胸を叩いて去っていった。

 

 

「 かっこいいよなあ、キャプテン!君たちに勝てたの、奇跡って感じ。 」

 

「 ――――!? 」

 

 

丸一日黙って過ごしたので、セドリックは落ち込んでいるのだと勘違いされた。

 

 

 

 

 

さてそんなセドリックと変身術の授業で一緒だった双子は、あの手この手で彼を笑わせようとして、カンカンになったマクゴナガル先生に20点減点された。しかしながら彼らは身体を捻って両こぶしを重ね、棍棒をスウィングする素振りをしながら、何をどう叱られてもへらへらしているのだった。

 

 

「 20点だって?ゴールでいえば2回ぶん 」

 

「 俺たち、毎度それくらいの貢献はしてまっせ! 」

 

 

誰だこいつらにこんな発想を植えつけたのは…ッ!

銀髪の四年生を思い浮かべつつ、マクゴナガル先生は壇上から指をつきたてた。

 

 

「 あなたたち、今年はO.W.Lを受験する学年なのですよ! 」

 

「 うぇへへーい 」

 

「 そいつはやべえ 」

 

 

とは、まったく思っていない声で表情だけはクソ真面目にして、フレッド&ジョージ・ウィーズリーは芝居かかった仕草で頷いてみせた。両肘をついて指先を組み、じっと机上を見つめるセドリック・ディゴリーは、この説教自体をまったく聞いていないようだ――――自分の世界で忙しくて。米神に手を添えてマクゴナガル先生は、「はぁ」と大きく首を振った。愚かな子達ではないのに、どうしてこんな調子なのだろう。

 

 

「 あなたたち、学生の本分は学業です!クィディッチが魅力的なスポーツであるのは、わかります。わかりますとも。よ~く、私にもわかります。しかし、学業をおろそかにしない!!!これよりレポートを課しますからね。しっかりテーマと推薦図書をメモして、締め切りを守ること! 」

 

 

十二月も飛ぶように過ぎていった。

 

毎日楽しかったのに、気がついたら一学期はもう終わりだ。“三本の箒”にてフレッド、ジョージ、セドリック、ガラハッドの四人組は、午前から「一学期おつかれさま会」を開いた。とんでもない量の課題を出されて、五年生は誰もクリスマスに帰省どころではなかった。しかし「本っ当にやばい。課題やばい!」と騒ぎながらも、こうしてバタービールを飲みにくることは欠かさないわけで…。こんな楽しいことに混ざれないなんて、箒もないわ許可証もないわのハリーは、実に気の毒なものである。そんな話をしてからガラハッドは、彼らに見送られてひとり汽車に乗った。

 

小さな杖店のために、ガラハッド・オリバンダーは家に帰る。ダイアゴン横丁は、クリスマスソングで満ちているだろう。

 

 

 

 




盆休みに執筆したぶんは以上です。次の更新までしばらく間が空くと思います。ご要望をいただいたので、今日明日の時間は全話に後書き(元ネタ解説)を入れる作業に使います。よければ再読してみてください。
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