私は海の上を進む。
昨日は大いに泣いた。
その分、今日はスッキリしている。
今日は島を巡る。
目的は食料と住処。
あわよくば人に会いたい。
会うとするなら深海棲艦。
会いたいのは小さい子
確か「ほっぽちゃん」
と呼ばれていたはず。
正式名は
キューちゃんたちも小さいけど、
今は人型が恋しい。
母性と言うものなのだろうか?
キューちゃんたちを撫でていると、
愛おしくなる。
それに小さい子を抱きたいと
考えるようになった。
その気持ちをグッと抑えて、
私は進み続ける。
ひとまず、一番近い島へ。
少し大きな島だが、無人島だった。
ただ、食料はあった。
大きな実の付いた木が数本。
どれも背が高い木だった。
どうやって取ろうか考える。
すると帽子が震え始めた。
私は帽子を外してそれを見る。
改めて見ると少し気味が悪い。
そんなことを考えていると、
口のようなところが開く。
中から白い生き物が出てきた。
なにこれ?
ほっぽちゃんと、
一緒にいたのを見た気がする。
でも、思い出せない。
考えていると何個かが空を飛ぶ。
そして口から何か出した。
「ドンッ!」
……ゑ?
木の実が落ちてきた。
実がなっていたところは
煙を上げている。
唖然とする私の元に
戻ってくる。
口をカタカタして
嬉しそうにしている。
私は一番近い子の口を開く。
そこには黒い棒状の物、
砲身があった。
どうやらこれで撃ったようだ。
もしかしてと思いキューちゃんたちに
口を開けてもらい、中を見る。
全員が口の中に
砲身を備えていた。
私は改めて
深海棲艦のことを理解した。
理解した私は何も考えずに
木の実を食べる。
あ、意外とおいしい。
味は……みかんに近いかな?
お腹はすいてなくても
味覚はあるらしい。
試しにキューちゃんたちにも
あげてみることにした。
美味しそうに食べているため、
問題はないらしい。
白い子たちにもあげてみるが、
食べなかった。
するとキューちゃんが、
また何かのジェスチャーをする。
私も自分が理解できるように、
砂に絵やYES/NOを書いて反応を見る。
そしてキューちゃんの反応から、
この子たちは食べないことが分かった。
キューちゃんたちも
別に食べなくて大丈夫らしい。
つまり、自分の分があればよくて、
白い子たちが取ってくれる。
2つの意味で食糧問題は解決した。
というか文字分かるんだ……。
とにかく後は住処を探すだけになったが、
先に白い子の名前を付けることにした。
白い、真ん丸、少し赤い……。
私はこの子を「大福」と名付けた。
無性にイチゴ大福が
食べたくなってきた。
すると、その考えを感じ取ったのか、
大福たちは慌てて帽子に入る。
さすがに食べない。
それより帽子の中が気になった。
私は帽子の中に頭を入れる。
だが、キューちゃんに止められた。
頭を入れたらマントを引っ張られた。
たくさん鳴いてしまったので
もうしないことを誓った。
私は再び海の上を進む。
帽子については私が妥協した。
見た目より軽いことと
日除けになるからと
自分に納得させた。
収納能力もあることが
決め手になった。
そう納得して空を見る。
今は太陽が真上にある。
私は近くの島を観察する。
どの島も大きさはあるが、
人が住んでいた形跡はない。
深海棲艦の人型もまだ見ていない。
今のところ実のなる木と岩、
座礁している船しかない。
ん?座礁している船?
私は慌ててそっちを見る。
それは間違いなく船だ。
ようやく人工物を見つけた。
私は直ぐにそこへ行く。
近くまで行き、詳しく見る。
側面にある文字は薄れているが、
日本語で書かれていた。
私は目的に一歩、
近づいた気がした。
私は改めて船を見る。
見たところ漁船のようだ。
写真で見るやつぐらいの大きさ。
船に乗りこみ、
使えそうなものを探す。
中はもちろん無人……。
骸骨はいくつかあった。
子供の骨はさすがに無かった。
転がっている食材は
虫に食われている。
冷蔵庫らしきものもなかった。
食べられるものはなさそうだ。
運転するところに行く。
色々な機械が飛び出し、
乱雑に絡んでいる。
そこから使えそうなものを探す。
包丁、懐中電灯、ロープ……。
使えそうなものはいくつかあったが、
今はいらないものばかりだ。
拠点にできるか考え、
床に寝てみる。
流石にこの船では
眠れそうにない。
波の音もそうだが、
船の反響がうるさい。
あと、硬すぎる。
初日のように寝落ちしない限り、
眠れそうになかった。
無線も探して見る。
……どれだ?
トランシーバーのようなやつを探すが、
一向に見つからない。
探し続けると
板のような物が落ちていた。
「これは……スマホか。」
私はかなり落胆した。
私はスマホが使えない。
あんなに機能が多いものは、
使い勝手に困るのだ。
私はガラケーを使っていた。
だからスマホが使えない。
とりあえず「ないよりまし」
と思って帽子に入れた。
最悪、投擲に使えばいいし。
私は船を出て、空を見る。
いや、空を見ずとも見える。
思ったより
日が落ちるのが速い。
まっすぐ向いた時に
目線に入る位置まで
太陽が沈んでいる。
時期的には冬だろうか?
そう考えると時間がない。
仕方がないが船を1日だけ
拠点にすることにした。
拠点と言っても目印にするだけ。
近くの砂浜に燃えそうなものを集める。
漂流物は木が多かったため、
燃えるものは直ぐに集まった。
既に周りは真っ暗になっていた。
月灯りも今夜は雲に隠れている。
後は火をつけるだけだが
その道具がない。
船にはマッチもライターもなかった。
あったとしても水浸しだろうが…。
何となく知識を使って
火を起こしてみる。
木で擦る奴とか、
石で火をつける奴とか色々。
なかなかつかない。
私は火をつけることを
諦めて帽子を脱ぐ。
すると帽子から
大福たちが出てくる。
何をするのかと思ったら、
今日取った木の実を
火を起こそうとした所に置く。
自分が食べたのとは
違うやつだった。
大福はそれを撃った。
するとなぜかそれが燃えた。
私はそれに驚いたが、
火が付いた喜びの方が
嬉しさのあまり
大福たちを捕まえて
頬でスリスリする。
硬く、ガタガタしているが、
気にせず続ける。
ひとしきりスリスリして、
大福たちを帽子に帰す。
すると、キューちゃんに
飛びつかれた。
鳴きながら何かを訴えてくる。
あ、これ嫉妬だ。
大福たちに
自分のポジションを取られて
鳴いているのだ。
勢いのせいで火も消された。
私は撫で続けるが、
中々鳴きやまない。
仕方がないので歌を歌った。
落ち着けるように、
子供をあやすように歌う。
歌は子守歌に近い。
実際にお仕事体験で
保育園に行ったときに
子守歌として歌ったやつだ。
他のイ級達も
心地よさそうに聞いている。
キューちゃんも
だいぶ落ち着いてきた。
私は歌いながら帽子をまさぐり、
紐を取り出す。
何の変哲もないただの紐。
それをキューちゃんの
尻尾に括りつける。
可愛らしく、分かりやすく
梅結びをした。
そう簡単にできないこの結び。
これでキューちゃんが
一目で分かる。
歌が終わると
キューちゃんが私を見る。
自分の尻尾を見て
もう一度私を見る。
そして、大きく鳴いて
また飛びついてきた。
まるでシベリアンハスキーに
抱き着かれている感じだ。
あんなにモフモフではなく、
カチカチであるが……。
……あれ?
なんでどいてくれないの?
時間が経っても
中々どいてくれないので
キューちゃんを見る。
キューちゃんは寝ていた。
心地よく寝息を立てて。
この子、私の上で寝ている。
これはどいてくれないだろう。
私はできる限り
海の方へ近づく。
するとイ級達も横に並ぶ。
何をするのかと思ったら、
寝息を立て始めた。
もうこの子たちは
魚じゃなくて犬だ。
そう思いながら私も目を瞑り、
寝息を立てて眠った。
文字数は少ないけど長く感じる。
これぐらいでいいのだろうか?
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