私は今横になっている。
今日は私の戦闘能力の確認…
をする予定だった。
しかし、明石に止められた。
理由は大きな隈と私の動きだ。
真っすぐ立てず、フラフラしている私。
工廠までネ音に支えてもらっていた。
そんな私を見た明石の行動は早かった。
明石は直ぐに私の体を縛りつけた。
私は抵抗する間もなく紐で縛られる。
そのまま工廠の奥の部屋へ。
そこのベッドに運ばれ、寝かされた。
ベッドにも固定され、体を動かせない。
その間、明石は一度部屋を出た。
しばらくして明石が戻ってきた。
その手には何かを持っていた。
瓶のようなものだ。
気になっているとそれを飲まされる。
いきなり口に入れられ、驚いた私は
瓶の中身を飲み込んだ。
…………にがい…………。
とても苦いし、マズすぎる。
次第に気分が悪くなる。
私は吐き気と
段々と瞼も…重…なる。
いった…、…にを……。
いし…がうす……。
私は目を開ける。
そこには真っ白な世界が広がっていた。
周りに何もない真っ白な空間。
雪と灰のようなものが降る空間。
見たことのない空間に私は戸惑う。
何故こうなっているのか……。
私は不安に駆られる。
すると、この空間に声が響いた。
加賀さんではない声。
この空間にいられるもう一人の声。
そう、エラー娘の声だ。
エラー娘は現状を話してくれた。
ここがいつもの心の世界である事。
私の心が無に近い状態である事。
加賀さんは無事である事。
しばらくここから出られないこと。
とりあえず、今の情報を整理する。
まず、ここが心の世界である事。
確かにここはいつもの景色ではない。
あの綺麗な海も赤く染まった空も無い。
これは私の心が無に近い状態に
なっていることが原因らしい。
前に加賀さんの姿や
景色が違っていたのと同じ理由だ。
無であることは何も無い状態。
景色が無いのはこれが理由だ。
つまり加賀さんにも影響がでた。
加賀さんの存在も同じように
無になり、無くなるところだった。
今はエラー娘が保護しているため、
加賀さんは無事であるらしい。
このことは感謝したい。
この景色も次第に治るだろう。
雪や灰のようなものは
私の心が無ではない証拠なのだとか。
それでも危ないことには変わりない。
加賀さんと会うのは
しばらく後になりそうだ。
最後にしばらくここから出られない事。
これは明石が私に飲ませた薬。
あの瓶の中身が原因らしい。
あれは艦娘用の睡眠薬だと言う。
効果が強く、普通の人間であれば
しばらく目覚めないらしい。
その薬のせいで私は夕方まで
ずっとここにいるらしい。
ただ、この空間は現実と
時間の経ち方が違うらしい。
いつもここにいる時間より
少し長いぐらいだと言われた。
だから私はしばらく待つことにした。
時間が経ち、エラー娘の声が聞こえた。
そろそろ戻る時間だと言う。
すると、すぐに体が光りだした。
いつもと同じように戻るのだろう。
「ア、イイワスレテタ。」
突然、そんなことを言うエラー娘。
こんなギリギリで一体何を……。
「カガハ、モウ、カクゴシテルゾ。」
その言葉だけ聞こえた。
私はその言葉に困惑する。
加賀さんの覚悟……。
その詳細を知りたかった。
しかし、声を上げられなかった。
声を出す間がなかったのだ。
私は直ぐに光に包まれてしまったから。
私は目を開く。
工廠に入る光は紅く染まっていた。
本当に夕方になっていた。
倦怠感と吐き気はない。
体を縛っていた物はなく、
ただただベッドに寝ていた。
辺りを見渡すが何もない。
珍しくネ音もいなかった。
部屋に響く壁掛け時計の音。
「チクタク」と時を刻んでいた。
短針は5と6の間を指していた。
長針は4を指していた。
つまり、「17:20」
朝9時ぐらいから寝ているから
8時間ぐらいは寝ている。
静かな部屋に響く針の音。
その音を聞いていると急に扉が開いた。
入ってきたのは明石。
片手にはバインダーだろうか?
そこの紙に何かを書いていた。
そしてそのまま私のそばに来る。
そのままベッド近くの椅子に座る。
一言目は普通に「おはよう」だった。
私もおはようと返す。
普通の挨拶を交わした私達。
そこから私の身体について話をした。
完全な寝不足だと紙に書いてあった。
……うん、忘れたい。
明石はそのことについて聞いてくる。
何が原因で寝不足なのか。
現況がなんであるかを聞きたいそうだ。
私は思い出したくないことを思い出す。
そして、決意をして話した。
昨日、音楽室で見たあの景色。
那珂ちゃんが音楽室で歌っていた。
音楽室で手作りのステージの上で。
それはいい、それだけならよかった。
問題はそれを見ていた観客の方。
白い髪の駆逐艦ぐらいの女の子。
加賀さんより短いサイドテール。
ペンライトを持って振っていた。
それだけならよかった。
その周りにある数十体のカボチャ。
それ全てに「お冬さん」と言っていた。
ハイライトのない目でそれを見ていた。
その景色を思い出した。
それだけでもぞっとする。
一気に体が震える。
あの吸い込まれそうな目の奥底。
何もかも飲み込みそうな闇。
それが恐ろしくてたまらなかった。
気づけば私は明石の手を掴んでいた。
震えた手で明石の手を握っていた。
明石は開いている手で私の手を掴む。
やさしく、重ねるように。
しばらくこの状態が続いた。
そのおかげで私の震えは止まっていた。
私は明石の手を放してお礼を言う。
明石は「どういたしまして」と言う。
明石は書類を机に置くと部屋を後にした。
また戻ってくるのだろう。
そう思っているとすぐに扉が開いた。
入ってきたのはネ音だった。
ネ音は私を見ると飛びついてきた。
私はベッドで上半身だけ起こしている状態
であったため、そのまま受け止める。
ネ音は私の身体を抱きしめた。
我慢していた分を補うように。
oh……。
ネ音、角が左の横腹に当たっている。
痛い痛い!
でも、ネ音は私の身体を離さない。
何回も頭をグリグリしてくる。
また、意識が遠のきそうになった。
この後、明石が戻ってくるまで
私はグリグリされ続けた。
ネ音は戻ってきた明石の説教を食らい、
私は薬を処方された。
精神安定剤と睡眠薬を貰った。
本当は使わないことが理想だ。
しかし、これからのことも考えると
必要だろうと言う明石の判断だ。
今日する予定だった戦闘能力の検査は
明日の朝の状況次第にするそうだ。
ネ音は今日の内に終わらせたらしい。
私は一通り明石のチェックを受けた後、
ネ音と共に自室に戻った。
いつも通りお風呂に入り、食事をした。
しかし、今日は寝る前に外に来ていた。
羽織を着て海辺を歩く。
いつも見る景色と違う海があった。
夜の海をまじまじと見るのは
あの基地で生活する前だったはず。
今の生活に慣れたのだろう。
私はそう思った。
どこまでも続く海に映る月明り。
その綺麗な海に見惚れてしまう。
その景色を見ながらふと思い出す。
エラー娘が最後に言ったあの言葉。
加賀さんはもう覚悟している。
確かにそう言っていた。
覚悟と言うのは間違いなく佐世保の事。
加賀さんが成仏するか、
私が死んで加賀さんが蘇るか。
加賀さんの覚悟は成仏することだろう。
この場合、私がどうなるか分からない。
元々加賀さんの身体なのだから、
私の存在も危うくなるだろう。
だから私は覚悟ができないでいる。
どうしても私も死ぬのではないかと
つい考えてしまう。
なかなか決まらない思いのまま、
私は自室に戻ることにした。
佐世保に行く前に覚悟を決める。
長いようで短い時間だ。
私は加賀さんの覚悟を聞いても
心が揺らいでいる。
もう一度面と向かって話したい。
そんな事を夜空に願う。
ただただ夜空に願い、部屋に戻った。
一体何月さんなんですかね?
第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票
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キューちゃんズ(イ級×4)
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ネ音(ネ級)