「どうして深海棲艦がいるのですか!」
朝から大本営に叫び声が響く。
周りの人は気になって目を向ける。
その目線の先にいるのは4人。
私とネ音、元帥の3人と1人の艦娘。
声を発したのはその艦娘だ。
艦娘の名前は矢矧。
研修生の1人である。
その矢矧から私たちは睨まれる。
その目には殺気が混じっていた。
私はこの目を知っている。
北上と一緒の目をしているから。
幸いなのはこの目が彼女だけである事。
後ろにいる他の研修生は違う。
怒りではなく、困惑の目をしていた。
疑問と言う方が正しいだろうか?
元帥と深海棲艦が一緒にいるのだから。*1
元帥はため息をつきながら伝える。
私とネ音が敵ではない事。
既に大本営会議で伝えられていること。
望みが平和であると……。
しかし、矢矧は納得しない。
頑なに認めない。
まるであの提督のように……。
しばらく元帥と言い合った矢矧。
だが、元帥には勝てなかった。
言葉に押され、その場から逃げ出す。
最後には「邪魔だけはしないで」
そう言い放ってどこかに行った。
そして場が静かになる。
研修生はどうしたらいいか分からない。
元帥はさっきからため息ばかりだ。
どうしようもないこの場の空気。
だから私は彼女たちの前で挨拶をする。
自己紹介と私のことを伝える。
私が元々人間であることを。
信じてもらえないだろうけど。
それでも知ってもらうためにする。
ネ音も私に続くように挨拶をした。
ただ、楽しく過ごしたいと言った。
研修生たちは困った顔をする。
そんな中、1人が挨拶をした。
「雪風です!よろしくお願いします!」
元気な声で挨拶をしてくれたのは雪風。
呉の雪風と
研修生の中では一番の新人らしい。
そんな純粋な彼女に救われた。
この純粋さにみんな笑顔になる。
他の研修生も次々に挨拶してくれた。
気づけば元帥の顔も笑顔になっている。
何とか研修生との関係は
最悪にならずに済んだ。
挨拶が終わり、研修生と別れた後、
午前中はそれぞれの予定を済ませた。
私は憲兵たちとの訓練。
ネ音は言葉と一般知識の勉強。
それを終わらせ、午後からは
研修生との訓練に参加した。
研修生は4グループに分かれていた。
下から順番に丁・丙・乙・甲である。
甲に近づくほど訓練が厳しくなる。
実践向きの訓練になるそうだ。
今日は丁で一番下のグループだ。
まずは、どれくらいできるかを
ここで確かめるらしい。
それぞれに教官が付くらしく、
ここの教官は……
「2人とも、今日はよろしくクマ。」
球磨だった。
最初はランニングからスタート。
1週が約400mのトラックを走る。
それを5キロ分*2走るのだが……。
「オラオラ!もっと早く走るクマ!!」
球磨が後ろからバットを持って走る。
3周を過ぎたあたりでやってきた。
団子状態の研修生は一斉に駆け出す。
みんなやられたくないのだろう。
私とネ音が最後尾になった。
どんどん近づいてくる球磨。
私とネ音は少しずつ速度を上げる。
そして4週目に入ると球磨は
走るのをやめてトラックの内側へ。
何となく意図が分かった。
私はネ音に耳打ちをする。
ネ音はすぐに理解したようだ。
私たちは少しずつ速度を上げていった。
「だらしないやつらが多すぎクマ。」
無事に5キロのランニングを終えた。
研修生たちは皆、荒い息を立てていた。
ネ音は少し呼吸が速い。
しかし、初めてにしてはいい方だろう。
私?私は余裕である。
この程度のことは苦にならない。
だって、お父さんの方が厳しいもん。
10キロが当たり前だったし……。
無事に完走したのは私とネ音だけだ。
研修生は全員が1回以上叩かれていた。
とても痛そうにしていた。
しかし、3分ぐらい経つと走り出した。
どうやらこの訓練の仕様らしい。*3
研修生にとっては地獄だろう。
私とネ音は終わるまで待機した。
全員がトラックを走り終わった。
そのため次の訓練に移る。
次の訓練は海上走行。
決められた場所からゴールまで向かう。
ただそれだけの訓練だ。
ゴールには球磨型の多摩と木曾が待機。
距離からして1キロくらいだろうか?
球磨も中間ぐらいで待機している。
私は鍛錬の始まりを待つ。
研修生の全員が準備できるのを待つ。
中には苦手な子もいた。
一番の新人、雪風である。
上手くバランスが取れないようだ。
しかし、周りの子は見向きもしない。
関わろうともしない。
最初とは印象が全く違う。
みんな自分のことで精いっぱいなのだ。
だから、余裕がある私が手を貸す。
心配なので手を取って支える。
とりあえずバランスの取り方を教えた。
イメージはサッカーのGK。
中腰の構えをさせる。
そのままスタートラインへ移動する。
その間に練習をして立てるように。
そこからは自分で行くようにさせた。
何とかスタートラインに立つ。
すると球磨から開始の合図が出る。
皆が一斉に飛び出す。
私は後方から邪魔にならないよう進む。
ネ音は中間あたりにいた。
雪風は皆から後れを取りつつも
何とか頑張って移動している。
順調に進む研修生と私達。
そろそろ中間に差し掛かる。
すると研修生たちは速度を落とした。
私とネ音はその間を抜けていく。
気づけば先頭まで来ていた。
下がった理由はすぐに分かった。
私の目に映る球磨の砲撃の構え。
だから私はネ音の手を引く。
抱き寄せるように引っ張る。
するとさっきまでいたところが爆ぜた。
大きな水しぶきを上げる。
私はすぐにネ音に耳打ちをする。
砲撃を
そう言ってネ音を離す。
ネ音はゴールに向かう。
私はそのまま逆走する。
それと同時に球磨に対して挑発する。
自分に注目を向けて、ネ音を逃がす。
球磨は
私はそのまま速度を上げる。
その先にいるのは研修生たち。
私はその間を抜けていく。
するとどうなるか……。
球磨の狙いは私から研修生へ。
研修生の先頭から
球磨の砲撃の
これが球磨を挑発した理由。
楽しようとしたからだよ。
そのうちに私は雪風の元へ。
腰を引き過ぎて進むのが遅い。
だから雪風に自分の服を掴ませる。
離さないように両手でしっかりと。
そしてそのまま全速力で前に出る。
最高速で進み、研修生の間を抜ける。
球磨はそれにすぐに気づいて
此方に向かって砲撃する。
しかし、弾は雪風の後ろへ。
私は当たらないように動く。
速度を変え、蛇行運転で躱す。
雪風の様子を確認しながら進む。
少しずつ速度を上げてゴールへ。
それから何もないまま
私は雪風を連れてゴールした。
多摩と木曾はゴールにいるだけで
特に何もしてこなかった。
私の心配は
全員がゴールしたのは
私がゴールしてから10分後。
全員がかなりボロボロになっていた。
そして予想したことが起きた。
それは研修生の愚痴。
私がしたこと、雪風のこと。
その事に全員が不満を言う。
しかし、すぐ静かになる。
理由は球磨型3人の砲撃。
私たちの周囲で水しぶきが上がった。
水しぶきが無くなると
目に映る怖い笑顔の3人。
そして、球磨が口を開く。
「お前ら、まだ叫ぶ元気があるなら
直々に相手してやるクマ……。」
球磨の髪が浮いているように見える。
まるで空気が揺れているかのように。
「今から5秒だけやるから早く行け。
球磨型特別鍛錬をしてやるクマ!」
そう言うと研修生たちは逃げ出す。
その顔は蒼白。
5秒後には悲鳴が上がった。
私とネ音、雪風はゆっくり戻る。
始まってすぐに木曾から
あがって良いと許可を得たから。
そのためゆっくり戻る。
ネ音が雪風の手を引き、
航行練習をしながら帰投する。
その間にわかったこともある。
雪風は飲み込みがいいのだ。
すぐ踊るように滑れるようになった。
私もネ音も嬉しくて笑顔になる。
まるで天使のような子だ。
もう少し一緒にいたかったが、
もう大本営に戻ってきた。
私たちはまだやることがあるため
明日の鍛錬参加まで雪風とお別れ。
別れる前に雪風に聞かれた。
「雪風たちはお友達になれますか?」
その質問に私は「もちろん」と答える。
ネ音も同じだ。
それを聞いた雪風は笑顔に。
私たちはそのまま別れ、
各々の行くべきところに向かった。
今回は研修生との絡みでした。
これからどんどん関わります。
ちなみに最後の方にあった
球磨型特別鍛錬と言う名の拷問。
これは球磨型から逃げる鬼ごっこ。
容赦なく砲撃と雷撃をされます。
研修生は間違いなく入渠コースです。
第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票
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キューちゃんズ(イ級×4)
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ネ音(ネ級)