カチャ、パチン、コトッ。
そんな音が響くこの空間。
空気がとても重く、張りつめている。
研修生はみんな真剣な顔だ。
私もいつも以上に真剣になる。
誰一人として声を発しない。
否、発することができない。
それだけ異質なこの鍛錬。
上から2つ目である乙の鍛錬。
ここの教官は重巡、航巡の利根。
副官として同型艦の筑摩がいる。
4人も真剣な顔をしている。
そんな空間で声を発したのは
航巡の利根だった。
「きたぞ!リーチじゃ!!」
その言葉に私が挟む。
「それ、ロンで。」
利根は「へ?」と声を漏らす。
私は気にせず言葉を続ける。
「メンタンピンドラドラ、
親だから跳ねて12000……飛んだよ。」
「そんな……ば、馬鹿なー!」
利根は膝から崩れ落ちた。
私たちがしていたのは麻雀。
なぜこんなことになったのか。
それは今日の始まりへと遡る。
雪風と友達になり、約一週間経った。
その間に私は乙、ネ音は丙に移った。*1
丙の時の教官は龍田。
たまに副官として天龍が来ていた。
龍田はただひたすらに戦闘をした。
天龍が来たときはゲーム方式でやった。
攻防戦、タイムアタック、生き残り。
かなり過酷な鍛錬だった。
私は何とかクリア。
ネ音はもう少し掛かりそうだ。
ネ音に頑張るように伝えた私は
次の難易度である乙に移った。
乙で行われていたのは
忍耐、駆け引き、運試しだった。
それ故にボードゲームやトランプ
ダーツなどが置かれていた。
どれか一つに必ず相手がいる。
持ち点0から勝ち+1、負け-1。
+5で甲へ-5で丙へ移る。
余程の実力と運が無いと
突破できないこの鍛錬。
さらに教官と戦うことが決まっている。
最低でも2回は教官と戦うことになる。
そんな鍛錬が始まると私は囲まれた。
私を囲んだのは4人の教官だった。
既に教官に目を付けられたのだろう。
そのため、教官と4連戦
することになったのだが……。
花札 VS利根(航巡)
「花見で一杯、月見で一杯。」
チェス VS筑摩(重巡)
「チェックメイト」
将棋 VS利根(重巡)
「王手……もう詰みだよ。」
オセロ VS筑摩(航巡)
「58-6……私の勝ち。」
と言った感じで4連勝した。
後、1回勝てば甲に行ける状態。
そこで航巡の利根がある案を出した。
「こうなったら麻雀で勝負じゃ!」
こうして麻雀が始まった。
私の対面に航巡利根、上家下家に筑摩。
この形で始まり、第三局となって、
冒頭の跳満12000点に戻る。
ショックで膝から崩れ落ちた利根。
その利根に私は近づく。
そして心に追い打ちをかける。
「握りこみとかコンビ打ちしたのに
負けて恥ずかしくないの?」
利根は図星と言わんばかりに
「うぐぅ」と反応する。
握りこみとコンビ打ち。
麻雀におけるイカサマである。
みんなはしちゃいけないよ。
そんなことをした人は……。
「失礼するのです。」
その声に利根の身体は硬直した。
利根だけではなく教官全員。
顔が青ざめ、大量の汗をかき始める。
研修生は何人か震えていた。
私はその声がした方を見る。
そこにいたのは見覚えのある艦娘。
電が入口とは別の扉の前に立っていた。
怖い満面の笑みでオーラを放つ
電はこちらに来ると
利根の首根っこを掴んだ。
「さあ、大人しくするのです。」
そのまま引きずって行く。
「イカサマした挙句負けたのですから
今からお仕置きなのです。」
強引に連れていく電。
利根は全力で助けを求める。
「嫌じゃ!吾輩はまだ死たくない!」
しかし、誰も助けることができない。
妹に助けを求めても反応しない。
「筑摩!筑摩ぁ~~~…………」
無慈悲にもその声は扉の奥に消えた。
しばらくして戻ってきた電に
教官たちは連行された。
代わりに教官をしたのは
重巡古鷹とその妹である加古。
最初にこの鍛錬の意味を
詳しく教えてくれた。
まず、得点は重要ではない。
-5になっても+5になっても
変わるわけではない。
次にこの鍛錬は集中力、忍耐力を
ただ鍛えるだけの鍛錬ではない。
自分は何が得意なのか。
何が苦手なのかをゲームをして
探し出すことが大事であると。
そして、その中に自分の役割を探す。
攻めか守りか、支援か妨害か。
どうすれば仲間のためになるのか。
それを探す事が本来の目的だと言った。
航巡の利根は勝負に熱くなるため、
今回のようになったらしい。
前にも電に〆られたらしい。
きっと忘れるタイプなのだろう。
私はそう思った。
そう思いながら鍛錬の続きをする。
私は他の研修生とゲームをしながら
それぞれの長所と短所を探した。
鍛錬が終わり、私は音楽室に向かう。
鍛錬の結果は例外だと言われたから。
なんでもできてしまうかららしい。
すぐに甲へ行くことになるだろう。
そう言われたため、今は自由時間。
そういう訳で音楽室に向かっている。
音楽室に行く理由はある。
私はまだ音楽室では歌っていない。
この前の件から避けているからだ。
だが今回は音楽室に行く。
少なくとも前のようなことは起きない。
この前の自己紹介の時に話したからだ。
あの時に秋月型の面々と話した。
その時に秋月と話をしたことで
避けなくてもいいことが分かった。
あの時音楽室にいたのは涼月。
冬月が長期遠征でいなかったことで
正気でいられなかったそうだ。
私はそんなタイミングの姿を
見てしまったようだ。
那珂ちゃんはそれを紛らわす
手伝いをしていたのだとか。
今は冬月が戻ってきているため、
普段通りになっている。
そのため、私は警戒せずに
音楽室に入ることができる。
少しの不安はまだあるけど……。
私はついに音楽室にたどり着いた。
不安を感じながらも扉を開ける。
扉は普通に開いた。
そのまま中に入る。
部屋の中にはピアノ、ステージ、
数多くの楽器があった。
楽器の近くにある戸棚には
それぞれの楽器の楽譜も置かれている。
歌の本も置かれていた。
真新しい本には私の知らない
曲が載っていた。
古い方には私の知っている
曲が沢山載っている、
まあ、そうなるだろう。
私の生きていた時代から
14年も経っているのだから。
他にも色々見てみよう。
部屋にあるものを色々見ていると、
あるものが私の目に留まった。
少し埃をかぶったギター。
何本か弦が切れていた。
よく見ると見覚えがある形だ。
これは前世で使っていた型と一緒だ。
……、これを使いたい。
そう思った私は部屋を探索する。
部屋の奥に扉があったため入ってみる。
そこには手入れをする道具が
綺麗に置かれていた。
誰かが綺麗にしているのだろう。
私はその中からギターに必要なものを
手に取って部屋を出る。
そしてすぐにギターを修理する。
先にクロスでしっかりと拭いてから。
ギターは約10分で修理し終えた。
私はギターを持ってステージに座る。
何度かチューニングをする。
自分の感覚を思い出しながら。
しばらく弾いてみて
昔の感覚を思い出した。
私はそのまま演奏する。
懐かしさを感じながら弾く。
そう、こうやって楽しんでいた。
私はあの頃を思い出す。
昼休憩、食事をした後に。
自分の机に座り、ギターを弾く。
歌を歌いながら弾く。
みんなは食事をしながら聞く。
その音は廊下にながれ、隣の教室へ。
またその音は窓を通って外に響く。
皆が心地良さそうに聞いてくれる。
次第に人が集まり、
教室は会場に変わる。
机はステージに、
蛍光灯はスポットライトに。
生徒も先生も関係なく
私の歌と曲を楽しんでくれる。
時間を忘れるほどに……。
そんな風景を思い出しながら弾く。
オリジナルの曲も、既存の曲も
色々と織り交ぜながら歌う。
楽しくて仕方がなかった。
だから私はそのまま歌った。
今も扉の向こうで私の歌を聴いている
誰かがいることに気づくことなく。
また、今の時間に気づくことなく……。
利根姉さんはプラズマちゃんに
しっかり〆られました。
他の3人の前でしたので
しっかり反省している事でしょう。
歌音は昔のことを思い出しました。
彼女が前世で亡くなる少し前です。
ちなみにギターは彼女と共に
潰されてお亡くなりに……。
最後は誰が聞いていたのか……。
今の時間?もう夜だぜ。
第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票
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キューちゃんズ(イ級×4)
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ネ音(ネ級)