私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

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歌音復活
ネ音のところへ


第17話 懐かしい感覚

 

私は部屋を出て元帥について行く。

 

3人で私を囲うように並んで進む。

 

途中で色々な人にすれ違う。

 

私はすれ違うたびに一礼をする。

 

迷惑をかけてしまったからこその謝罪。

 

3人はその度に待ってくれた。

 

部屋に着くまでそれを繰り返す。

 

10回以上は礼をした。

 

そしてようやく部屋に着いた。

 

元帥がノックをする。

 

中からはどうぞと言う声がした。

 

私は元帥に続くように入る。

 

部屋には多くのベッドが置かれていた。

 

ここはいわゆる医務室だ。

 

目の前には白衣を着た北上と大井。

 

軽巡の方の2人だ。

 

2人は北上の希望で

医務室の仕事をしている。

 

北上は親指で部屋の奥を指す。

 

「用事があるのはあの子でしょ?

1番奥にいるから行ってきな。」

 

そう言うと大井が手招きする。

 

私はそれについて行く。

 

部屋の奥にはカーテンのかかった

場所が1つだけあった。

 

そこにネ音がいるのだろう。

 

大井はその少し前で立ち止まる。

 

こちらを振り向いて小声で話す。

 

「私、貴方のことが嫌いでした。」

 

いきなりの告白。

 

なぜ今言われたのか分からなかった。

 

「貴方がここに来てからというもの、

私と北上さんの時間がつぶれたのよ」

 

何となく言いたいことは分かった。

 

恐らく鍛錬のことだ。

 

丁と丙の時に何度か研修生が挑んできて

返りうちにしたことがある。

 

その時の子たちは確か

医務室に運ばれていた。

 

なるほど、そういうことか。

 

「それにあなたが寝ている間は

忙しかったんですよ。」

 

ふくれっ面で怒る大井。

 

それは謝らなくてはならない。

 

私はすぐに謝罪した。

 

しかし、大井は「でも…」

と言って続ける。

 

「この前の事で印象が変わりました、

貴方は私と同じようですから。」

 

私と大井が同じ?

 

「私も北上さんが同じことになったら

貴方のようになっていると思います。」

 

確かにそうなっているだろう。

 

艦娘の中で特に北上と大井の

関係性は有名だ。

 

艦これを少ししか知らなかった

私もその事だけは知っている。

 

中には結婚しようとする

多いもいるのだとか……。

 

しかし、これは多分あれだ。

 

私、大井に同族扱いされている。

 

いや、否定はできない。

 

ネ音やキューちゃん、

吹雪たちに何かあったら…。

 

うん、今は考えるのをやめておこう。

 

また感情が溢れたら大変だ。

 

大井は「後はゆっくりしてきなさい。」

と言って戻っていった。

 

私は大井を見送り、

カーテンのかかった所へ。

 

カーテンを開けるとそこには

片眼鏡をかけた患者衣のネ音がいた。

 

上半身だけ起こして本を読んでいた。

 

その横では吹雪が寝ていた。

 

ネ音は右手で吹雪を撫でながら

左手で上手に本を読んでいた。

 

集中しているのからだろうか?

 

中々こちらに気づかない。

 

私はネ音の左隣まで行く。

 

ネ音はそれでも気づかない。

 

邪魔するのも悪いので一度部屋を出て

元帥たちのところに戻る。

 

戻る途中に大井が気づいたので

吹雪にかけてあげる毛布を頼む。

 

大井はすぐに毛布を持ってきてくれた。

 

私は部屋に戻り、吹雪の方へ。

 

吹雪に毛布を掛けてあげる。

 

ネ音はそれでようやく反応した。

 

「ありがとうございま…す……。」

 

ネ音はこちらを向いて固まった。

 

持っていた本を落とす。

 

眼を見開いたと思えば

プルプルと震えだした。

 

今にも泣きそうな顔をしている。

 

私はそんなネ音の頭を撫でて

「ただいま」と言う。

 

ネ音は耐えきれずに

泣きながら私に抱き着いた。

 

私が泣いた時のように大声で泣く。

 

その声で目が覚めたのだろう。

 

吹雪が目を擦りながら体を起こす。

 

そして吹雪も同じ反応を見せる。

 

私はそのまま抱きつかれる。

 

2人に泣きながら抱き着かれる。

 

私は2人の頭を撫でる。

 

本当なら色々と話をしたいが

今は2人が泣き止むまで待つ。

 

いや、泣き止まなくてもいい。

 

私も泣いていいだろうか?

 

だって、ネ音が無事だったのだから。

 

私は声を押し殺して泣く。

 

ネ音が無事で本当に良かった。

 

 

 

 

 

2人がだいぶ落ち着いた。

 

私は2人が落ち着く前に

涙を拭いておいた。

 

これで大丈夫だ。

 

2人にがっちり掴まれて痛いが。

 

元帥も静かになったのを

見計らってこちらに来てくれた。

 

少ししてネ音のことについて話した。

 

ネ音はここでしばらく療養。

 

もうほとんど治っているため

早いうちに部屋に戻れるそうだ。

 

ネ音は被害者でもあるため

聴取をされるらしい。

 

と言っても証言の食い違いの

確認をする程度だ。

 

ネ音はそれまで勉強するそうだ。

 

今もその勉強の本を読んでいた。

 

内容は医療についてだった。

 

医療のことが気になったらしい。

 

療養中は退屈しないだろう。

 

吹雪は夕張と一緒に空き部屋で

過ごしているそうだ。

 

ネ音が完治すれば基地に戻るらしい。

 

長くても一週間ぐらいだろう。

 

時間があれば此処の鍛錬に

挑戦してみるらしい。

 

無事に帰還できることを祈っておこう。

 

ひとまず話すことが一通り終わった。

 

元帥は次の仕事のためここで退出。

 

戻るときは吹雪が同伴することに。

 

その後はしばらく話した。

 

こっちであったこと。

 

基地の方であった出来事。

 

明石の実験や開発。

 

これからのことなど。

 

とても有意義な時間を過ごした。

 

あ、もちろん明石は吹雪に

〆てもらうことにした。

 

夕張はこっちにいるから

いつでも〆ることができるからね。

 

私達はネ音に別れを告げて部屋に戻る。

 

帰りの際もすれ違う人に一礼をする。

 

大半の人はしなくても大丈夫だと

言ってくれるが私は続ける。

 

そうしないと気が済まないから。

 

吹雪と共に部屋に戻る。

 

部屋に入るとキューちゃんと

大福が起きていた。

 

装置も部屋の隅に片付けられていた。

 

キューちゃん達が起きたのは数時間前。

 

起きてからずっと暇をしてたいらしい。

 

それまで夕張が相手をしていたのだとか。

 

なら今度は私の相手をしてもらおう。

 

私は手をワキワキしながら近づく。

 

夕張は少しずつ後ずさる。

 

私はじりじりと近寄る。

 

吹雪はその隙にキューちゃんを捕まえ、

手で両目を塞いでいた。

 

「歌音さん…?一体何を……。」

 

そう聞いてくるので理由を教える。

 

「キューちゃんに何を教えたの?」

 

もちろん笑顔で夕張に聞く。

 

夕張は冷や汗をかいて顔を青くする。

 

そのままそっぽを向いて

「な、何のことだか……」と言う。

 

だから言ってあげる。

 

「ぶっ壊すほど…シュートを

教えたのはどこの誰かしら?」

 

夕張はさらに冷や汗をかく。

 

次第に彼女の体が震え始める。

 

そこにとどめを刺すかのように

キューちゃんからの言葉が来る。

 

「教えてくれたのは

明石さんと夕張さんだよ。」

 

子供のような純粋な回答。

 

夕張は察した。

 

あ、終わった……と。

 

私はもちろん笑顔を絶やさない。

 

夕張はブリキのおもちゃのように

震えながら首をこちらに向ける。

 

「えと…ゆ、許してくれないかな~

な~んて……ははは……。」

 

「フフフ……。」

 

私は笑顔で近づいて

夕張の顔を掴んで言う。

 

有罪(ギルティ)

 

その後部屋から夕張の悲鳴が木霊した。

 

 

 

 

 

夕張の悲鳴を聞いた大本営の艦娘は

素早く部屋に駆けつけた。

 

そこには正座をして「有罪」という紙を

額につけた夕張がいたらしい。

 

その時、私は部屋にいなかった。

 

吹雪に付き添ってもらって

食堂に行っていたからだ。

 

食事について何も聞いていなかった。

 

途中で神通さんに会ったから

食堂に行く前に話して戻ってきた。

 

次からは届けてくれるそうだ。

 

いやー、私達がいない間に

部屋で色々起こったらしい。

 

夕張も災難だった。

 

しかし、そんなことがあったのか。

 

怖いから今日は早く寝よう。

 

私は怖いと言いながら

晴れた心でぐっすりと眠った。

 

この懐かしさを喜びながら。

 

 

 




北上さんは工作艦としての一面もあるので
このような形で出てもらったのです

ここの大井はLoveではなくLIKEです

夕張?
ああ、良い奴だったよ……

第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票

  • キューちゃんズ(イ級×4)
  • ネ音(ネ級)
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