私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

4 / 86
プロローグ4 残っていた希望

 

大きな声が島に響く。

 

その島にある大きな建物。

 

私はその建物の前に来ている。

 

そう、若がいた鎮守府だ。

 

若の案内で私は

この鎮守府にたどり着いた。

 

その若は鎮守府の前で泣いている。

 

目の前の光景に

声を出して泣いているのだ。

 

錆びつき、自然に侵食された鎮守府。

 

クレーターができ、ボロボロの広場。

 

何かができていたと思われる枯れた畑。

 

完全に破壊された工廠と思われる場所。

 

もうすでに、

この鎮守府は機能していない。

 

何か大きな戦闘が起きて

ここが襲われたのだろう。

 

鎮守府は形が残るだけで、

廃墟同然となっていた。

 

若はここにきてから

ずっと泣き続けている。

 

沈んでいく夕日がそんな若の心を

表しているかのように思えた。

 

私は若が泣き止むまで傍で待った。

 

月が出始めた頃に

ようやく泣き止んだため、

私は若を手で包んで首元に運ぶ。

 

泣いている彼の顔を見ないように。

 

若は小さく「ありがとう」と言って

マントの中に入っていった。

 

 

 

 

 

私はキューちゃんたちに周囲の探索と

終わったら待機するように伝える。

 

キューちゃんたちは

元気に鳴いて散開した。

 

全員を見届けて

私は鎮守府を探索する。

 

この体はどうやら夜目がきくらしい。

 

最初は気づかなかったが、

意識すれば夜目になるようだ。

 

今は灯りがなくてもはっきりと見える。

 

そのため、私は1人で探索を始めた。

 

建物は丈夫だったのか、

あまり崩れてはいなかった。

 

自然の浸食も外壁ぐらいで

中は普通だった。

 

1階は主に会議室や個室があった。

 

しかし、何もなかった。

 

書類はもちろんだが、

机や椅子もなぜか無かった。

 

階段を上り2階へ行く。

 

いくつかの棚がある部屋と

教室らしきところがあった。

 

教室には木でできた机と椅子が

窓ガラスと共に散らかっていた。

 

 

棚のある部屋にはいくつかの紙が

残っていたため確認する。

 

紙には演習結果と書かれており、

その評価はS勝利と書かれていた。

 

ここの艦娘は

とても強いことが分かった。

 

だってみんな100を

越えてたもん。

 

その紙を見ていると

他にあることに気づく。

 

それはそこに書かれていた日付だ。

 

「2034/11/17」と

書かれていた。

 

私が死んだのは2020年の10月

 

転生だから年数は関係ないとして、

問題は自分の常識が

通じるか分からないことだ。

 

この世界の技術力が

どれほどのものなのか分からない。

 

今のところ船でスマホを

見つけたぐらいだ。

 

もしかすれば生活の基準は

全く違うものだろう。

 

だが、こればかりは

見てみないと分からない。

 

とりあえず、考えるのを後にして

3階へ向かい探索をする。

 

3階は2階とほとんど同じだった。

 

唯一違うのは1部屋だけ

大きく壊された部屋があることだ。

 

ここだけ空が見えるほど

めちゃくちゃにされている。

 

壁や床にうっすらとだが、

飛び散った血が見える。

 

おそらくだがここが提督室、

もしくは執務室だろう。

 

瓦礫をどけて、

何かないか探して見ると

小さな額縁に入った

2枚の写真が出てきた。

 

1枚はここで撮ったと思われる集合写真。

真ん中で小さい子たちに囲まれている

笑顔の男性がここの提督だったのだろう。

 

多くの艦娘に囲まれているところを見ると

かなり大規模な鎮守府だと分かる。

 

2枚目は見覚えのある人、

青い袴の女性と先ほどの男性の

ツーショット写真だった。

 

正確には赤い袴の人と

ピンク色のツインテールの子に

押されて真ん中に寄せられている

4人の写真だ。

 

私はその写真を

額縁に入れ直して帽子に入れる。

 

何かあったときに

必要だと思ったから。

 

 

 

 

 

私は鎮守府を出て海の方へ行く。

 

キューちゃんたちは

探索が終わっていたようで

大人しく待機していた。

 

何かあったか聞いてみたが、

体を横に振る。

 

特にはなかったようだ。

 

私はキューちゃんたちを先導して

工廠の方へ行く。

 

工廠は完全に崩壊し、

瓦礫の山と化していた。

 

海と繋がっているところも

崩壊のせいで塞がれていた。

 

私はこういうところを

あの子たちに任せることにした。

 

帽子を叩き、大福たちを呼んで、

工廠の中を探索させる。

 

崩壊した工廠は

自分が入ると危ない。

 

それに鎮守府を

探索していた時もそうだが

帽子が引っかかる。

 

とにかくこの帽子がデカいのだ。

 

一応瓦礫の上には乗れるが、

あまりやりたくない。

 

それならあの子たちに任せる方が安心だ。

 

しばらくすると一機だけ戻ってきた。

 

何かを伝えようと必死だが

よく分からない。

 

キューちゃんに確認を取ろうとするが

よく分からない。

 

すると若が出てくる。

 

「オレガイク……」

 

マントの中にいた若が

フラフラと飛び、

大福に乗って工廠の中へ行く。

 

しばらく待っていると

若が大声で私を叫んだ。

 

「オーイ!コッチニキテクレ!」

 

私は声の下に行く。

 

危ないが瓦礫の上を進んでいく。

 

瓦礫の上を歩き、

工廠の奥と思われる場所へ。

 

そこには奇跡的に崩れていない

小さい箱型のプレハブがあった。

 

他のところより頑丈だった。

 

中を調べようと思ったが、

扉も窓と思われるところも

全てが瓦礫で塞がれていた。

 

手でどけようとしたのだが、

この体をもってしても動かない。

 

どうしようか少し悩み、

大福たちに瓦礫を

壊してもらうように頼む。

 

私は少し離れてから

瓦礫の破壊をお願いする。

 

なるべく上の方から

邪魔になりそうなところを

壊してもらう。

 

大福たちは瓦礫を破壊し、

プレハブの周りだけ綺麗にした。

 

この子たちが人型だったら

型抜きのプロになれると思う

 

そんな評価はさておき、

私はプレハブに近づく。

 

改めてみるがどこも壊れていない。

 

瓦礫によって傷は入っているが、

それしかないのだ。

 

扉にも窓にも大きな破損はない。

 

私は扉に手をかける。

 

中にいるのが艦娘なら錯乱して

襲ってくる可能性がある。

 

そのため、私は扉を開けて、

中を覗き見る。

 

見える範囲には何もない。

 

私は警戒しながら

邪魔になる帽子を外して

電源があると思われる場所へ行く。

 

私は夜目がきくが、

意識しないといけないから

あまり使いたくない。

 

それに暗かったら

相手から自分が見えないから。

 

探すとちゃんと電源があったため、

私はスイッチをオンにする。

 

すると灯りがつき、

プレハブの中が明るくなる。

 

部屋の奥を見ると、そこには

ベッドに横たわる少女と

その横で眠っている緑髪の女性がいた。

 

少女は包帯でグルグル巻き。

 

女性は特に外傷はなかった。

 

2人ともお腹が上下に動いているため

死んではいないことが分かった。

 

その様子を見て

若の感情が溢れそうになったが、

何とか抑えてもらった。

 

ここで泣かれたら

色々と大変になると思ったから。

 

彼女たちがここの生き残りなら

いい関係を作っていく必要がある。

 

それにこの緑髪の子には

私が持っているもので

交渉できると思う。

 

私は彼女たちが目覚めるまで

小さい声で歌って待つことにした。

 




投稿ミスのご報告
ありがとうございます。

プロローグ3の
サブタイトルも
修正しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。