私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

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夕張はお仕置きされました。


第18話 決めた道

 

私とネ音が目覚め、

夕張を〆てから数日が経った。

 

その間、私はやれることをした。

 

朝の歌の習慣。

 

憲兵との鍛錬。

 

神通との鍛錬。

 

音楽室で歌い、医務室で雑談する。

 

人とすれ違う時は必ず一礼。

 

いつもと同じことを行う。

 

あの日の事で呼ばれれば

すぐに向かう。

 

いつも以上でも以下でもない。

 

いつも通りのことをする。

 

だが、その中でも違うことは起きる。

 

鍛錬に武蔵が乱入することもあれば、

那珂ちゃんと一緒に歌うこともある。

 

自主トレ中の研修生と

一緒に鍛錬をすることもあった。

 

気づけば少しずつ行動できる範囲も

広くなっていった。

 

艦娘も職員も私に近づいてくる。

 

嫌な顔一つせず、

関わろうとしてくれる。

 

研修生の一部からは未だに嫌われたり

怖がられたりしているけど。

 

それでも大本営側は

私を受け入れてくれていた。

 

私の行動の制限はもう無いに等しい。

 

タイミングが合わなくて雪風や

友達に会えないのは少し残念だけど。

 

ネ音は雪風たちに会えているらしい。

 

よくお見舞いに来てくれているそうだ。

 

そんなネ音だが、

明日には退院できるそうだ。

 

北上の想定より早い回復を見せた。

 

顔の甲殻は欠けてしまっているが、

特に支障はないようだ。

 

ただ、前より視力が落ちたらしい。

 

艦娘でも同じような症状はあり、

修復材では治らないそうだ。

 

片眼鏡をかけているのはそれが理由だ。

 

戦闘の際も必要になりそうだ。

 

今は即席で作られたものだが、

後々壊れないものを作ってもらう。

 

作るのはここの明石なので

心配の必要はない。

 

それにネ音はあまり戦わないだろう。

 

元々戦うのは好きではない。

 

私の歌につられてやってきて

そこから皆と過ごしてきたのだから。

 

しかも聞く限りだと

ネ音は医療に携わりたいそうだ。

 

やられた際に体が動かなくなった

理由を探したくなって見ていたそうだ。

 

その際、医療に興味が沸いたそうだ。

 

あれだけボロボロだった自分が治った。

 

その事に驚きを隠せなかったようだ。

 

ネ音が知らない未知の世界。

 

戦うのではなく治す。

 

今まで考えてなかった道を歩むそうだ。

 

キューちゃんは工廠で明石のお手伝い。

 

キューちゃんズもお手伝いをしている。

 

明石曰く、「優秀なお手伝い」らしい。

 

明石は工廠に入り浸るため

他の艦娘のような生活ではない。

 

人数が多いと艤装の修理が間に合わない。

 

そのため工廠には生活ができる

専用の部屋が設けられている。

 

キューちゃんズはその点が優秀だった。

 

掃除、洗濯、料理など何でもできる。

 

休憩のタイミングも完璧で

明石が欲しい時に来るそうだ。

 

妖精との会話も多少できるらしい。

 

そのため、この数日間は

快適に過ごせているそうだ。

 

私はこの時思った。

 

元に戻ったときの反動がデカいなと。

 

今頃基地の明石は項垂れているだろう。

 

そしてキューちゃんたちが戻ったら

今度はこっちの明石が……。

 

楽し過ぎはあまり良くないね。

 

 

 

 

 

時間が経つのは早い。

 

歌を歌って、鍛錬をして

一緒にトレーニングをする。

 

そんな今日も、もうすぐ終わる。

 

今日までに今回の事件も

佐世保の件も進展はなかった。

 

あの5人の研修生も口を割らない。

 

最初に噛みついてきた矢矧は

敵対心はあるが関与していない。

 

そう証言していた。

 

正直何が正しいのか分からない。

 

他の研修生もアリバイがある。

 

一応の警戒を兼ねて、矢矧には

営倉に入ってもらっている。

 

またいつ起きるか分からない。

 

そんな不安を抱えて夜を過ごす。

 

今は食事の後の面会。

 

許された時間ぎりぎりまで

ネ音と一緒に過ごす。

 

隣ではスヤスヤと眠る吹雪。

 

ネ音が優しく頭を撫でる。

 

吹雪はネ音が完治したため、

明日には夕張達と基地に戻る。

 

さっきまで離れたくないと

ずっと泣いていた。

 

私達がいなくて寂しかったのだろう。

 

そんな吹雪にネ音はこう言ったのだ。

 

「永遠の別れじゃないよ。

それにたまにお家に帰る予定だから。」

 

「永遠の別れじゃない」「たまに帰る」

 

ネ音はそう言ったのだ。

 

基地に、家に帰ると。

 

吹雪はそれで落ち着いた。

 

ネ音に抱き着き、しばらくして眠った。

 

ネ音は吹雪が寝たのを確認してから

私に話していないことを話してくれた。

 

これからどうしたいのかを

ハッキリと話してくれた。

 

この数日で決めたこと。

 

医学の道に進むそうだ。

 

吹雪と会って改めて考えたらしい。

 

そして、皆を戦いではない方法で守り、

助けたいと思うようになったそうだ。

 

ここで北上の下で働くよう

元帥に具申するらしい。

 

私と離れることになるかもしれない。

 

それは大丈夫かと聞く。

 

ネ音は少し寂しい顔をした。

 

しかし、意志は強かった。

 

「お姉ちゃんを守れるなら」

 

そう言った、言ってくれた。

 

私はその思いを叶えるために

出来るだけ協力することにした。

 

ネ音の覚悟を聞くことができた。

 

すると、丁度北上がやってくる。

 

もう時間だから呼びに来た。

 

私は吹雪を抱っこして

「おやすみ」と言って出る。

 

ネ音からの返事を待って

北上はカーテンを閉めた。

 

私はそのカーテンを見つめる。

 

北上は私の肩に手を置いて、

「大丈夫だよ」と言ってくれた。

 

北上も察してくれていたのだ。

 

ネ音が泣きたいことを。

 

本当に別れを悲しんでいるのは

吹雪よりもネ音だということを。

 

前までは私の隣を取り合う

ライバルだったのに。

 

今はまるで姉妹のような2人。

 

そんな2人だからこそ、

こんなにも涙を流すのだろう。

 

そう思いながら静かに部屋を出る。

 

出る時に北上がさっきの話について

協力すると言ってくれた。

 

どうやら聞こえていたらしい。

 

元帥に伝えてくれるそうだ。

 

出来る限りのことをしてくれるらしい。

 

私は北上に感謝して

吹雪を連れて部屋に戻った。

 

部屋には声を押し殺し、

すすり泣く声が響く。

 

北上はそれを聞きながら仕事を続けた。

 

 

 

 

 

カツッ、カツッ、カツッ……

 

大本営の廊下に足音が小さく響く。

 

鳴らすのは黒いフードの人物。 

 

深くかぶっているため、顔は見えない。

 

その音は次第に医務室に向かっていく。

 

医務室に着き、扉をこっそりと開ける。

 

中には誰もいない。

 

こっそりと入って扉を閉める。

 

フードの人物は迷うことなく、

部屋の奥へと向かった。

 

物音を立てないようにこっそりと。

 

部屋の奥、カーテンのかかったところ。

 

そこから聞こえる寝息。

 

フードの人物のターゲットである。

 

こっそりとカーテンを開ける。

 

ベッドの上で毛布が上下に揺れる。

 

規則正しく、一定の寝息だ。

 

フードの人物は懐に隠したナイフを

両手で持って振り下ろす構えを取る。

 

この時フードの人物の心拍は

振れた炭酸のように暴れていた。

 

焦り、不安、怒り、喜び、etc.

 

自分の中の感情が混ざり合い、

かつてないほどに驚いているのだ。

 

ここまでうまくいくと

思っていなかった。

 

一度狂ってしまった

時間をかけた計画。

 

しかし、絶好のチャンスが訪れている。

 

その計画が成功しそうなのだ。

 

ターゲットは目の前。

 

フードの人物はナイフを振り下ろし、

ターゲットをグサッと刺した。

 

 




ネ音は医学に興味を持ちました。

今は歌音や艦娘のため、
医学を北上から学ぶ予定です。

最後に来たのは誰かしら?



第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票

  • キューちゃんズ(イ級×4)
  • ネ音(ネ級)
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