一体雪風に何があったのか。
私達はそれを聞こうとした。
でも、雪風は話そうとしてくれない。
もう駄目だと言って体を震わせる。
触れようとしても私たちを拒絶する。
みんな死んじゃうと弱弱しい声を発し、
顔を真っ青に染めていく。
どうしようかと悩んでいると
誰かが声を発した。
「なるほど……そういうことか………。」
そう言ったのは元帥だった。
いつの間にか手に持っていた
書類を見ながらそう呟いた元帥。
私はそれを見せてもらった。
書かれているのは雪風の情報だった。
よくある履歴書のようなものだ。
そこにはこう書かれていた。
「陽炎型駆逐艦8番艦 雪風
練度1 佐世保鎮守府 建造」
この情報に私は驚いた。
雪風は佐世保鎮守府の出身だったのだ。
さらに驚いたのはその後に書かれた
雪風が大本営に来た日にち。
雪風が来たのは
私があの涼月を見て、
寝不足になって倒れていた日だ。
航行が全然できなかったのは
それが理由だったのだろう。
ここにきて日が浅いのだ。
それに誕生からここに来るまで
3日も経っていない。
つまり雪風は本当にヒヨッコなのだ。
艦娘として、人として。
そして間違いなく裏にはあの男がいる。
雪風を利用して
私たちを消そうとしたあの男が。
でも、これはチャンスでもある。
雪風はここに来るまでに
必ず何かあったはずだ。
誰かが人質に取られるような
何かが起きていたはず。
そうでないと雪風を普通に
大本営に送るだけで十分だ。
そうすれば鎮守府の内情を
知られずに済むのだから。
こんなことをする必要はない。
憲兵が何回も来ているのに
危ない橋を渡る必要はない。
だから考えられるのは2つ。
1つは雪風が誰かに鎮守府の
現状を聞かされた可能性があること。
誰かが雪風に話したが、それをあの男が
聞いてその艦娘を人質にしていたら。
もう1つは鎮守府の中で
何かを見た可能性があること。
鎮守府を見に行った憲兵も知らない
どこかに何かがあるとしたら。
そして、たまたま雪風が
それを見たのだとしたら。
もしそうなら、雪風は
従わざるを得ないだろう。
そして得をするのはあの男。
内情を知った雪風を使って
私達をけしかける。
雪風が叢雲たちにしたように
雪風は利用されたのだろう。
あの男にとっての邪魔ものは
これでいなくなるのだから。
だからこそ私たちにできることをする。
雪風を保護し、嘘の報告をさせて
彼女と艦娘たちの安全を確保する。
そして雪風から情報を聞き出せば
それを証拠に佐世保へ行ける。
元帥も保護する予定ではあるそうだ。
ただ、何かが引っかかるらしい。
「なんで雪風が送られてきた?」
元帥はそう言う。
私が雪風の送られてきた理由を
話しても何か引っかかるようだ。
「ずっと鎮守府にいる子の方が
精神的支配も可能なのに……」
元帥は違う考えを持っていた。
長く鎮守府にいる艦娘の方が
今回の事件の適任ではないかと。
理由としては練度と支配力。
私を倒すための練度で且つ
言うことを聞く艦娘。
雪風より可能性があるのでは?
そう考えたらしい。
私の意見はあくまでも私の想像だ。
実際にそうなのか分からない。
そこで他の艦娘に話を聞くことにした。
今回の事で考えられることを。
何人かに聞いた後、
秋雲と明石にも聞いた。
自分ならどうやって雪風を送るかを。
「私なら漏洩防止のために
記憶を消去する装置を付けますね。」
と明石は言う。
「あ~、私なら…記憶どころか
体もボカンってするかな。」
周りを巻き込めたらラッキーだから
と続けて言う秋雲。
しかし、2人とも
とんでもないことを考え…て……。
あれ…記憶消去…爆発……排除……。
周りを巻き込む……まさか!
そう思い元帥の方を向く。
元帥も気づいたようだ。
明石と秋雲も自分たちで
発言して気づいた。
そこからの動きは迅速だった。
私と明石、秋雲で工廠へ走る。
私が強引に雪風を抱え、
残りを元帥に任せた。
元帥は大本営の艦娘に指示を出し、
片付けと警備に戻る。
吹雪と夕張はネ音を連れて部屋へ。
工廠に着いた私たちは
明石の指示である機械のところへ。
雪風はずっと固まって動かず
寝かせようにも拒絶する。
そのため私と秋雲で体を抑えて
明石が雪風の腕に注射を打つ。
中身は私が飲んだ薬と同じもの。*1
暴れてしまう雪風を何とか抑える。
次第に抵抗が弱くなり、
寝息が聞こえ始める。
どうやら眠ってくれたようだ。
眠った雪風を何とか
MRIのような装置に寝かせる。
雪風は装置の中へ。
少しして雪風が出てくる。
心地よさそうに眠っていた。
雪風をベッドに運び、布団を掛ける。
その後、明石・秋雲と共に
検査結果を見る。
結果は……
雪風には何もしかけられていなかった。
私達はこの結果に安堵した。
すぐに元帥に連絡。
今回の大本営での出来事は
無事に解決した。
後に雪風に色々と尋問する予定だ。
叢雲たちの処遇も言い渡されるだろう。
明日は忙しくなるだろう。
夕張達は基地に帰るから。
吹雪と此処の明石が
駄々をこねないといいけれど。
とりあえず私は部屋に戻る。
今はもう午前3時。
この騒動でかなり夜更かしした。
多分寝られなかった時以来だ。
早く帰って寝よう。
そう思っていると明石に止められる。
理由は雪風の事。
流石にここに放置はダメだろう
ということで部屋に運ぶ。
医務室も考えたが、恐らく
いろんなトラウマが蘇るだろう。
そんなわけで雪風を部屋に連れ帰った。
ガサゴソ
暖かい……。
此処はどこだろう……。
布団の中……?
確か、襲おうとして……。
刺したけど幻で……。
全部バレて……。
何か打たれて……。
よく思い出せない……。
でもなんだろう……。
とても暖かい……。
これは誰かの腕?
顔を右に向ける。
見えるのは欠けた角のようなもの。
私が殺そうとした最初の友達。
次に右を見る。
顔を隠すほど長い銀色の髪。
私の計画を止めた最初の標的。
なぜかその2人に抱かれていた。
あれだけのことをした私を
2人が抱きしめている。
なんでか分からない。
でも、なんか不思議…。
今まで感じたことがない暖かさ。
心地よくて涙が出る。
外はもう明るいけど
もう少しこのままがいいかな。
そう思って目を瞑る。
今度はいい夢をみたいな……。
産まれたての女神の話。
大きな事件は幕を閉じた。
次回から第二章終盤へ
平和な日々をお楽しみください。
第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票
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キューちゃんズ(イ級×4)
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ネ音(ネ級)