私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

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私から皆さんへ
小説と言う名の
クリスマスプレゼント。

と言う名の続き。


第24話 相容れない理想

 

ライブ予定が決まり数日が経った。

 

久しぶりに朝から波止場へ出る。

 

いい空だ。

 

雲がほとんどない。

 

快晴になりそうな空を見る。

 

太陽が昇り始める。

 

久しぶりの綺麗な景色を見る。

 

今日はいい日になりそうだ。

 

これで静かなら良かったのだが

今はとても騒がしい。

 

重機の音、資材の置かれる重い音。

 

鉄を叩くような甲高い音。

 

そんな音が朝から大本営に響き渡る。

 

理由は例のライブの件だ。

 

那珂ちゃんの原案をほとんど作り替え、

妥協したステージの設計図。

 

それを基に大本営の空きスペースに

ステージを作っているのだ。

 

広さはコンサートホールの

ステージの半分ぐらい。

 

高さは皆が見えるように

低めに作るように頼んである。

 

観客席も同時に作っている。

 

早朝から作っている理由は

単純に間に合わないから。

 

明石の今のモチベもあるが、

元々明石自身にやることが多い。

 

艤装の整備に酒保の管理、

自分の研究など色々。

 

そのため、手の開いている

朝の時間に行っているのだ。

 

もちろん他の艦娘も手伝っている。

 

憲兵たちも暇があれば手伝っている。

 

だが、明石主体のため

時間がかかっている。

 

妖精さん?

 

ああ、それも理由なんだよね。

 

キューちゃんたちの事で

拗ねてしまっているのだ。

 

明石に自分たちの存在が

いかに大切かを教えているのだ。

 

そのため妖精さんを頼れないので、

ステージをみんなで作っているのだ。

 

こればっかりは明石のせいなので

仕方がないのだ。

 

しかし、それで間に合わないと困る。

 

そのため私も手伝おうとしたのだが、

皆から断られた。

 

理由は歌に専念してと言われたから。

 

人出は足りているから大丈夫だと。

 

そう言われてしまったのだ。

 

まあ、それにはもう一つの理由がある。

 

その理由とはこのイベントの

主催である那珂ちゃん。

 

実は那珂ちゃん、あまり歌えないのだ。

 

別に音痴ということではない。

 

ただ、歌える曲が少ないのだ。

 

戦闘に音楽を取り入れているせいか、

既存の曲はあまり好みではないそうだ。

 

よって、歌える曲は自作した数曲のみ。

 

今までのイベントでも自作した曲を

何回も繰り返し歌ってきたらしい。

 

代わり映えの無いライブになる。

 

今回のライブでも同じことになりそう

だと懸念されているらしい。

 

そう言うわけで私はお手伝いではなく

別の仕事をすることになった。

 

那珂ちゃんに新しい曲を

提供するという仕事を。

 

今日の予定もほぼ丸一日を費やして

那珂ちゃんの新曲作りになるだろう。

 

明石より先に過労死するかもしれない。

 

そんなことを考えながら、

久しぶりの早朝の歌を始めた。

 

 

 

 

 

「ここはさ、もっとキラーン!てして

こっちではキャハ!てしたいの。」

 

「那珂ちゃん、

それでは何も伝わりませんよ」

 

那珂ちゃんの新曲作りは

ご覧の通り、かなり難航している。

 

那珂ちゃんの要望が多いのと

言っている言葉が意味不明過ぎるから。

 

キラーン!とかキャハ!とかで

何を理解しろと言うのか…。

 

これがたまにならいいのだが、

作曲を始めてからずっとこんなだ。

 

あまりにも理解できないため、

大本営の艦娘に通訳を頼んでいる。

 

今日は神通の予定が開いていたため、

那珂ちゃんの通訳を頼んだのだ。

 

おかげでいつもより進む。

 

でも難航していることに変わりはない。

 

曲の1番を作るのに数日も

かかっているのだから。

 

まだ2番の最初の方。

 

いつも以上に時間とストレスがかかる。

 

今まで多くの曲を作ってきたが、

ここまでかかったことは無い。

 

一番考えがまとまらなかった時でも

2日目の朝には完成していた。

 

友達に曲を作ってと言われたときは

1日で5曲ほどの案を出した。

 

次の日にはすべて曲にして

気に入ったやつを選んでもらっていた。

 

ちゃんと典型的な1番、2番、3番と

Aメロ、Bメロ、Cメロとサビで。

 

イントロも全部作った。

 

それをするのが普通だった。

 

今まではそれができていたのに

今は2番の初めで止まっている。

 

しかも、今何時だと思う?

 

もう17:00過ぎてるんだよ。

 

今日の進歩、2番のサビに入ってない。

 

このままじゃ間違いなく間に合わない。

 

何回紙に書いてまとめても

那珂ちゃんの要望に振り回される。

 

音楽と歌詞と那珂ちゃんの要望。

 

そのどれかが噛み合わない。

 

音楽と歌詞が合っても

那珂ちゃんの要望にそぐわない。

 

音楽に那珂ちゃんの要望が合っても

要望通りの歌詞に合わない。

 

歌詞に那珂ちゃんの要望が合っても

要望通りの音楽が作れない。

 

3つのうち1つがなぜか合わない。

 

次第にお互いの意見を通すのに

話し合いがヒートアップしてしまう。

 

「だから、那珂ちゃんはこうしたいの!

もっとキラーン!とした曲を作って!」

 

「だからそうすると合わなくなるの!

無茶を言わないでよ、この我が儘娘!」

 

ストレスが溜まっているからか、

私の口調はいつも以上にひどくなる。

 

そこから口論が始まる。

 

その声は次第にどんどん大きくなる。

 

それ故に部屋の外に人だかりができる。

 

私と那珂はそれに気づくことは無い。

 

お互いの主張をぶつけ合うことに

ただただ必死になっている。

 

完全にそりが合わない状況。

 

遂に口論は揉め合いに変わっていく。

 

お互いが服を掴みあう。

 

服が引き千切れそうな力で。

 

しかし、その揉め合いは

すぐに終わることになる。

 

私達は忘れていたのだ。

 

この部屋にいるもう一人の存在を。

 

「…いい加減に、しなさい!」

 

私達はその声の方を向く。

 

すると首をすごい力で掴まれた。

 

一瞬で息ができなくなる。

 

咄嗟の事で体が動かない。

 

口から泡が出始める。

 

霞んでいく目で那珂を見る。

 

那珂は首を掴んでいる何かを

必死につかんで抵抗していた。

 

私は抵抗すらできない。

 

喉が潰れる…意識も次第に…。

 

もう意識が飛びそうだ。

 

そう思った時、体が重力に従った。

 

そのまま体は地べたに倒れる。

 

喉は解放され、酸素が体に入り込む。

 

私は喉を抑えながら(うずくま)り、

必死に酸素を体に送り込む。

 

隣からは那珂の

必死な呼吸音が聞こえる。

 

心臓が激しく動く。

 

何度も咳き込みながら

何とか顔を上げる。

 

そこには鬼の形相の神通。

 

しゃがんで私たちに手を近づける。

 

その手は私たちの胸倉を掴む。

 

そして神通は顔を近づける。

 

「私の前で揉め合うとは

いい度胸をしていますね、2人とも。」

 

そう言って言葉を続ける。

 

「ただでさえ時間がないのですから、

今は頭を冷やしなさい。」

 

そう言って私の服を離す神通。

 

そのまま那珂の胸倉を

掴んで引きずっていく。

 

その際、近くにいる艦娘に

私を入渠施設に運ぶように伝える。

 

何人か来たので、

肩を借りて何とか立つ。

 

神通は部屋を出る前に

こちらを振り向いて言葉を残す。

 

「どちらの主張もよく分かりますので

これで終わりますが、次は落します。」

 

そう言って部屋を出て行った。

 

あまりの形相に此処にいた全員、

しばらくの間動けなかった。

 

蛇に睨まれたカエルになった気分だ。

 

しばらくして何も知らない別の艦娘が

やってきたおかげで全員が動き始める。

 

私は歩こうと思ったが、

一歩も踏み出せなかった。

 

さっきのショックがデカいのか

指先1つ動かせない。

 

そのため担架で運ばれることになった。

 

 

 

 

 

入渠施設ではネ音が待機していた。

 

私の着替えを用意してくれていた。

 

誰かが伝えてくれたのだろう。

 

私はそのままネ音に預けられる。

 

ネ音は何も言わなかった。

 

でも私の世話をしてくれた。

 

入渠から寝る時までずっと。

 

少し悲しい顔で。

 

寝る時は私がいつもしていることを

ネ音がやってくれた。

 

鳳翔さんに撫でられて以来だろうか。

 

この感覚は未だに慣れないが暖かい。

 

ネ音はずっと私の頭を撫でてくれた。

 

時折首元を撫でてくれる。

 

私はその手を掴む。

 

何故か分からないけど安心する。

 

私はその心地よい温もりに負けて

ゆっくりと目を瞑った。

 

 

 




神通さんの首絞めのシーン

本当は頭を掴んで地面に
叩きつける予定だったんだ。

こんな感じで↓
「この……
クサレ脳ミソがぁー!!」

第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票

  • キューちゃんズ(イ級×4)
  • ネ音(ネ級)
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