私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

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第26話 逆の立場

 

~ 

 

歌が聞こえる。

 

とても明るい歌だ。

 

でも、どうしてだろう。

 

どこか寂しく聞こえる。

 

何か……もの足りない?

 

何かが足りないと感じる。

 

……………ん…

 

歌詞は明るいから、音楽?

 

………ねさ……

 

音楽じゃない?

 

……たね…ん……

 

それじゃあ、何が…

 

「歌音さん!」

 

私を呼ぶその声を聴いて

ハッと目を覚ます。

 

眼を開けると見知らぬ天井、

ではなく医務室の天井。

 

視界の左に移るネ音と明石。

 

それと私の腕についている管。

 

その先には何かの袋がある。

 

点滴だろうか。

 

私は重たい体を何とか動かして

ネ音の頬に手を添える。

 

するとネ音は涙目で頬を膨らませた。

 

そのまま体をポカポカと叩かれる。

 

やっぱり怒られた。

 

いや、私が悪いのは当たり前だ。

 

明石からもしっかり怒られた。

 

どうやら誰かが

ここに運んでくれたらしい。

 

その後、北上の連絡を受けて

工廠から急いできたそうだ。

 

寝不足なのか、大きな隈を作っていた。

 

欠伸をして、目を細める。

 

そしてポケットから

何かの箱を取り出して中身を(くわ)える。

 

銜えたのはたばこ……

ではなくココアシガレット。

 

流石に医務室では吸えないし、

吸う時間もなくて代用しているそうだ。

 

眠気覚まし兼、ストレス軽減らしい。

 

妖精さんのボイコットで仕事が増え、

睡眠時間が削られているからだとか。

 

だから仕事を増やすなと

そう言わんばかりの顔で見られた。

 

そして、簡潔に説明された。

 

「軽い栄養失調…とりあえずその子と、

鳳翔さん間宮さんに怒られなさい。」

 

そう言って部屋から出て行った。

 

私よりも明石の方が

栄養失調な気がする。

 

そんなことを考えながら時計を見る。

 

時間は22:00を越えていた。

 

約3時間寝ていたのか。

 

怪我は…テーピングされている。

 

お腹はすいてn…「ぐううう~」

…すいていた。

 

流石に何か食べたい。

 

するとネ音が何かを準備していた。

 

笑顔でこちらを向く。

 

差し出されたのはリンゴ。

 

いくつかは可愛いうさ耳だ。

 

それをフォークで刺して私に向ける。

 

「お姉ちゃん口開けて。はい、あ~ん」

 

そう言って差し出してくる。

 

私は素直に口を開けてリンゴを食べる。

 

そのリンゴはとても甘く感じた。

 

ネ音は先ほどのふくれっ面とは真逆、

とてもいい笑顔をしていた。

 

誰かにこんなことされるのは

久しぶりだな。

 

私が熱を出したときに

お兄ちゃんが看病してくれたっけ。

 

その時と同じように

ネ音に食べさせてもらう。

 

気づけば皿に乗った

リンゴを食べ尽くしていた。

 

リンゴ3個分は乗っていたらしい。

 

昼夜食べていない分

お腹が減っていたのだろう。

 

今は満腹ですごく満足している。

 

そして少しずつ眠くなり始めた。

 

頭が重くなったからすぐに横になる。

 

このままだとすぐに夢の中だろう。

 

もう少し起きていようと思ったが、

ネ音が私の頭を撫で始めた。

 

私の頭をゆっくり、優しく撫でる。

 

とても暖かくて心地いい。

 

これはいいな…。

 

最近、私とネ音の立場が

逆になっている気がする。

 

だが、この立場は嫌いじゃない。

 

とても気分が高揚する…。

 

体も丁度良く火照って

眠く…な…る……。

 

「おやすみ、お姉ちゃん。」チュ

 

 

 

 

 

チュンチュン

 

鳥のさえずりが聞こえる。

 

登ってくる太陽の光が私の顔を照らす。

 

いつもより遅い起床。

 

隣にはネ音が私の手を取って

抱きついて寝ていた。

 

抱き枕状態だ。

 

緩んだ可愛い寝顔を見せている。

 

こういうところは妹のように思える。

 

私は体を起こして

その状態のネ音の頭を撫でる。

 

可愛い顔を堪能しながら

頭を撫でているとあることに気づいた。

 

昨日食べたリンゴの空き皿。

 

その上に紙が2枚置かれていた。

 

1枚は間宮さんから。

 

朝食は医務室に持っていくから

昼と夜は必ず来なさいとのこと。

 

可愛い顔文字も書かれている。

 

怒っているけど。

 

2枚目は名無し。

 

中身を見ると、大きな字で

「音楽室で待つ」と書かれていた。

 

……なんかデジャブ…。

 

手紙の主は十中八九あの子だろうけど

どうして書き方は姉妹に似るのだろう?

 

これじゃあアイドルらしさが

どこにもないじゃないか。

 

もはや果たし状だよ。

 

いつ行ってもいいのだろうが、

流石に遅いのもあれだ。

 

とりあえず昼過ぎに行くとしよう。

 

その方が良いだろう。

 

こうして私は今日の午前中は

ゆったりとした時間を過ごした。

 

間宮さんが来たときはヤバかった。

 

鳳翔さんと一緒に来て

みっちり食の大切さを語られた。

 

ネ音はその語りをずっと

目をキラキラさせながら聞いていたよ。

 

理由はためになるから。

 

医学の内容に結びつけて聞いていたよ。

 

私が朝食を食べ終わった後、

鳳翔さんに料理を教わると言っていた。

 

間宮さんからも色々教わるらしい。

 

そして、今日の昼は

ネ音の手作りなのだとか。

 

そのためちゃんと食堂に行く。

 

食堂には列ができていた。

 

気になって見に行くと

ネ音が頑張って料理を作っていた。

 

まだ手慣れていないからか、

もたつきながら準備していた。

 

数量限定のオムライス。

 

まだ最初だから10皿だけだった。

 

この列はその10皿を争う抽選券の列。

 

気になる艦娘たちや従業員も並ぶ。

 

私?私は列に並ぶ必要はない。

 

なぜならネ音が最初に

私に食べさせてくれたからだ。

 

鳳翔さんと間宮さんが

付きっきりで教えたらしい。

 

ふわふわとろとろの卵に

しっかり絡んだケチャップライス。

 

ライスに混ざった具材が

程よく存在を主張する。

 

今まで食べたオムライスの中で

一番おいしく感じた。

 

確かにこれは並んで食べたい。

 

しかも、鳳翔さんと間宮さんは

ほとんど手を出していない。

 

具材のカットや時間のチェックなど

それしか手伝っていないそうだ。

 

メインの工程は

ネ音がほとんどやったらしい。

 

この子はいいお嫁さんになれる。

 

そう思った。

 

それに色々な料理を味わいたいものだ。

 

ネ音の料理に満足した私は、

少し休んでから音楽室に向かった。

 

食堂には那珂ちゃんの姿はなかった。

 

恐らく、もう音楽室で

待っているのだろう。

 

私は少し急ぎ足で音楽室に向かった。

 

場所が少し遠いため、駆け足で行く。

 

音楽室に近づいていくと何か聞こえた。

 

これは……声、歌だ。

 

歌詞はあの㊙ノートの歌詞。

 

しかも、私が書いたところ。

 

私はさらに足を速める。

 

次第に大きくなる歌。

 

ほぼ完成に近い曲。

 

どこか物足りなさを感じる。

 

そんな曲を聴きながら

私は勢いよく部屋に入った。

 

目に映るのは

ステージに立つ那珂ちゃん。

 

楽しそうに体を動かして歌っている。

 

顔は満足しているが、

何か違うと言った顔をしている。

 

やはり完璧に作ることは

できなかったようだ。

 

そして曲のキリのいいところで

那珂ちゃんはこっちに気づいた。

 

歌うのをやめてこっちを見る。

 

昨日、この部屋で大喧嘩をした2人。

 

その2人がお互いに目を合わせる。

 

その間、この部屋は沈黙に包まれた。

 

 




何とか今年中に書き終えそうだ。
無理せずに頑張るのです!

オラオラオラオラオラ!

第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票

  • キューちゃんズ(イ級×4)
  • ネ音(ネ級)
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