私と那珂ちゃんは互いに見つめ合う。
音楽室の中は静寂。
風を切る音が響いている。
しばらく続くどうしようもない沈黙。
この沈黙を破ったのは那珂ちゃんだった。
「昨日は……ごめんなさい!」
那珂ちゃんは私に対して頭を下げた。
腰から見事な90°のお辞儀。
全力で謝罪してきた。
我が儘を言い過ぎたこと、
自分の事しか考えていなかったこと。
ステージ案の事で代替された分
こっちで言いたいことを言ったらしい。
それは仕方のないことだ。
だから、こっちも
謝らなければならない。
那珂ちゃんの曲なのに
自分の意見が入り過ぎたこと。
那珂ちゃんに対して悪口を言ったこと。
ステージ案について
ちゃんと話し合わなかったこと。
お互いに謝った。
その際、那珂ちゃんがノートを出す。
「これ……那珂ちゃんのノート…
続きを書いてくれたんだよね?」
そう言って、
私が書いたところを見せてくる。
「これを見て思い出したんだ。
作曲がどれだけ大変だったのか。」
那珂ちゃんはノートを書いていた
当時のことを話してくれた。
何回も歌いたい内容を書き出して
それを歌詞にする。
それを何回も繰り返して
完成させた曲を歌う。
それをみんなの前でやったけど、
聞いてくれるのは一部の人だけ。
それでも繰り返した。
次第に聞いてくれる人は増えていった。
それに伴って歌う曲も増やしていった。
しかし、艦娘である以上は
作曲の時間も練習の時間も限られる。
だから数曲だけにしていた。
そうすれば時間はあるから。
でも、同じ曲を歌い続ければ
聞いている側に飽きられる。
色々試した結果、作曲することにしたが
回数を重ねる度に書けなくなった。
そして、ついには音楽が嫌いになった。
楽譜も音も聞きたくない。
楽器も触れないし、
音楽室にも入れなくなった。
ついには放送器具すらも
触れなくなったそうだ。
この影響は出撃の際も影響した。
無線そのものを拒絶し始めたのだ。
脳が無線をマイクだと判断し、
拒絶反応を見せたのだ。
その影響はさらにひどくなり、
部屋から出ることも困難になった。
生活音全てが拒絶する
対象になってしまったのだ。
そんな那珂を見た元帥が
メンタルケアを開始。
出来る限りのことを行い、
数年かけて那珂は元通りにした。
その際に、このノートの存在を
トラウマと一緒に忘れていたそうだ。
そのノートが今、ここにある。
それは那珂ちゃんの過去。
そして、作曲の大変さを思い出させた。
大変だった日々を思い出させた。
だからこそ、今回の事を振り返り、
謝ることができたのだ。
このノートがなかったら
未だに雰囲気は悪かっただろう。
でも、今はお互いに謝ることができた。
そしてこんなお願いもできる。
「この曲を完成させたいの
出来ればあなたと一緒に。」
那珂ちゃんは私にそう言った。
だから私はその言葉に応える。
「もちろん、必ず完成させよう。」
こうして曲を完成させるために
2人の共同作業が始まった。
前は上手くいかなかった作曲だが、
今回はいい感じで書けている。
お互いに意見を出し合って
時には歌って確かめる。
那珂ちゃんが歌いたいように歌って
私がこういうのはどうかと提案する。
そんな感じで曲が完成していく。
歌詞に合わせて音楽も作る。
曲は次第に形になっていく。
バラバラだったピースが
綺麗にハマっていくように。
今まで以上にいい曲になっている。
次第に楽しくなっていく。
体が火照ってくる。
お互いに白熱していく。
あまりの楽しさに笑いが絶えない。
私達は終始笑顔でこの時間を楽しむ。
完全に自分たちの世界に入って。
誰かがこの部屋を覗いたところで
私達が気付くことはない。
歌も作曲もそれほどまでに楽しんだ。
そして時間は経った。
ついに曲が完成した。
お互いの要望を合わせ、
丁度良いバランスにした。
後は本番でちゃんと歌うだけだ。
私達は曲の完成を喜んで、
仲良く食堂へ向かった。
夜の食堂はざわついていた。
ざわついているのは
普通だと思うだろう。
残念ながらこのざわつきは
普通ではないのだ。
多くの人がある空間に対して
ざわついているのだ。
理由は簡単。
私と那珂ちゃん、そしてその間にいる
那珂ちゃんを睨むネ音。
その対面にいる神通と川内。
このカオスな空間に
周りは動揺しているのだ。
美味しそうに食事する那珂ちゃん。
それを睨みながら私にくっつくネ音。
それに苦笑いする私。
こんな光景を傍から見たら
いくら何でもざわつくだろう。
誰もこの机には近寄らない。
特に一昨日の那珂ちゃんとの
喧嘩を見た艦娘はなおさらだ。
私はネ音の頭を撫でて甘えさせながら
神通達と話をしていた。
神通のおかげで頭を冷やせて
那珂ちゃんとも仲直りができた。
おかげで本番に向けて頑張れそう。
神通にはそう感謝した。
神通は笑顔で答える。
「怒っただけで何もしていませんよ。
あなたたちが解決したのですから。」
これが大人の対応なのだろう。
とてもカッコよく見えた。
その横にいる人は
とても死にかけだけど。
「ああ…夜戦……やせ…ん……。」
この人は自業自得だが、
こう見ると可愛そうに思えてきた。
だってこの状況は赤城から
食事を取り上げるに等しいから。
「心配しなくていいのですよ。
姉さんの自業自得、罰ですから。」
私の心を読むかのように
口を開く神通。
本当にこの人は恐ろしい。
まあ、だからこそ信用できる。
そんな人と変わったメンツで
食事を続けた。
終始ネ音が那珂ちゃんを睨んでいたが、
那珂ちゃんは全然気にしていなかった。
いつまで続くかと思っていたが、
早い段階でネ音が寝た。
そのおかげで食事後に
ゆっくりと会話ができた。
神通達には那珂ちゃんのことを
色々と聞かせてもらった。
今までの那珂ちゃんの活動や
那珂ちゃんの性格など。
沢山話してもらった。
その際、昨日の事も
聞かせてもらった。
昨日私を運んだのが
那珂ちゃんだということを。
私は「ありがとう」と
那珂ちゃんにお礼を言う。
那珂ちゃんは照れくさそうに
顔を背けた。
那珂ちゃんはそう言うところは
私と似た者同士なのかな?
そんなこと思いながら
那珂ちゃんの照れ顔を見ていた。
その後は皆で一緒にお風呂へ。
何かが起きることもなく、
ゆっくりと湯船につかる。
今日の疲れを癒しながら。
後1、2話で第二章を書き終える。
と思うのです。
なので頑張ります(^▽^)/
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