私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

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第28話 女神に癒しを

 

「準備はいい?」

 

皆が寝静まっている夜の時間。

 

ある部屋で誰かがそう言う。

 

「はい、大丈夫です!」

 

それに返答する誰か。

 

光のあまり入らない暗い部屋。

 

返答した誰かが目の前の通信機で

どこかに連絡を取る。

 

部屋に響かない程の小さな音。

 

しばらく鳴り続けて、

ようやく反応があった。

 

「……もしもし、司令。Yです。

報告が遅れて、申し訳ありません。」

 

声のトーンを下げ、静かに連絡する。

 

「何があった…?

バレていないだろうな?」

 

「はい、計画は成功。

今は大本営の特殊部隊です。」

 

電話を掛けたY、雪風はそう言う。

 

「特殊部隊?……なんだそれは?」

 

疑問に思っている相手に詳細を伝える。

 

大本営の特殊部隊への入隊。

 

元帥直属の部隊で秘密が色々あること、

もう少しここにいることを伝えた。

 

「まだ下っ端ですが、上に入れば

あなたに良い情報が渡せるので。」

 

「お前…変わったな……。」

 

「ええ、研修生の中に司令と同じ考えを

持った方が何人かいらっしゃるので。」

 

「あいつらの事はいいのか?」

 

「私は、彼女たちとそこまで一緒じゃ

なかったので、情はないのです。」

 

「そうか、なるべく早く上に行け。

いずれ大本営は俺の物になるからな。

お前の頑張り次第だからな、

期待しているぞ、雪風。」

 

そう言って通信が切れる。

 

雪風はゆっくりと近くの椅子に

腰を下ろして深呼吸をする。

 

しかし、緊張が切れたからか

呼吸が荒くなる。

 

胸が苦しくなり、涙が出てくる。

 

「ごめんなさい……。」

 

泣きながら謝る雪風。

 

この話を聞いていた神通は

雪風を優しく抱きしめる。

 

「よく、頑張りましたね。」

 

優しく頭と背中を撫でる。

 

暖かくてどこか安心できる。

 

雪風はその安心によって

涙を流し、声を出して泣く。

 

神通は報告を他の艦娘に任せ、雪風が

泣き止むまで傍にいることにした。

 

 

 

 

 

那珂ちゃんと仲直りして数日が経ち、

本番まであと少しとなった。

 

そんな日の朝、

私達の部屋に客人が訪れた。

 

訪れたのは神通と雪風。

 

雪風は目を真っ赤にしていた。

 

何かあったのだろうか?

 

そう思っていると雪風が

涙を流して抱き着いてきた。

 

私はそのまま受け止め、頭を撫でる。

 

雪風は声を出して泣いた。

 

雪風をあやすように抱っこしながら

神通に詳しい理由を聞いた。

 

昨日の夜、雪風は佐世保に連絡。

 

提督に本当の情報と一緒に

嘘の情報を伝えた。

 

言いたくない嘘の情報を伝え、

何とか騙すことに成功した。

 

しかし、その時の精神的ダメージは

予想より大きかったそうだ。

 

今日はそれによる休養。

 

落ち着いてもらうために、

落ち着ける場所を探していたらしい。

 

そこで雪風本人からの要望があり、

私達のところに来たそうだ。

 

前以上に甘えん坊になった雪風。

 

とりあえず今日一日は

雪風の子守になりそうだ。

 

雪風を落ち着かせるために私たちは

一緒に行動することになった。

 

まずは音楽室へ。

 

音楽には心を落ち着かせる力がある。

 

個人差はあるが、

大きな効果が期待できる。

 

那珂ちゃんは別件でいないので

音楽室は私たち以外いない。

 

だから3人で音楽を楽しむ。

 

ピアノを弾いたり、歌を歌ったり、

音楽を聞いたりする。

 

雪風に少し笑顔が戻った。

 

途中から雪風も歌ってくれたので

みんなで一緒に楽しんだ。

 

ネ音が思ったより

音痴だったことには驚かされた。

 

頬を膨らませて顔を赤くしたネ音を

からかいながら次の場所へ行く。

 

次に向かったのは食堂。

 

これはネ音からの提案だ。

 

この前料理を作ったことで

料理に自信を持ったらしい。

 

今は鳳翔さんと間宮さんだけでなく

他の艦娘や職員にも教わっている。

 

数日しか経っていないが、簡単な料理の

レパートリーは増えているそうだ。

 

そしてそれを最初に食べるのは私。

 

よく周りの子には羨ましがられる。

 

ネ音の料理はおいしいけど

いつも数量限定で抽選式。

 

食べたくても抽選で落ちる子はいるし

また食べたいという子も少なくない。

 

今回はそんな料理を私と雪風が食べる。

 

雪風は少しソワソワしていた。

 

雪風は特殊部隊に配属だが、

扱いは未だに研修生と変わらない。

 

まだ研修生として卒業していないから

こればっかりは仕方がないのだ。

 

しかし、研修生にとってネ音の料理は

手の出せない代物と同じなのだ。

 

鍛錬をいくら早く終えようと

食堂に行くのに時間がかかる。

 

さらに、食事の時間が決められている。

 

研修生の時間が用意されているのだ。

 

矢矧や叢雲たちのような実力者は

例外で早めに上がることがある。

 

それでも抽選で当たらないため

食べることができていないけど。

 

雪風はというと

卒業前に向けての鍛錬をしている。

 

夜遅くまで神通と鍛錬をしている。

 

そのため、食事の時間が遅くなるのだ。

 

ネ音の料理も食べたことがない。

 

だがうわさだけは聞いている。

 

とてもおいしいと噂のネ音の料理。

 

雪風はそれが食べられると言うだけで

体を揺らして待っている。

 

次第にいい匂いが漂ってきた。

 

そのいい匂いが鼻をくすぐり、

雪風の口からは涎が出始める。

 

どんな料理なのか予想しながら

涎を垂らす雪風。

 

顔はもうゆるゆるしていた。

 

そして目の前に料理が出される。

 

出されたのはカツカレーだ。

 

「足柄お姉さんのおススメ

雪風の応援も込めて作ったんだ。」

 

笑顔で言うネ音。

 

雪風は頬を紅く染め、

涙を流しながらカレーを口に運ぶ。

 

丁度いい辛さで作られたカレーと

歯ごたえのあるカツが絡む。

 

スプーンを動かす手が止まらない。

 

かなりの量だったが

気づけば完食していた。

 

雪風も私より少ないとはいえ、

既に完食して牛乳を飲んでいた。

 

とても満足しているが

カレーの匂いは私たちを刺激する。

 

お腹が膨れたのに涎がまだ出てくる。

 

このままだと涎が止まらなくなるので

雪風を連れて食堂を出る。

 

ネ音はもう少し料理を作るそうだ。

 

まあ、抽選の列ができているから

仕方がないのだろう。

 

いつもより多い列を横目に

私達は建物の外に向かった。

 

 

 

 

 

心地の良い風を浴びながら外を歩く。

 

さっきの食事で火照った体が

風でいい感じに冷やされる。

 

冷えすぎないように雪風を抱きながら

ゆっくりと海沿いを歩く。

 

向かったのはステージ。

 

あと数日に迫ったライブのステージ。

 

大本営の邪魔にならないところに

客席と一緒に作られた。

 

明石が限界を迎えていたが、

丁度良く妖精さんが現場復帰。

 

速攻でステージを完成させてくれた。

 

そのステージを見て回る。

 

設計通りのステージが出来上がっている。

 

細かい仕掛けも出来ているようだ。

 

そんな感じで見ていると

妖精さんがこっちにやってきた。

 

ステージの最終確認をしているらしい。

 

そこでこんなことも言っていた。

 

「例のやつ、入れておきました。」

 

私はその言葉を聞いて

サムズアップする。

 

どうやら私の提案を

入れてくれたらしい。

 

雪風は疑問に思っているが、

これは本番まで内緒だ。

 

お願いされても教えられない。

 

雪風は「む~」と頬を膨らませる。

 

怒り方はネ音と同じだ。

 

ネ音の影響でも受けたのだろうか?

 

でも、こういう雪風が

見られて良かった。

 

朝よりもいい顔をしている。

 

かなり吹っ切れたようだ。

 

この後も散歩したり、夕食を食べたり、

一緒にお風呂に入ったりした。

 

他の研修生(特に卯月)には

羨ましがられて色々大変だった。

 

夜は一緒の布団で眠る。

 

私とネ音が雪風を挟む形で。

 

あの時と同じ形で眠る。

 

雪風は今日一番の笑顔で

気持ちよさそうに眠った。

 




頑張って残り2話(予定)を
書くのです。

第2章で同行するメンバー(残りのメンバーは基地でお留守番)最終投票

  • キューちゃんズ(イ級×4)
  • ネ音(ネ級)
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