私の想いを歌にのせて平和を願う   作:猫神瀬笈

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第7話 こびりつくトラウマ

 

ここはどこだろうか。

 

私は暗闇の中にいた。

 

何もかもが真っ暗で何も見えない。

 

あるのは体の感覚だけ。

 

何か聞こえるわけでも、

感じるわけでもない。

 

そんな空間に私はいた。

 

動くことはできるが、

何もすることがない。

 

そう思っていると

薄っすらと光が見えた。

 

何だろうと思い、近づいていく。

 

それは何かの形をしていた。

 

よく見るために近づいていく。

 

ゆっくりと動いている。

 

気になってさらに近づく。

 

そして、その何かがこちらを向いた。

 

その時、私は足を止めた。

 

それは目に焼き付いたもの。

 

残酷なほど変貌(へんぼう)していたもの。

 

それがゆっくりと近づいてくる。

 

私は体中から冷や汗をかいた。

 

脳が体全体に危険な信号を送っている。

 

だからこそ逃げようとした。

 

しかし、思い通りに体は動かなかった。

 

さっきまで動いていた体は、

石のように固まって動かない。

 

それが近づいてきているのに

体が言うことを聞いてくれない。

 

少しずつ、少しずつ…。

 

それが私に近づいてくる。

 

逃げたい、怖い、嫌だ。

 

そんな思いが頭を巡る。

 

しかし、どうしても体は動かない。

 

そして、それが私の顔に

腕と思われるものを伸ばす。

 

そのまま顔に近づいて…。

 

「縲後♀鬘倥>縲∫ァ√r縲∝勧縺

代※窶ヲ縲ゅ◎縺励※窶ヲ縺ゅ?」

 

 

 

 

 

「いやああああああああ!」

あまりの怖さに絶叫した。

 

呼吸が荒くなり、心臓が激しく動く。

 

あまりの速さに胸が痛くなる。

 

荒れる呼吸を何とか落ち着かせる。

 

少しずつ息を整え、

今の状況を確認する。

 

見知らぬ部屋、掛けられている布団。

 

今は夜で、どこかの部屋にいる。

 

部屋は少しの和室と机。

 

やはり見覚えのある部屋。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

それが分かったところで、扉が開く。

 

部屋に入ってきたのは北上。

 

その後ろには夏雲がいた。

 

「すごい声だったけど、どうしたの?」

 

そう言われ、さっきのことを話す。

 

さっき目に焼き付いた姿で

近づいてから何かを言われたことを。

 

北上は「あ~」と言う。

 

「怖いのが夢に出てくるとかいうけど

本当にあるんだね~。」

 

どうやらあの光景が

トラウマになっているらしい。

 

今後も出る可能性があるそうだ。

 

今はいったん様子見となった。

 

この話はいったん置いておいて

あの後どうなったかを聞く。

 

今は突撃した日の夜。

 

私が倒れたあと、全員が救助された。

 

長門と川内型、暁は現在待機中。

 

大きな負傷が無かったため

応急処置でどうにかしたらしい。

 

匂いはどうにもできないため

空き部屋に待機してもらっている。

 

赤城、龍田、暁を除く第六駆逐は

地上に出た後、すぐに入渠施設へ。

 

幸い施設は霧島のおかげで

正常に動いているそうだ。

 

そのためすぐに入渠。

 

入渠時間が表示されたことで、

()()()()()()()()

 

全員が1日以上の入渠となるが、

何とか治るらしい。

 

壊死は何とかなるそうだが、

部位の欠損と傷跡は無理らしい。

 

でも、全員の命があることを

今は喜ぶべきだろう。

 

今後の予定だが、憲兵隊は帰還した。

 

艦娘たちの精神面を考えての事らしい。

 

北上、秋雲の2人はここに残るそうだ。

 

秋雲は憲兵の代わりとして、

北上はカウンセリング、医師として。

 

人間よりはいいだろうとのことらしい。

 

猫さんも、もう少しここに残るそうだ。

 

執務室で色々確認するらしい。

 

それに、どの鎮守府でも提督は必要だ。

 

そのため変な提督が着任しないように

しばらく代理という形でいるらしい。

 

もちろん、私もここに残る。

 

あの姿の赤城さんを見たくはない。

 

でも、向き合わなければならない。

 

そのためにここに来たのだから。

 

赤城さんの入渠時間は約一か月

 

高速修復材を使って一週間ほど。

 

赤城さんの入渠が終わるまで

私はお手伝いをすることになる。

 

主に警備と施設整備だ。

 

艤装の整備や生活環境の改善も

明日からやっていくそうだ。

 

大本営と呉鎮守府からも

支援が来るらしい。

 

そのため早めに休むようにする。

 

さっきのあれを見る可能性はあるが、

耐えるしかないだろう。

 

大本営の涼月の件と同じようなものだ。

 

何かあったら北上に

連絡することにして横になる。

 

そして、北上たちが退室した後、

私は再び目を閉じた。

 

 

 

 

 

……私はゆっくり体を起こす。

 

時計の針は6時を過ぎていた。

 

いつもは歌いに行くのだが、

今はそんな気分になれない。

 

だが、目を瞑りたくもない。

 

あの後、また同じ夢を見た。

 

その度に私は目を覚まし、

眠りを妨げられる。

 

5回以上はそれで起きている。

 

目を瞑ればまた

あの光景を見ることになる。

 

余計に嫌な気分になるだろう。

 

だが、このままいるわけにもいかない。

 

彼女たちの方が

もっと苦しんでいるのだから。

 

私は強引に体を動かして布団から出る。

 

顔を洗い、少しスッキリする。

 

さっきより幾分かマシになった。

 

でも気分はまだよくない。

 

少し散歩をしよう。

 

そう思って外に出た。

 

ギシギシとなる床を通り、

建物から出て、海岸沿いへ。

 

たどり着いた私は大きく息を吸う。

 

さっきよりさらに気分がマシになった。

 

だが、まだスッキリはしなかった。

 

夢の事もあるがこの空気も理由だ。

 

とても息苦しい空気。

 

大本営や基地とは全く違う重たい空気。

 

海は穏やかだが、静かすぎた。

 

嵐の前の静けさ。

 

その言葉がふさわしいと思えるほど、

不気味なほどに静かだった。

 

それが嫌だった私はこの場から

逃げるように執務室に向かった。

 

執務室に向かう理由は

猫さんと霧島がいるからだ。

 

現状、あの2人が

ここの状況をよく知っている。

 

何かするにしても

2人から話を聞いた方が早いだろう。

 

そう思って執務室に向かった。

 

執務室ではソファーで眠る霧島と

書類を捌いている猫さん。

 

すごいスピードで書類を捌いていた。

 

「ん?やあ、おはよう。

もうこんな時間か。」

 

そう言って手を止める。

 

ぐ~っと背伸びをして

席を立つと隣にある部屋へ。

 

少しして3つ分のカップを持って

戻ってきて机に置く。

 

良い匂いがする。紅茶だろうか?

 

その匂いにつられたように

霧島が起きた。

 

私も誘われたため、一緒に飲む。

 

落ち着く匂い。

 

昔に嗅いだことのある懐かしい匂い。

 

ゆっくりと口に含む。

 

その温もりはすぐに体の奥底に届いた。

 

体の心から温まる優しい味。

 

とてもおちつ…

 

「マイクチェックー!!」

 

…1名だけハイテンションになった。

 

すごい勢いで書類をまとめている。

 

さっきまでの重い空気が

一気に吹っ飛んだ。

 

この人のテンションのおかげか、

猫さんの紅茶のおかげか。

 

とりあえず、今日1日は

元気に過ごせそうだ。

 




全・員・生・存!

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